井の頭歯科

「沈黙 サイレンス」を観ました

2017年1月27日 (金) 12:54

マーティン・スコセッシ監督     カドカワ

どちらかと言えば大好き!とまで意識したことが無い監督ですが、もちろん凄い監督ですし、何作か見てます。

そして原作の遠藤周作「沈黙」も読みました(原作の感想はこちら )。

2時間40分!という長い尺でしたが、素晴らしい作品でした。

江戸時代初期、日本でのキリスト教布教に使命を感じたフェレイラ神父が棄教した、という報告を受けたイエズス会でフェレイラの弟子であるロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とガルぺ(アダム・カイロレン・ドライバー)の2人の神父(パーデル)が日本に向かうのですが・・・というのが冒頭です。

特に主演のアンドリュー・ガーフィールドの苦悩の演技も良かったのですが、非常にズルくて弱いキャラクターのメイクを含めた佇まい、その歩き方までもがリアルに感じさせるキチジロー役の窪塚洋介、ちょっと間違えそうになるくらいジョセフ・ゴードン=レヴィットに似てる浅野忠信、イノウエさんってきっとこんな感じだったんであろうというくらいにこの人でしか想像出来なくなってしまったイッセー尾形さんの3名が本当に凄かったです。

そしてもう1人モキチを演じた映画監督であり最近は役者さんで目立つ塚本晋也さんです。もう地元の人にしか見えません・・・

この映画はキチジローというキャラクターをどう捉えるか?で評価が分かれそうです。

キチジローのズルさや弱さを認める事が出来るのか?

人質を4名出さねばならなくなった際、外敵に対して武力では敵わない状況下での、さらなる弱者への圧力の大きさを見せつけられます。同調圧力の強さ、それまでの非常に献身的で清らかとさえ言える信仰の姿を見ていただけに、そのコントラストがとても響くのですが、この辺に海外の方から見た日本人の姿の特徴と捉えられる部分があるように感じました。

転ぶ という表現、その言葉の音の強さもあって、とても重く聞こえますね。

また日本を 沼 という表現されるのも印象的です。

キリスト教という宗教の布教活動、キリスト教を知らないものを十把一絡げに、粗野で無知、と決めつけている野蛮さを浮き彫りにしている部分も恐ろしいです。しかしそれに対抗する日本側の、殉教者を出すことでさらなる結束を生むという判断からの対抗策の無残さ、非人間的な行為がまた、キリスト教徒に人間性を認めないかのような(それでも、日本側は海外の言葉を学んで文化として判断しているように見えますが・・・)行為が出来る事も、闇の深さを感じます。

信じる、という事は、祈るという事は、という行為について深く考えさせられる映画だと思います。

暴力的、精神的暴力での棄教には賛同出来ませんし、だからこその悲劇なんですが、これが史実という部分も本当に凄いです・・・

私はロドリゴが聞いた声は、ロドリゴの内なる神が発した言葉だと思います。内なる脳が下した理不尽を受け入れるための方便としての神、という意味ですが。

私は信仰を持たない人間ですが、信仰の事を考えるとどうしても転向の事を考えてしまいます。

転向という言葉は非常にネガティブなイメージで語られる事が多いです。私もある本を読むまでそう思っていました。それが鶴見俊輔著「戦時期日本の精神史 1931-1945」(の感想はこちら )という本です。

知識の無い状態から、学んでいく事で、その時の自分なりの正しさを一定方向で保持する事は、信仰と似ていると思います。しかし、ある時、それまでの学びを否定する出来事や真理を知った時に、それまでの自分を否定まで行かなくとも、過ちを認められるか?という判断を迫られます。その事で過去の自分の過ちを認められた結果、それまでと違う方向に進む事を転向と呼ぶのであれば、転向しない人の方が少ないはずです。真逆に転向する事は少し極端だと思いますが。

閑話休題

とにかく、いろいろな要素を含んだ作品である事は間違いないですし、映像も素晴らしく綺麗です。特にキリストの絵の顔のアップがあるのですが、あの絵が見てみたくなりました。

信仰に興味がある人にオススメ致します。

「セッション」を見ました。

2017年1月13日 (金) 09:47

デミアン・チャゼル監督     ギャガ

ジャズを扱った映画ですし、ずっと興味があったんですが、今頃になって観ました。

これは音楽のジャズを扱った映画ですが、スポ根モノ映画だと思います。

賛否両論なのは分かりますが、それにしてもちょっと音楽の描写は低く…こんなぬ偏った表現は珍しいですが、だからこそスマッシュヒットしたのかも。

歴史に名を残すようなドラマーになりたい、と強く願うニーマン。バティ・リッチのような技巧的かつテクニカルなドラマーを目指しています。そこで有名な音楽大学に進学し、猛練習に励んでいます。音楽大学の有名な教師であるフレッチャーに見いだされたい、と強く願い、彼のビッグバンドに加入したいのですが・・・というのが冒頭です。

ドラムに焦点が当たっている映画って少ないと思いますが、良かった部分と、それはいくらなんでも、な部分の入り混じった作品だと思います。

基本的にはスポ根モノが好きな方にオススメします。

アテンション・プリーズ!今回はネタバレ有の感想ですので、既に観られた方に読んでいただけたらと思います。

まず、自動車事故を起こして演奏させるのはちょっと。まあ非常識だからこそ音楽に賭ける意気込みを表しているのでしょう、帰省した場面で語られりバードのくだりもそうなのでしょう。が、チャーリー・パーカーが評価されたのは音楽であり、生き方ではないですし、教育としても間違っていると感じました。

また、誰しもスパルタ的な教育を受けた事は多少はあると思いますが、特に楽器の経験がある人は理解出来ると思いますが、その裏側に愛情があるからついていけるのだと思います。スポーツでも同じだと感じますし、楽器もスポーツも私は経験があります。

