井の頭歯科

「ウィッカーマン」を見ました

2015年9月25日 (金) 09:45

ロビン・ハーディ監督     ケイブルホーグ

いつも通り友人に借りました、ある種の人たちから熱烈に受け入れられている作品、スコットランドが舞台のホラー作品、という概略は知っているものの、見たことが無かったです。親切な友人に借りました、ありがとう。
水上機(水の上に着陸出来る飛行機)に一人乗り込む警官ニール(エドワード・ウッドフォード)はスコットランドの小さな島に子供が行方不明になった事件の捜査に乗り込みます。しかし、敬虔なキリスト教徒であるニールにとって、この小さな島独特の信教に嫌悪感を持つものの、捜査は難航し・・・というのが冒頭です。
あまりネタバレにならないようにしますが、出来れば事前情報の全くない状態での鑑賞が望ましいのは間違いないです。また、ホラー作品という私の認識は少し違ったとも鑑賞後には思われました。これは異文化や倫理観の違いを描いた傑作であり「普通」とか「信仰」とか「日常」など普段だったら気にかけない些細な事柄であっても、異文化と触れ合う事でその自分の「思い込み」とか「刷り込みを」で無自覚に行われている事に驚くことのできる作品です。
役者さんも素晴らしく、非常に鬼気迫る演技でしたし、最も特徴を感じたのは雰囲気と言いますか、島に流れる空気感のおかしさ、それをリアルに感じさせる導入の音楽です。スコットランドなんて行った事ないのですが、こういうところがあるのかも知れない、と思わせるに十分です。
ある種の異文化に興味のある方にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ちょっとだけネタバレに繋がる感想があって、もう既に映画を見た、という方に読んでいただけたら嬉しいです。
この作品を見て最初に思い浮かんだ作品は藤子・F・不二雄先生のSF作品「ミノタウロスの皿」です。
ある種の異文化に置かれることで自分の刷り込みの異常さ(もちろんその世界では普遍的な価値観)に気付かされる驚きです。似たような作品で「気楽に殺ろうよ」にも通じる価値観の揺らぎをよくモチーフにされていると思いますが、中でも連想させるのが「ミノタウロスの皿」でした。
もちろん謎解きのような、事実を知ってゆく様、サマーアイル卿のたくらみがラストで明かされる場面の凄さ、その際の画像の異常さも素晴らしいのですが、自分の中の価値観に縛られている事を自覚していくニールの自我の揺らぎが鮮明に描かれていて、とても面白かったです。
ニール警部の最後の言葉の意味だけでなく、その使われ方の示す意味を知りたくなりました。

「まぼろしの市街戦」を見ました

2015年9月18日 (金) 09:32

フィリップ・ド・ブロカ監督       ユナイテッド・アーティスツ

友人にオススメして頂きました!いつものごとく、そのチョイスに痺れます。正直全然知らなかった監督です。ウィキ情報ですとトリュフォーの助監督を務めていたとか。後から知ったんですが、納得してしまいました。

