2025年10月18日 (土) 09:22
https://www.youtube.com/watch?v=kf2EapeEgyA
ロバート・レッドフォード監督 パラマウント U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 38/101
本当に美男子で、そして最後までカッコ良かったという印象のロバート・レッドフォードさんが亡くなられましたね・・・
追悼として観たかったのはフィル・アルデン・ロビンソン監督「スニーカーズ」なんですけれど、やはり監督作で未見だった有名なこちらを。
本当にカッコイイ美男子。そしてカッコつけてもカッコ悪くならない男。そして、監督作「リバー・ランズ・スルー・イット」ではブラッド・ピットを起用し、さらにジョセフ・ゴードン=レヴィットも起用した監督なわけです。系譜が出来る気がします。
秋のイリノイ州シカゴ。合唱隊の美しい歌声が聞こえる中美しい風景が写されて・・・というのが冒頭です。
見事な映画だと思います。
そして、出来れば何の情報も入れないで見るべき作品。
ネタバレなしの感想ですけれど、凄く良かった。
父をドナルド・サザーランドが、母をメアリー・タイラー・ムーアが、息子をティモシー・ハットンが、それぞれ好演している、家族の物語です。
最初の監督作品に選ぶ脚本じゃない気もしますけれど、それを撮ってしまうの、流石レッドフォード。
家族の物語な上に、かなりビターです。
絵に描かれたような幸せそうに見える家族でも、当たり前ですが、内に秘めた葛藤があるわけです。
その発端が何故なのか?をじわじわ理解する映画です。
私は家族を大変ありがたいもの、とは考えられず、それは大変に恵まれた環境にいる、という事かもしれませんけれど、だからと言って、選んだ覚えはないわけです。そして所謂「アンナ・カレーニナ」の冒頭なわけです。そして、非常に頑強な檻でもあるし、澱が溜まる閉ざされた環境であると思います。
しかしハリウッド映画の世界では、もちろん家族が善きものとして描かれてきた世界。そこに、という映画だと思います。
家族がいる人にオススメします。
しかし、この映画観ると、やはり心理学、そして精神分析医がまさに社会に出てきた時期なんだと思います。
あ、すみません、私、おじさんですけれど、どうしても、Ordinary Peopleって言われると、それはホテルニュー越谷なわけです・・・うん原題で言われると凄く雑味が出てしまうな・・・
2025年10月17日 (金) 09:31
https://www.youtube.com/watch?v=2PEKyl4O6OA
ジェーン・シェーンブルン監督 Fruit Tree A24 吉祥寺アップリンク
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 38/100
おお今年は今までで1番早く100本到達。とは言え晩年なので時間は有効に使わないと。新作も興味あるものだけ追ってると間に合わないかもですが。
評判が良いので、ちょっとだけ期待値上げていきました、でも予告編も観ていない・・・正直青春映画、でもカルト、と聞いて足を運びました。
結論から申し上げると、2025年の新作映画の中ではキムズビデオと並ぶ作品で暫定1位です。
私の感覚では、デビッド・リンチの遺伝子がありブリグズリー・ベア+アンダー・ザ・シルバーレイク+ホースガールを足して混ぜて、割らない作品。しかもポップでキャッチ―。音楽と美術のセンス、恐ろしいくらいマッチしてて、曖昧模糊なのにソリッド。夢であり現実。なのに、難解ではない、と私は思います。だって私たちはもう既にデビッド・リンチを経験しているんですから。何が正解なのか?は分からないし、人によって解釈は違って良いし、監督の目指したものとは違うと思いますけれど、確かに私は受け取った。
そして、何を言ってるのか伝わりにくいけれど、ロッキーと真逆の映画です。後で説明します。ネタバレになりかねないので。でも私には、そういう意味の映画でした。
私の映画の感想はあくまで個人的な感想で、決して批評とかではなく、勝手に私が映画から受け取った私のモノであり、監督の意図とか、意向、目指されたモノとは明らかに違うと思います。評論家の人の話しや、映画監督の個人的な出自や傾倒されている何かなんて、知らなくて良いし、知って調べて、感想が変わる可能性もあるけれど、でも、最初にまっさらに観て受け取ったモノの価値は変わらない気もします。そんな私の感想なんて誰にも意味をなさないのも知ってますが、老人なので何もかもを忘れてしまうので、備忘録として。
