井の頭歯科

「Saltburn」を観ました

2024年1月30日 (火) 09:38

 

エメラルド・フェネル監督    MGM     Amazonprime
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は0/7
あの名作「Promising Young Woman」の監督エメラルド・フェネルの新作がAmazonprimeに配信で観れるなんて!劇場で観たいのに!という気持ちを抑えて、観ました・・・えっと、一気に観るべき作品なんですけれど、すみません、3回も視聴を止め、数日開けないと、再び視聴する勇気が出なかったです・・・結構衝撃的。
オリバー(バリー・キョウガン という表記、読み方がワカラナイのでBarry Keoghan)はオックスフォード大学に入学するのですが、全く大学生活になじめません・・・そんなある日、自転車で・・・というのが冒頭です。
完全に円環構造作品ですし、信頼出来ない語り手作品とも言えます。
とにかく、コテンラジオでも学びましたが、イギリスは階級社会で、緩やかな革命の為に貴族、が残っています。これは王様とかキングとかではなく、貴族が存在する珍しい社会。そして階級社会の習わしが今でも存在するわけです。
その完全に貴族の社会である人間と、一般の人間の関係性モノとも言えます。
それにしても、凄く、ああ、私はこういうのが嫌なんだ、と思える描写が3回あり、耐えられなくなって視聴を止める、という映画館ではアリエナイ、配信ならではの行為をしてしまいました・・・基本的に止めたくないのですが、耐えられなかったです・・・
そして、そういう自分の中の生理的嫌悪について考えさせられた作品。
ちょっと、どういう作品なのか?よく分からないのですが、結構ショッキングな作品。
役者さんはどなたも凄いのですが、とにかく、Barry Keoghanが凄すぎる。怪演、と言えると思いますけれど、凄く自然。
それと、Jacob Elordi初めて観ましたが、佇まいが紳士的で、どう遊んでいようとも、紳士に見えるって結構凄いと思います。まさに上流階級の人に見える。
あと、Rosamund Pikeがヤバい。本当になんというか、ヤバい。
あ、みんな大好きマクラビン!が映画内であります!!ココ重要。
不思議な映画、未体験を求めている人に、オススメします。
ネタバレあり、としては、やはり、3回、個人的に止めてしまう場面があって・・・
1つ目は、風呂場のシーン・・・キモチワルイ!と思ってしまったし、結構長い・・・無理・・・でした・・・
2つ目は、吸血鬼シーン・・・これも、無理・・・すんげぇキモチワルイ・・・
3つ目は、ファーリーへのベッドの上での脅迫シーンです・・・すげぇ意味が分からない・・・
アレ、どれも性的な場面なんですけれど、大丈夫か私・・・
まず、1つ目は汚い、という事が先に立って、それがロマンティシズムに満ちた意味があるとしても、ダメだろそれは、と思ってしまった・・・冷静になれば、あり得るかも知れないけれど、なんか違う感覚があります・・・
2つ目も同じで、何ていうか、やはり汚い、という事に尽きると思います・・・
3つ目が1番意味不明で・・・これは、何というか、男性的な感覚で言うと、それはない、と理解しているからです。まぁファーリーがバイセクシュアルだったら、と50歩ほど譲っても、結局、脅迫されている場面で性的興奮が起こるのか?しかも男性で?で意味不明になってしまいました・・・さすがに、ちょっとこれは女性の想像だとしても、浅くないか?と思うのです。あとで言及しますけれど、このシーンを入れるミスリードに意味や伏線を感じないのです。ただセンセーショナルに映るから、と言う意味しか見いだせなかった・・・
 
