井の頭歯科

「虐殺器官」を観ました

2017年2月24日 (金) 09:34

村瀬 修功監督     東宝

ついに、やっと、映画化されました。

ここ10数年の中で読んだSF作品の中では(めちゃくちゃ少ない数ですが・・・)1番好きな作品の映画化です。

とにかく原作に忠実な作りになっています、母親とのくだり以外は。

原作の感想はこちらですが、とにかく原作を読まれている方は是非のオススメです。

個人的にはハリウッドでお金をかけて実写化して欲しい作品です。ですが日本の原作ですし日本で製作するならアニメーションでしか無しえないとも思います。

9.11以降の世界を見る作品だと思いますし、トランプ政権が生まれた今観る価値もあると思います。

内容が非常にヘヴィーなので見る人を選ぶとは思いますが、全く知らないのもどうかと思います。とは言え「人は見たいものしか見ない」モノですし、そういう意味では個人的にとても気になるテーマを扱っています。

9.11以降の世界でトレーサビリティや監視カメラの存在により、個人の監視が厳しくなった世界。その中でどのように平和を保つのか?持てる者がいかに持たざる者に接するべきか。

カフカ的な不条理とどのように向き合うのか?を扱った作品です。

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を見ました

2017年2月17日 (金) 13:04

アダム・マッケイ監督       パラマウント

お金に関する映画「マネー・モンスター」は面白かったんですが、どちらかと言えばこのマネー・ショートの方がより面白かったです、なかなかに凄い映画です。もちろんサブプライムローンに端を発するリーマンショック及び金融危機の話しです。

マイケル(クリスチャン・ベール)は投資ファンドのトップであり、過去に医師免許を取得している天才ですが、左目を病気で失い義眼であった事から人付き合いに難のあるトレーダーです。部下からも変人扱いされているのですが金融業界の小さな異変に気が付きます。そこから数字のみを頼りにとある結論を得ます。また全然別の大手金融業モルガン・スタンレーの傘下にあるチームを束ねるマーク(スティーブ・カレル)の基にジャレド(ライアン・ゴズリング)が現れて途方もない投資を持ちかけられるのですが・・・というのが冒頭です。

実際に起こってしまった出来事である金融危機がどのようなものであったのか?を描くのですが、正直全部理解出来たとは言えない非常に難解な仕組みの話しです。が、難解ですが理解できないのではなく、難解に見せかけて相手の思考力や判断力を停止させる事をある種目的化して儲けていたという事実に即している作り方になっている事に、映画を見ながら気が付くとよりスリリングになって面白いです。こういう事を思いつくのが流石ですね、アメリカ。でも儲けという拝金主義的なところまで進んでしまうのもとてもアメリカ的だと思います。

俳優陣がものすごく豪華です。クリスチャン・ダークナイト・ベール、スティーブ・カレル(ずっとコメディの人でしたが、最近は「フォックスキャッチャー」など渋い役も演じてますが、私は「エンド・オブ・ザ・ワールド」が好きです)、そしてライアン・ブルーバレンタインのディーン・ゴズリングまで!さらにブラッド・ピットも出てきます。ものすごく豪華ですが、扱っている内容は極めてシビアでヘヴィーな内容なんですが、不謹慎にも、あまりの現実のひどさに、笑いさえ誘う映画です。

この中ではスティーブ・カレルの怒れる男が最も気になりましたが、それ以外の出演者が非常に良い感じでした。特に調子に乗っている若者2人組を演じているフィン・ウィットロック(下部写真左)とジョン・マガロ(同写真右)のコンビが見ていて飽きないんです。あまりに子どもじみた感じなんですね。でも金融という世界で莫大なお金を扱っています。この2人のセリフにある「誰もいないね」「そりゃそうだ」「いや、大人がさ」という掛け合いが最高に素晴らしいシーンだと感じてしまいました、凄く良いシーンでした。

都合3つのチーム(うちクリスチャン・ベールのみ個人的な扱いをしておりますが、基本的にはチーム。でもクリスチャン・ベールの孤独を描くにはこの演出が最高です!)クリスチャン・ベールの数字だけを頼りに金融に詳しいからこそ破たんする未来を知ってしまう個人、偶然見つけたほころびをリーダーであるスティーブ・カレルが怒りの原動力で矛先を決めて実地で解析していくチーム、ふとした偶然から人生の一大の賭けを欲して行動する儲けに特化したコンビ+師匠のブラッド・ピット、この三者三様が描かれています。

