井の頭歯科

「ゴッホ 真実の手紙」を観ました

2024年3月19日 (火) 09:33
アンドリュー・ハットン監督     BBC     Amazonprime
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は2/21
ゴッホ、特別に好きな画家、という訳ではありません。が、数年前に東京都美術館で行われた(ゴッホ展 響き合う魂ヘレーネとフィンセント)で観た「夜のプロヴァンスの田舎道」の凄さ、まるで糸杉が蠢いて、星が瞬いて動いているように見える絵画にヤラレマシタ。確かに、これは凄い!となりましたし、ゴッホが特別好きになる人がいるのも、理解出来ます。
そして、いろいろ調べたり読んだり映画化されたものを体験しているうちに、私が気になるのは弟のテオなのだと理解出来ました。
全然売れる予想もなく、非常に感情の起伏の激しい、それでいて完全に生活を依存されている弟のテオの、心情が気になるのだと思います。しかも絵の1番の理解者でもあり、家族という遺伝子的にも逃れられない他者の中で最も近い存在でいる事の苦しみみたいなものに興味があるのだと思います。
残念ながら、テオとフィンセントの書簡のほとんどは、フィンセントがテオに宛てた者ばかりが残っていて、私にとって肝心のテオがフィンセントに宛てた手紙はほとんど現存していないのです。でも、そういう所も、また惹かれる部分でもあるのですが。
で、そのフィンセントを、ベネディクト・カンバーバッチが演じている、しかもBBCだ、という事で観ました。
特に目新しい事実もなく、淡々と進んでいきます。どちらかと言えばテレビの特番のような感じです。カンバーバッチもイイ感じで軽めの力の抜けた演技で好ましく感じました。
フィンセントが亡くなった後、ほぼ半年後にユトレヒトの精神病院で亡くなる事となったテオの事を考えると、そこに美しい兄弟愛とか、援助を惜しみなく注ぎ込む献身とか、そういったホモサピエンスの善性も理解はできるのですが、それだけでない、負の感情も沸き起こりつつも、それでもよき理解者で援助者であり続けられ、同時に、フィンセントの死をきっかけに衰弱してしまうテオの心情を知りたいと思うのです。とても複雑だとは思うのだけれど。
フィンセントに興味がある方にオススメします。

「悪魔はいつもそこに」

2024年3月15日 (金) 09:10

アントニオ・カンポス監督     Netflix
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は2/20
何となく、Netflixで検索していると、え、トム・ホランド?それにライリー・キーオ!え、ロバート・パディンソン!!わ、ヘイリー・ベネットまで!!!!という事で、キャスト陣の豪華さから視聴しました。すっごく、豪華。
オハイオ州のノッケンスティフとウエストヴァージニア州コールクリークという名も無き小さな2つの街が存在するのですが・・・というのが冒頭です。
これは小説が基にある映画化作品なのですが、まさにナレーションで読み込まれ、神の視点からこの事件というか関係性の顛末を眺めるタイプの作品で、読書体験に似ている作り、演出になっています。そう言う意味では好みではある。
しかも、どの役者さんも、かなり良くて、抑制の効いた演技であり、上手いです。これはトータルでの演技面の抑揚という意味で気が利いている。
中でも特にヤバめの演技、その顔の印象の強さで、ハリー・メリングを知れたのは大きかったです。名作漫画、富樫義博著「ハンター×ハンター」の中に出てくるヒンリギ=ビガンダフノにそっくりです・・・
因果応報と言いますか、第2次世界大戦からベトナム戦争が拡大するまでの時代を描いた、それも数奇な運命を生きる2つの街の人々の、世代を超えた不思議な関係を見せてくれます。
私は無神論者で、神を発明したのが人間で、それはこの世の理不尽を乗り越える為の方便だと思っていますし、なんなら信仰とまではいかないけれど、宗教よりは科学を上位に置く者ですが、ベトナム戦争って1955~1975までの事なんですけれど、つまり1950年代ってまだ、全然、宗教的な規範が強かったんでしょうね。
あと、警察も仕事しているのは良かった。
ナレーションの声の人も、声、良かったです。
でも、小説の数奇な運命ってどうしても、作為を感じてしまいますね。

