井の頭歯科

「未知への飛行/ファイル・セイフ」を観ました     Fail Safe

2025年12月2日 (火) 08:53
https://www.youtube.com/watch?v=1j-cEGvPqgQ
 
シドニー・ルメット監督     コロンビア     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   42/109
ハウス・オブ・ダイナマイトを観たので、BLACKHOLEを観たのですが、その中で類似作品の中で言及されていて、知らなかった作品なのと、シドニー・ルメット作品だったので観たのですが・・・
傑作。全人類が観た方が良い作品としてオススメ出来る恐怖の映画。というか、こういう作品こそホラー映画なんじゃないだろうか・・・ラストの字幕を付けている所なんか、まるでフレデリック・ワイズマン監督「チチカット・フォーリーズ」みたい・・・もちろんチチカット・フォーリーズの字幕の方がずっと恐ろしいしショッキングなんだけれど、まごうことなきホラー映画。
ハウス・オブ・ダイナマイトよりもずっとシビア。そして、同様に、アメリカ大統領が肝の据わった善き人なんだが、現実を考えると、本当に恐ろしい・・・グロテシェル教授が大統領なのが現在なわけで・・・
闘牛士と牛が戦っているのだが、顔は見えない。しかし観客の1人であるブラック将軍は緊張に苛まれ、それが夢であると同時に、急に目が覚める。何度も観る夢で・・・というのが冒頭です。
もちろん、同じ事が起こるとは思えないのですが、絶対に起こらないとは言えない現状を描いているとしたら、ハウス・オブ・ダイナマイトよりも、喰らう作品。
大統領の決断、何というか、覚悟の話しで、罪の無い人を巻き込むのか?について、議論が分かれるでしょうけれど、私は断然支持してしまいます。つまり、敵だろうが味方だろうが、システムのせいだろうが、故障だろうが、責任を負う、というのは、そして加害の責任を負うというのは、そういう事だと思いますし、その後に、大統領として、もちろん責任を負う事になります。
まず、組織であり軍の責任を負い、相手と交わした約束の責任を負い、最後の作戦を指示した責任を負う・・・めっちゃ普通にやりたくない事をやる。これが良い大統領なんじゃないかな?そして映画内ではみんな良い大統領だけれど、現実はさらに先に行ってる気がします・・・これが一番怖い。
核の時代を生きているホモサピエンスに、オススメします。

「画家ボナール ピエールとマルト」を観ました     Bonnard, Pierre et Marthe

2025年11月28日 (金) 08:58
通常運転に戻りますので、少し観た順番前後します・・・
仲代達矢さんのご冥福をお祈り致します。
マルタン・プロヴォ監督     オンリー・ハーツ     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   42/108
ピエール・ボナールは2018年くらいに新国立で観ていますけれど、猫が凄く特徴的で、覚えていましたので、観て見たくなりました。
1893年のパリ。モデルを前に壁に貼り付けた紙に絵を描く画家ピエール・ボナールは・・・というのが冒頭です。
なるほど・・・
画家にはよくモチーフとかミューズとか、引き合いに出されますし、それが男性だった場合、まぁまぁの確率で、ダメ人間なんですけれど、思っていたよりも酷かったです・・・
あ、そういう意味で酷くない画家、作家、音楽家、とか居ないのかも。とりあえず男性という生き物がそうなんだと思います。多分違う意味で女性でもそういう部分あるんでしょうね。
演者さんたちは凄く自然で良いのですが、相変わらず、映像倫理機構さんが、独自の猥褻基準を押し付けてくるので、まぁ仕方ないけど、卑猥と思う人が卑猥なのであって、というのももう飽きてきました、私さえ。
ただ、このマルテという人物も、凄く、お近づきになりたくない人物像です・・・
男性でそれなりに成功してお金を得た人は、まぁ浮気もするし(多分複数の場合も多い)、それが芸術の場合モチーフとかミューズとかになるんでしょうけれど、倫理的にはう~んという気持ちもしますし、このボナールさんの場合は契約も結んでないので、そういうのもアリとは思うのですが、3人の関係は本当に分からないですね。
それに恐らく女性でも、権力なり金なりを得た人は、恐らく浮気するんじゃないかな?よく分からないけれど、相手を飽きるのが人間ですから。
とはいえ、絵は好きなんですよね。
ピエール・ボナールの絵に興味のある方にオススメします。

