井の頭歯科

「僕の姉ちゃん」を読みました

2018年6月29日 (金) 09:24

益田 ミリ著         幻冬舎文庫

友人にオススメしてもらったのですが、これが非常に面白かったです。というか、本当に男と女は別の生き物だと、痛感してはいますけど、改めて考えさせられました。

私は3人兄弟の長男で、弟が二人いますけど、家族内というか成長期に女性が家に居なかった(母は女性とは少し違う感じがします)事がこれほど違いを生むのか、といつも考えさせられます。

女性の姉妹がいる男性は、本当に何処か違って眩しく見えるものですが、普段から鍛えられているのでしょうね。

そこへいくと男性だけ兄弟の残念な事といったらないですね・・・

しかし、こういう体験があったら、もう少し人間としてまともな生活を送れたかも知れません。

ネタバレは避けての感想ですけど、私多分、2万円のブツを見た事ないですね。それと、指に注目したこともなかったです。手は割合好きなパーツなんですけど、まさか、指のアレを気にしてるって本当に凄い・・・いやスゴイのか凄くないのか分からなくなって頭の中がクラクラしてきます。

この家庭的感をアピール、果たしてこれでアピールになっているのか?問題は置いておいても、話し相手出なかったとしても、嫌な感じにとられてるのかと思うと、会話を成立させたくない気持ちになってきますね、男性は黙ってるのが美徳とされた時代もありましたし・・・

そしてこの後の漫画の展開が斜め上を行くんですけど、本当に驚愕です・・・さっきまで話していたのとは全く別の判断基準が発生しているのに、論理として破たんしているのに、全然自分は変ではない、と確信している、その自信が全然分かりません・・・彼女の中の整合性が取れている、という点では軸がある、という事に驚いてしまいます。

お姉ちゃんが存在しなかった全ての男性に、強くオススメしたいです。

「江分利満氏の優雅な生活」を観ました

2018年6月27日 (水) 09:49

岡本 喜八監督     東宝

すっかり見逃してしまっていましたが、岡本喜八作品、凄く気になってます。まだ大好きと言えるほど作品見てませんが、仲代達也主演の「殺人狂時代」は最高の作品だと思います。そんな岡本喜八作品の上映会がラピュタ阿佐ヶ谷で開催されている事に、気が付いてなかったのが悔やまれます、最後の週に気が付くなんて本当にがっかりですが(ああ、「激動の昭和史 沖縄決戦」観たかったなぁ・・・「座頭市と用心棒」も観たかったし、本当に悔やまれます・・・)、唯一見れそうだった時間帯にかかっていたのがこの作品なので、ラピュタ阿佐ヶ谷で観てきました!

山口瞳の原作に仕上げた、かなり不思議で、前衛的な表現の、まさに岡本喜八作品!って感じに溢れる作品です。

江分利氏(小林桂樹)はサントリー宣伝部に勤めるサラリーマンです。お酒が非常に大好きで、毎日午前様な生活です。そんなある日、酒場で知り合った2人組に口約束をしてしまい・・・というのが冒頭です。小林桂樹、山口瞳の自伝的な作品なので、非常に寄せてきてるんですが、設定ですと38歳!!!驚愕です、私よりも10歳年下ですよ!!全然見えません、本当に馬齢を重ねてしまいました・・・

なんだろこれ!面白い!!という要素がぎゅうぎゅうに詰まった作品です。主演の小林桂樹さん、私は映画での記憶がないんですけれど、めちゃくちゃ有名な方ですよね?「ゴジラ」も「椿三十郎」にも出演されてます!が、この人の、かなり愛嬌ある演技が素晴らしい。今で言ったら(や、その当時もなんですけれど)相当に説教臭いんです。でも、その説教にも教養を感じられるし、何といますか、愛嬌があるんですね。この愛嬌を感じられるか?でかなり印象が変わってしまいます。