第1次大戦末期のフランスのとある城塞都市から、ドイツ軍が撤退を開始しています。しかし、ただ撤退するのではなく、街を吹き飛ばすほどの爆弾を仕掛け、イギリス軍が街に入った後に爆発させようと準備しています。その断片的な情報を掴んだイギリス軍は、フランス語が出来るというだけで抜擢した伝書鳩通信兵プランピック二等兵(アラン・ベイツ)に斥候を命じますが・・・というのが冒頭です。
とてもアイロニーに満ちた作品ですし、ただ上辺だけ楽しむ事も出来る作品だと思いますが、それだけでなく、非常に練られた脚本だと感じました。また画面に映る様々なモノに趣向を凝らし、ちょっと現実離れした、ファンタジックに見えてリアルな部分もあり、不思議な感覚に陥ります。
キャラクターとその衣装がとても印象的で、演じる役者さんの演技(とても繕ったというか、大仰な感じ)も相まってリアルが溶解していくような不思議な感覚に陥ります。とても中島らも的な、呪術的な世界観を味わえるのです。特にジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドが演じるコクリコがとてもエキセントリックで素敵です。どこかで見たことある感じがするんですが、何処で見たのか思い出せない・・・似ている人なのか?名前は全然覚えてないので・・・
で、そのサイケデリックとも言えるかのような世界観を主目的に作られているわけではいのが秀逸でして、ちゃんと批判精神を、風刺を感じさせるんです。例えばフランス映画でサイケデリックでというと私には「ワンダー・ウォール」(ジョー・マソッド監督、ジェーン・バーキン主演、音楽は大好きなジョージ・ハリスン!)になってしまうんですが、あの不思議な感覚よりも、もっとメタ構造になっていて、不思議、綺麗というだけでない独特のデカダンスを感じます。何処か背徳感があり、それでいて現実が遠のくかのような不思議な感覚、でも決してグロテスクでもないんです。これがグロテスクであれば多分ホドルスキーみたいな作品になると思うんですが、グロテスクにしない絵柄です。

でもグロテスクな部分が無いわけではなく、映画の最後はビターというかある種の人間のグロテスクを表していると思います。

サイケデリックな作品が好きな方、デカダンスに興味のある方にオススメ致します。

カテゴリー: 映画 感想 | 1 Comment »

「ネオ東京裁判」を読みました

2015年9月11日 (金) 09:37

上念 司 倉山 満 著     PHP出版

太平洋戦争(いろいろ呼称問題があるのは承知していますが、私はこの呼称を使いたいと、今の知識では考えています)が何故ここまでヒドイ敗戦だったのか?についていろいろ考察している著書に興味があります。いわゆる東京裁判が茶番であったとしても、戦争に負けるとはそういう茶番を踊らされる事だと思うからです。そして日本人が何故このような状況になってしまったのか?を考えないとまた同じ轍を踏むと思うのです。その為の検証は重いと思いますし、重要ですが、感情論を排して行うべきだと考えます。でもなかなかそういう著作には巡り会えません。私の情報を汲む能力の問題もあるでしょうけれど、検証する本は少ないと思います。

本屋で平積みにされていて、その帯の文言「敗戦責任が誰にあるのかを徹底追及!」という言葉に惹かれ、まえがきを読んで購入を決まました。ある意味非常に偏った本ではありますが、こういう面を見ている人もいるのだな、という認識を得る事が出来ました。検証の必要な部分も(私が不勉強で知らないからですが)とても大きいのですが、知らなかった考えや正反対に近い考えを知る事で立体的に考えられるようになっていきますし。でも、とても大きな出来事なので、なかなか実像が掴めないという部分もあります。多分ずっと考えたり、読んだり、誰かと話したりしながら、決めつけるのではなく中腰力(精神科医春日武彦先生の造語で、物事の判断を宙ぶらりんにしたまま耐える事です。思考停止なのではなく、まだ判断出来ないモノについて保留するチカラです。判断を下してしまうのは楽な事ですよね?これ以上考えなくて済みますし、考えた結果が信じるに変わりやすい危険性を避ける事が出来ます)を持って耐えられるか?が重要な気がします。完全に善とか完全なる悪ってなかなか存在しないですしね。

本書は太平洋戦争末期の時点から、何処に引き返せなかった点があったのか?誰に責任があったのか?この時点でどのような選択肢があったのか?著者らがこの時だったら何が出来たのか?を説きながら、時代を遡っていく形式を取っています。この考え方に私は共感を持ったので本書を読んだ次第です。

