井の頭歯科

2019年の個人的鑑賞映画 ベスト10

2019年12月28日 (土) 09:06

ここ3年くらい行っているベスト10です。基本的には2019年に日本(劇場、及び未公開でDVD発売)公開作品の中から、私が観た作品を、私の個人的好みで、選びました。

毎年新作を月に3本観れるといいな、という所から年間36本をノルマにしていますけれど、今年は新作のドラマ1シーズンも1作品としてカウントすると42作品となったので、なんとかノルマ達成です。旧作は38本だったので、まぁ良く観た1年だったと思います。ひとえに、Netflixのおかげです。恐ろしい時代になりました・・・新作が、定額料金で、家に居ながら、観る事が出来る時代、考えていなかったです。後はNetflixに、岡本喜八監督や、長谷川和彦監督作品、それに昭和任侠伝シリーズ、そして日本のドキュメンタリーや、フレデリック・ワイズマンの過去作なんかを取り入れてくれたら最高なんですが、そうするとまた睡眠時間が削られるので、願いながらも叶って欲しくない気持ちもあり、大変アンビバレンツな気持ちになります。

今年の見逃した作品の中で悔やまれるのが「この世界の さらにいくつもの 片隅に」です。また是枝監督の「真実」を見逃してしまったのも、大変悔やまれます。が、それ以外は、出会わなかったべくして出会わなかった作品とも言えると思います。

10位 「スターウォーズ ep9 スカイウォーカーの夜明け」  (の詳しい感想は こちら

私は肯定派なんです、だって全方位的に満足させるのは、ほぼ無理な作品なんです。前作Ⅷの終わりから後を続けなければいけないわけで、でも、それって自分で作ったⅦの風呂敷をたたむ事でもあって、と、いろいろ考えさせられます。が、とにかく、現実的に、最後のピースを(この後もきっと商魂たくましいディズニーが手元に置いている以上、新作は作られていくとは思いますけれど・・・)埋める作品を作ったわけで、その点を、評価したいんです。そして2019年はSWⅨの年としても位置付けられると思うので。でも、正直、ダメな部分がありすぎる。

9位 「全裸監督」  (の詳しい感想は こちら

映画じゃないんですが、でも、大変熱量のあるドラマでした。切り口も変わっていますし、役者さんの演技が素晴らしかったです。早く続きを観たい、と思わせるチカラに溢れています。

8位 「ブラック・クランズマン」  (の詳しい感想は こちら

今年の映画の中でも特に、映画という媒体で出来る事、その手法の面白さ、アジテーションとしての表現をさらに突き詰めている感じが凄く良かったです。スパイク・リーは凄い監督ですよね。

7位 「バーニング 劇場版」  (の詳しい感想は こちら

特に秀逸だったのがベンというキャラクターです。ベンの事、この映画を観てから、ずっと気になっています。大変恐ろしいですね。村上春樹原作ですけれど、嫌いな人にも受け入れられやすい、入門として(入門しなくていいけど・・・)と思います。

6位 「ギルティ」

ちょっと感想を寝かせてしまい過ぎて書き忘れてしまいましたが、大変変わった映画でした。映画を音だけで演出してみせたのが、凄いです。

緊急通報の電話係をしているアスガーのところには様々な電話がかかってきます。しかし本当に緊急性が高いのか?なかなかどうして分からないケースもあるのですが、ある女性から、ただならぬ雰囲気で、今、まさに誘拐されていると告げられ…というのが冒頭です。

わずか88分の映画なんです。また、絵柄的には2部屋しか出てきません。大変見た目的には地味な映画だと言えます。

が、物凄く計算された、音、の映画だと思います。大変スリリングで、没入度の高い1作だと感じました。

電話を使った新たな表現で、斬新かつストーリィも予測不可能で、素晴らしかったです。

5位 「スパイダーマン:スパイダーバース」  (の詳しい感想は こちら

大変画期的な、始めてみる止まった絵が動くアニメーション。何を言ってるか全然理解して頂けないとは思いますが、革新的なアニメーションに、さらに日本の声優さんの上手さを感じました。正直、今石洋之監督「プロメア」もかなりとんがった、世界向けの作品だと思いますが、絵柄として、アニメーションとしてはこちらが良かったです。でも、ストーリィの強さはプロメアも世界に出せる映画だと思います。

