井の頭歯科

EURO2012

2012年6月29日 (金) 09:06

いよいよ、EURO2012も決勝戦を残すのみ、となりました。欧州選手権では非常に番狂わせが多い大会だと思うのですが、今回はほぼ順当な勝ち負けがついていて、良いフットボールをしたチームが勝つ、という試合が多いと思います。基本的にフットボールって良いチームが勝つチームとは限らないところが面白いんですよね。かなり不条理が多いのが特徴だと思います、自由度も高いですけれど。

決勝戦スペインvsイタリアはグループリーグ緒戦の再現かつ、本当の決着がつきます。できればPK戦ではない試合90分で決着がついて欲しいです。スペインは危なげない試合が多く、しかも魅せますし、結局CF問題(センターフォワード)が片付かないまま、ゼロトップとも言える役目を10番を背負わせたセスク・ファブレガス選手がこなしているのですが、イタリア相手にもう1度同じ布陣をひくのでしょうか?またまたイタリアもスペイン相手に3バックというポッゼッション主導権争いを再度挑むのか?というストーリィがあってデ・ロッシが真ん中のCB、いやがおうにも盛り上がりますね。

画像は緒戦のスターティングメンバーなんですが、この後3バックはほとんどやってない(というかEURO2012の予選でも3バックってやってないと思います・・・)ので、本当に分からないプランデッリ監督。逆にデル・ボスケ監督もびっくりするメンバーだけど理にかなったことしますし、監督対決としても見ものですね。

スペインが連覇して君臨するのか、イタリアが巻き返して新たな流行をつくるのか?楽しみです。

「ル・アーヴルの靴みがき」を観ました

2012年6月26日 (火) 09:25

アキ・カウリスマキ監督     ユーロスペース

小津監督の影響を多分に感じさせるフィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督作品、好きな映画あります。例えば「ラヴィ・ド・ボエーム」(最後に流れる曲に劇場でホントびっくりしました)、「過去のない男」(生バンドの演奏シーンがいい、いつものアキ・カウリスマキ作品!)そして1番好きなのが「街のあかり」(ストーリィが、ダメ男の前向きな姿勢が、そこまでも!と思わせるところが好きです)です。そんなアキ・カウリスマキ監督作品の最新作、今回はちょっと間が開いて5年ぶりなので、本当に久しぶりです。

フランスの港町ル・アーヴルで生活しているマルセル・マックスの仕事は靴磨きです。駅前から港まであらゆるところで仕事をし、家には献身的な妻が待っています。そんなある日港に不法侵入者がいるコンテナが検挙されるのですが、中から1人の少年が逃げ出します。そのころマルクスの妻が病に倒れ・・・というのが冒頭です。

ある意味、ストーリィは古典的なものであり、いつものアキ・カウリスマキ作品、といえばその通りなんです(監督の犬も出てきますし、淡々と進み、役者の表情は極めて抑えられていますし)が、何かしら決定的に足りない感じがするのは何故なんでしょうか?考えてみたのですが、何となく、としか言いようの無い感じの違和感がありました。少し長くなってしまいますが、文章にすると「奇跡の取り扱い」なんだと思うのです。

映画の宣伝としても「奇跡」に焦点を当てていますし、なにしろコピーが『心をみがけば、奇跡はおこる』ですから。しかし、今までの作品と比べて何かとってつけたかのような、何かしらの違和感を感じさせると思うのです。確かにアキ・カウリスマキ作品の物語の起伏は少ないですし、思いがけない展開もありませんし、しかしだからこその結末の説得力があった(役者の演技や音楽や世界観を含む映画を最初から見続けてきたことでの結末までのあらゆること=説得力)と思うのですが。確かに今回の映画も靴みがきであるマルセルが利他的行動をとることでの結末なんですが「ごほうび」感が強くなりすぎてしまったのではないか?と思うのです。「過去のない男」でも「街のあかり」でも利他的な行動や、背負い続ける覚悟を描いてはいますが、その手前でもう少し主人公とヒロインの関係性の深さだけでなく、ヒロインの過去や人柄を掘り下げていると思うのですが(あるいはその他のキャラクターたちの掘り下げ)、その部分が抜けているが為の「他者への損得勘定ではない手助け」→「ごほうび」という直接的な表現になってしまっているように感じたのです。「利他性」と「ごほうび」の間にもう少し利他的行動をおこす側だけでなく起こされる側なり周りの人たちというクッションが有るのと無いことでの違いを意識させられました。おちろんソコをカウリスマキ監督のミューズであるカティが演じておられるのだから、という部分はありますけれど。