「吶喊」を観ました

2025年11月26日 (水) 09:25
https://www.youtube.com/watch?v=HQRuUHi8VOU
岡本喜八監督     ATG    U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   43/122
追悼・仲代達矢 10
「用心棒」の黒沢明監督、「女が階段をあがる時」の成瀬己喜男監督、「切腹」の小林正樹監督、「炎上」の市川崑監督、「ONIMASA」の五社英雄監督、「永遠の人」の木下恵介監督、「白と黒」の堀川弘道監督、「金環蝕」の山本薩夫監督、その他「野獣暁に死す」のトニーノ・チェルヴィ監督ではマカロニウェスタン、「お吟さま」の田中絹代監督で悲恋モノ、他の監督も様々いらっしゃいます。が、特別、仲代達矢さんの魅力が光る監督あげるのであれば、私は最も輝いているのは岡本喜八監督と組んでいる時だと思います。個人的には最も相性が良い監督です。
そして、巨匠と言われる監督たちの見せる仲代達矢は、それぞれ魅力が違うけれど、その監督が持つ仲代達矢のイメージに近い役を演じられています。それはどれも素晴らしく、確かに仲代達矢さんの魅力のひとつです。ですが、もっと幅広く、もっと意外性があって、その上納得させる、しかも本人も自覚していた面、あだ名をつけた岡本喜八作品が最も輝いて見えますし、他のどの監督とも被らないです。
特に「殺人狂時代」は今の所のベスト作品ですけれど、もう既に何度も観ているので、追悼で一区切りの10本目は「吶喊」で。
炉端に座る老婆が・・・というのが冒頭です。
いつもの、というかよりはっちゃけている岡本喜八監督作品です。
主演が奥州の貧乏百姓で向こう見ずで欲望に真っすぐな千太(伊藤敏孝)と、薩摩出身の密偵っちゃっかり者で先読みの万次郎(岡田裕介)です。奥州訛りと薩摩弁の会話だけで面白く、コンビと言えども単純な結びつきや固い絆などではなく、それぞれが独立した個人でありながら要所要所で結託出来る、そんなバディです。
時代は慶応4年ですから幕末の末期も末期。奥州へ官軍が攻め上ってくる時期です。
脚本も岡本喜八監督自身が書かれているので、恐らく、ですけれど、まぁ明治維新って、確かに凄い事ですし、外様や虐げられた朝廷の一部の積年の恨みを晴らしたイベントとも言えますけれど、結局頭がすげ変わっただけなのでは?とも言えるわけ(手塚治虫先生の「陽だまりの樹」もそうでしたね)で、メタ構造的な視点を感じます。そして岡本喜八監督はそういう人だと思います。そもそもホモサピエンスがそういう生き物とも言える。
だから主人公も非常に下層出身者ですし、時代設定や主人公含むキャラクターたちの心情にも沿いつつ、理屈抜きに、楽しくエンターテイメントしても笑えるように、計算されていると思います。
侍の理想像としては高橋悦史さんがめちゃくちゃにかっこよく、ヒーローなんですけれど、主人公じゃない。うん。
仲代達矢さんは1シーンの出演ですが、まぁ土方の土着感、凄くいいですし、下層出身者が侍になった人、意識的になろうとしてなった人。この部分は三谷幸喜さんの大河ドラマ「新選組!」でも武士になりたくてなった人として近藤勇も描かれてましたけれど、その部分が出ています。
べらんめぇな口調で、江戸っ子的ですけれど、そこに薩摩弁やら奥州訛りなんかが混じって会話が続くの、本当に面白いです。
ただ、楽しいだけのエンターテイメントに終わらせないのが岡本喜八監督。
戦争の無残さも結構描かれていますし、錦の御旗、も意味についても考えさせられる描写あります(「独立愚連隊、西へ」の軍旗の扱いが同じ)。
その上、組織論的に、末端で戦う人に降りかかる、現場の事よりも上の事でしか判断しない組織のある種の悲惨な部分も描かれていていいです。
で、その上での、物語を壊すかのような、あの行進、流石です。
クライマックスも、え~という迫力と、え~という行為の掛け合わせで、ホモサピエンスの動物性も感じられる。
この途中、女性が一回転んでて、その直後の爆発なんで、アレすっごく危険な事だったんじゃないか?と思ったりしました。
で、冒頭の老婆が、まさかの坂本九さん!驚愕!全然分からなかった!!!
主演の2名のバカさ加減とバディ感も良かったですし、流石岡本喜八作品。
幕末が好きな方にオススメします。