4位 「カリーナ、恋人の妹」  (の詳しい感想は こちら

ロシア映画を詳しく知りませんけれど、本当に素晴らしかったですし、すごく夏目漱石の「それから」に近い感じです。それに、アップデートされてますし、凄かった。とにかく好みの話しで、好みの映画です。本当に、この映画の役者さんは素晴らしかった。

3位 「マリッジ ストーリー」  (の詳しい感想は こちら

この手の話しがそもそも好きな上に、アダム・ドライバーにスカーレット・ヨハンソンなんて、最高ですよね。ある場面で、アダム・ドライバーが歌を歌うんですが、何かを吹っ切るキッカケになる感じを自然に表現されていて、凄く良かったです。ま、正直ダメな男の話しですが、多分ダメじゃない男って存在しないと思います。ダメのグラデーションの中で、もっともダメな部類の私が言うのもなんですが。

2位 「ザ・バニシング 消失」  (の詳しい感想は こちら

2019年公開ではあるんです、日本では。ですのでルールで言えば合ってるんですけれど、製作は1988年30年前の映画です。それでも、今年観た映画の中では、間違いなくベスト、と言い切りたい作品。何度視聴しても素晴らしいと思います。恐ろしい映画です。普通ならこれが1位なんですけれど。同じような映画としては個人的にはデビッド・フィンチャー監督「ゾディアック」です。

1位 「Once  Upon  a  Time  in  Hollywood」  (の詳しい感想は こちら

今年は、私にとって、まさにこの映画が1番心に残りました。観ている間中、終わって欲しくない、と思ってしまいました。出てくる人が、また撮影の苦労を考えると、本当にスゴイ事だと思いますし、タランティーノが、タランティーノらしいのに、それだけでなく上質な映画に仕上げている、さらに成長している事含めて、ずっと、何度も見たくなる映画でした。

今年も終わりますね。来年はオリンピック、個人的には、すごく違和感ありますし、全然興味ありませんが、影響は受けるのか、と思うと暗い気持ちになります。

「STAR WARS The Rise of Skywalker」を観ました

2019年12月25日 (水) 08:50

J・J・エイブラムス監督     ルーカス・フィルム

ついに終わりを告げる作品で、私は第1作SWⅣは8歳か9歳でした。映画館で鑑賞しましたけれど、とにかく、ワクワクした、面白かった、と記憶しています。事あるごとにテレビでも何度も放送されましたし、かなりの回数視聴している作品でもあります。そして、いや、だからこそ、何回もの視聴にも耐えられる作りになっていますし、刷り込まれてしまった、と言ってもイイでしょう。勧善懲悪な、単純なストーリィであるからこその強み、あると思います。世界的にも非常にたくさんの人の運命を変えた映画の1つとしてのSWⅣがあり、その物語の最後のピースが(いや正確にはジョージ・ルーカスの手を離れた段階で違うとも言えますが・・・)このSWⅨです。

何を話しても、ネタバレを含む感想になってしまうので、あくまで、ネタバレなしの感想として、私は良かった、と思ってます。頑張った、J・J・エイブラムス、と言いたいです。確かにジョージ・ルーカスはエピソードは9まである、とは言っていましたが、途中から6までだ、とか、小説版は無かった事になってたり、いろいろと紆余曲折ありました。そして、ディズニーが買い取って、これから新しいシークエルを作る事からも、正直創造主であるジョージの手を離れた段階で、新たなフェーズに入ったと思います。

それこそ、SWⅦの時には、ジョージが試写を観て、これは私のSWではない、と発言したり、その発言をうけてコア、というか偏屈なファンの一部は喝采を送ったり(プリクエルであるSWⅠがあまりに不評だった為だと思われます・・・)、既に手を離れたとはいえ、ジョージの構想の基は動かせないのも事実です。