そういう意味では私は「街のあかり」が最も好きな作品ですし、主人公の巻き込まれ、抗い、絶望に絶望を重ねるかのような男の最後の一点の希望とある女性との関係性にグッと来るのだと思うのです。

マルセルと妻の過去を描いてくれていたら、と思ってしまいましたが、それでも非常にアキ・カウリスマキ監督作品としか言いようの無い世界です。

小津作品が好きな方にオススメ致します。

「ハーモニー」を読みました

2012年6月22日 (金) 08:51

伊藤 計劃著     ハヤカワ文庫

あの名作「虐殺器官」(の感想はこちら)の伊藤 計劃さんの本です。作者の伊藤さんが死去されているので新作は出ませんし、完成された作品は数少ないので気持ちが高まった時に読もうと思っていたのですが、円城 塔さんが未完の原稿を完成させるべく(ご遺族の了解を得ている)執筆している、というニュースを聞いて気分が高揚したので読みました。全くもって惜しい才能、人物がこの世にいなくなってしまったのだなぁ、とつくづく思わされました。処女作であり代表作である「虐殺器官」も素晴らしかったですが本書「ハーモニー」もまた素晴らしい小説で、「虐殺器官」の世界からさらに進んだユートピア≒ディストピアという世界を扱った小説です。

近未来、21世紀初頭に起きた「大災禍」という未曾有の大災害を経て、人々は「健康」を「管理」するようになった世界。健康を害するものをすべて除去したある意味理想郷を手に入れた人類。しかしその世界を生きる日本人、霧彗(きりえ)トァンは非常に違和感を感じ、出来うる限り世界の周辺で生きようとしています。過去に御冷(みひえ)ミャハ、そして零下堂(れいかどう)キアンと3人で起こした出来事がその考え方に影を落としているのですが・・・というのが冒頭です。

「虐殺器官」の世界観をさらに推し進めた舞台の上で魅せる伊藤さんの『生』への姿勢が貫かれた作品と言えると思います。なので、基本的にはまず「虐殺器官」を読まれた方にオススメすることになります。が、読んでいなくとも読める構造にはなっています。

近未来モノというジャンルは存在していると思いますし、SF作品の中のジャンルの中でも個人的には最も面白い作品が多い、または個人的に好きな作品が多いと思っています。スターウォーズやスタートレックの世界は近未来とは呼べませんし、だからこそその世界観を飲み込ませるのに時間がかかったり、もしくは受け付けない方には絶対に受け入れ難いという世界になってしまいがちですが、近未来モノには、ある程度今の現実と地続きな感覚が残っているのでリアルに感じさせ易い、とも言えますし、逆に言えばあまりに現実離れすることは出来ないという不自由さもあると思います。しかし、だからこそ、ハードルが上がっている分、より面白い作品が多いと思っています。個人的には「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム監督)しかり、「ブレードランナー」(リドリー・スコット監督)しかり、「デリカテッセン」(ジャン=ピエール・ジュネとマイク・キャロ監督)しかり、「ストーカー」(アンドレイ・タルコフスキー監督)しかり、「汚れた血」(レオン・カラックス監督)しかりです。もちろん本の世界でも同じだと思うのです。「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン著)とか、「1984」(ジョージ・オーウェル著)とか、「わたしを時離さないで」(イシグロ・カズオ著)とか、「猫のゆりかご」(カート・ヴォネガット・ジュニア著)とか、「あ・じゃ・ぱん」(矢作俊彦著)とかです。

その系譜の中に「虐殺器官」と「ハーモニー」とも入るモノであると思いますし、非常にレベルの高い作品であること間違いないです。世界観を受け手に飲み込ませるプロセスもデリケートに扱われていて、飲み込ませるという目的はあるものの、説明過多であったり、全てを語らせるのではなく、少しづつ理解させることでフックが強くなり、ミステリアスな部分を残して説明し尽くさない部分が秀逸です。また造語についても素晴らしく霧冷ミャハという語感の素晴らしさ、生府(ヴァイガメント)という政府に変わる医療的監視下における共同体という設定、WatchMeと呼ばれるナノマシンとその機能と監視するという設定を結びつける発想の素晴らしさ、これはやはりユートピア≒ディストピアものの中で個人的に最も評価している「レダ」栗本 薫著に近い世界観を、SFではなく近未来に設定することが出来る仕掛けで感銘受けました。

