井の頭歯科

「自己愛な人たち」を読みました

2012年9月28日 (金) 08:40

春日 武彦著         講談社現代新書

新刊が出ると買ってしまう作家さんの1人でありますし、何かこの絡まった何かを解きほぐすチカラを感じさせる人、そしてメンドクサイフィルターの持ち主であり、しかしだからこそ突き抜けた先の面白さや理解を語れる人春日 武彦先生。とても興味ある精神科の先生です。

今回のお題はなんと「自己愛」です。またまたかなりメンドクサイものを扱っていますので、読み手を選ぶ本ではあると思いますが、しかし、やはりそこは春日先生、非常に面白く、しかも読み手を考えさせ、そのうえうっかり読んでしまうと些細なことの裏側が気になってしまうというメンドクサさも付いてきますが、たしかにこの人でしか読めない文章で好きです。

自己愛の定義も結構難しいと思うのですが、その曖昧な部分をどのように捉えるのか?という所が春日先生の腕の見せ所なんですが、今回も考察、そして小説や実際の事件、あるいは我が身に起こった事柄などを散りばめながら分け入る「自身の理解」という認識の中の未知なる領域の話しです。一見誰でも確認出来ているようでいて、どこかしらヤマシイ感覚も残す自己愛の様々な表出を、具体例を挙げ、論理的に飲み込ませつつ、感情的にも理解出来るようになっていて、本当にこういう感覚を別な言葉や状況、もしくは隠れていた受け手の考えの死角に切り込み、しかも面白いだけでない緊張感を持たせる(次に何を言ってくるか分からない不安もある)構成は見事でクオリティ高いと思います。

とはいえ、この春日先生のメンドクサさへの執着とも呼べる解きほぐし方が丁寧で可笑しみがあり、しかし安穏と読んでいるだけででは済まされない、受け手がその心の中へと自問してしまう要素が含まれている春日先生の語り口がたまりません。

自己愛を持たない人もいないでしょうけれど、距離感を間違うと他人からは滑稽に見えたり、社会不適合者に見えたり、自己中心的に見えたり、と様々な現象として表れるように感じます。もちろん自己愛だけが原因ではないでしょうし、自己愛を構成するものも多岐にわたっているとは思いますが、結果として扱いが難しいものであることに変わりは無いです。

ただのナルシスティックなだけでない、その波及はかなり広い範囲に表れるであろう要素のひとつである自己愛に興味のある方に、春日先生の著作が面白かった方に、オススメ致します。

「籠の中の乙女」を観ました

2012年9月25日 (火) 09:06

ヨルゴス・ランティモス監督       彩プロ

予告編でその不穏さが際立っていた作品なので興味持ちました。ミヒャエル・ハネケ作品のような不穏さでしたので。

厳格な父親が絶対権力を握る家には子供が3人います。無邪気な青年である長男、ちょっと不安定な長女、おとなしい次女、そして夫に従順な妻が暮らすのは庭も広く、プールも完備された素晴らしい家なんですが、高い塀に覆われ、周囲に隣家も無い、外界からは完全に隔離された世界です。しかも父親以外は家から一歩も出られず、学校にも行かずに生活しているのです。テレビも無く、電話も隠され、知らない単語の意味は母親から意味の無いものへと変換されて教え込まれています。そこでは父親が子供を加護し完全なる支配下に置かれている世界が繰り広げられているのですが・・・というのが冒頭です。

予告編以外の情報は出来うる限り遮断して観に行くのが常なんですが、今回はその予告編だけでも不穏な空気にしはいされた映画なのであろう、ということが良く分かる作品でしたが、予想通りに非常に不穏な空気の映画でした・・・そしてかなり役者さんには負荷のかかる演技が求められる(ただし、ギリシャという国ではそれほどでもないかもしれません)作品で脚本だと思いました。初めて見たギリシャ映画で、いつか行って見たい土地です。

ある意味愛情の裏返し的な、そして隔絶された世界がどのように生み出されるのか?あるいはその世界がほころびを見せるのはどんなきっかけであるのか?という細かな部分を見せ付けてくれます。それも非常に皮膚的な手段を用いて。この皮膚的な手段が本当に恐ろしく不穏に見せますし、ある行為がその行為と結びつく感情を完全に除外された形で写されると、あまり使いたくない単語ですが『生理的な嫌悪』を感じさせるに充分な効果があるのだというのを知りました。しかし不穏すぎる・・・単純なホラー描写よりも、個人的にはこういう不穏さ、一見しては分からない心の中の狂気や、抑圧された感情の発露の方がリアルで恐ろしいです。

最後の展開及びクライマックスの切り方に、もう少しカタストロフィを感じたかったんですが、それでも充分凄い映画体験でした。

あと、私は映画にぼかしやモザイクが入ることを全面的に下衆な行為で、隠すことでより猥褻になると思いますし、隠す事が健全という考え方がいやらしい、と感じるのですが(年齢制限というR指定という制度があるなら、ぼかしやモザイクは製作者が入れる以外は必要無いと思います)正直、この映画の場合はぼかされていて良かったのかも知れません。恐怖、感情を湧きあがらせる効果をより、生んでいたと思います。とにかく恐ろしかったですね。