そんな江分利氏の優雅と言えば聞こえは良いですけれど、決して優雅だけではない、戦中派の戦後生活者の目線での、社会サバイブ自伝史ものです。

ストップモーションだったり、円環構造だったり、アニメーションを差し込んだり、かなり演出は凝ってます。そして素晴らしい効果をあげていると思います。

重要なのは、かなり軽快に、当時のサラリーマン風俗を掬い取った作品なんですけれど、あの、岡本喜八作品(僅かに観てるのは「独立愚連隊」、「殺人狂時代」、「ブルークリスマス」、「ジャズ大名」なんか取っ散らかってますけど)の中ではかなり踏み込んだ作品になってます、はっきりとセリフで説明してくれてるかなり珍しい作品じゃないかと思います。恐らく反戦な作風であるのは映画を見れば分かると思うんですけれど、言葉でセリフで説明してくれているのは珍しいし、岡本喜八っぽくないとさえ感じましたが、これは原作がそうなのかも。

私は今のところ「殺人狂時代」が原作についても映画でも役者でも、やはり1番好きな作品ですけれど、この作品もとても好きな作品になりました。

あぁあ、せめてもう少し早くラピュタの特集を知ってたら、激動の昭和史 沖縄決戦 を見に行けたのに、本当に残念。

あと、原作山口瞳さん、ちゃんと読んでないのが恥ずかしい感じですけど、いわゆるエッセイストとして有名ですよね。

岡本喜八作品が好きな方、山口瞳作品我好きな方にオススメ致します。

「勝手にふるえてろ」を観ました

2018年6月22日 (金) 09:05

大九 明子監督     ファントムフィルム

「万引き家族」の松岡茉優さんの演技がなかなか凄くて、「桐島部活やめるってよ」の時とは見た目もあまりに違い過ぎて、同じ人とは思えなかったという意味でびっくりしたので、別の作品を観てみたくなり、手に取りました。で、またまた全然違う人に見える、という驚愕の役者さんでした・・・この方はどういう演技指導を受けてきた方なんでしょうかね?出てる作品ごとに全然違う人に見えるってかなり凄い事だと思います、例えば今作には片桐はいりさんが出演されていますが、片桐さんだってある程度の片桐はいり性とも言うべきベクトルがあると思いますが、松岡さんにはそれが感じられないのに、物凄くリアルに毎回そういう人に見えます、不思議ですし、上手いです。そんな松岡さんの主演作です。

OLのヨシカは20代、中学生の頃の初恋の相手を未だに大好きで妄想として心の糧にしています。会社での同僚のクルミとは仲が良いですが、基本的に人付き合いが苦手ですけれど、会社を出てしまえば、行きつけの喫茶店の店員、コンビニのユニークな店員、バスでいつも同席するおばちゃん、釣りに興じるおじさん等話し相手には困っていない様子です。そんなヨシカに突然興味を示す相手が出現して・・・というのが冒頭です。

脳内で何度も何度も中学生の頃に好きだった人との思い出を脳内再生しているので、現実との距離感が掴めていない、非常にエキセントリックな役なんですが、しかし女性でもあるので(男性のそういう傾向の方はさらに現実との距離が測れない 傾向 があると思います、客観性の問題でしょうか・・・)身だしなみにある一定程度の気配りも感じられます。回想シーンでの学生の頃の感じ(学生服であっても、髪型等そういった雰囲気が分かります)の他者からの視線の拒絶ではなく、周囲に溶け込めるくらいの一般性を手に入れている感じがします。それでも、かなりエキセントリックです・・・
視野見、という造語も素晴らしいですし、私は世間に溶け込めてますよ、的な感覚の何処か穴があったりする部分のリアリティは凄く上手い演出だと思います。会話のタイミングの妙がイイですし、キャラクターが実際に生きているように見えるという意味で、演者の松岡さんの凄さだと思います。

ただ、ある事から、積極的に行動を起こすようになってからの、かなりマッドな手段、さらにこの主人公の行きつく先、映画の結末には、少々違和感を覚えました。物語の中盤の、今までの認識が変化するポイントの演出は素晴らしいのですが、まぁ原作がそういう話しなんだと思いますけれど、着地に結構無理を感じてしまいました。原作は綿矢りさ、凄く有名な作家さんですけれど、まだ読んだことないなぁ。

これだけ作り込んだキャラクターの、最後の着地、そしてこのタイトルの、誰が、誰に、言っているのか?が、私にはよく分からなかったです。

それでも久しぶりにラブコメディ映画を見たわけですが、なかなか楽しかったです、しかし本当に松岡茉優さん、毎回別人に見えるってどういう人なんだろう?
松岡茉優という女優が気になる方、コメディ作品が好きな方、内向的な傾向の方にオススメ致します。