ネタバレなしですが、大変素晴らしい作品であることは間違いないですし、キャラクターも、ストーリィも、扱う主題も、どれも伊藤 計劃さんにしかありえないエッジが効いていてオススメです。が、あくまで個人的意見ですが「虐殺器官」の、カタルシスを乗り越え、まさに屍を超えていくあの独特のエピローグを超えるものではなかったと感じました。たしかに素晴らしい結末であろうとは思いますが、もっと先を見据えていたのではないか?と想像しますし、書かれるべくした3作目が存在したのではないか?という想像をせずにはいられません。ブリッジ的な役割に置かれる作品になっているのではないか?と勝手に想像するのです『ああ、これがあったからこそのあれか!』というような。

円城 塔さんが書かれている伊藤 計劃さんの3作目が気になる方に、オススメ致します。

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「居心地の悪い部屋」を読みました

2012年6月19日 (火) 09:03

岸本 佐和子編集     角川書店

凄いタイトルの本だなぁ、と思ったら編集が岸本さんで納得。最近読んでいる本の中に短編集が無いので購入して読みました。相変わらず凄くヘンテコな短編を集めているのですが、その中でもいろいろと自分の好みについて考えさせられるシロモノでした。

私が気になった作品は、とにかく何の説明もないのに納得せざる得ない「へベはジャリを殺す」、この短編の中でベストなツカミと想像させる恐怖と切り方の「あざ」、会話劇だけでココまで読ませるのが凄い「来訪者」、まさに居心地の悪さは短編集の中で最も高い「潜水夫」、アイディアがすさまじすぎるし最も変な「やあ!やってるかい!」、誰にでもある空白の恐怖を味わえる(しかし私は結末には不満)「ささやき」、名作『優雅で感傷的な日本野球』高橋 源一郎著を思い出さずにはいられない面白さの「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」です。

私が居心地の悪さ、と言いますか面白さを感じるには、ある程度現実味のある範囲の中で説得力を持たせ、その世界の中に埋没でき得るほどのリアリティ(誰の例えかは忘れてしまった【なんとなく村上春樹っぽいのですが、それが誰かかの引用だった感じもします】のですが「パン屋のリアリティはパンの中に存在するのであって、小麦粉ではない」ということだと思います)を整えた上で、落す(何か未知のものでも、アクシデントでも、この世界の住人となりし後であるならば何でも飲み込めるようになってしまっている)ものを好んでいるだなぁ、と理解してしまいました。その辺りの境界線が微妙でして、寓話や民話、神話レベルでのものであっても構わないのに、あえてそこからファンタジー色を加えるかのような、物語のトーンが変わりすぎるものを嫌う傾向があることを理解できました。

この短編集の中で言えば、現実のリアルな世界観から急にファンタジーへと切り替わる「チャメトラ」がそれにあたりますが、何となく自分の好みが狭量で厚かましい気分になりました。気がついてなるほどと納得するにはするものの、しかし狭い了見だなぁ、とも感じてしまうのです。好みなんてそんなもの、だと理解出来ていてもね。

そう考えるといわゆるマジックリアリズムもの、には弱いはずなのも理解出来てしまった、です。ガルシア=マルケス作品だとやはり「百年の孤独」よりずっと「エレンディラ」とか「コレラの時代の愛」とか最も好きな作品は「予告された殺人の記憶」だったりするのも納得。だんだんと「マジックリアリズムとはこういうモノ」という認識で世界に入れる気にはなっているのですが。

とにかく「あざ」と「来訪者」(私の世代だと「来訪者」とくれば「バオー来訪者」荒木 飛呂彦著なんですが)と「やあ!やってるかい!」は読んでおいて良かったです、どこから探してくるんでしょうね岸本さんは。

短編集が好きな方、中でもいろいろなものアソート感の強いものをお好みの方にオススメ致します。

「よい歯の集い」にご参加いただきありがとうございました!

2012年6月15日 (金) 08:47

先週の日曜日に武蔵野公会堂で行われた「第45回 よい歯の集い」は無事盛況な中で滞りなく終了いたしました。

私は舞台のそでにいる進行係だったので、なかなか忙しく、あまり会場内がどのような雰囲気だったかが分からなかったのですが、多くの方にいらしていただけ嬉しかったです。

講演の内容も、学術的な部分から、食生活という身近なものまでに及びまして、今日からその知識を生かせる、という部分も多く、ためになりました。

写真は小学生の方々のポスターの発表の場面です。受付の直ぐ先で行いました。ちょっと私の場所ではなかったので、写真はこれだけしか撮れなかったのですが、なかなか見応えのあるポスターもあって面白かったです。

来年の「よい歯の集い」もよろしくお願い致します。

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