フレッチャーの負の側面を、アンドリューが話したか?多分ここが肝で、私は話していないと感じました。何故ならアンドリューもフレッチャーと同じ考え方をする人間だからです。まあ、フレッチャーに負け、自分にも負けたわけですが(演奏出来なかった、事故を起こした事含めて自分の責任)、しかし考え方はフレッチャーと同じなので、考え方を否定してはいないと思いますし、彼のプライドが許さなかったと思う。もし、話していたなら、フレッチャーに誘われノコノコ舞台に上がらないでしょう。

話していないなら、アンドリューはフレッチャーと同じ側の人間である事を認めているわけですし、だからこそ舞台に上がるわけです。その上でのフレッチャーの仕打ちな訳で、そこに打ち勝つ為に舞台に再度上がるのですが、だからと言ってドラムアドリブソロで見返そうとするのは映画的な表現としてはアリかもですが、音楽表現としては…自分のスタイルを確立し、それが認められて初めて評価されるのだと思います。
それにもっと凄いドラムアドリブソロはいっぱいありますしね。生だと衝撃も大きいと思います。
でも映画としてなら楽しめました。頑張れアンドリュー、という気持ちになりました(昔高校生の頃、同じようにビックバンドに所属していまして、熱血的なコーチに指導を受けた事を思い出します、いつも怒られりから、ついたアダ名が 避雷針 …)。

フレッチャーの言う『だからジャズが進歩も評価もされない、流行らない』と言う趣旨の発言がありますが、いや、ちゃんと理解される人にはされてるし、進歩もしてるから!フレッチャーの認める世界ではそうなのかも知れないが、だとするとフレッチャーが1番ジャズを馬鹿にしてるし、進歩を認められてないのでは?とは思います。多分ここが1番この映画に乗れなかった部分です・・・

でも、観てる時はそこそこ、アンドリュー頑張れ、なんですけど。

で、この監督の次回作「ラ・ラ・ランド」がとても楽しみだったので見たのですが、うーん、少々期待値が下がってしまいましたが、ライアン・ゴズリングも出てますし、劇場に観に行きたい!

そして今月に公開される「沈黙」マーティン・スコセッシ監督が早く観たいです!

原作を読んでいます(の感想はこちら随分前ですが・・・)が、凄く気になる映画です。

あけまして、おめでとうございます!

2017年1月6日 (金) 09:24

1月4日より、普段通り診療しております。

仕事が休みになると風邪をひくのは心が弱っているからなんでしょう・・・

凄く気になる昨年見逃した2本の映画を見ました。

「帰ってきたヒトラー」     デヴィッド・ヴェント監督     ギャガ

コメディタッチの予告編も流れていますし、DVDのパッケージも非常に笑える作品を装っていますが、実のところ非常にハードな内容です。

2016年のトランプ現象のような、怖さを見せつけられます。

現代ドイツに、突然、ヒトラーがタイムスリップしてきたところから話しが始まります。あくまでヒトラーは本気の発言を繰り返しているだけなのですが、周囲の人物にはコスプレのヒトラーを『芸人』として受け入れていくので・・・というのが冒頭です。

恐ろしいまでのホラー作品です。なんと言いますか、ドキュメンタリー風の作り、つまり現代ドイツ人の皮膚感覚、それもポリティカルコレクトネス的な部分を剥いだ後の部分を見せつけられて、本当に恐ろしいです・・・

人民というか市民が責任を取りたくないのであれば、私が責任を負ってやろう、だから判断を移譲しろ、と言ってくるヒトラーのぶれないアジテーションには、判断を任せてしまう一般ドイツ人がたくさん出てきて怖いです、多分日本はもっとだと思うので・・・

映画の結末の怖さはちょっと類を見ない恐ろしさです。また続けて観たマイケル・ムーアの「世界侵略のススメ」も合わせて、2016年はいろいろ崩壊が始まった年として後年ふり返られることになりそうな気がしてなりません・・・

「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」     マイケル・ムーア監督     角川

マイケル・ムーアがアメリカ軍から依頼を受けて、世界の様々な良い所を取り入れよう!という主旨でワンマンアーミーとして世界を巡る話です、いつも通りアポなし突撃モノでした。

マイケル・ムーア監督はノーム・チョムスキーさんという言語哲学系の学者さんのお弟子さんだと理解していますが、いわゆる日本のテレビ番組の「進め!電波少年」を思い浮かべて頂けると分かり易いです。アポイント無しで突然答えにくいインタヴューをしてそのドタバタを楽しむタイプの作り方です。

何しろ第2次世界大戦後、アメリカが加担した戦争はかなり負けが込んでいます、ベトナムも、アフガンも、イランも・・・

最初に訪れるのはイタリア。イタリアでは有給休暇が8週間もある事に驚かされます。しかもランチ休憩が2時間・・・

その他にもフランスの学校給食の豪華さ、食を大事にするメンタリティ、大学進学にお金がかからないスロベニア(に押し掛けるアメリカ人大学生)、フィンランドの宿題を無くした事での学力向上、ノルウェイの犯罪に対する考え方(この中でかかる『ウィー・アー・ザ・ワールド』が最高過ぎる!!!)と収監施設のおおらかさ、麻薬の取り締まりを止めた事でのメリットを謳うポルトガル、そしてアイスランド・・・

どれも非常にポジティブで日本で言う欧米化は結局アメリカ化であってヨーロッパは入ってないんだなぁとより強く意識させられました。

この映画では割合ポジティブな面を強調していますし、帰ってきたヒトラーではネガティブな面を強調しているとは思いますが、どちらにでも転びうる、という部分の怖さを感じました。

2016年に見忘れてしまった方にオススメ致します。

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