「万引き家族」を観ました

2018年6月18日 (月) 09:36

東京、うっすらとスカイツリーが見えるくらいの下町。かなり朽ちかけた平屋の一軒家に、日雇い労働者の50代前半とおぼしき男(リリー・フランキー)、クリーニング屋で働く30代後半の女(安藤サクラ)、90歳になろうかという老人(樹木希林)、ショウタと呼ばれる10歳前後の男の子、身ぎれいでアキと呼ばれる20代前半の女(松岡茉優)が暮らしている。この一見家族に見える集団の日常を描いています。リリー・フランキー扮する男とショウタはスーパーでの万引きを常習的に行っています、働いてもいるけど、かなり生活が厳しい事がその家の散乱事情から透けて見えます。ある冬の夜に、4歳くらいの女の子がアパートの外で寒そうに佇んでいるのを、親切心から家に招きいれてしまい・・・というのが冒頭です。

とにかく参りました。まず役者、出演者その全ての人の演技が本当にスゴイです。とあるお店のお客さんを演じた池松壮亮さん、「紙の月」の演技も凄かったけど、ちょっとこの演技は凄すぎる、多分2~3分の出番であっても、恐ろしいくらいの爪痕です。と言いますか、同じくらい全員が凄い演技です。正直1番コミカル過ぎて少々浮いてるくらいに感じるのが樹木希林さんです、私の印象ですと。警察官を演じた高良健吾さんの、「シンゴジラ」で魅せた官僚映えもかなり光ってます、この方も数シーンだけですけど。また大変嫌な役回りを演じている池脇千鶴の、正義の側に自分がいる事を確信しているからこそ振りかざせる正論も凄まじいです、この方も数シーンしか出てこないんですけど印象に残りますし、今まで見た事がある役者さんのさらに自然で説得力ある演技、ベストアクトをされていらっしゃいます。緒形直人さん、久しぶりに見たけど、このよそよそしい感じ、良かったです。

基本的にネタバレなしの感想ですが、本当に良かったです、特に役者さんがスゴイ映画だと思います。脚本には少々強引な面も無くはないんですけれど。

出てくる役者全員が、物凄く良かったです。特に当たり前ですけれど疑似家族を演じた6人は誰もがベスト、と言いたいですけど、中でも1番好きなのはショウタを演じている子です。ちょっとあの眼差し、指クルクル、髪型、もう存在そのものが凄いです。是枝監督の子役指導は本当に凄いけど、この子を見つけてきたのが本当に素晴らしい。正直誰を主人公に置いても成立する映画ですけれど、この子の主役感が凄い。まっすぐさ、誠実さ、犯罪行為だと理解しつつある意識の変化、妹としての受け入れてからの純粋な庇う気持ちの芽生え、本当に子役に見えないです、というか演技じゃなく自然すぎるし眼差しがまっすぐ過ぎて本当に眩しい。その上あの走りも凄く良かったし、カメラが下から撮ってるのも凄くイイと思いました。スイミーの話しが泣けます。今後、彼が出演しているなら、そんな映画は観に行かねばならないではないか!

リリー・フランキーさん、もうこの人肩書きは役者で良くないですか?この、どうにも改善する気が無いダメなオジサンでも、心に何か秘めている感じを出せる人ってあんまりいないと思います。垂れたお尻とか、妙な痩せ方も最高です。ダメなんだけど許せる愛嬌と、心底ダメな部分とのリアリティが半端ないです。

安藤サクラさん、私には「愛のむき出し」が強烈すぎて、基本的にはあまり好きなタイプではない印象だったんですけれど、今回は凄い、認めざるを得ない。あの、子どもが泣くときの、声にだしちゃいけなくて泣くときの、目から涙と呼ばれる水がただ溢れて漏れてくる感じを、映画で、大人で見たの初めてだと思います。ただ溢れてくる、本当に悲しい時しか多分出来ない水の流れ方だと思います。映画内ではこの人が主軸であるのは間違いないです。結局、罪を償ってるのもこの人だけだと思います。