「博打打ち 総長賭博」を観ました

2024年3月12日 (火) 09:11

 

山下耕作監督     東宝     U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は2/19
かなり前に「昭和残侠伝」を見た際に、個人的には高倉健さんよりも、池部良のカッコよさにやられたわけですが、その時に師匠から、それなら総長賭博を観た方が良いですよ、とオススメして頂いたのですが、当時は配信サービスも無く、レンタルビデオにもなかなか置いていなかったので観れなかったのですが、そう言えば、と最近思い出し、U-NEXTさんで検索すると、あった!となったので観ました。流石U-NEXTさんです。
昭和9年、天竜一家総長の荒川は、弟分の仙川から右翼会の大物との会談の席で倒れます。これを機に引退する覚悟を決めたのですが、六人衆の筆頭中井(鶴田浩二)は外様を理由に断り、獄中の松田を推挙するのですが、仙波は荒川の娘婿である石戸を推してきて・・・というのが冒頭です。
うむ、久しぶりの昭和の任侠モノですが、何と言いますか役者の重みをめちゃくちゃ強く感じます。しかも、恐ろしい事なんですけれど、松田を演じる若山富三郎、御年39歳です・・・主演鶴田浩二さんは御年44歳・・・お、恐ろしいくらいの年下です・・・が、当たり前ですが、全然年下に見えません・・・
ホモサピエンスの見た目はその寿命の長さによるのではなく、あくまで私見ですけれど、責任の重さを自覚する事で、かなりの覚悟(生死を問わないくらい)を重ねた者だけが会得する、大変な重みだけが、見た目を重くすると思います。
そう言う意味で現代が軽い時代であるのは当然だと思います。それだけじゃダメなんでしょうけれど、今のうちの国に、老成の価値観を見出せる人は少ないでしょうね。赤瀬川原平さんのいう老人力、と言うモノでさえ、軽さを感じますし、そうでないと受け入れられないでしょうね・・・特に女性はそういう生き物、としておく事で、消費されているように見えます。歳を取るなら死んだ方がマシ、くらいの勢いを、女性誌からは感じます。これは1980年代に、バブルの頃からもう少し生き残りましたけれど、恋愛至上主義的ば煽りと一緒だと、個人的には思います。
でも男性化粧品とかを新宿の有名デパート男性向け建物で売っているのを見ると(本当に下衆で申し訳ないのですが、新宿有名デパート男性向け建物でホモサピエンス・オブザベーションするの楽しいですよ、暇な人は是非のオススメです、そしてBL好きな人も)男性にもその波は打ち寄せてきているのですが、男性は頭が悪いので、理屈で攻めないとなかなか難しい感じがします。
閑話休題
本当に面白い映画でたった95分なのに、物凄くいろいろな事柄、しきたり、人物の葛藤関係性の葛藤が、これでもか!とまでに詰め込まれています。
名作!オススメです。で終わりでもいい気がしますけれど。
アテンション・プリーズ
ここからはネタバレありの感想になります。未見の方はご注意ください。
脚本の笠原和夫さんの脚本もさることながら、演出も無駄が無く、ソリッドで素晴らしい上に、役者さん方が命を懸けているくらいの意気込みを感じさせます。特に、鶴田浩二、若山富三郎の2名の演技、顔の表情は、強すぎるくらいです。
そして、見逃せないのが出番も演技の場面も少ないのに、その魅力を出した石戸役の名和宏さんの演技は素晴らしかったと思います。
もちろん、仙波の悪役ぶり、その非常に小悪人的な、小物感を漂わせる、口をとがらせるヒトラーみのある口ひげの演出も良かったです。まさに小物で、本当にどうしようもないですけれど。
主文を読み上げるラストも、そしてケチな人殺し、というセリフも、ココこそが師匠のいう脚本家・笠原和夫の意気込みだというのも理解出来ました、流石師匠。
と、観ている間は、大変に頑張れ、とか、我慢とかの後のカタルシスを感じられて良かったのですが、よくよく考えてみると、みんなもう少し我慢のしどころ、その方向性の合意を得る、という論理性が足りない事、そして感情に振り回されている姿が、ある意味未成熟さに感じなくもない上に、確かに道理ではあるのだけれど、結局のところ中井が引き受けていれば、という感覚が残ります・・・それを言っちゃオシマイなんですけれどね。

