井の頭歯科

「神々の山嶺」を読みました

2023年10月31日 (火) 08:56
夢枕獏著     集英社文庫
映画「神々の山嶺」パトリック・アンベール監督の方を先に観ていましたが、どうやら原作とはだいぶ違うとの話を聞き、読んでみたくなりました。
夢枕獏の著作を読むのって何年ぶりだろう・・・
1993年、中年ばかりのエベレスト登山チームが撤退、登頂もならなかったばかりか、滑落死を2名出してしまう・・・その隊のカメラマン深町は、帰国を先延ばしにしてカトマンドゥに滞在しているのですが・・・というのが冒頭です。
映画版は、かなり端折っている、という事が分かりました。集英社文庫の上下巻ですので、当然と言えば当然なんですけれど、かなりアツい登山家羽生丈二の生涯を追いつつ、実際の主人公はカメラマン深町だという事が、この小説を読んではっきりしました。
これは、デビッド・フィンチャー監督「ゾディアック」と同じように、ある事象や事に憑りつかれた人間の話しだと思います。
なんで登山をするのか?という問いにG・マロリーが答えたと言われている有名な言葉
「そこに山があるからさ」
を、どういう事か分かる小説、とも言えます。
山をやる、という表現、日本語で今まで聞いたことが無かったので衝撃ありました。名詞が動詞になる、という衝撃です。でも、その切実さを理解させる言葉だと思います。
羽生丈二、という人間を、エゴイストとみるか、ロマンチストとみるか?で評価は分かれるでしょうけれど、両方を持った人物ですし、妥協をしません。ある種のハードボイルドな世界の主役になれる男でもあり、生活破綻者とも言えます。
映画版ですと、主役は羽生で、語りべとしての深町なのかと、思ってましたが、原作を読むと、全然違った、と感じました。主役は深町だと思います。
羽生や深町ほどに、1つの、これ、と言うモノがある人は、幸せだと思いますし、それを他人がどうのこうのいう話しではないです。ですが、常識的な考えからすると、狂人に見える事もある、という事だと思います。
狂人に見えたとしても、社会から認められなくても、自分が納得すれば、それは良い事だと言えます、同じ集英社文庫の絶版になってしまった、村上龍の仕事の中で個人的に最高の仕事だと言えるリチャード・バック著村上龍訳「イリュージョン」と同じベクトルの話しだと思います。
これは、所謂キャサリン・ヴィグロー監督「ハート・ブルー」に出てくるスリル・ジャンキーとは似て非なるモノだと思いました。
ハードボイルド、もしくは山をやってる、もしくは山をやっていた人にオススメします。

「裁かるるジャンヌ」を観ました

2023年10月27日 (金) 09:01

カール・テオドア・ドライヤー監督     GAUMONT     U-NEXT
あ、あの、カール・テオドア・ドライヤー監督作品までラインナップされているなんて、本当にU-NEXTさんは凄いです。もうU-NEXTさんだけでいい気もしてきました。やっと観られるの、本当にありがたいです。なかなか見られる機会が無い作品なので。
パリの下院図書館に奇妙な資料がある
ジャンヌ・ダルクの裁判
彼女を有罪とし、死刑判決を下した
裁判の過程を記録した尋問調書である
という字幕に続いて、古そうな大判の書籍をめくる映像が・・・というのが冒頭です。
サイレント映画の傑作、と聞いてから観たかったのですが、なかなか見れる機会が少ない上に、配信にはまず入っていなかった作品なので、U-NEXTに感謝しかないです。
サイレント映画なのですが、音楽はつけられています。
ジャンヌ・ダルクの裁判記録を基にした裁判を描いているのですが、主演のルネ・ファルコネッティの演技というか表情が凄いです。たしか聖人認定されていたと思いますけれど、そういう事じゃなく、人間、ジャンヌを描いています。
それと同時に、いわゆる権力を手にした人間がいかに恐ろしまでに排他的で傲慢な態度になるのか?威圧的で高圧的な態度なのか?それが聖職者として振る舞いとしてどう見えるのか?を凄く意識させられます。
ほとんどが、ジャンヌを画面に収める場合、ほぼ顔だけのかなりのクローズアップな構図で、自然とジャンヌの顔の表情だけを強く意識させられます。しかし、ジャンヌ以外の場合は割合バストショットまでの寄りで済ませているのも特徴です。
どうしてもジャンヌの立場に立たされる作品です。
そのジャンヌが、人間味あふれる行動を取る際の表情、目の動き、とても印象に残ります。
ジャンヌを演じたルネ・ファルコネッティさんの演技、圧巻です。
観て本当に良かった。
ジャンヌに、そしてサイレント映画に興味がある人に、オススメ致します。