そんな新しい3部作シークエルの最後の作品ですから、ある種すべての謎が解ける、大変カタストロフィの高い作品になっていると思います。もちろん、飲み込みにくい部分もいっぱいありますけれど、とにかく完結させた、という点を評価したいです。

そもそも、SWって子供から大人まで、楽しめる作品、エンターテイメント作品として、最初のSWⅣから出来上がってるわけで、そういう意味で、ありがとう、良かった、と言えると思います。私はSW信者ではないので、でも同時代の人の感想として、一応全部劇場に駆けつけた1人の感想として、そう思っています。

SWサーガに関わってしまった方に、そしてSWⅣみたいに、今子供の人に、そしてかつて子供だった人に、オススメ致します。

アテンション・プリーズ!

ここからネタバレありの感想です、結構いろいろネタバレしますので、既に観られた方に読んでいただきたいです。

まず、今回の感想は、ダメだったところを列挙していきたいです。SWⅧ(の感想は こちら )の時の感想と逆をやりたいんです。

1 予告編でも出てきたけれど、砂漠の中でのタイファイターとの対決シーンいりますかね?仮にいるとして、あんなアクロバティックなやり方しますかね?そりゃ新しい絵は必要だよ、だけど、その為に謎の行動を取るのは本当にこのシークエルでは目立ちます。今までのジェダイマスターは本当に必要な時にライトセイバーを出すのであって、ライトセイバー出したまま走ったりしないと思う。レイはジェダイマスターじゃないにしても。タイファイターのカイロ・レンも、何がしたいんだか?良く分かりません、次会ったら手を握らせる、と言ってなかったっけ?轢いてドウスル・・・

2 パルパティーンが生きてるのも、スノークを動かしてたのも、もう仕方ないです、飲み込みますよ・・・でも宇宙の中で地図に載ってないって?流石に無理を感じる。うん、そういう場所が必要なのは分かるけど。それに、パルパティーンが姿を隠しておくメリットが少ないような・・・だいたい、パルパティーンの息子だか娘って何かしら出てきてたんでしょうか?もちろんナブーにはいたはずなんだけど(だってパルパティーンってナブー選出議員だったと思うよ・・・)、影も形も出てないし・・・仕方ないけどね・・・

3 短剣、重要なアイテムだし、でもマクガフィンでもあるのも分かるよ。でもさぁ、なんで短剣の刻み込みがデススターの残骸の破片と重なるの???そういうのカッコイイけど、それじゃ短剣じゃなくてもいいし、なんでわざわざそのままにしておいたんだよ・・・こういうのがすっごく気になる、ホントこういうのはシークエルになってからあまりに数が多すぎる・・・

4 カイロ・レンのマスク、なんで直そうとしたのかな・・・ちょっとよくわかんなかった。

5 ルークはさ、Ⅷの冒頭で、簡単に捨ててたよね、ライトセイバー・・・それをさ、今作では「いかんな、簡単にジェダイの武器を捨てては」なんつって出てくるの、本当にどうかしてる。もう少し整合性ってものをかんがえてくれよ~ルークは多大なる犠牲を払った英雄なんだぞ!それをその場その場の感じに扱わないでくれよ~

6 レイアとルークの戦闘訓練シーン、そりゃ接待としてありがたいし、嬉しいんだよ、でもさ、レイアがジェダイの訓練を受けていたって、すごく抵抗あるけどね・・・

7 ファイナル・オーダーって言いたかっただけだろ~

8 それに、デススターを超えるガジェットは作れなかったのは分かる、大変難しいと思う。でも、だからって、スター・デストロイヤーをたくさんに、しかもデススター砲くっつけるって、ちょっと、発想が子供過ぎないか、大丈夫か??しかもそれが地面から出てくるって、誰が作ったの~誰が埋めたの~そして、誰が操縦してるの~ココ結構重要な場面ですよ・・・

9 そりゃ、馬に乗ったシーンは上がりますよね。でもさ、大気圏内だとしてもさ、馬持ってくか????バギーなりなんなり他にいろいろあるでしょ????いや、そういうのどうでも良くってカッコイイ絵が欲しいのは知ってるよ、整合性のあるアイディアを出せよ~

10 なんで、いきなりぶっちゅーなの????????いくらなんでも、そこまでやる???????

