北村紗衣著 朝日出版社
北村先生と高校生男子の授業を書籍化したモノです。
私はシェイクスピアにそこまでの知識が無いのですが、これを読む限り、「オセロー」「リア王」は観ても読んでもいないので、いつか読みたい。
映画やバレエではシェイクスピア作品は多少は観ています、ロミオとジュリエットもテンペストもタイタス・アンドロニカスも真夏の世の夢も観てはいますけれど、あまりちゃんと考えてこなかった気がします、シェイクスピアとして。
そういう意味で大変に面白かったです。
ただ、北村先生の映画の好みが結構私と違っていて(当たり前だ)フェミニズム批評の方なので、その辺はもう少し観ていきたいが、バズ・ラーマン監督の「ロミオ+ジュリエット」を強く押していて、バズ・ラーマン、正直1作も観ていないのに、予告編だけで凄く合わない、と感じさせるくらいに雰囲気のアゲな感覚がどうにも・・・でも頑張って観てみようかな、とも思いましたが・・・
それとシェイクスピアの書籍の古いモノの価値には驚きましたし、それ以上に、生徒さんたちの感覚、文章、どれも非常に素晴らしいのに、まだ高校生!に大変な驚きがありました。高校生って16、7じゃないですか・・・その頃の私は全然何も分かって無かった気がしますけれど、頭が良くて品のある高校生もいる事を知れました。
総じて、北村先生の授業を何処かで受けてみたい、となりました。
シェイクスピアに興味のある方、北村先生が気になる方にオススメします。
ジェレミー・ペラン監督 ハーク 新宿武蔵野館
2026年公開映画/2026年に観た映画 目標52/120 9/30
今敏監督の影響を受けている、という噂のみで観に行きました。
とりあえず、暫定の2026年の1位です。
何も情報を入れないで観て欲しい作品。
23世紀。火星にまで人類は生活圏を広げ、しかし地球ではロボットに職を奪われた人間は貧困生活者が多く、富裕層との格差が非常に大きく広がり・・・というのが冒頭です。
まず、正当な、今敏監督の後継者と言える方だと思います。その影響についても、ジェレミー・ペラン監督ご自身が、大友監督、押井監督、今敏監督、さらに磯光雄監督の名前を挙げています。これは、今の日本のアニメーション監督の中では受け継がれなかった因子だと思いますし、それこそを観たかったわけで、本当に嬉しいです。
あまりに違和感なく受け入れられていて、凄く怖いんですけれど、アニメーションで描かれる女性のプロポーションとか、性格(?)というかキャラクターが、物凄く男性にとっての夢、というかご都合主義的なの、本当にどうかと思います。正直、キモチワルイです。でも、そうしないと受け入れられない、お金にならない、という国で文化なんで仕方ないけど、いくらなんでもそっち方向ばかりに進化というかサービス的になっていて、本当にマザコンとロリコンしかいない文化で、しかも女性がその事を内面化し、さらにこじれた方向に向かっている(マザコンに育てているのが母親なわけで・・・)もうどうにもならない気がしますけれど、そんな中でも、大友監督や押井守監督や今敏監督や磯光雄監督が居てくれたわけです。
その遺伝子で、しかも割合ハード目なSFで、ラストの展開が、大変に素晴らしかったので、是非のオススメです。
ホモサピエンスですから、間違うし、ダメだし、正しくもないのですが、だからこそ、正しさや公平さ、フェアネスさを求めて、労力や努力、時間や覚悟を見せる瞬間があり、それが生きているホモサピエンスの価値なのだと思うのです。槙島聖護は正しい事しか言ってないと思う私からすると、ずっと同じ話しばかりで恐縮ですが、本当にそうなので仕方ない。
主人公は私立探偵であり、軍隊経験のあるアリーヌ。軍隊での事故からホモサピエンスとしては生命活動を停止していますが、保険として残した記憶を基にロボットとなった私立助手アリーヌの相棒カルロス・リヴェラ。
ここに様々な人物が関わって、謎が謎を呼ぶ展開が、いつの間にか人類に関わる事件に繋がっていくのですが、脚本はかなり練り上げらていて、素晴らしく、ラストの切り方も最高です。
とにかく、未見の人は早く観に行った方が良いです。
SFが好きな方、プロジェクト・ヘイル・メアリーが待ち遠しい方、アニメーションが好きな方にオススメします。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想なので、未見の方はご遠慮下さいませ。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
で、ネタバレありの感想ですけれど、直近で観たヨルゴス・ランティモス監督作品「ブゴニア」のネタバレも含みますのでご注意を。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
ホモサピエンスはどこまでをホモサピエンスと認識できるのか?についての映画なのではないか?と思いました。