オリ―は信用できない語り手である事は、まず確認しておきたい。彼の妄想なのか、演出なのか、現実なのか、ハッキリしません。ですが、どの場合だったとしても、ちょっとした齟齬があります。全部が現実だったら、わざわざ映画の冒頭でフェリックスの事が好きだった、何て言う必要が無いミスリードだと思いますし、ラストではちょろかった、とも発言していて整合性が取れない。
だから、当然オリ―の想像や演出も可能性があるし、ラストのちょろかった、には短くはあるけれど、殺意を立証(と言い切りたいけれど、お姉さんはただ剃刀を置いておいただけだし、この辺も複雑とも言えるけれど、判然としない)出来るか?は微妙ですけれど、オリ―の行動の先に、ハッキリ人が亡くなっているわけで、しっかり遺産の相続も行われているし、利害関係もある。
にも拘らず、最終的にフェリックスに懇願する場面もあるし、どれがホントのオリ―なのか、分からない作りになっていると思いました。
ま、サイコパスの心情は分からなくてもいいんだけれど。
でも、映画内で男性同士で。脅迫を受けている場面で、性的な興奮が起こる、と思ってるのってちょっとBLの読み過ぎなんじゃないのか?とは思うけれど、今までの映画の中で、主人公の男性に都合よく、女性が性的な魅力をアピールしてくる(特に理由もなく)場面なんて無限に近くあったわけで、まぁしょうがないか、とも思うし、複雑。
もう1点、何というのか知らないけれど、オリ―の実家に行くシーン、あれなんか凄く恥ずかしいですね・・・嘘がバレるときの恐ろしさ、ある。
サイコパスにしては、あまりに両親に組み敷かれ過ぎな描写も、ちょっとアリエナイし、実家に行くのも、どう考えても良い面が(家の乗っ取るとか、フェリックスの好意を継続させるためにも)存在しないのに、ただ従っていくのも、オリ―・サイコパスっぽくない。
なんか、もう少し「Promising Young Woman」の時は解析度が高かったし、精緻に組み上げられている感覚があったけれど、これは男性主人公だからなのか?ちょっと解析度も低いし、脚本としてあまり上手くないと思う。
と、イヤな面も挙げましたが、それだけじゃなく、良い面もあって。
まず、この城みたいな屋敷を舞台にして、凄く色彩豊かでリッチな絵になってるの最高に良かったですし、音楽も、その荘厳さ、ポップさ、の両方に秀でていて、かなり好感持ちました。
石を川に投げる儀式も良かったし、キャスティング最高ですよね?今の2024年でオリ―役はこの人しかいないし、当て書きなのかと思うくらいです。しかしBarry Keoghanヤバいですね・・・
そりゃイギリスだとパンクも生まれますね。
ただ、ラストシーンのぼかしはいらなかったんじゃないかな?と思います。でも今回は監督が入れているので、それは尊重したい。

「リバー、流れないでよ」を観ました

2024年1月26日 (金) 09:37

山口淳太監督     トリウッド     U-NEXT
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は0/6
2023年の作品ですが、なんなら本場トリウッドに観に行こうと思いつつ、行けなかった、という作品・・・U-NEXTさんに上がっていて、早速観る事にしました。
日本的神社(お寺かも・・・すみません、違いが分からない・・・)の鳥居が多く立ち並ぶ地域の冬、熱心にお参りする女性が居て・・・というのが冒頭です。
なんだこれ?という事なんですけれど、僅か2分のタイムループが起こる事になったとある旅館(?)というか、凄く日本的家屋の中での、女将さんや中居さんや料理人や宿泊客やただの食事を楽しみに来た人、とかが織り成すコメディです。
人はタイムリープする時にどういった行動を取るのか?についてもいろいろ考えさせられますし、とはいえ、結構気になるSF的な要素を、かなり取っ払て、凄く1点に絞って考えられたストーリィです。
なので、とても面白く、あまりどういうことなのか?が分からなくても楽しめる作品に仕上がっています。
中でも驚いたのが、本上まなみさんが出演されていた事、そして、ある種の年齢を重ねても美しくいられる感じを出していて、こういう人がいると嬉しいですね。決して若く見える、という事ではなく、それなりの年齢での美しさ、と言うモノがある事を教えてくれますし、なおかつ、上品さを持っている事を逆手に取ったギャグも入れてくれていて良かったです。
それに、近藤芳正さん、私にとっては演劇版「笑いの大学」の劇作家椿役の人!です。最高の舞台と脚本が三谷幸喜さんなんですけれど、今までで1番面白かった舞台です。映画にもなってるし、しかも役所広司が出演しているのに、映画版は全然笑えないので、やはり生物の勢い大きいですね。
その他、役者さんは皆さん良かったですけれど、これは脚本の勝利な作品です。
ただ、多分何度もは繰り返してみるほど、タイムループものとしての作品の強度は無かったと個人的には感じました。

「歩いても歩いても」を観ました

2024年1月23日 (火) 09:21

是枝裕和監督     シネカノン     U-NEXT

2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は0/4

コテンラジオを聞いているのですが、サブスピーカーのmuroさん(室越龍之介さん)がコテンラジオから退社してしまい、お話しが聞けなくなってしまってから、時間が経過してしまいました・・・それに昨年の秋からアフター6ジャンクションも時間も回数も短くなり、さらに、いんよう、という科学コミュニケーションのポッドキャストも終了してしまったので、新たに聴く番組を探していたのですが、muroさんの参加されてる番組を見つけて、早速聞いています。