感想に入るまでも長くなってしまう・・・
1996年のアメリカ郊外。アスファルトの道路にチョークで描かれている文字や絵が夕暮れ時に蛍光色の、ブラックライトを当てられたような色彩で浮かび上がる1本道をカメラがズームしていくと・・・というのが冒頭です。
ファーストカットの掴みが凄い。ナニコレ?どうやって撮影したの?という不思議で繊細で奇妙なカット。だから引き込まれる。
劇中劇がある1996年の青春映画で、孤独な2名の物語、と言えばウソではないが全然何も伝わらないと思います。
1996年に「ピンク・オペーク(The Pink Opaque)」という番組が放送されていて、この番組は土曜の夜10時30分からの放送なのですが、その予告を主人公であるオーウェン(ジャスティン・スミス)は観ているのですが、12歳のオーウェンの就寝時間は10時であり、番組そのものを観る事が出来ません。
この「ピンク・オペーク」という番組が、とにかく奇妙なんです、そう、まるで「ツイン・ピークス」みたいに。それも第2、3シーズンくらいの感覚。
そして大統領選選挙の投票所となっている中高一貫校(すみません、アメリカの進学の仕組みがワカラナイけど恐らく。ネット調べだと、小学校5年・中学校3年・高校4年みたい)の体育館の片隅で「ピンク・オペーク」の公式書籍を読みふけるマディ(ジャック・ヘイブン)と出会います。
年齢は違えど、孤独である事は間違いないこの2名がこの映画の主人公です。
何故孤独なのか?そして些細なきっかけから友人になったこの2人の繋がりだけでない関係性と、世界との関わり方の話し。
もし、受動的に、なにもかもを説明してくれるエンターテイメントが好きな方には、少し向かない可能性はありますが、そもそも孤独でない人間が何処にいる(槙島聖護)と考えている私からすると、万人に響く可能性がある映画。
音楽、恐らく90年代的のモノも多いけれど、知らない楽曲でしたが、どれも素晴らしく良かったですし、とにかくこの映画にフィットしている。
演者はとにかく上手い。実在感を感じさせるに十分です。それが90年代のテレビ番組だとしても、です。
また、ビデオが重要なアイテムとして出てきますし、映像も観れるのですが、この画面の質感、まさにビデオ。
映画全体の統一感を出しているの、間違いなく美術。とにかく暗い画面が続くのですが、効果的に使われるピンク、このアクセントが効いているし、それもいわゆるバービー的なピンクではなく、もっとダークなピンクなので、映えるんですね。冒頭の、アスファルトの上の夕暮れの最期の一瞬のチョークの色がとにかく美しい。
観た事が無い映画を体験したい方にオススメします。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想なので、未見の方はご遠慮ください。
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月曜ロードショーの映画解説者、荻昌弘さんの大変有名な、映画ロッキーについての言葉
「人生するか、しないかの分かれ道で、するという方を選んだ勇気ある人々」
という有名な解説があります。そういう意味で、ロッキーと真逆、という意味です。だって選ばなかった人の話しだから。
そして人生の選択で、やる方を選んだ人たちが素晴らしいのは事実ですけれど、選べなかった瞬間だって、その人たちにも存在するはず。そして、ほとんどの、ホモサピエンスとして能力の無い私からすると、選ばなかった私としては共感を感じました。常に挑戦し続ける事の偉大さも理解出来るけれど、チャレンジしなかった、その能力の無い場合や、決断できない事も、ある。
オーウェンは、かなり時系列をいじっていますし、なんなら信用ならざる語り手とも言え、画面のこちら側に話しかける瞬間が少なくとも3回はあったと思いますが、とにかく、常に、行動するかしないか?でしない方を選択しています。家族を持ったと画面に語り掛けてはくるものの、本当の所は不明で、その家族は映画内に出演もしない。
オーウェンは保護的な母親と、強権的父親と3人で生活していますけれど、父は15歳の就寝時間は10時15分で(12歳時の10時から15分だけ伸びてるけど・・・)、ピンク・オペークは子供向け、女子向け番組だと考えているようで、そもそも会話がほとんどありません。非常に強権的ですし、母親は亡くなってしまう。しかし、それでも家を出れないし、職場の人間から性的なからかいを受けても、リアクションさえしない。恐らく性自認になにかがある。