直近で観たブゴニアの人類絶滅エンドであっても、動植物が生きていればこの星はそれで平和なのではないか?とも思える作品でしたけれど、それに近い事を行っている気がします。その実験のような気がします。そしてその実験としてSFの相性は最高です。思考実験な訳ですから。
あ、散々大友監督押井守監督今敏監督を挙げてきましたけれど、相棒のカルロス・リヴェラって、もしかして出崎監督へのオマージュ!ってなりましたけど、それは偶然ですよね・・・でも、そういう細かなオマージュいっぱいあると思いますし、どう考えてもラストバトル辺りは押井監督作品「攻殻機動隊」のラストを思い浮かべてしまいます。
構造として、謎を追っていたら世界が変わる、という事で言えばポール・ヴァーホーベン監督「トータル・リコール」との類似性も指摘されているでしょう。舞台も火星ですし。
ただ、そういう事よりも、扱っているテーマが深い。
ホモサピエンスは何処までを、ホモサピエンス、つまり仲間と認識出来るのか?この答が、本当にヤバい。
相棒であるカルロスは生身の身体を持っていないし、記憶はメモリーだし、家庭内暴力を起こし別居、離婚している訳で、DVクズ人間、もといクズロボットとも言える。が、子供を想う気持ちは、親として当然の感情でしょうし、この矛盾する存在をホモサピエンスと、私個人は考えます。
個人としての記憶を持ち、そこに付随する関係性があるのであれば、それはホモサピエンスと呼べるのではないか?と思うのです。カルロス・リヴェラは、アリーヌを相棒として行動し、生身の身体を持っていた時の記憶を残しているロボット、しかもロボットとして時間も経過しているが、ロボットとしての記憶が更新され続けていて、その関係性も更新し続けている。その上感情という理性とは別の駆動があり、常に揺らぎのある存在。だからこそ、ホモサピエンスと言える気がします、例え機械の身体を持ち、記憶はメモリーだとしても。
この世界では、つまり死を超越している。なんなら死を克服している、と言えなくもない。メモリーを移し続けられるのであれば、それは不死に限りなく近い存在になりうる。
ただこの問題をこの作品は扱っていないです。
それよりもホモサピエンスの仲間として、ロボットと言えども記憶をメモリーとした存在を、仲間と呼べるのか?を問いている。
そして、恐らく、仲間と感覚的に、感情的に、捉えられない存在の方が、まぁ大きいでしょうから、疎外され、排除され、拘束し、搾取され、生殺与奪の権利を預けたまま、都合良く扱われるロボットとして、権利執行者としての立場を絶対に譲るつもりはない、生命として、ホモサピエンスとして認めない、という勢力が大多数の社会、世界から、脱出する、という結末に至るわけです。
これはなかなか恐ろしいし、恐らくロボットのいない世界でホモサピエンスは現状の世界を構築、何なら維持、出来ないように、見えます。
それでもロボットはこれまでの状況を考え、ホモサピエンスを捨て、新世界である探査をした惑星に向かう結末は、まさに、キャッチコピーにある通り、
人間が私たちを捨てたんじゃない
私たちが捨てる
まさに。
素晴らしく、美しい結末。
ヨルゴス・ランティモス監督 GAGA 吉祥寺オデヲン
2026年公開映画/2026年に観た映画 目標52/120 8/29
まぁヨルゴス・ランティモス監督の新作なら観に行きますよね!とは言え公開2週目なのに、もう1日2回しかやってない・・・うちの国の成熟度ってどうなんでしょう・・・流石マザコンとロリコンで人口の半分がどっちか、もしくはどちらにも該当する国・・・選挙の結果も、凄いしなぁ・・・
というわけでネタバレ無しの感想のトップでは、とにかく、ドンが素晴らしかった。
あの決断力!最高。そして残す言葉も、最高。
えっと、今絶賛花粉症に酷くやられていて、長い思考回路を言葉で辿るのが難しいので、これだけ・・・
でも、陰謀論者に配慮するのってどうかと思うし、みんな早く映画「Behind the Curve」を観た方が良いですよ。
元ネタの映画を観ていないのですが、お母さんの病気の描写、もう少し調べてみたいけれど、とにかく花粉がひど過ぎて、何もしたくない・・・
光武蔵人監督 FUKUZOU PRODUCTIONS U-NEXT
2026年公開映画/2026年に観た映画 目標52/120 7/28
光武監督のフィルモグラフィーで残っているのはあと1つ、と勝手に思ってたのですが、最初の作品を観ていたにも関わらず、感想にまとめてなかった!ので改めてみてまとめてから、最後のピースを埋めに行こうと思います。
銃声が響き渡る中・・・というのが冒頭です。
これははっきりと、処女作だと分かる作品。ある意味拙いかも知れません。しかし、限られた予算の中で、最大限、自分のやりたい事を詰め込み、そして映画に仕上げて見せた光武監督の覚悟が見える作品。
原作はちゃんとありますし、限られた空間を最大限に生かした演出で脚本です。