経済面から考えると当時の日本がいかに今の○○○と同じ状況だったか?というのが良く分かります。グラフや表を用いた数字による分析は説得力がありますね。また私が見聞きした本では名将という事になっている山本五十六海軍軍人がこの本、著者らにとっての評価は「世紀の愚将」と言ってます。理由は読んでいただいた方が良いのですが、私は納得は出来なかったですが、そういう面もあるかな?くらいは感じられました。少なくとも、低評価な意見を聞いたことが無かったので驚きがありました。また全然知らなかった人物黒島亀人という人物も酷評だっただけに気になります。なにしろ証拠隠滅の為に宇垣纏海軍軍人の血縁者から借りた日記のうち、自分に都合の悪い部分のみ捨て去るという行動を起こす人物のようですし。また近衛文麿への言及もかなり厳しいものがあります。ポピュリズムの権化、とまで称されています。松岡洋右の立場も新たな視点で語られていて(私が不勉強だから、なんですが)新英米派であった事実は全然知らなかったです、検証は必要なんですが、そういう視点が無かったのでびっくりしました。そして海軍も陸軍も、予算を取る為に米国との戦争を口実にしていた点も新鮮な意見でした。これまた検証してないので事実なのか?まだ咀嚼出来ていませんが。また高橋是清の弟子筋にあたる人物で井上準之助という血盟団事件の被害者を知ることが出来たのもこの本のおかげです。血盟団事件は四元義隆という人物の評伝を読んだ時に知りましたが、歴史って本当に横糸と縦糸がいろいろ影響しあっていて感慨深いです。後、賀屋興宣という人物を知れたのも本書のおかげです。

で、面白かった点はいろいろありますし、新鮮でもあったわけですけど・・・

ちょっとどうなんだろう?という点も結構ありまして。まず、コミンテルンが全ての元凶、という視点なんです。私は共産主義者ではもちろんありませんけど、だからといって全ての原因がコミンテルンの活動です、と言われても全然納得出来なかったです。ものすごく都合の良くいろいろな人が実はコミンテルンです、で片付けられているのはちょっとした陰謀論者に見えました、これも検証が必要ですけれど。あと、仮に、コミンテルンの活動のせいだとして、その対抗策が特高警察を使って片っ端から逮捕監禁、という手段もあまり乗れなかったですし、一応思想というか、頭の中で何を考えているのか?は証明するのが難しいですから強引になってしまいますしね。共産主義の良いところも多分あると思いますし、それはどんな思想でも、ですが単一になる事での恐ろしさの方がより先鋭的で恐ろしいと感じます。多様性を生かそう、という考えにはならないで特高警察という手段を用いるというのが飲み込みにくかったです、もちろんその当時では手段としてコレしか無い、という部分もあるのでしょうけれど。

あと、ポピュリズムの権化と言われている近衛文麿ですが、実際問題選挙で勝たねば政権の座につく事が出来ないのであれば、ポピュリスト的な部分が必要になってくるのも問題です。もっと言えばジャーナリズム、民度、そしてリテラシーの問題だと思います。その点への言及がもう少し欲しかったです、あとがきには多少その点に触れられていて好感持ちましたが。まぁ近衛文麿内閣が国家総動員法を成立させた事は知れて良かったですし、私の中でもかなり評価が変わりました。ポピュリストを生まない仕組みを考える事も重要なんですが、ポピュリストに責任があるなら、選んだ国民に責任があるわけで・・・その辺も難しいです。だからこそ、私は今のところリテラシーという受け手の能力を上げるしかないのではないか?と考えます。

その他通州事件や、その報道のされ方、事態の推移を考えると、いかに冷静な判断が必要なのか?そのために何が必要なのか?はとても重要な話しだと思います。あとがきでも書かれていましたが、著者の方たちが、だからこそもっといろいろ勉強して欲しい、という問いかけをしていて、その部分は特に感銘を受けました。少し面白おかしくし過ぎていて、そこにやや冷静さを欠く部分を感じてしまったのは否めませんが、読んで良かったと思います。あとがきもなかなか良い文章だと思いました。

歴史に興味のある方にオススメ致します。

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