2025年1月31日 (金) 08:20
吉田大八監督 ギークピクチャーズ 吉祥寺アップリンク
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 3/9
筒井康隆原作の映画化、ということで楽しみにしていました。原作未読でも。筒井作品でちゃんと読んだのは、家族八景シリーズ、そして何と言っても私の世代だと「文学部唯野教授」です。この作品は何度も読みましたけれど、本当に笑えて学べる本。そんな筒井原作作品を、あの「桐島、部活止めるってよ」の吉田大八監督が撮るわけで、凄く期待値上がってしまいましたが、かなり面白かったです。
古い日本家屋の朝。老境に入った男(長塚京三)が眠りから醒めて朝食の準備をはじめ・・・というのが冒頭です。
渡邊儀助(長塚京三)はフランス文学の教授でしたが退官して10年くらい、妻にも先立たれ、古い日本家屋で1人で生活しています。
教え子からは、古井戸の修理、雑誌のエッセイの連載、など頼まれる事があり、生活を律していますが、その生活をモノクロで描かれていて、大変にシックに見えます。
しかし、その平穏も崩れ去るのですが、『敵』がなんなのか?とても漠然としていて、こういう所が凄く筒井作品!と感じられます。
私は敵とは、老化の事、と感じましたが、自分と言い換える事も出来ますし、世界と捉える事も出来ます。
そう言う意味で観た人と話し合いたい気分。
教え子に瀧内・由宇子の天秤・公美、そしてもうどこで出てきてもおかしくない、河合優実、役者も流石で目の演技サイコーな松尾貴史、どう考えても教え子の中ではダメな方の松尾・まずは君が落ち着け・愉など、出演しているどの役者さんも素晴らしかったです。
これは原作読まねば!な映画でした。
筒井作品が好きな方にオススメします。
2025年1月28日 (火) 09:14
クリント・イーストウッド監督 ワーナーブラザーズ U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 2/8
「陪審員2番」があまりに面白かったので、ついイーストウッドの個人的ベストを確かめたくなって、おそらく10回目くらいの試聴です。ですが、何度見ても素晴らしい作品。
畑を耕す一家の周囲に砂埃が舞い、嵐が訪れようとしています、そこにオンボロな車がやって来て・・・というのが冒頭です。
イーストウッドは落ちぶれたドサ回りをしている売れない歌手レッド・ストーバルで、姉の家に寄ったところで、甥のホイットとお爺さんと一緒にナッシュビルで開かれるグランド・オープリーというオーディションを受けるために旅に出ます。甥のホイットを演じているのは実の息子のカイル・イーストウッド、後のプロの音楽家でベーシストです。しかもイーストウッドの「ルーキー」とか「グラントリノ」の映画の音楽も担当しています。
イーストウッド作品は基本的にマッチョで漢汁溢れる映画がほとんどなんですけれど、この作品と、おそらくもう1つ「ブロンコ・ビリー」でだけ、違ったキャラクターを演じています。
それは負けを認める、夢破れる、世界の認識を自分で変える、という誰にとっても当たり前で歳を取ったり病気になったり精神的に落ち込めば誰にも必ず訪れる、その負を受け入れる男を描いていますし、すごく数少ないイーストウッドが、◯〇する映画です、一応伏せます。普通の多くのイーストウッド映画では描かれない場面です。ほとんどの映画でイーストウッドは負けないし、勝ち気で強気でヒーローです。だからこそ人気があるのもわかりますけれど、ずっと勝ち続ける、というのは無理な話しです。そして、正義のヒーローですら正義と自身の行動の葛藤が起こる世界の中で、イーストウッド的な男気はある種の狂気すら孕んでいると思いますが、それがほとんど無い、稀有なイーストウッド作品です。
この映画はリリシズムを描いていますし、ある種のノスタルジーでもあるし、自己憐憫という部分もあるでしょう。しかし、それ以上の事が起こっていると思います。
ある種のアメリカンドリームの終焉でもあります。
曲も大好き。
しかし邦題は本当に嫌ですね・・・
2025年1月24日 (金) 09:33
ニック・パーク監督 アードマンスタジオ Netflix
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 2/7
全然知らなかったけど、まさかの2025年に、ウォレスとグルミットの新作が観れるなんて!!!