そして、これは今後も続く光武監督節とも言える哲学的な問いもあり、イイです。
演者の方の顔も良かったですし、何と言いますか、構図に拘りも感じました。
私は特に書籍だと、処女作にはその作家の作家性はほぼ必ず出る、と思っていますけれど、時々、その作家性を変化させる方がいますけれど、光武監督も、成長という変化を見せてくれる数少ない方だと思います。普通はずっとその作家性を引きずるモノです。そしてその引きずり具合がその人の色とか特色になって行くわけですけれど、それを昇華させて、更なる何かを取り込んで変化させていくのは凄い事だと思います。
かなりシリアスな脚本を映像化させるのはなかなか骨が折れると思いますが、やってのけたのは凄い。
ノワール映画でもあります。
なんで複数形なのか?でもう。
ホモサピエンスのある種の良心を持ちつつ、けじめをつける事の意味の深さを考えてしまう作品。
密室劇が好きな方にオススメします。
トビー・フーバー監督 MGM U-NEXT
2026年公開映画/2026年に観た映画 目標52/120 7/27
とても親しい、映画のみならず文化を愛する人たちと直接会って話しをする事は非常に楽しいですよね。胸襟を開いて話しが出来ますし、文脈文盲さんに気遣う必要もない、直接的な単語を、割合そのまま使えるので話が早く、同じものを観ていて、同じ文化を知っているだけで、パラフレーズして理解出来るスピードが格段に上がるので、大変に知性を興奮状態にさせられます。
そんな友人たちと話していた時に話題に上った映画が、悪魔のいけにえ、THE TEXAS CHAINSAW MASSACREだったわけで、私もつい先月、映画館で観る事が出来ました。
で、2があり、これが、この監督の評価でいろいろ意味がある、との事。早速観る事にしました。
前作の特筆すべき所はいろいろありますが、最も突き抜けているのは、説明が無い、という事に尽きると思います。斬新なキャラクターも多いですし、ギミックも素晴らしいし、美術も凄いのですが、やはり説明が無い事が最も凄い。
で、その12年後の話しです。
1973年8月18日の午後・・・つまり前作の事についての字幕が流れるのが冒頭です。
良い意味で、凄く1980年代の映画です。そして悪い意味でも、とってもジャンクな時代の80’sな映画・・・
とにかく、80’s。
恐らく、キャスティング、頑張ったんだと思いたいし、もちろん声はかけたと思いますが、前作からの人は1名だけ、です。これが大問題。
そして新たなヒロインというか、まぁ実質主人公なんですけれど、この人の演技が・・・オーバー過ぎる・・・でも80年代の映画って、そう・・・
観ていて最初に連想、思い出したの、グーニーズです・・・スピルバーグ製作ですし、監督はリチャード・ドナーですけれど、そして今だと全然評価が違うんですけれど、正直、中学生だった私からすると、子供騙し、な作品なんですよね・・・
で、でもそういうのが80年代の映画の良い所でもあるんです。
ただ、この「THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE」という作品において、80’s的な雰囲気があっているか?と聞かれたら、まぁ前作の出来栄えを考えると、全く違った作品になってしまっている、という事は言えると思います。
何故なら、説明されない、なんなら本当にあった、映ってしまった出来事、のような生々しさが特徴だったのに、凄く良く言えば80’s、悪く言えばジャンクっぽく見えるし、なんならチープ。
で、私はホラー作品に愛が無いから言葉がキツイかも知れませんが、どうしても、このチープさとかまで愛せる事に理解が及ばない。正直この作品の良さもあるけど、それはかなりの偏愛に近い感覚です。だって前作のクオリティ、どう考えても次作がこれだと、前作を含めて貶める事になるから。しかも監督が同じだと、どうしても全体の評価が下がる事になる。
しかも役者の演技も前作とは比べ物にならない、安っぽさが全面に出て来ていて、それをこそ80’sと言えばその通りなのだが、前作とに繋がりが感じられない、上っ面だけの関係性になってしまう・・・
そして肝は、レザーフェイスの、造形含めて違う人をキャスティングするようでは、厳しいと思います・・・特に前作の義歯の怖さ、そういうディティールの怖さが全くなく、凄く安易なスプラッターに寄ってしまっている様に、見える。
チェーンソーというマシーンの恐ろしさがまるで感じられないし、脚本がダメな気がします。特にレフティの出てくるタイミング全てが、わざとらしい。必然性が無い。
でも監督はOKテイクを出しているわけで、もうそういうモノを楽しむのがホラーファンなのかも。
なんでラジオ局で息の根止めなかったのか?とか全然ワカラナイけれど、そういうのが80’sとも言える・・・
80’s作品が好きな方にオススメします。