「BEAU IS AFRAID」を観ました

2024年3月5日 (火) 09:07

 

アリ・アスター監督   A24    吉祥寺アップリンク
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は2/17,18 日を開けて2回観ました。
2024年に観たかった作品の2本のうちの1本です。あの、アリ・アスター監督の映画ですから、まぁいろいろあろうとは思いますけれど、期待値は嫌が応にも高まります。
メンタルクリニックで診察を受けているボー(ホアキン・フェニックス)は診察されて、質問を受けているのですが、上手く答えられずに、緊迫感を募らせていて・・・というのが冒頭です。
もう、本当におかしかったです。笑える、と言う意味でも頭がおかしくなるくらいに笑えますし、それ以上に、何てことを考えているのだ、という意味で頭がオカシイ人が、監督です。そういう事すべてが、興味深い。なんでこんな映画監督が出来上がったのか?について、非常に興味があります。
これまでの映画「ヘレディタリー/継承」も「ミッドサマー」も結局のところ、家族という呪縛の話しでしたが、今作も同じです、と言い切っても良いかと思います。
ネタバレは出来る限りしない感想ですけれど、ちょっと長かったかな、とは思いましたが、凄く不思議な作品。そして2回目の視聴だと、短く感じましたし、細かな点がいくつか確認出来ました。
最初のパート、何が起こるか?は言えませんけれど、とにかく、笑ってしまいました。劇場でここまで笑いをこらえるのは、本当に久しぶりの事です。
そして、関連する映画をいろいろ考えてしまいます。
ホアキン・フェニックスの演技は、いつも通りで凄く雰囲気があり、上手いです。顔芸もやってくれますし、全身で演技されていますし、感謝しかない、とアリ・アスター監督も思っていることでしょう。
それ以外の方は多分初めて観る方々ばかりでしたけれど、見応え、演技、十分過ぎるくらいありました。特に外科医の人は、そういう職業の人に、ちゃんと見えます。そういう些細な部分もかなり作り込んでいます。あの笑みが恐ろしくもありますし、そういうのって本当に凄い事です。
さらに美術も、相当なこだわりを感じます。それこそ、悪夢的と言える場面を、キッチュなのにキャッチ―で、ポップなのに毒々しさがあり、リアルでは無いのに皮膚感覚まで醸し出しています。相反する2つの感覚がちゃんと感じられるようにしているの、本当に凄いです。
それと同時に、ある部分に、あの「オオカミの家」の監督コンビが関わっています。これも凄くイイです。
さらに、音楽も良かったと思います。劇中に出てくるとあるCD、私も好きですけれど、まぁね。
ただ、莫大な予算がかかった作品、ある意味、前2作の成功があって、好き放題にやった結果、これはちょっと受け入れにくいだろうな、受け手である観客も、結構困っている感覚を、公開2日目の最終回でしたが、感じました。

お客さんは、それなりに入っていましたし、若い人、それも女性の数人グループが多かった印象があります。それもミッドサマー的なモノを求めていらっしゃってた人たちの頭の上に大きな?が浮かんでいたのを、鑑賞後の出口付近の人だかりで感じましたし、まぁそうなるよな、とも思いました。そして、10日目くらいのレイトショーでも、困惑顔の人、頭に?を乗せている人も散見されましたけれど、それ以上に、複数回来ていて、笑いをこらえている、もしくは困惑顔の頭に?を乗せた人の観察にいそしむ人もいらっしゃいました。