「お吟さま」を観ました

2025年11月25日 (火) 09:49
https://www.youtube.com/watch?v=dQN-e8K0wzg
田中絹代監督    松竹     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   43/121
追悼・仲代達矢 9
本当は山本薩男監督の不毛地帯も観たいのですが、何処にも無くて。仲代さんと一緒に仕事をした監督の中では、あとは山本薩男監督は絶対外せない人なんですけれど、それは「金環触」を観ていただくとして、相性も素晴らしく、いくつかの作品で観られます。
でも、女性の監督の、特に田中絹代監督を一緒に仕事をしていたのは知らなかったので。田中絹代監督作品「恋文」は本当に素晴らしかったですし。
天正15年1578年豊臣秀吉の薩摩の島津氏への侵攻が続く中・・・というのが冒頭です。
主人公は茶人・千利休の娘・吟(有馬稲子)です。彼女はキリシタンの信徒(?)と思われますが、この人物が実在しているのか?ちょっと微妙な感じです。ですが、史実のイベント的な時系列はおおよそ合っていると思われます。
そして、吟の想い人が高山右近(仲代達矢)です。そして高山はこの天正15年頃は既に既婚であり、キリシタン大名でもある為に、既に左遷されそうな感じです。
という状況で、吟の結婚の話しが持ち上がるのですが、という悲恋ものです。
田中絹江監督はなかなか細やかな監督、しかも成瀬己喜男を師匠に持っていますから、女性の描き方も、知っていると思いますし、決して悪くない。処女作「恋文」はそれこそ非常に整った、名作と言える。リアルと実情に対して、かなり拘りのある演出と意義を出しています。
ですが、本作はどちらかというと、悲恋、に焦点を当てているので、大変女性の感性に沿った演出、効果になっているので、入り込める人には大変心地よく、そうでないと少し距離を感じます。
ですが、この中で、仲代達矢が尋常じゃなく、まばたきしてます。これまで見てきた映画の中では恐らく、1本に10回もしてないまばたきを、すくなくとも20回くらいはしている。つまり、やはりまばたきをしない演技が必要と判断すればまばたきをしない演技が出来る役者である、という事の証明になっています。
そして観ていて思ったのは、様式美に溢れていて、その様式美の意味も分からない事だらけだ、という事です。
所作一つとっても、靴、じゃない草履を脱ぐにしても、めちゃくちゃに細かな所作、手順があり、作法がある。その中でも最もその意義と動作や立ち振る舞い含むマナーが細かく決まっているのが、茶道です。
この動作が美しくないといけないのですが、皆一様に美しく観れました。もちろん私は茶道について全くの無知蒙昧なので、違うのかも知れませんけれど、知識のない私でも美しく見えました。
それと、当時のそもそも生きてる規範みたいなものが、とは言えキリスト教もなんですけれど、規則規範ルールモラル、あらゆるものに雁字搦めで、大変に厳しい世界に見えました。特に中でも女性は、もうこれ以上は無理、という所で必死に生きていると感じさせるに十分でした・・・
このルール、モラル、規範、規則など、生まれる前に決まっていたモノ、事、に対する順応性、果たして良い事なのでしょうか?これを変えない、順守する、というのと保守、というのは別ですし(保守:伝統、習慣、制度、考え方をむやみに変えないで少しづつ現代に即したモノに変える と個人的には解釈しています)、絶対に何も変えたくない、というのは封建的とか回顧主義とかだと思うのですが、そもそも技術によって常識は変わってしまいますし、何も変えない事など出来ません。
この規範の中で生きるとなると、2025年の現代の 常識 的に考えると非常に窮屈で差別的で厳しい世界に見えますけれど、当時にひとにとっては無論常識ですし、そこから出る事、規範を破る事の意味は大きいんでしょうね。
私は人権があるフランス革命よりも後の世界の方がいいです。
まばたきをする仲代さんが観たい人、女性の戦国末期の生き方を観たい人にオススメ致します。

「白と黒」を観ました

2025年11月22日 (土) 09:14
堀川弘道監督     東宝     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   43/120
追悼・仲代達矢 8
堀川監督の仲代さんも確認したい。何と言っても黒澤明監督の助監督ですし、黒沢作品に関わってこられた方。
浜野(仲代達矢)は男妾と女(淡島千景)になじられた衝動で・・・というのが冒頭です。
アバン、タイトルが出る前の時間と伏線と緊張感とえっ!という驚きも入ったこの時間帯の演出、流石です。無駄な時間がほぼ無い秀逸さ。堀川監督の腕は確かですね、とか言いつつ私の立場でこんな事言うのはおこがましいですね・・・素晴らしい技術を持った監督。
昭和38年1月17日の事件です、ちょうど公開の年で、つまり同時代を描いています。
あと、音楽が素晴らしいし、想像上の、火葬場、上手い。
井川比佐志の演技も素晴らしかった。
特筆すべきは、酔いの演技です。ある場面で、東野英治郎、小林桂樹、仲代達矢、という顔合わせで、泥酔状態での議論があるんですけれど、これが凄く自然。本当に酔っぱらっているように、見えます。ろれつの回らなさ加減が絶妙。ギリギリ会話になる感覚の上手さはちょっとどうやったのか?分からないくらいです。
そして脚本、少し無理があるような部分もなくはないけれど、かなり練られていて、一見、倒叙式、刑事コロンボ風ですけれど、もちろん一味二味違っていて、工夫されています。
で、結局1番怖いの、誰だと思いますか?という質問をしてみたいです。私の答えは、まぁご想像にお任せしますけれど、やはり、あの人です。
小林桂樹さんとの絡みはまさに演技合戦でスリルもあり、イイです。
堀川監督の仲代さんを観て見たい方にオススメします。
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