この番組の中で、映画の感想を話し合う事があるのですが、キラーワードとして「新海誠が好きな俺は殺した」というのが、本当に面白いです。

で、その番組の中での映画のお題が、この作品で、是枝監督作品なので、未見だったので観ました。

言語学オタクの水野さんに言わせると、最初に結論を言え、という事だと思いますが・・・結論から言うと、映画を観ました、です。

40代の良多(阿部寛)は実家に向かっています。妻(夏川結衣)とその連れ子と一緒です。姉(YOU)も実家に帰ってきていますが・・・というのが冒頭です。

凄くありふれたある2日間を描いた家族のドラマです。ですが、流石是枝監督作品でして、大変機微が描かれています。

良多の父(原田芳雄)は開業医でその事にプライドを持ち、母(樹木希林)は専業主婦、そして姉(YOU)が居るのですが、姉の上に兄が居て、その兄がかなり前に亡くなっている事が徐々に分かってきます。

父、母、出来の良い兄、姉、そして主人公の良多の関係性、そしてそれぞれの思惑があり、凄く複雑な緊張関係があるのですが、それが嫌が応にも臨場感を持って、受け手にも感じられるのです。

そもそも橇の合わない父、過干渉の母という構図は、いわゆる昭和のドラマでは、イヤという程見せられてきた構図で、もはや役割と切っても切り離せないぐらいだと思うのですが、この映画では、そんな一面的なキャラクターではなく、実際に、そうであろうない交ぜ感があるのです。だからこそリアルの感じられるし、緊張感を醸し出せていると思います。

家業を継がせたかった父、出来の悪い弟、張り合いのない母、二世帯で暮らしたい姉、出来れば距離を取りたいが二世帯にはしたい姉の夫、など、様々な思惑が、全く言葉でなく、説明されますし理解出来るのです。

それと、非常に小津っぽい構図、も家族ドラマですし、カマクラでは無いモノの、恐らく湘南か逗子方面である事が伺えますので、何となく意識あると思いました。

さらに良かったのがゴンチチの音楽で、これが夏の雰囲気に最高に合っています。

演者さんも、かなり良いです。

阿部博さん、あまり映画では見かけた事が無いのですが、面白い演技をされる方、多分2枚目も3枚目も出来る人だと思いました。それに、何処か愛嬌があります。大泉洋さんほどではないにしろ、愛嬌のある人はホントに天性のモノな気がしますね。ある人にはあるし、無い人には無いし、無い人がある人の真似をすると、真似してるな、と気付かされる残酷さもあり、後天的にはなかなか見につかないセンスだと思います。

それと初めて観たと思いますが夏川結衣さんの演技はかなり良かったと思います、実際はかなり難しい役どころです。何しろ昭和のドラマなら、ずっと耐え忍ぶ感じになるんでしょうけれど、平成や令和だとそうはいかないです。ある程度義母に沿いつつも、距離感を取り、しかも夫にもそれなりの関係性を作らなければなりません。今だともっと強く主張するのでしょうけれど。ただ、どんな人も理解出来ると思いますが婚姻関係のある他方の血族の家に泊まる、という緊張感はかなりのモノだと思います。

しかもその義母を樹木希林が演じているのですが、主役はこの人なんじゃないかな?と思うくらいです。1番セリフが多く、1番立場が変化し、1番恐ろしいとも言える。

それを、樹木希林が自然にいじわるをするのが、そう、そういう人いる!っと思わせてくれます。

また、是枝監督作品の子役の聡明さ顔の系列に符合する連れ子の演技も良かったです。

あ、小川沙良監督作品「BEATOPIA」のタイトルだったか、のカメラが上がっていくのは、この映画のエンディング近くのカメラへのオマージュだったんだ、と気づけたのも良かった。もちろん小川監督さんに聞いたわけじゃないけれど。