その他、いろいろありますよ、結構キツイのもあるよ。ハン・ソロについても言いたい事はある(11 ヒーリングまでフォースで出来るんだったら、間違いなく、クワイ=ガン・ジンその他死ななくて済んでたよ泣 それはあまりに整合性も何もなくなってしまうよ・・・泣 12 フォースでついにXウイング含む兵器まで止められるようになっちゃってさ、もうパルパティーン無敵過ぎない? 13 Ⅷであそこまで誰もこなかったんだぞ!いくら何でも多すぎるだろ、レジスタンス!今まで何やってたの? 13 うん、フィン、ちゃんとレイに好きだって言いたかったんだよね?もう少しフィンにも優しくしてやれよ! キリないから止めるけど、結構続けられるぞ!)。

でもさ、何といってもⅧから続けなくちゃいけなかったんだよね、仕方ない。そういういろいろは、ある程度頑張ったと思う。

ハン・ソロ、いや、ハリソン・フォード、カッコイイ、そりゃカッコイイよ。そして目の演技すっごく良かった。

レイア、いや、キャリー・フィッシャー、亡くなってしまって本当に残念だけど、Ⅸに出演してくれてありがとうしかない。

レイのデイジー・リドリー、彼女の存在感が無かったら、おそらくシークエルは完全にダメな作品になってたと思う。非常に稀有な、主役の顔、をしてると思う。身体も絞ってたみたいで、本当に素晴らしかった。

カイロ・レンのアダム・ドライバー、素晴らしい成長。相変わらず声がイイ。身体の大きいのも、非常に存在感があって素晴らしいです。

フィンのジョン・ボイエガ、顔にも目にも、非常に説得力ある演技で、役者として信用出来る。

ポー・ダメロンことオスカー・アイザック、フィンとの絡みが多くて良かった。シークエルはレイ、フィン、ポーの3名の話しだと思ってるし、その存在感は素晴らしかった。

SWってそもそもやはり子供に向けて作られている作品。いろいろあるけれど、今の子供が、楽しんでくれるのが、私は最もSWとして重要な事だと思う。そして、ここははっきりしておきたいから言葉にすると、その子供が見ても、このSWⅨは、残念ながらSWⅣの衝撃度、子供への刻印ではなく、大人、それこそSWに関わってしまった方々への、配慮、を優先してしまった作品だと思う。それでも、もっとヒドくなる可能性は高かったと思う。だから、個人的にはJ・Jは頑張ったと思う。だからってすべてを最高の完結とは言えないけれど。

個人的にはありがとう、です。

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「Sorry We Missed You」を観ました

2019年12月23日 (月) 08:35

ケン・ローチ監督     ロング・ライド

前作の「I, Daniel Blake」が大変面白かったので、劇場に駆けつけました。

しかし、邦題が、まったく、1mmも、全然、共感出来ません。というか、ヒドイタイトルだと思います。いくらなんでも改変し過ぎだと思います。こういう邦題を決める人の気持ちが理解出来ません・・・原題の「Sorry We Missed You」には、いくつかの意味が、この映画の中で気づかされますが、いくらなんでも、な邦題です、それをここにも書きたくないので、今回は原題のみで表記したいと思います。観たいという人の気持ちを削ぐ感じになっているとさえ思います。

Sorry We Missed Youというのは不在者通知表の事なんですね、知らなかったです。

リッキーは元建設業関係だが、職を転々としています。妻アビーは在宅訪問介護士の仕事をしていてとてもタイトでハードなスケジュールの毎日です。高校生の息子セブ、小学生の娘ライザと共に暮らしています。金融危機によって住宅ローンを反故にされ、借家で暮らす事に嫌気がさし、心機一転、生活保護すれすれからの脱却を願って宅配ドライバーの面接に来ているのですが・・・というのが冒頭です。

前作「私は、ダニエル・ブレイク」は疑似家族ものを下地に、複雑怪奇な官僚的、カフカ的な行政に対する映画でしたが、今作は全く違って、前作にはまだ残っていたユーモアさえ、ほぼありません。大変にシビアでヘヴィーなイギリスの生活、その中でもかなり厳しい部分を、浮き彫りにしています。 社会の複雑さ、簡単に、何がダメ、悪い、と言えなくなった部分に光を当てている映画だと思います。