オーウェン自身も、恐らく自分が何が好きなのか?すら不明で、世界との関わりを最小限に留めようとしているように見えます。
オーウェンがマディに話しかけたのは、ピンク・オペークの書籍を読んでいたからで、最初はそっけなかったマディも、学校が学校じゃない日は好きという話しかけを自らが行い、関係性が始まります。その上で、うちに泊まりにくれば観れるといい、オーウェンを人間として扱ってくれます。
その後もビデオの貸し出しなど、ピンク・オペークと共に関係性を深めていく。しかし、学校の中でも、常に孤独な2人。
マディもかなりの問題を抱えていて、その逃避先が「ピンク・オペーク」です。テレビ番組の解釈をしながら、次第に現実から離れていくマディ。ついには彼女自身が町から出る決心をし、オーウェンも誘いますが、その時、オーウェンは母親が恐らく抗がん剤治療を行っている為に(頭髪が見えない工夫をしている)母親を置いて出て行けない、変化を選べない状況にあります。
唯一の友人マディの失踪、さらに深い孤独の中にいる8年後、映画館で働きながらも周囲の人とのコミュニケーションは希薄な生活のオーウェンの基に、マディが現れます。
ここから、何が現実で何が妄想なのか?全く不明になって行きます。
感覚的に、私はマディとの再会さえ、オーウェンの個人的妄想の可能性もあると思いますし、2人だけが認識出来ている「ピンク・オペーク」(マディとの決別から後、ピンク・オペークの番組内容そのものが 変化 している)すら、2人の共犯関係妄想「イザベルとタラの精神と地平」のようでもありうる。
そしてさらに30年後・・・映画館も無くなり、総合娯楽施設のような場所で働きながら、子供の誕生日を祝うサービスの中で、オーウェンの絶叫、絶望がほとばしる。
性的自認のカミングアウト、重要な監督のモチーフかも知れないけれど、そういう事を知らないで観た私個人の感想としては、選べなかった、選ばなかった、人の哀しみ、それでも生きている哀しみと解釈しました。と同時に、非常にキツい世界との関係性の在り方を考えてしまった。
喰らってしまいました・・・凄い映画。
追記 いろいろな人の感想を読んで、なるほど、と思ったのが、There is still timeという文章の存在です。確かに、描かれてたし、凄くキャッチ―に画面に出てたし、これが答えなのだと思います。みんな映画ちゃんと見てて、凄い!
2025年10月14日 (火) 09:05
https://www.youtube.com/watch?v=ntTx9AzdkHY
田中絹代監督 新東宝 DVD
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 37/99
友人の方から、是非観た方が良いですよ、とオススメされてはいたものの、サブスクリプションにはどこにもなく、お願いして、DVDお借りしました。いつもありがとうございます。
先の大戦後の日本。復員兵でエリートでもあり、英語とフランス語の読み書きができる真弓礼吉(森雅之)は弟である洋(道三重三)の家で翻訳の仕事をするだけの毎日ですが、駅で誰かを探している姿を弟に目撃され・・・というのが冒頭です。
田中絹代さんは俳優として、数本観ていますが、特に「雨月物語」は印象深いです。ですが、監督業までされているので、是非観たかった。
さらに、監督になるにあたり、成瀬己喜男に師事していて、しかも今作の脚本は木下恵介。かなり万全の構えですし、いやが応にも期待値が上がってしまいましたが、かなり良かった!
まず、原作もあるんですけれど、そして恐らく、ラストは変更されていると思うのですが、このラストの切り方、とてもイイです。何気に「乱れる」を思い起こさせますが、BGMで、ある程度結末は予想出来るようになっています。もちろん解釈は開かれていますけれど。
つまりオープンエンドな作品って、観客を信頼していると思うのです。伏線なり、情報なりを整理し、想像する事が出来るようにしておけば、全てを明かさずとも、観客には十分に伝わると思います。この作品もまさに、で、こうであって欲しい、明確な結末が知りたい、と思っていたとしても、映画が終われば終わりなのではなく、それぞれの想像の中で、映画の登場人物たちは動き生活し、その後もいると思うのです。童話などの、幸せに暮らしましたとさ、の後も、そのしあわせが何処まで持続していたのか?は観た人の数だけ存在すると思います。たしか吉野朔美名作「恋愛的瞬間」でもこの話題があったな。