基本的には、やはり、家族という鎖について、遺伝子という牢獄に関心のある人に、オススメ致します。
アテンション・プリーズ!!!
ここからはネタバレありの感想なので、未見の方はご注意下さい。
ネタバレありの感想ですけれど、とにかく最初のパートの掴みが最高です。
常に何かしらの不安を常に感じている(そりゃ当たり前だろう!という事については後述)ボーの目から見える世界の恐ろしさ、そのなんというか世紀末感、分かる!という他ないです。もう見るモノ全てに何らかの悪意を汲み取ってしまう、日常的な不安感からくる認知のゆがみ、それが全てにおいて恐ろしさに繋がる感覚がもたらすカオスな世界、それだけで恐ろしいのに、そこからさらに、accel.が効いて、加速度的に物事がより恐ろしい方向へ向かう様は、大変気の毒なんだけれど、どうしても笑えて来ます。
なんでここに住んでるだ?となるまるで北斗の拳の世界のような世紀末世界。その上にツイストを効かせて、さらなる思った方向の斜め上の事態に繋がる世界が、最高に笑えました。
これ、困り顔の大家であるコリン・ファレルが演じてても、最高だと思いますが、流石のホアキン・フェニックスの演技です。流れるような絶望感、もう本当に最高。
常に自室に侵入しようとしてくる怪しげな前進タトゥーの男との、ドアの閉め合い合戦が常に繰り広げられていると思わせる描写からの、ジプノティクリル服用したかと思ったら水が無い!水道出ない、ネットで調べる、死亡記事、鍵が無いからドアを施錠出来ないけど、水が無い、という最悪の展開、ここまでくると笑えて仕方なかったです。ドリフのコントかと思ってしまいます。
それに、あの部屋の毒クモ!の存在!!これは勝手な妄想ですけれど、恐らく、ボーにとっては毒クモも恐ろしいけれど、勝手に人が侵入する可能性の恐ろしさより、毒クモと暮らす方がまだマシ、という考え方があった為と思われますけれど、その考え方が既に末期的症状で笑ってしまいます。
それに、すべてを諦めた後、とりあえず風呂に入るボーに滴る水滴、からのなんで天井に人が張り付いてる?からの、落下、もう思い出すだけで笑いがこみ上げてきます。よくこんな事考え付くな、という流石アリ・アスター。どこまでも容赦が無い。

この部分の編集、テンポも凄く上手いと思いました。

さらに、2パート目、もう何が何だか?展開ですけれど、この病人パートもかなり楽しめました。完全におちょくりに入ってますよね?
葬式に行きたいけれど、身動き取れないし、明らかに大丈夫じゃないPTSD症状の元軍人で息子の直接の殺害者の可能性もある、夫婦に言わせると英雄も恐ろしいけれど、それ以上に娘の目の数光年彼方まで行っちゃってる目つき・・・正直PTSD軍人も恐ろしいけれど、私もそうですけれど、初老の男性からすると、全然行動が読めない上に動機も不明で言いがかりを付けられたら社会的に抹殺されかねない若い女性の方が恐ろしい、という感覚あります。
そんなカオスの家で、安心できるわけないし、結局のところ、その娘がトリガーになって出ていくのも、分かってはいたけど、恐ろしい。
とは言え、ここで伏線が既に引かれていて、それも、ああやっぱり、な伏線で、ここでだいたいのオチの方向性は理解出来ました。でも、ここ、ちょっと「ファニーゲーム」を思い出した人いると思う~

んで、多分1番難解なのが3パート目なんだと思うけれど、ココは普通に、この映画に最も近いの間違いなくジョエル&イーサン・コーエン監督の「シリアスマン」なんで、普通にヨブ記なんだと思います。それに、このヨブ記を普通にコメディにするのも、笑えました、そうだ、俺、なんもしてないから息子いるわけねぇ、で目が覚めるの、すげぇボケ方だと思いました。でも、それも、「どうしたらいいか?ワカラナイから教えて~」というボーなら言いそうw