最初に企業側は、アクシデントが起こった時の責任を、フランチャイズのドライバー契約、という形で、避けてきます、リスクヘッジ的な企業側からすれば合理的判断でしょうけれど、利益の追求に個人の尊厳が剥奪されるほどのシビアな部分がある、というのは知らなかったです。今年発売されたゲーム、だけどゲームというよりはゲームの形をとったエンターテイメント作品の「Death Stranding」も配達業を扱っていて、映画の公式HPに監督である小島秀夫もコメントを出していて、とてもタイムリーな映画なんだと思います。

とてもリアルでフェアな映画でもあって、会社側の窓口であるマロニーの心情を吐露する場面では、まるで内在的な、悪の凡庸さ的な、ハンナ・アーレント的な、事を指摘しているようにも見えます。

追い詰められるリッキーに、誰でもが多少は同情的にならざるを得ない部分があり、それこそが、ある種の普遍性だと思うのですが、まるで人が使い捨てられていく感覚を伴い、大変鑑賞後はヘヴィーになります。

ラストの、衝撃度は今年1番かも。

ただ、現代日本だと、私の肌感覚ではもっと進んでいる気がします。主人公リッキーのような人に家族がいる事が、既に少々古く感じる部分、あります。おそらく同じような境遇だと、そもそも婚姻関係を結んでいないし、結婚していたとしても、子供がいないのではないか?と思うのです。

ただ、今観るべき作品であるのは間違いない。

働いている人に、配達業から荷物を受け取った事がある方すべてに、オススメ致します。

「マリッジストーリー」を観ました

2019年12月20日 (金) 09:06

ノア・バームバック監督       Netflix

アイリッシュマンとはまた全然違った作品ですが、これはかなり良かったです。ノア・バームバック監督はそんなに追いかけてる監督じゃないですけれど、最近だとやはりNetflixの「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」(の感想は こちら )がかなりよかったので期待しましたが、期待値をはるかに超える良作でした。そもそもこういう男女の関係性を扱った作品、それもかなりシビアに扱った作品を好む傾向があるので、ある程度の期待をしましたが、映画として、脚本として、役者の演技も、音楽も良かったです。

ニコール(スカーレット・ヨハンソン)とチャーリー(アダム・ドライバー)はNYに住んでいます、子供は8歳のヘンリー(美形)です。ニコールは劇団の看板女優でしたが退団を決めLAに向かう予定です。LAではテレビの仕事が決まっています。チャーリーは劇団の演出家、NYに残って生活する予定です。だから、どちらも子供を引き取りたいし、争いたくないと考えてる、今まさに離婚しようとしている夫婦です。その離婚の為に、それぞれの美点を述べ合う機会を持つのですが・・・というのが冒頭です。

まず、脚本が非常に練られています。何かの為の、という部分がありません。しかも離婚する事は容認出来ている夫婦であるのに、親権となるとお互いが相手を尊重出来ない、そんな2人の離婚を扱った作品、大変ヘヴィーな作品だと思います。恐らく、離婚をしたくて結婚する人はいないであろうに、しかし離婚をする人がいなくなった話しは聞きません。そしてこの手のタイプの映画は大変議論を呼び、且つ話題になります。古くはロベルト・ロッセリーニ監督「イタリア旅行」(恥ずかしながら未見)、イングマール・ベルイマン監督「ある結婚の風景」(の感想は こちら )、ロバート・ベントン監督「クレイマー、クレイマー」、サム・メンデス監督「レボリューショナリー・ロード」、リチャード・リンクエイター監督「ビフォア3部作」(特にミッドナイトですね)、アスガル・ファルハディ監督「別離」(の感想は こちら )、そして何より私にとっては最も恐ろしい映画であるデレク・シアンフランス監督「ブルーバレンタイン」という系譜の流れの、新たな傑作だと思います。