一作目からこの完成度はなかなかだと思います。
キャストも凄く良かった。特に、宇野重吉の立ち位置は素晴らしかった。今までは「金感触」の、あの宇野重吉さんのイメージが強かったのですが、こんなに若いと見分けがつかなかったです。キャラクターも秀逸、そして、主人公の人柄にも奥域を感じさせるキャラクターになっていると思います。
さらに、弟を演じられている道三重三さん、この方がちょっと調べたんですけれど、全然分からない方なんですね・・・今後も調べていきたい。で、この弟の洋というキャラクターもイイ。割合器用でちゃっかりもしているし、どうやらやり手。仕事にも遊びにも、それなりの流儀があるし、筋は通すタイプの人。でも、兄を立てたい気持ちもある。
この宇野重吉と弟である洋が、兄であり主人公を慕う気持ちの根底は、映画内ではそれほど描かれないけれど、十分に感じさせる演出が素晴らしい。映画内だけで考えると、主人公である兄の取る行動は、まぁ今でいう中二病みたいなものです。そして、それをロマンティシズムと言った時代もありました。確かにある種のロマンでもある。
で、森さん、浮雲でもそうなんですけれど、アンニュイな顔立ちは凄く良いと思いますし、現実的な復員兵の中でもインテリであり、且つ、ある種の夢を持つロマンチストですから、その言動には当時の、いわゆる男性の、もっと言うと敗戦国の兵士であったという事での自尊心の持ち方の葛藤もリアルで良かったです。でも、まぁ恐らくすべての男性がロマンチスト気味で、中二病気味で、意固地なんでしょうね。でも結構ダメな男でもあると思いますよ・・・
あと監督田中絹代も結構難しい役で出演もされてますし、いい味です。ちょっと強い気もするけど、それくらいのインパクトも必要な場面。
と同時に、笠智衆も、イイ。
ここで、脚本もそうなんですけれど、原作はどうなのか?不明ですが、ちゃんと、時代的な立ち位置も入れてくる辺り、脚本の木下恵介の強みも感じさせます。
敗戦後の日本の状況で生きていく人の、それでも、生きていかなければならなかった人の、ある種階層もあるでしょうし、そこへの偏見もあるのを、宇野重吉がタクシー内で言うある有名な言葉、これは、敗戦国で、まぁ無条件降伏をするに至った自分の国の国民にも等しく罪がある事を示してもいて、ここも、普通の映画なら避けて通るし、なんなら主人公である兄のセリフが最も当時の人の気持ちを代弁している訳で、わざわざこのセリフを入れている以上、確信犯だと思いますし、だからこそ、価値は高いと思います。避けて通らなかった、そしてそこには、だからこそ生活の為に行った行為そのものを、憐れむ気持ちがあると思います。
これは日記文学で永井荷風著「断腸亭日乗」の1945年9月28日の引用ですが
『余は別に世のいはゆる愛国者といふ者にもあらず、また英米崇拝者にもあらず。惟虐げられる者を見て悲しむものなり。強者を抑へ弱者を救けたき心を禁ずること能ざるものたるに過ぎざるのみ。』
これを映画のテーマにしていて、でも恋文。
永井荷風はそれ以前の段階、つまり戦前に莫大な所得を得ていて、それなりの生活水準に身を置ける、ある種の特権階級。そして英国や米国で暮らしたり、働いていた経験を持ち、喋れるし知見がある人の、冷徹な観察の上での日記に対して、宇野重吉のセリフもそうですが、一市民の、市井の人の苦難に見舞われた当時の人から立ち上がる感覚が、それでも近しい部分にあった事のある種の証明のような映画でした。本当に素晴らしい。
しかも当たり前ですが、恋愛劇です。
凄く難しい事を両立させていると思います。
だからこそ、生活を描いてもいる。
当時の東京、渋谷(しかもハチ公!)、新宿、新橋辺り、かなり克明に見えます。資料としても価値が高い。
傑作。
何かこの映画を基に着想を得て書かれたのがガルシア・マルケスの「コレラの時代の愛」です、って言われたら、多分信じてたな、私。もちろん私の妄想です。
映画が好きな方にオススメします。
2025年10月11日 (土) 09:05
https://www.youtube.com/watch?v=Xy4bziLT-_g
岩井澤健治監督 ポニーキャニオン 吉祥寺オデヲン
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 37/98
あの「音楽」という映画をほとんど1人で完成させた、ロトスコープの使い手の岩井澤監督が、「チ。ー地球の運動についてー」と「ようこそFACT(東京S区第二支部)へ」という傑作漫画の魚豊さんのデビュー作「ひゃくえむ。」を映画化!
