井の頭歯科

「日本沈没 第2部」を読みました

2018年9月26日 (水) 09:40

小松 左京 谷 甲州 著     小学館文庫

日本沈没の第2部を読みました。おそらく小松左京さんが本当に書きたかったのはこちらなのかな?と感じる部分も大きかったです。

あの、どうしてもネタバレに繋がってしまう部分があります、なので、日本沈没をまだ読まれていない方はご遠慮ください、なにしろ続編作品ですので、1部のネタバレあります。

日本沈没から25年後の世界、国土を持たない国民、流浪の民、入植者、として世界各国に散らばった国民の苦難を描く作品です。D計画に携わった人物が幾人か出てきます。

主題として、日本そして日本人とは何か?を扱っています。ですので、おそらくこの第2部を主題に置いていたのではないか?と私は感じました。国土を失ってなお、同族としての意識をどう持ち続けるのか?国土の再建はあるのか?日本性とはどういう事か?を時に比喩的に、時に直接的に言及しています。

1部、2部通して、太平洋戦争(呼称問題があるのを承知していて、私の感覚としては、この表記を使用したい)に負け、ただの負けではなく、国体の護持のただ1点を守りたかった中、まだまだ議論があってしかるべきですが、負けた事実はいかようにも代えがたく、その失敗の本質をいまだ自国民からなかなか清算できず、東京裁判を含めて、敗戦国というどのようにも、どうしようもない状況に置かれた事への反省もなく、高度成長期を味わって浮かれている日本国民に、それでいいのか?という憤慨と驚愕をもって書かれたのかな?と感じています。

第2部では、国土に深く繋がりのあるパトリオティズムと、国家という概念に基づくナショナリズム、さらに思い切って言えば文化に根付くコスモポリタニズムの対比の部分がこの物語の真骨頂であろうと思います。ここで面白かったのは鳥飼外相のコスモポリタニズムを唱える側は海外渡航経験が浅く理想論的に聞こえるのに対して、現実主義的に見えてかなり窮屈で保守的というより封建的に見えるナショナリズムを唱える中田首相の海外経験とのギャップです。大変興味深い話しで、自分が如何なる存在なのか?を計るのに他者という「ものさし」を求める事と同義な気がしましたし、説得力あります。

ただ、少々冗長な部分もありますし、1部に出てくるあの人がアレで、え??てなったりしますけど、その後の物語が描かれる興奮は確かにあります。

国土が失われたからこそなんでしょうけれど、郷愁に駆られ過ぎる人の描写が多くてその辺は少し鼻白むのは仕方ないかもですけれど、まぁ1部を読まれた方であれば、決して損のない読書体験になると思います。

私は小松左京さんは日本という国を愛しているからこそ、警鐘を鳴らすために、この物語を描こうと思ったのかな?と感じてしまいます。理想的な日本像な描写も多く、時に理想的過ぎて最早ファンタジックに見えさえします。大変エモーショナルだと感じます。

それでも、東日本大震災も記憶に新しい、災害の多い国日本に住む人にオススメ致します。

「生きのびるために」を観ました

2018年9月21日 (金) 09:37

ノラ・トゥーミー監督      スタジオカナル

ラジオの番組でユーリ―・ノルシュテイン(ロシアの前衛アニメーション監督です、ずっと作っている『外套』完成したのかなぁ・・・『話の話』とか『霧につつまれたハリネズミ』とか素晴らしい作品です)の特集をしていた時に紹介されていた作品なので観ました。カブールでの少女の話しです、物凄く重たい話しですので、感想にまとめるのもなかなか考えさせられました。

2000年代のタリバーン政権佳下のカブール。父と共に行商を行うパヴァーナは10歳前後と思われます。イスラム文化の影響なのか、はたまたタリバーン政権の為なのか?不明なんですけれど(なんとなく、タリバーン政権のせい、と私は思いたい)、男性と一緒でないと外出もはばかられる世界。教育、読み書きさえ、読書でさえ、女性が関わる事を禁ずる世界で、父、母、姉、弟と暮らすパヴァーナ家族に・・・というのが冒頭です。

正直、イスラム文化について全然知らないので、何が何処までイスラム文化に由来があったり、解釈が歪められているのか?が判然としないのですが、非常に悲しい世界が広がっています。この映画が事実に近いのであれば、それは本当に地獄を感じられる世界でした。

男性でないと基本的に生きていけない世界。差別というよりも迫害と言っていい世界でパヴァーナが体験する、ただ、生き延びるためにするための犠牲と苦悩。大変重い話しですが、観て良かったです。イスラムの文化にも、もちろん良い部分はあるでしょうけれど、これはあまりに悲惨な状況と言えると思います。読み書き、読書、外出に制限をされて生きていくのは無理だと思います。また、それに逆らった場合の暴力が本当に酷いです。こういう事態を知ると、大変現代の日本は有り難いと思うのですけれど、この中でも女性への偏見がまだ残っている事態や偏見を見るにつれ(もちろん私も無意識で行っているかもしれない、という恐怖と共に)哀しい感覚に包まれます。

それでも、この映画の中のパヴァーナが、物語のチカラを得て、現実に立ち向かうシーンは、そのアニメーションという手法との相性の良さとの相乗効果を持って、素晴らしく美しい映像体験になっています。

文化について、タリバーンについて、そして男女差別について知りたい方にオススメ致します。ヘヴィーではありますが、観て良かったです。

「しあわせはどこにある」を見ました。

2018年9月11日 (火) 10:55

ピーター・チェルソム監督     トランスフォーマー

主演がサイモン・ペッグさんなので観ました!少し忙しかったので、久しぶりになってしまいましたが。

現代イギリスの精神科医ヘクター(サイモン・ペッグ)は彼女(ロザムンド・パイク)と楽しい生活を送ってはいるものの、患者たちのネガティヴな想いに引っ張られるかのように沈みがちになり…と言うのが冒頭です。

私は旅行をする事がほとんどないですし、海外も今まで1度も行った事が無いですので、スゴイなぁ、と単純に思います。旅行中はきっと様々な出来事が起こる非日常だと思いますけれど、その分、普段の、当たり前の事が通用しないので、その人の臨機応変さ、柔軟性が試されると思います。

幸せ、大変形の無い曖昧模糊で千差万別な事象に対する映画ですから、小難しいくしようと思えば出来たと思いますが、非常にライトなタッチでまとめてくれています。ややヘヴィーな事柄も扱っていますけど。

やはり、サイモン・ペッグの、彼そのものかのようなキャラクターであるヘクターの愛嬌がまず半端なく良かった!この役者さんそのものが好きなので、この映画に対する評価も甘めになってしまってますけれど、それも含めて、それでもいい!と思わせるくらい好きな俳優さんです。

ある銀行員とのスーパーリッチな生活や、大変危険なアフリカのフィクサーとの繋がりは、彼の愛嬌があればこその関係性で、見ていて大変緩い何でも許せてしまう感じになってしまいます。

大変リラックスできる映画で、その点でも良かったです。

しあわせ、に関する箇条書きがいくつも出てきますけれど、なかなか含蓄が深いです。

あ、本当にどうでもいい事なんですけれど、彼女役をロザムンド・パイクさんが演じられているので、この映画のその後に、「ゴーン・ガール」(の感想は こちら )が待ってるのかと思うと、ホラー映画前日譚的な感じになってます。もう私はロザムンド・パイクさんを見るだけで、この人はエイミーだ!になってしまって怖いです。

しあわせに興味のある方、毎日のルーティンを新鮮にしたい、と思っている方にオススメ致します。

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