松岡茉優さん、私には「桐島部活止めるってよ」に出演された際の、凄く意地の悪い顔した女の子だなぁ、と思っていたのですが、これがもう全然違う人にしか見えないです、本当に役者さんって豹変するんですね。この人の役柄で最も重要なのは、私の勝手な思い込みかも知れないけど、容姿の美しさではなく、とんでもなく暗い瞳だと思います。ある種の絶望を経験しないと出せない瞳の暗さだと思うんです。ある場面で、かつての家の扉を開けるシーン、顔はほとんど写ってないんだけど、あの瞬間、BGMの細野さんの凄さも相まってなんでしょうけれど、私は映画館の座席に座りながら、風を感じ、埃の、生活の匂いを嗅ぎました、映画館でこんな体験ができるからこそ、みんな映画を見に行くんだろうと思います。

この松岡さん演じるアキととあるお店のお客さんの邂逅、悲しみしかない顔、何処にも行けない嗚咽しか出せない悲しみの裏側はどんな悲惨な状況なのか?全く不明ですが、おそらく相当な現実があるんだろうと思います。だからこそアキと何かしらのシンパシーがあったのであろうと思われるシーンはもの凄く良かったです。

そしてリン役の子役の眼差しの低さ、うつむき加減がずっと続く不安、演技に見えなかったです。映画封切とほぼ同時に起こったネグレクト殺人事件の子どもの「ゆるしてください」を想起せずにはいられない。絞りだすような声、抜け落ちた歯、ギャップがあるからこそ感じる笑った声から感じられる幸せ感がたまらなくリアルだった。大変特別でレアなケースと思いたくなる、しかし現実に2018年の日本で起こっている事件を想起させるのは、先見性として素晴らしいですし、批評性を獲得していると思います、少々きつくはありますが。

映画のラストショットのまなざし、その直前の歌、とても良かったと思います。

あ、この映画を見てから、ずっとゆでトウモロコシが食べたいです。

今のところの今年ベストな映画でした。

「生きるとか死ぬとか親父とか」を読みました

2018年6月10日 (日) 13:13

ジェーン・スー著    新潮社

何故か?カミングアウトに恥ずかしさを覚えるのですが、私はラジオリスナーです。少なくともテレビよりは文化度が高い、と感じています。そんなラジオのパーソナリティのジェーン・スーさんの新著(以前にも読んだ本「私たちがプロポーズされないのには101の理由があってだな」の感想は こちら )が出版されたので手に取りました。

私が存在するという事は、当然親がいるわけで、そして家族とは、大変ありがたい存在でもあり、当然それだけでなく、何かしらの強要やルールが存在し、子どもはその事に慣れたり、躾だったりするわけです。端的に、良い面もあるし、良くない面もあるわけです。

そんな葛藤もある敏感な家族の問題に、著者ジェーン・スーさんが、異性の親である父との、父だけではない面(息子、兄弟、夫、親戚等そしてもちろん父として)を掘り下げてみようと試みたエッセイです。

このお父さんが結構変わった方でして、言動だけ拝見すると、著者が使っているフレーズなので引用しますが、石原慎太郎とナベツネを足して2で割らない人、という方なんですが、どっこい、このエッセイでもその片鱗は垣間見れるものの、大変愛嬌があるんです。

とてもマッチョで、かなり自己愛が強く、それでいて女性に好かれ、事業を成功させ、その妬みから怪文書を流されたり、それでも仕事先とはトラブルにさせない愛嬌あるジェーン・スーさんの父に、なんとなく私の父の側面について考えこんでしまいました。

スーさんの父との距離の取り方、そして今回の(とはいえ、これまではスーさんでさえ、避けていた)その距離の縮め方、父と娘だけの家族の関係を、父の子ども時代からひも解いてゆく過程が良いと感じました。とても私には出来ない事ですから。

異性の親との距離、なかなか難しい問題です。日本はマザーコンプレックスには大変優しい社会ですので(この話しになるといつも思うんですけれど、自分の結婚相手としてはマザーコンプレックスには非常に敏感に嫌悪感を抱いておきながら、母親になるとマザーコンプレックスを認める以上に積極的になって欲しい、と思っている人が多いように感じるので、本当にヘンテコリンな、まるでカフカ的な迷宮にいる気になります)息子と母親の葛藤はそれほど問題にはならないですから。

私も両親を、親としての側面だけではなく、もう少し離れて関係が結べるよう努力を払ってもいいかな、と思わせてくれました。

しかしジェーン・スーさんのご尊父はなかなか面白く、しかし近親者だと結構大変だろうな、と感じました。

両親との関係を考えてみたい方にオススメ致します。

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