毎回そうなんですけれど、この手の映画は、男とは、女とは、仕事とは、子供との時間とは、等々、絶対に正解が無い事柄についてを争う事になります。だから、ある種のケーススタディとしての、映画の登場人物たちの背景を飲み込んでの、ディティールにこそに、その真骨頂があると思います。完璧な人間なんていませんし。そして、その細部にこそ、様々な人の普遍性、あるある、という共感がリアルを焚きつけてきます。まるで映画の登場人物が、あなたの生活を非難しているが如くに、響くのです。

完璧な人間なんていない、確かにそうなんだけれど、しかし、どの程度の不完全性を相手が許容してくれるのか?は不明ですし、そして時間の経過、生活の積み重ねと共に、すべてが色褪せていきます。新鮮味がなくなって、気にならなかった物事が気になりだし、たいした事じゃない事が、些細ではなくなり、その事柄を起こしている人に注意しているつもりが、糾弾になり、そしてある日を境に、嫌悪へと至る道へと向かってしまう人は多いと思います。いやむしろ自然な流れなのかも知れません。それでも、最初は違ったはずなんです。でも、そういった事を思い出させてくれる、という意味でも、この手の映画は大変勉強になります。

今作はそうした今までの傑作に勝るとも劣らない出来栄えですし、女優の妻から母という職業を手にしている女性という意味で「レボリューショナリー・ロード」をアップデートしていますし、時間経過をリアルに描いているけれど「ビフォア3部作」ほど時間をかけないという部分をアップデートしていたり、と、かなり現代に寄せた作りになっています。ある種、離婚を同意しているが、それと親権は別、という「クレイマー・クレイマー」をアップデートさせているというのが分かり易い部分かも知れません。あの時は女性の自己承認と社会進出、というサブテーマがありましたけれど、今作ではさらに進んで、キャリア、という部分に進化しています。

女性にとって、これらの映画は共感する部分も大きいと思いますし、これまでの不遇を考えると、当然の権利を手にするという、大変ポジティブな面が、映画の推進力にもなっていて、ニコール(スカーレット・ヨハンソン)に寄り添って見ていると、あの時なんで!といった過去の自分に起こった出来事にカタストロフィを与える事にも繋がり易く、大変エモーショナルとも言えます。

反面、チャーリー(アダム・ドライバー)の、自覚はなくとも不公平に優遇されていたわけで(下駄をはかせてもらっていたし、それが自然でさえあり、文化でさえあった)仕方がない、失われていくネガティブな面も描かれています。ただ、まぁそこが失っていく事を認める自分への憐憫としての甘さもあるように感じられるのですが。

アダム・ドライバー、イイ役者さんですね!凄く自然に見えます。また声がとてもいいのも特徴だと思います。とにかく自然に、憤ったり、嘆いたり、涙を流す姿が、胸を打ちます。良い作品に出ている感じもしますし、これはライアン・ゴズリングとも、ジョセフ。ゴードン=レヴィットとも違う、イイ役者さんですね。

また、私が知ったのはソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」と、テリー・ツワイゴフ監督「ゴースト・ワールド」で知ったのですが、美人であり、ブロンドで、あっという間に大スターになりましたけど、私は眉を顰める困惑な感情が入りつつも怒っている時の顔が、非常に印象深い人、として認識してます。この顔の時って、ゴースト・ワールドの時から全然変わってない気がします。今作でも何度も、困惑の入り混じった怒った表情が観られますが、演技も凄くイイと思います。声もハスキーで、特徴ありますし。でも怒ると怖い顔ですよね。

脚本が本当に素晴らしかったです。そして、やはり女性と男性は、というか人と人とは分かり合えない存在だと思います。分かり合えないから、どうでもいいや、にしない部分が大事だと思います。分かり合えないからこそ、ちょっとでも、もしかして、という瞬間が光り輝き、貴重な瞬間なんじゃないかな?と思うのです。