しかも正統続編ですよ!!!驚愕の出来事。
クレイアニメ(ピングーを思い浮かべて貰えばそれがクレイアニメです)の決定版であり、動きで笑わせられる最高の作品が「ウォレスとグルミット」シリーズだったのですが、その中の羊のショーンに段々と作品の主演が移っていき、もうウォレスとグルミットの活躍は観られないのかと諦めていました。もちろんショーンも好きだけど、私はウォレスというかグルミット派なので、新作が作られていたなんて知らなかったので驚き、しかも続編ですよ!!!
前作を観たのは、たしか1993年か1994年の有楽町のとても小さなスクリーンでかかっていたのを覚えています。そして、この前作「ペンギンに気をつけろ!」は名作中の名作なんですけれど、サイドカーのシーンと並ぶ、鉄道のチェイスシーンが収められた作品。もう最高。
あ、萩本金一さんがウォレスの吹き替えをしていて、それは違うだろ、あまりに年代も・・・と思った事を思い出しましたよ・・・
ペンギンとの騒動から数年後、発明家ウォレスの朝は、やっぱりアレで・・・というのが冒頭です。
今作も流石の動きと笑いのセンス!!
しかし私としては、初期のウォレスとグルミットの時ほどの衝撃は無かったと感じました・・・観ている時は最高だったんですけれど・・・
もちろん、凄く楽し作品です、ですが、ある発明が1枚かんでいる為に、どうしても、この発明作品が、後付けで組み込まれている感覚になってしまう鑑賞後の感覚になります。
もっとウォレスとグルミット、そしてマッグロウの絡みが見たかったわけです。
おとぼけ発明家でボケ役のウォレス、その相棒で報われない世話焼きのグルミットのコンビの活躍がもっと見たかったわけです。でも、今作もサイコーなんですけどね。
前作の鉄道チェイスシーンのような驚きが、少なかった、というだけで、基本動くウォレスとグルミットが見られれば幸せです。
クレイアニメが好きな方にオススメします。
2025年1月21日 (火) 09:24
是枝裕和監督 Netflix
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 1/6
NHKで1979年にドラマの原作脚本として向田邦子さんが書いた脚本、を基に是枝監督が2025年にNetflixで再ドラマ化されたものです。
全7話。これは最初のNHK版と同じ話数です、
かなりお金かかっています。そしてなるほど、先日2003年に森田芳光監督が映画化しているのを観ましたが、結構違う。そして、思いのほか、映画版の脚本はかなりブラッシュアップされた7話の脚本を、よく135分にまとめたな、と感心しました。物凄く良く出来てる。そしてもちろん、凝縮されてはいるものの排除された部分もそれなりにあるので、より是枝監督版の7話ドラマ化は、NHKの最初の映像化作品に、忠実なんだと思います。
で、NHKの最初のドラマ版を観ていない、しかしその後の森田芳光映画版を観た人間の感想として、やはり長女周囲のキャスティング、長女が活ける華を提供している料亭の主人と妻まで含めても、映画森田版の方が笑えると言う意味では抜きんでていたな、と思います。大竹しのぶと比較される宮沢りえも可哀想だけれど、というかこの企画、実は演者にはかなり負荷がかかる上に、勝ち負け判定を受けるのでキツいだろうなと思います。大竹しのぶと桃井かおりにオーバーアクションでコメディしているのを上回るの難しすぎる。
次女は尾野真千子さんで、この人は凄く良かったです。私は初めて観た人なんですけれど、何というか、今この方が何歳なのか?ワカラナイのですが、今が人生で1番輝いている人、に観えました、他の作品を観ていないし、若い頃の事も全く分からないのですが、そういう美しさがありました。で、恐らく、映画版だと分からなかったのですが、この次女が主役なんですね。「高慢と偏見」でも次女が主役でしたけれど、今作も恐らく、主役。なので、黒木瞳と小林薫夫婦との比較だと、尾野真千子と本木雅弘夫婦の方が面白味はあったと思います。