ミヒャエル・ハネケ作品を観たことがあり、尚且つ楽しめた方にオススメ致します。

12校会議

2012年9月21日 (金) 08:42

先日は12校会議という歯科大学の中でも新設校が集まる会議に出席してきました。私は松本歯科大学の出身なのですが、その後日本大学歯学部の講座にお世話になっていた事もあるので(もちろん日本大学は優秀で古くからある大学です)、その両方の立場が何となく分かるのですが、なかなかどちらの立場も大変であろうと思われます。

日本歯科医師会大久保会長の時局講演だったのですが、最近話題の政治、国家、あるいは民主主義社会と共産主義社会の違い、国民皆保険制度の仕組み、FDI(国際歯科連盟)での日本の役割、等々話しが広がってゆきなかなか面白かったです。

恐らく、大久保会長の人柄だと思うのですが、鋭い指摘や、たとえ少しずつであったとしても努力を重ねて交渉して、目標に近くなれるようにする姿勢が良かったです。もちろん常に思い通りには行かない、さらには役人相手の努力ですから、相当に難しい舵取りが求められると思いますけれど、こうして話しを聞くことで私のような末端の会員にとっても、ある程度、ですが信頼を置けるようになると思います。

政治の話しや国家の話しは、非常に重要だと言うのも理解した上で、私はそれ以外の、日常生活における些事の重要性にも重きを感じます。しかし、逆説的ですがその日常の些事にかまけていられなくなるのが、政治を忘れる時だとも思うのです。これから来年にかけての何処かで選挙が起こると思います。そろそろいろいろ考えておこうかと。

ずいぶん前ですが国政選挙の前に感じた感想がブログに残っているんですが、この頃から考えが深まっていないように感じます。国を憂うことと、個人の感情の発露を同化されることに違和感を覚えてしまうのです。もちろん国家の重要性は理解出来ますし、国家以上のくくりは今のところ存在しないわけですが、だからこそ、冷静な態度が求められると思うのです。選挙までもう少し時間があるでしょうから、もう少しでも自分の考えをまとめ、意識して見守りたいと思います。一時の感情に流されない投票を行いたのです。

曼荼羅~

2012年9月18日 (火) 09:15

友人のバンドのライブを見てきました!ラテンバンドいいですね!

ミラーボールを見るのは本当に久しぶりです。

え~写真には写りきれませんでした!リズムセクションは、ドラム、ベース、ギター、キーボードの他にラテンの肝パーカッションが3~4人、そしてボーカル。その上ホーンセクションに、フルート、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックス、トランペットが2本に、トロンボーンが2本という大所帯です。バンド名はLa Musica Sabrosa!です。

大所帯ならではの音の厚みがあって素晴らしかったです。もう少し私も楽器を触れる機会を作ろうかと考えさせられます。

新宿 末廣亭

2012年9月14日 (金) 08:54

先日読んだ「東京ポッド許可局」という本(の感想はこちら)についに最後の後押しを受け、これまでいろいろな機会で、いろいろな人に「面白いよ」と言われながら行けなかった寄席に行ってきました。私は何事も着火するのに時間がかかるタイプなんですが(本当に導火線が長いので今頃何言ってんだ?と、よく言われます・・・)、今度の落語へのアプローチは本当に長かったです。で、実際のところは、やはり生で見るのが1番ですよね。生の舞台で出来上がっているものは生で観るのが1番だと思います、演劇も、演奏も、バレエでも何でもそうですが。

私は落語を聞くのも生まれて初めて、というこの歳でどうなのか?という者ですが、初めての新宿 末廣亭体験だったのですが、本当に肩の力を抜いて楽しめる経験でした。とにかく知らない事ばかりだったのですが、時間がゆっくり流れていくような感じでして、初めての経験としては好印象です。

どの落語も初めて聞く話ですし、どの演者さんも初めて見る方なんですが、17時過ぎくらいから最後まで見たのですが、中でも気に入ったのが瀧川 鯉昇(たきがわ りしょう)さんという方、そしてこの方の話された若旦那が船頭になる話しです。とてもコミカルな動き、リズミカルな話し方、何人もの人を演じ分けるテクニック、そしてびっくりするアクシデントをカバーするアドリブもあって最高でした。しかもどの方もその前に話された方々のお話しのどこかちょっとだけを、自分の話の中に入れて笑いをとるという事をされていて、この日話されたまんじゅうの話し、狐に化かされる話し、若旦那の話し、講談で話された肉付きの面の話し、というようにどんどん乗っかって行くアドリブが面白さをより引き立て、今日来て良かったとより思わせました。

落語家さんたちの、入ってくる時の感じの違い、話し始めて上着(?)を取るタイミングの違いも面白かったんですが、とりわけ退場時のサッと帰って行く様は一応に似ていてそこが不思議と気になりました。いわゆる粋というやつなのでしょうか?でもかっこよく素敵です。

これからも、時々足を運んで見たいです。

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