で、ダメだったところもあって、タイトルに言及はしていませんけれど、間違いなく、マーティン・スコセッシ監督「George Harrison: Living in the Material World」におけるオリヴィア・ハリスンを批判しているのですが、オリヴィアをここで批判するのは全然違うと思います。まるでオリヴィアが自らのキャリアを喜んで捨てたかのように聞こえます。彼女はキャリアを捨てたつもりもないと思いますし、自らが選んでいると思います。こういう批判の仕方は、まず、オリヴィアの事も、ジョージの事もよく知らないで、批判の対象にあげている点でダメですし、さも専業主婦の代表のように扱っているのも良くありません。オリヴィアの表に出ない活動だってあったと思うし、現に映画「George Harrison: Living in the Material World」の制作に関わっていますし。まぁ知らないからこそ言えるんですけれどね。

でも全体的には素晴らしい作品だと思います。

「クレイマー、クレイマー」が好きな方に、すべての男女に、オススメ致します。

「カリーナ、恋人の妹」を見ました

2019年12月16日 (月) 09:00

アレクサンドル・ゴーチリン監督      クロックワークス

とある人がオススメしていたので観たのですが、これがかなりの傑作。最初にまず結論から言うと、恐ろしい若手監督です、若干26歳のアレクサンドル・ゴーチリン!

ですが、予告編を見ると、ヒドイ・・・そういう売り方ですか・・・多分、そういうのを求めて観た人はポカーンってすると思います。ホントクロックワークスもTUTAYAさんも視聴者も、誰にも良い所が無い取引ですよ、コレ・・・

公式の邦題「カリーナ、恋人の妹」という付け方、宣伝文章が「お姉ちゃんより、私を愛して」という文言・・・嘘はついてないけど、限りなく嘘に近い。いや、私はエロスも大事だと思いますし、需要も大変に大きい分野だと思いますよ。でも、そういうのを目当てにしている人たちにこの内容が伝わるか?と考えると、かなり否定的になります。出演者に好みの人はいるかもですけれど。いや、実際かなり整った方、それも美形と言っていい人ばかりですし、プロポーションも凄くいいですけれど・・・でも私は宣伝の人の、サボタージュを覚えます。

はっきり言って、売り方間違えてるし、そもそも売る気が無い、と言われても仕方がないと思います。こういう事があると本当に広告業界の虚飾性を考えてしまいますね。文化に興味がない人は広告業に就かないで欲しいし、広告業はもっと薄給にすべきだと思います。そうならないのが高度資本主義社会なのだとしても。映画「Superbad」(もちろんグレッグ・モットーラ監督作品)の時も思いましたけれど、こういうのは卑怯だと思います。

話しを戻して、この映画はジャンル分けするのが大変難しい映画ですけれど、青春モノに入れても良い気がしますし、文学系に入れてもイイ気がします。が、ジャンルとしてエロスには入らないと思いますけれどね。まぁ卑猥な人は何を見ても卑猥でしょう、空を見ても、美術品を見ていても、エロしか頭にない人はエロい事考えてると思います(そして、人間にはそういう時期もある事は知っています)。

でも、私は文学モノに入れたい、そんな映画です。

ある部屋に立てこもっている20代くらいに見える青年ワーニャはどうやらバッドトリップしてしまった様子で前後不覚、かなり異常事態です。が、なんとかワーニャを助けようとするサーシャ(主人公)とピート(その友人)はワーニャの部屋に入り込むのですが・・・というのが冒頭です。

正直ネタバレ無しでの感想が大変難しい作品だと思います。原題は「Kislota」英語だと「ACID」、つまり「酸」です。このACIDがいろいろな意味で、何度も出てきます。サーシャの視点でストーリィは進みますが、あまり説明がないので、受け手が想像する幅がかなり大きいのが特徴だと思います。私が見た事がある中で、近い感じがするのは「ハートストーン」(アイスランドが舞台の映画 グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督)系でもありますし、もしかすると、マイナー系ですが「野性の夜に」(フランス映画 シリル・コラール監督)にも近い感覚あります。でも1番親和性が高くて分かり易い映画ですと、めちゃくちゃスタイリッシュに、モダンにした「汚れた血」(フランス映画 レオン・カラックス監督)という感覚です。個人的にはオマージュともとれるシーンありましたし。

なので、もし「汚れた血」が好きな方なら、是非ともオススメです。

それにしても、本当に、ボカシを入れる基準を止めてくれ。あまりにヒドイ作品への冒瀆だと思いますけれど。

アテンション・プリーズ!