どうせ死ぬ3人のポッドキャストを聞いている人に、オススメします。

「100分DE名著 自省録 他者との共生はいかに可能か マルクス・アウレリウス」を読みました

2024年1月19日 (金) 09:28
岸見一郎著
映画「カード・カウンター」で主演のオスカー・アイザック扮するウィリアム・テルが刑務所で愛読していた描写があって気になっていたのですが、岩波文庫が結構な分厚さで、少々ひるんでしまい、こちらを先にと思って読みました。
かなり好ましい、私も非常に感銘を受ける言葉の数々です。
分かりやすく例えると、メメント・モリと、カルペ・ディエムの相反する教義を持ち合わせ、共生の概念を極限まで推し進めた、という事になると思います。
そして、大変厳しい現実を、そのまま受け入れつつ自制しながらも、この厳しい現実を良い事に変化させようと常に努力した人なんだと思います。
哲学者になりたかったのに、ローマ皇帝を拝命し、そして善政を敷いた賢帝と言われています。
これは、プラトンの言う哲人王の政治、と言えなくもないと思います。そして、その効果というか結果は素晴らしすぎるとも言えます。ただ、非常にまれな名君が哲学者を志向していた、とも言えるし、これだけ内省している人、それを幼少期から見出して、皇帝にするべく帝王学を教えている状態とも言えるので、卵が先か鶏が先か?は不明ですし、これほどの賢人であっても、継承に失敗しているそうです・・・本当に継承って難しいですね。
日記ですらなく、自省録、自らを省みる記録、を記していたわけで、誰に見せるでもない文章の連続です。
しかし、非常に心打ちます。私はアウレリウスと比べて非常にちっぽけな、存在しないに等しい存在ではありますが、立派さは理解出来ます。
現実を現実のままに受け入れ、逃げないし、正面から向かって行き、善なる行いをしようとずっと試み続けるその姿勢が眩しい。
どんな人物でも、権力や金を手にして時間が経過すると自堕落で、自分にとって都合よく現実を解釈しだすと思うのですが、このような例外があるのだ、という例を知れて良かった。
2千年以上昔の人物ですけれど、信じられないくらいですね。

「枯れ葉」を観ました

2024年1月12日 (金) 09:08

 

アキ・カウリスマキ監督   ユーロスペース     シネマカリテ

2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は0/3

アキ・カウリスマキ監督の新作ですし、好きな監督ですし、映画好きな友人さんの2023年の3位!という事で新宿に足を運びました。

いつもの、アキ・カウリスマキ節が炸裂!です。で、これが好きじゃない人には理解しにくい作品かも知れません。が、今作は今まで以上に『映画』への何かがそこかしこに溢れている作品。もっと言うと今までだったらそこまであからさまにはしなかった監督が、それでも、という感覚があります。

 

 

恐らく、ロシアのウクライナ侵攻に関わる危機感が本作の根本にあると思いますし、作品の中で素直にその事に触れています。

小津監督が大好き、ブレッソンも大好き、というアキ・カウリスマキ監督ですから、何をかいわんや、なのですが、もういろいろと目配せが凄いですね。

最も私はブレッソン監督作品は最近初めて1作観れただけなのですが、よく考えると、昨年の個人的2位カード・カウンターの監督ポール・シュレイダーも大好きな監督に挙げていましたし、何と言っても巨匠の域まで達している監督たちですから、これはマンネリズムと言うよりも、私は洗練された、と捉えています。確かに、似ているし、いつも同じに見えるでしょうけれど、でも、よく見ると細部に洗練さを感じます。

 

 

そして、人間って何でも出来る、とか、いつでもやり直せるとか、何歳からでも学びなおせる、とか言う欺瞞とまでは言わないけれど、大上段から正論めいた、信じて方が楽な結論をかざす事、多いと思いますし、そういうシュチエーションであれば許されるとも思いますが、基本的には、そんな事は無いです。

 

ダメなものはダメだし、取り返しのつかない事は、取り返しがつかないし、自己肯定感は得られても、何も変わらない自分がいるだけだと思います。

 

 

それでも、マンネリズムと言われようとも、洗練され、その時のベストを尽くしていると感じます。

 

 

でも、どうしても、私はウディ・アレン監督作品は、ダメなんですよね・・・特に本人が出てくる奴・・・相当にキモチワルイと感じてしまうのです・・・だって自分の脚本で自分の演出で、なわけで、なんか恐ろしいです。

あ、あと犬もちゃんといつも通りです。

今回は大胆にも、とあるゾンビ映画が使われているのですが、これ見逃してた、観た方が良いかも。

それと音楽が、ホント意表を突く感じでイイですね。

アキ・カウリスマキ監督作品が好きな人にオススメ致します。

ブログカレンダー
2024年1月
« 12月   2月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
アーカイブ
ブログページトップへ
地図
ケータイサイト
井の頭歯科ドクターブログ