なんとなくですが、怒れるスティーブ・カレルはその相手を見つけようともがいているのに対して(節度ある人間であるからこそ、根拠を基に事態を招いた元凶を探している)、クリスチャン・ベールは怒りが自分の中に向いているように感じます。だからこそ激しいメタルミュージックを聞いているような印象を受けました。特にメタリカのマスターのドラムをたたくんですが、このシーン、それにクリスチャン・ベールの演技も相まって非常に孤独感が増します。

中でもブラッド・ピットが演じているやんちゃコンビの師匠が、コンビを諭すセリフに、この映画のすべてが詰まっていると感じました。システムが巨大すぎると善悪とか公平性とか個人の価値はほぼ意味をなさないと思います。だからこそ、私は現実にこの世界がどうなったのか?が知りたいですね、デリバティブの話しも非常に胡散臭く感じますし。

また、私はアメリカの現代に詳しいわけでもないですが、いちいち年号を出す部分と、象徴的なスナップ写真で年を分からせる演出がさえてます。まぁワカラナイ部分も多いんですが、ブルースブラザーズで分からせてくれると気持ちがグッとあがります。

結果はみんなが知っています。金融業界の破たんです。しかし、どのようにそれが起こっていったのか?またどうして防げなかったのか?を考えさせられる話しです。私は金融について全然分かりませんし、でも金融システムを取り込んだ社会に生きているので、とても怖いです。この中のひとつの会社を描いた作品が「マージン・コール」(の感想はこちら)なのだとするととても大きな規模を扱った作品なんだと思います。

途中に出てくる印象的な示唆の一文が数回差し込まれるんですが、マーク・トゥエインがとてもアメリカらしかったのに、突然村上春樹が出てくるとびっくりしますね。「1Q84」からの引用みたいでしたが、もし私に引用させてもらえるなら「ダンス・ダンス・ダンス」から引用したいです。高度資本主義社会は無駄な消費によって回っている、とかいう文章があったと思います。

でも今のところ、アメリカ経済は強い事になっていて、バンカーが大量に刑務所送りになったわけではない部分も恐ろしい。そして何より現在の大統領のポスト・トゥルースとかオルタナ・ファクトとか本当にジョージ・オーウェルの「1984」(の感想はこちら)並の世界になってて恐ろしいです。

現代に生きているすべてのお金を扱う人にオススメ致します。

「マネーモンスター」と「キュア」を見ました

2017年2月10日 (金) 12:10

ジュディ・フォスター監督         ソニー・ピクチャーズ

なるほど。

ジュディ・フォスター監督作らしい女性大活躍映画。

なので男はかなり間抜けに見えますが、そこが可愛い、と言える人もいると思います。

金融バラエティ番組「 マネーモンスター」 のディレクターのジュリア・ロバーツと司会者ジョージ・クルーニーの番組に、この番組のおかげで全財産をすった犯人が忍び込み…というのが冒頭です。

軽薄な司会者ジョージ・クルーニーがおバカ全開で笑わせてくれますが、これをやっても許されるキャラクターであるというのを観客に理解させるのが凄いです。これは日本人俳優で言うと大泉洋さんにも言える愛嬌だと思います。愛嬌が半端なくあるジョージ・クルーニーと大泉洋。こういう人は何をやっても許されそうに思えます。

映画としては、もう少し突っ込んで欲しい部分もありますが、あくまでエンターテイメント作品としてはこの辺が限界か。

私は金融モノなら断然「マージン・コール」を推します。でも普通に面白いですし、何しろ100分を切る映画は本当に良く練られた脚本だと思いますね。この映画も98分!その辺も流石ジュディ・フォスター!