どうしても、ネタバレありの感想、文章にしてみたい、してみないとワカラナイ感覚の映画。結論がどうなるか?今文章にする前はワカラナイで文章にしてますけれど、普通この段階で、どういう結びにするのか?なんとなく分かっているつもりで始めるんですけれど、今回は全然分かってないです。

大変解釈の別れる映画だと思います。ハッキリと何がどうであるのか?言及されるシーンは、ほぼありません。疑問はいくつもあります。そもそもサーシャの立ち位置も不明ですし、学生でもない感じですが、働いているようにも見えません。また、エレーナの子の父が誰なのか?何故サーシャの父が失踪したのか?街ごと更地にするほどの事って?サーシャの父は何者だったのか?何故今割礼するのか?ヴィカと何故付き合っているのか?許嫁なのか?ピートは何故酸を飲んだのか?警察に出頭しつつ助けてもらいたがっているのは何故か?カリーナは本当にサーシャを愛しているのか?様々な解釈が成り立つと思います。

しかし、少なくとも、エロスを扱った作品ではなかく、扱ったモチーフの中にエロスな場面があった、というだけだと思うのです。

私は、サーシャを主人公にした、おそらく権力者の息子の、放蕩からの脱却を描いた作品だと思います。夏目漱石っぽささえある作品だと思うんです。もっと刹那的な、非常に不安定な社会に住む若者特有の、明日を信じていない感じが画面から伝わってきます。そういう傑作だと思うのです。

サーシャは上流階級の息子で、働かずとも食べて行けるが、音楽を生業としたい。しかし友人のピートもワーニャもサーシャに音楽の才能が無い事を知っていて、その事を諭す映画だと思いました。また、サーシャ自身も自分がゲイなのか?理解出来ていないと思います。だからこそ、見知らぬ女性とは距離を感じるが、しかしカリーナとは音楽を通じて、サーシャの価値を認めてくれる発言を、この映画の中で唯一、してくれる人間として描かれています。サーシャは誰かに、真剣に自分の音楽を聞いて欲しかったんだと思う。そして、残念ながら誰も耳を傾けなかったその音楽は、恐らく、便器と赤子のシーンにかかるテクノっぽい、はっきり素人っぽい音楽だったのでしょう。それもサーシャはある程度理解していたが、カリーナが受け止めてくれた事で、初めてその事を素直に聞き入れられる心情に至ったんだと思います。

ピートは、サーシャと一緒にいる事で、なんとか生活出来ていたが、このままではいけないと理解して、何処かでその時が来るのを待っていたのだと思います。そしてワーニャに、手を放したければ離せばいい、に続く言葉は、俺だって離したい、という事だったんではないか?と思うのです。ワーニャの選択を支持も止めもしないのは、こんな社会で底辺に生まれ、富豪の父から疎まれたら、それはかなりキツイ生活なんだろうと思うのです。しかし、あのバジリスクの彼氏に手を振った辺りで、なんとなく、生きててもイイかな?と思ったのか、それとも父親と話が出来た事で思ったのか?微妙で推察するしかないけれど。

カリーナは恐らく、全然サーシャが好きなんじゃなくて、興味があったんじゃないかな?と思う、男性にも、性的な事にも。あるいはただ背伸びがしたかったのか?この辺は女性の解釈を知りたい。が、ヴィカはどうでもいい、全然興味が湧かないキャラクターでした。しかし出てくる人が皆美談美女ばかり。あ、あとエレーナも、どうでもいい感じがします。この人全然分かんなくて、ヴィカの父にもたれかかる部分とか嫌悪感まで感じました。

設定的には本当に夏目漱石の『それから』に近い。もちろんアップデートされていますけれど。そういう意味で、凄く文学的な作品。しかし、本当に、映倫には憤慨を覚えるし、クロックワークスとTSUTAYAは猛省を促したい。これじゃ届く人に届かないし、その事でセールス的にも、また監督の次回作にも繋がらないですよ。

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