三女と四女はあまり強く違いを感じさせないキャスティング。私はあまり広瀬すずさんに対して、上手いとか綺麗とかどうしても感じないのですけれど。蒼井優さんと深津絵里さんは両名ともそつがない、このキャラクターを演じている、という感覚。
是枝作品として、ずっと見てられるし安心感もあるのですけれど、映画版の方が濃縮。そして脚本の改定もうまく行っていると思いますし、肝はおそらく母の存在。この母に重みを感じるか?で評価が分かれそうです。
父國村隼さんも、仲代達也さんのおとぼ感とは一味違った面白さがありましたし、これはこれで面白いと思います。
昭和の香りを現代によみがえらせるの、大変な事だったと思います。
そして、現代的なアップデートが効かない脚本に挑んでいるのが凄い。どう考えてもなかなか評価されるの難しい事だと思うのですが、チャレンジング。
四姉妹モノの原点、若草物語も読んでみようかな、という気になりました。
向田邦子ってエッセイの名手、という認識でしたけれど(あと飼ってた猫)、もしかしてテレビドラマ脚本も凄いのか?何か読んでみようかな、と思えた。
でも、また全世界の半分を敵に回すけれど、自分の安全は保障された上で、こういう生活の様々な苦労とか気疲れとか喜びとか運命的な何かで、感情が振れ幅いっぱいに、グリグリ動かされてるのを、好んでいる、ように、私からは見える。平穏で何も起こらない方が安全だと思うのだけれど。
昭和な世代の女性の生き様に、興味がある人にオススメします。
それと、確かにチャレンジングなんだけれど、向田邦子がNHKドラマでやっていたのは、1979年で、脚本も1979年。つまり現代を描いているわけで、是枝監督なら、現代の四姉妹モノを新たに作れたのではないか?その方がより是枝監督作品っぽいのでは?とも思いましたが、そういうのは次の作品でやるのかな。
2025年1月17日 (金) 09:00
黒沢清監督 Nikkatu Amazonprime
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 0/5
2024年の評判の良かった作品の中で見逃している作品だったので。久しぶりに黒沢清監督作品に触れるなぁ。
とある倉庫に積み上げられているダンボールを前に交渉する3名の人物が・・・というのが冒頭です。
凄くメフィストフェレス的な話しになっていくのが、荒唐無稽な話しになっていくのが、流石黒沢清監督。ロケーションも、何処から見つけてきたの?という驚きもあって、不思議な感覚。
主演役者の菅田将暉の魅力が詰まった、ホラー?サスペンス?映画でした。
ネタバレ無しだとこの映画の魅力を伝えるの難しいと思いますし、黒沢清監督作品に触れた事が無い人からすると、結構真剣に何が何だか?という人がいても不思議じゃないです。
ありのまま、観たまま、を受け取る作品だと思いますけれど、いろいろな感想があって良いと思います。
菅田将暉の変わらない表情やしぐさを楽しむ作品。
転売ヤーって忌み嫌われている職業だと思いますけれど、取り締まりも難しいのでしょうね。そして映画内のセリフを引用しますけれど「楽して稼ぎたいのに稼げない、全然楽にならない」という人が手に染めそうな感覚があります。
しかし、どんな職業であったとしても、その道のプロフェッショナルな仕草にはハッとさせられますけれど、この映画の中で菅田将暉さんが、とある非常に特異な体験をしているのに、転売ヤーのプロフェッショナルさを出すところが1番笑ってしまいました。
アシスタント、という言葉の意味も、いろいろ考えさせられました。
あ、私結構ダメだ、というのがこの映画の古川さんです・・・濱口竜介監督作品「偶然と想像」の時に植え付けられてしまった嫌悪感が拭えません・・・それと、この人とそっくりと感じてしまっているのが岸井さん・・・凄く似てる気がするというか、最近若い人がみんな同じに見える、という老人力が付いてきたので、まぁ仕方ないのかも。
あ!そう言えば、スモーキーが出てきます!!スモーキー!久しぶりに出会った!かっこいい!
黒沢清監督作品が好きな人、そして謎な体験を求めている人に、オススメします。
私はラスト、世界の終わり、もしくは地獄に至った、と思っています。あの空!という意味で、メフィストフェレス。