「夜と霧」を観ました

2023年10月24日 (火) 09:21

アラン・レネ監督     日本ヘラルド     DVD
スティーブン・スピルバーグ監督「シンドラーのリストを観た事ですし、マッティ・ゲショネック監督「ヒトラーの為の虐殺会議」も観ましたし、コテンラジオでのナチス関連もいろいろ聞いてきましたし、ミック・ジャクソン監督「否定と肯定」も視聴、中でも最も重たかったのはコスタ・ガヴラス監督「ミュージックボックス」でしたが、それも視聴したので、いよいよ重い腰をあげ、今作を観る事にしました。
おそらく、ナチス関連のドキュメンタリー映画作品としては古典的な作品でしょうけれど、最重要作品だと思います。
wiki調べですけれど、有名なヴィクトール・E・フランクル著「夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録」(未読)とは同じようなテーマを扱っていますけれど、原作ではないようです。
第二次世界大戦時に、ドイツで行われたホロコーストの記録映像や写真(モノクロ)と、戦後にその強制収容所をカラー映像をコラージュした記録映画です。
ホモ・サピエンスが、いかに簡単に、同胞ではない、と判断した場合、もしくは科学的(それは今となっては間違った優性論だったわけですが)に、正義が自分の側に属していると信じた結果、残酷になれるか?を記録した映画と言えます。
現在の所、遺伝子的に、ホモ・サピエンスに亜種はなく、どの国籍であろうと、肌の色や瞳の色、髪の毛の色が違おうと、同じホモ・サピエンスです。
ですが、それは現代の科学に於いてであって未来永劫変わる事は無い、とは言い切れません。
それでも、同じ生命を宿した、思考する動物でありますし、区別する事は出来ないと思います。そして同じ惑星に住む同胞だと、基本的には感じます。
(とは言えコテンラジオでも話題に挙がっていたもし、仮に、A.Iが個別性を持ち始めたら・・・)
同胞ではない、と区切る事の、それが、宗教や国籍や言語等なんであれ、区切る事の恐ろしさを如実に表す映画。
科学は今の所、最も合理的で再現性のあるツールですが、それも万能で変わらないわけではないけれど、今の所、という中腰で耐える姿勢が求められると思います。
それと、音楽が非常に印象に残った。異化効果というのか不明ですけれど、物凄く悲惨な状況を目にしつつ、音楽が荘厳で感情的で、何を観させられているのか?という不思議な気持ちになりました。
全人類が観るべき映画。だから視聴にかなりハードルが高い状況は個人的には悔やまれます。

「八甲田山」を観ました

2023年10月20日 (金) 09:09

 

森谷司郎監督     東宝     DVD
知人にお借りした、有名な日本映画です。公開は1977年、私は7歳でしたが「天は我々を見放した」というセリフは有名で、何も見ていないのに、覚えています。
明治35年(1902年・・・120年前・・・)弘前第八師団の第四旅団本部で会議が始まります。ロシアとの戦争が避けられない事態にあった日本陸軍は、寒冷地での行軍、野営等の装の為の演習として、雪中行軍を行う事とし、歩兵第五連隊と歩兵第三十一連隊に、それぞれ厳冬期の八甲田山で訓練を行う事となりましたが・・・というのが冒頭です。
原作は新田次郎の「八甲田山市の彷徨」で、ややこしいのですが、これは1902年の八甲田山雪中行軍遭難事件を基にしたフィクションです。ですので、いわゆるハリウッド映画の実話です、と同じくらい脚色はされていると思います。
出演俳優が物凄く豪華で、これは東宝もかなり力を入れた作品だと思われます。何と言っても脚本を橋本忍ですから、かなりの超大作と言って良いと思います。
高倉健、北大路欣也の2大スターの競演ですし、丹波哲郎、加山雄三、大滝秀治、緒形拳、森田健作、前田吟、菅井きん、秋吉久美子、加賀まりこ、小林桂樹、三国廉太郎ざっと私が知っていて画面で確認出来た俳優さんだけでも、これだけ揃っている作品はそうは無いと思います。
中でも、北大路欣也さんの演技は、この状況下の中での中間管理職の悲哀を感じさせるに十分で、演技の熱量は高すぎるくらいですし、個人的好みからも離れますけれど、そういう事を全部失くして、とにかく観てください、としか言いようのない迫力があります。
高倉健の渋さ(公開年が1977年、撮影は1年以上前と考えても当時45歳・・・若すぎるのに渋い)、丹波哲郎の安定感、加山雄三の洒脱さ、大滝秀治の老獪さ、緒形拳や前田吟の言葉使い、秋吉久美子の若さ、加賀まりこの美人度、小林桂樹の普通さ、そして三国廉太郎のとぼけ、どなたも凄いのですが、北大路欣也さんが全部持って行った感覚があります。
それ以上に凄いのが、撮影、です・・・
驚愕の映像だらけですし、実際に、かなりの寒冷地で行われた撮影のようです・・・つまり、実際にかなりの寒さの中で撮影されている、と思われるのです・・・今だとまず出来ない過酷さだと思います・・・
なにしろ照明が、ほとんどの場面で弱い上に、恐らく、顔に当てる分しかない、くらいの過酷さだったと思われます・・・
当たり前ですけれど、これは、恐らく、晴れ待ちならぬ、吹雪待ち、という事もあったのではないか?と思われます・・・何時間待つことがあったのか?恐ろしいですし、役者さんもですけれど、撮影クルーも相当な負担があったと思います。
超大作ですし、物凄く贅沢で優雅な時間の使い方もしています、これは今の人が見ると、テンポが悪いと言われかねないですけれど、個人的には2023年の今の感覚で観ても、かなり必要な時間のかけ方だと思います。贅沢な事だと思います。
寒冷地で厳冬期に、わざわざ行った雪中行軍の中での、中間管理職の悲哀とともに、何と言いますか、意見が出来ない、というか論理的な判断が行えない事の恐ろしさを、十二分に理解出来ます。個人的に思い出したのはリドリー・スコット監督「ブラックホーク・ダウン」の戦闘シーンです、現場は地獄絵図なのに、司令部も混乱していてまともな指示が出せない中で、ヒトが死傷していく様が、恐ろしいまでに同じ気がします。
主演の徳島(高倉健)大尉と神田(北大路欣也)が、もし率いる隊が変わっていたとしても、恐らく軍隊であり、決定権が上にある状態ですと、同じ結果だったのではないか?と思われますし、そうい意味で悲惨ですし、どんなに現場の責任者が意見具申を行ったとしても、決定権を持つ者が愚者であれば、全く意味がない、という事の典型な気がします。
翻って、うちの国の官僚は試験があるけれど、政治家を選ぶ選挙に於いて、圧倒的に有利な二世議員三世議員が多く輩出され当選している現状は、かなり危なく危険な気がしますけれど、それを国民自ら選んでいるので、まぁ自業自得、という事に今後なるんでしょうね・・・
雪山登山に興味のある方にオススメ致します。