という事で、ハードル上がりますよね。でも、原作未読です。
個人的な結論としては、非常に興奮しました、凄かった。
100m走を描いた作品なんですけれど、そして、という事はどうしても「スプリンター」小山ゆう著という名作漫画もあるんですけれど、陸上競技についていろいろ知れる話しなのかと思いきや、才能と天才、の話しでした。
小学生で非常に才能あふれる走りがとても上手なトガシ(松坂桃李)は、走る事が逃避だという小宮(染谷将太)と出会い・・・というのが冒頭です。
小学校で1番、なんなら全国の小学生の中で1番早いトガシは、将来を期待されているのですが、単純に走る才能、もちろん努力もしているけれど、そもそも才能があるので、無自覚に早いです。
また転校生の小宮は走る事が逃避だと断言していますけれど、同じように走る事(逃避)に憑りつかれています。
この2名のそれぞれのアプローチを描いた作品です。
つまり「蜜蜂と遠雷」と凄く似ているテーマを扱った作品。ですが、漫画作品なのに、言葉の強さが、非常に印象的。パンチライン、名言が異常な頻度で繰り出され、しかも納得度が高いです。とてつもないレベルで繰り出されてきます。
そこに演者の、声の力、体重が乗ってくる感覚があります。特に、松坂さんは「蜜蜂と遠雷」に努力型の天才、として出演もされていましたが、今回は天賦の才の持ち主。無自覚に早い事で、覚悟が無くても踏み込める立場にいるからこそ、世界が広がると、井の中の蛙感を味わう事になります・・・かなりキツイ。
小宮は現実からの逃避を目的として走り続けています。しかし走りそのものは稚拙。だが、走る事に非常に強い想いがある。執着と呼べるくらいに。
この才能型と努力型、しかも、その上で、覚悟が無い才能と、覚悟のある努力、という掛け算があり、その他の才能も、結構出てきます。
才能型の日本クラス、努力型の大器晩成タイプ、刹那系のタイプ、様々ですが、そこにある意味人生単位の時間、情熱、考え、覚悟が乗ってめちゃくちゃに重い。なのに10秒くらいで終わってしまう。
名言はネタバレになりかねないので避けますけれど、言葉に力がめちゃくちゃにありますし、それを、俳優、そして声の俳優が出す説得力まで重ねられてて、非常にエモーショナルです。
しかも、ロトスコープ、現実の中に、アニメーション的、漫画的、人物が動く。虚構と現実の境目が微妙になる、ここも凄くエモーショナル。
結局の所、アニメーションの何が凄いのか?と問われたら、それは動き、なのではないか?思います。アニメーションとは1秒24コマの絵が少しづつ動いていくモノですが、その動きの、ある種のディフォルメ、なんならトレースして自分も動きたくさせる、真似してみたくなる、それ、であると思います。カリオストロの城の序盤中の序盤の、車止めの上をぴょんぴょんと走り抜ける動き、上半身は全く動かずに、足だけが動く、その動きそのものが心地よく見えるんだと思うのです。もちろんディフォルメされているのに、真似したくなる。
そういう意味で、ひゃくえむ。の題材である100m走、とてもアニメーション向けな作品。実写では出来ない、動きの面白さ。演出は凄く見た事ある新鮮味は無いものの、ロトスコープの面白味は大変感じられる作品。
その上で、言葉、音楽が使える映画の面白さもあります。漫画が、映画に、なっている。
1コだけ、序盤に出てくる、小宮くんの、小学生の口から放たれる、ネガティブ方向にぶっ飛んだセリフ「現実よりも辛い事をすると現実がぼやける」が本当に衝撃的。
走る、というホモサピエンスの単純な行動に、意味を持たせたり、競技にした結果、そこに憑りつかれた人たちの、軌跡に興味のある人にオススメします。
2025年10月10日 (金) 09:04
https://www.youtube.com/watch?v=iHd7eWUXuLU&t=13s
亀山陽平監督 シンエイ(株) YoutubeとU-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 34/95
タイトルは凄く馬鹿みたいです。ですが、素晴らしい作品でした。
3Dアニメーションですが、それほど絵柄に凝ったものではありません。また、特に主義主張がある作品でもありません。基本、ノリだけで進みます。
1番良いのは、センス。次いでテンポ。そしてキャラクターです。この3つで全ての魅力を出しています、凄い!
1話3分のアニメーションで12話、40分ほどの作品ですが、本当に、次が待ち遠しい体験でした。すべてがオリジナル!志が高いと言わざるを得ない。
どのキャラクターも魅力的。そして、どうやってこれ声あてたんだろう、と思いきや、なんとプレスコでした、納得。
やはりテンポをキープしたり緩急や間を作るのにはアフレコよりもプレスコですね。
何度も繰り返し見てしまう中毒性の高い作品、過度の摂取は控えましょう、とオススメすると同時に注意喚起したくなる作品。
80’あのジャンクの時代こそノスタルジー的に光り輝く、という事が理解出来る方に、徳にオススメします。
しかし、ナンシー関の「ヤンキーとファンシー」は本当に言いえて妙。