で、いよいよ4パート目。ここですべての謎が解けるのですが、ボーのこれまでの母親の支配を考えると、そりゃ、運命の女性、というか、ぐいぐいくるあの娘にやられますよね~得てして男性にとっての究極の女性像は、絶対に叶わないからこそ忘れられない、という奴じゃないでしょうか?そもそも母親の支配が強すぎる上に、何が正解かワカラナイ、というか何処にも正解が無いんですよね、そりゃ「どうしたらいいか?ワカラナイから教えて~」になるのも無理はないですよ・・・
母親の支配の強さは尋常じゃないレベルで、
・父親は受胎時に死んだ
・なんならその祖父も
・遺伝的な病気だ
となれば、自分も行為をすれば死ぬ→出来れば究極のあの子がいい のまま数十年の状態で睾丸は恐ろしく腫れているwが何を意味するかは受け手次第ですけどね・・・
・母親は基本何をしても満足しない
・の上に監視はパーフェクト
・従業員の生死すら金次第
という人物から、よくあのアパートまで逃れられたな、というのがボーにとってはかなり頑張ったんじゃないでしょうか?
その後の首絞めは、私は完全にとある映画を思い出しました・・・もうこう無間地獄から逃れるには殺すしかない、というギリギリまで行ってしまったと思います。
そこからの、マジでまんまピーター・ウィーアー監督「トゥルーマン・ショー」ばりのラストです。
ここも酷くて笑えますけれど、被告人であり、検察側の母親の責めに対して、弁護人は豆粒くらいの大きさで喋る声も小さく、しまいにはいなくなってて、もうダメだこれは、都しか感じなかったです。
これだけの母親の呪縛から、仮に、逃れられたとしても、自責の念、自分からは逃れられない、という結末は、まぁ、そうでしょうけれど、監督の家族環境が知りたい、ですよ。
そして、この後、考察をする動画をいろいろみてしまったのですが、この人の動画の説得力、そして正解を探しているのではなく、あくまで解釈、私の解釈、というスタンスが素晴らしかったです。
https://www.youtube.com/watch?v=SY1Abs-c-58&t=185s

「独立愚連隊西へ」を観ました

2024年2月27日 (火) 08:50
岡本喜八監督     東宝     DVD
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は1/16
いつ見たのか、忘れてしまいましたが、独立愚連隊の後に観たと思いますが、感想を書くの忘れていて、しばらくぶりに見返したので。
北支戦線、歩兵第463部隊は八路軍の攻撃を受けて、軍旗を失ってしまいます。軍旗に強い執着と誇りをかける軍上層部は、捜索隊を派遣して軍旗を戻そうとするのですが八路軍も・・・というのが冒頭です。
という戦争映画ではありますが、もちろん凄い娯楽大作です。それに岡本喜八作品ですから、当然ですけれど、西部劇要素を入れていますし、とてもよく脚本が練られています。
役者陣も、岡本喜八作品の常連の方ばありですし、どの方も顔に非常に強い個性を感じます。
そして主演と言ってもイイのが加山雄三です。
個人的には、加山雄三出演作をすべて見ているわけではありませんし、特に若大将シリーズには全く手を付けてないのですが、間違いなく良い作品の1つに入れられると思います。スターの雰囲気ありますよね。
それでも、最も強く印象に残ったのはやはり成瀬己喜男監督作品「乱れる」です。
そして佐藤允の顔で、この映画の勢いが出ます。本当です。
ここまで緻密に計算されて、なおかつ、自分の独自の構図や、戦争に対する考えにも十分に配慮しながらも、エンターテイメント作品に仕上げている岡本喜八監督の凄さは、やはり特筆に値すると思います。これは同年生まれでインテリの増村保造監督と同じですし、職業監督は製作会社や原作者、出資者、プロデューサーら、大変な人数のいう事を聞いて、映画を作らねばなりませんし、非常に難しい作業だと思います。思いますが、増村保造監督、そして岡本喜八監督は、私が知っている数少ない、いろいろな人々の要求を満たしつつ、必ず自らの信念みたいなものを映画に込めて、その上でエンターテイメント作品に仕上げている、稀有な監督だと思います。
でも、全部の美味しい所を持って行ったのは天本英世なんですけどね。
三谷幸喜脚本にも通じる、というか岡本喜八監督が先なわけで、端のキャラクターにまで、必ず活躍する場面があり、なんとなくとか、何のために出てきたのか?とか、というキャラクターがほぼいませんし、どんなキャラクターにも光が当たる瞬間があって、そこも脚本の素晴らしさだと思います。
軍旗はまさに象徴だし、その象徴の為に命を懸ける事の馬鹿々々しさが非常に面白く表れた傑作。
当時の陸軍、本当に大変だったでしょうね・・・・
しかし左文字小隊の存在を思いつくのが凄い。
今でもこのくらい脚本が練られた作品があって欲しいです、邦画の中にも。
エンターテイメント作品が好きな方に、オススメします。
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