「岸部露伴 ルーヴルへ行く」を観ました

2023年10月17日 (火) 08:53

 

渡辺一貴監督     アスミックエース     AmazonPrime
高橋一生さん、庵野秀明監督「シン・ゴジラ」の巨災対メンバー文部科学省研究振興局基礎研究振興課長・安田龍彦を観た時から気になっていたので、観ました。もちろん原作の荒木飛呂彦先生の作品は、恐らく、全部読んでいます。最も荒木先生作品としての濃度が高いのは「バオー来訪者」か「ゴージャス・アイリン」派の感想だとお思い下さい(つまり偏見)。
杜王町に住む漫画家の岸部露伴(高橋一生)は極度なリアリストであり、超能力であるスタンドを操るスタンド使いです。漫画家として駆け出しの頃に出会った黒い絵の事を思い出し・・・というのが冒頭です。
原作は短編ですけれど、映画にする、というのに短編作品は向いていると思います。しかも、邦画としてはかなりお金もかかっている作品だとも思います。
俳優さんはどなたも頑張っていると思いますし、何しろ海外の俳優さんも出てきますし、言語もフランス語を使うシーンもあり、なかなか面白いです。フランス語は全く分かりませんけれど。
中でも主演の高橋一生さんが、ちゃんと、岸部露伴に見えるには、本当に素晴らしい。かなり癖が強すぎる漫画家を好演しています。それにセリフの「~じゃないんだよ」ではなく、荒木飛呂彦文体である「~じゃあないんだよ」を使っていて、こういう細かな部分にもある種のリスペクトを感じます。原作への愛ですね。
何しろ原作は、荒木先生がルーヴル側から請われて作品展を行い、かなりバックヤードまで入られた後に着想を得て作られた作品であるので、ルーヴル美術館が主役であると言えなくもないです。ま、流石に映画の中では、そこまでルーヴルに焦点を当ててはいませんけれど。もっといろいろ観たかったです、美術館内部の様々な部分も。
泉京香を演じた飯豊まりえさんもかなり変わったキャラクターで、ちょっと現実離れした戯画化されたキャラクターなのに、それをそのまま演じていて、ある種の狂気を感じさせてくれてよかったです。変に現実味を出そうとしないのが個人的に良かった。
キーとなるキャラクターを木村文乃さんが演じられているのですが、これも漫画からのイメージですと、もう少し線が細い感じにして欲しかったですけれど、概ね良かったと思います。
この木村さんと、高橋一生さんの最終盤のとある時代の演技は、かなり良かったです。ここが本作(映画)の最も良かったシーンでした、演技の中では、ですけれど。
出来ればもっとルーヴル美術館そのものが観たかったです、ですが、フランスで、日本の漫画家である荒木飛呂彦先生が大きく評価されているのは凄くいいなぁと思います。
荒木飛呂彦先生が好きな方、高橋一生さんが好きな方に、オススメ致します。
あ、あと、観終わった今、予告編を初めて観ましたけれど、ナレーションにちゃんとある人物が使われていて、凄く良かった。
本当にどうでもいい、と毎回思うのですが、ある人物が不倫騒動を起こしたとして、そのせいで批判されるのは本当にどうかしている、と思います。その人が謝罪しなければならないのは、家族とかその相手であって、社会的にはそれほど大きな問題なのでしょうか?仕事の機会を奪う、というのは生活の糧を奪う、という事に他ならないわけで、どうしても納得出来ません。
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