犯人役が可哀想でもあり、自業自得でもあり、考えさせられるが、彼女にあそこまで言われたら、ちょっと落ち込みます・・・

で、もうひとつ、こちらはヘヴィーな映画です。

「キュア」を見ました。

黒沢 清監督         大映

公開(97年公開)当初に見逃してからはや20年!そういえば何となく見なくちゃと思いつつ手が伸びなかったんですが、今頃見て衝撃を受けてます。

ちょっとこれはエイドリアン・ライン監督作「ジェイコブズ・ラダー」(90)でもあり、ジョナサン・デミ監督作品「羊たちの沈黙」(91)でもあり、ブライアン・シンガー監督作品「ユージュアル・サスペクツ」(95)でもあり、デヴィッド・フィンチャー監督作品「セブン」(95)でもあり、今 敏監督作品「パーフェクト・ブルー」(97)でもあり、ポン・ジュノ監督作品「殺人の追憶」(03)でもあり、もちろんそして何といっても傑作である青山 真治監督作品「ユリイカ」(01)に似ていますが、とにかく凄い作品でした・・・ホント映画っていっぱいあるから全部は見れないし、しょうがないけど、未見だったのは恥ずかしいです・・・

猟奇的な殺害事件が続いている。どの事件も犯人はその場で逮捕されていて、殺害も認めているが、しかし動機が不明で、しかも殺害方法のみ酷似しているという難解な事件を捜査する刑事高部(役所 広司)は、家族にも問題を抱えストレスフルな毎日の中で事件を追っているのですが・・・というのが冒頭です。

ものすごく衝撃受けました。

受け手にいろいろ任されている見せ方も、どこまでが映画内事実でどこからが映画内妄想なのか、それも誰の妄想なのか?が非常に曖昧模糊で不明瞭、境界がはっきりしません。

ですので、どう受け手がとらえたか?で話が全然変わってくると思います。

主演の役所 広司さんが凄くいいです、こういう役でもいいですね。そして肝は何といっても1番読めない役を演じている荻原 聖人さんが不穏過ぎていいです。つかみどころが全くない、それでいて超常的な違和感もあり、得体のしれなさが素晴らしい。

舞台となる病院、民家、などロケーションがまた本当にどこから探し出したのか?というくらい不穏でオカシイ場所です。そして音楽とも言えないBGMの不協和音が嫌が応にも暗い気分にさせられます。

また、メスマーという人物が本当にいた事も恐ろしい。

何を聞かれても疑問符で答えるという問答の恐ろしいまでの困惑感。話しが堂々巡りを繰り返していくと、どうしようもなく積もっていく虚無感と理不尽さ。

本当に衝撃作。

これは黒沢清監督作品をいろいろ見なければ、と思いました。

サイコホラー、サイコサスペンスが好きな方にオススメ致します。

アテンション・プリーズ!

ここからネタバレありの感想です。未見の方はご遠慮ください!この映画はかなり嗜好が分かれる作品だと思いますので、誰にでも勧められる映画ではありませんが7、サイコホラーが好きな方には是非のオススメです!

この映画の恐ろしい所は、快楽猟奇殺人ではなく、とにかく不穏感を醸し出す映画体験だと思います。どこまで行っても明確な答えがない。そのどうしようもない感覚を抱え込まされる感じです。よくよく考えればもしかすると何かの答えがあるのではないか?暗示されていたのではないか?という汲み取れなかったのではないか?という欠落感があります。なので何度も見てしまいますね・・・

催眠術がここまでではないというのは間違いないんですが、しかし、催眠術が出来る出来ないか?ではなく、人の心の奥底は理解できないという当たり前の事が恐ろしいのです。

キュアという言葉は癒すという事ですよね?しかしこの癒し、という事の意味を改めて考えさせられます。

もしかすると犯人に仕立て上げられた人々の本当の、心の奥底の渇望を癒す行為を間宮が引き出しただけなのかも知れませんから。

この思考の堂々巡りが恐ろしい。しかも精神科医役で登場するうじきつよしがしつこく、何も信じるなよ、深入りするなよ、と常に語り掛けてきます。精神科医と言えばこの道のプロです、分からない事に一定の意味や仕組みを説明できるはずなのに、うじきつよしの辿る結末を考えると本当に怖いです。

何しろよく考えると現実にもそうなのかも、という感じがするからです。

精神的な、心の奥底に人が何を思っているか?永久にワカラナイ、という事を、何も信用できないという寄る辺の無さ、底の抜けた感覚を持ち続ける事の不穏感。本当に凄い作品だと思います。

個人的な解釈ですが、あの寒空に立つ館は心の奥底に分け入った事の暗喩で、映画内現実では、高部が間宮を連れ出し殺害、精神科医も殺害、人の心に潜む欲望の救済者として無自覚に働き始めてしまった(何かの暗示も必要なくウェイトレスを突き動かした・・・)、という感じになりました。

何度も観ないとワカラナイ、その上その時の受け手の感覚で結末が変わる優れた作品だと思います。

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