井の頭歯科

「アナザーラウンド」を観ました

2021年9月28日 (火) 09:44

トマス・ヴィンターベア監督       クロックワークス

原題はデンマーク語でDruk何となく飲酒的な意味なのかとも思いきや、オランダ語訳がどうも良く分かりません・・・でも英語題のアナザー・ラウンドもちょっと意味が分からない感じがしますけれど、飲酒の映画です。

飲酒が粋な人には是非のオススメです。お酒には人の心を柔らかくする効能があり、私も大変好きな行為ですけれど、アルコール中道という恐ろしい病気にも関連していますが、基本的に合法的なドラッグだと思います。良くも悪くも、酒は何も判断していません、飲酒した人が自らの消費量を逸脱し、判断が鈍り、愚かな過ちを犯したりするわけです。お酒には罪は無いと思います。人間はどんな人も完璧な存在ではなく、間違いも犯しますし、繰り返してしまいます。しかし、それでも、リラックスを促進する効果もある飲み物です。出なければこれほど人類が愛飲しているとは思えません。それと、アルコール分解酵素が弱いのは東アジアの一角では結構な確率でありますので、これも珍しい事ですし、お酒が飲めない人も居るという事は忘れてはいけないと思います。個人差も大きいですしね。

デンマークでは17歳以上の人が飲酒が出来るようで、高校生と思われる集団がビールをケースで運びつつ、湖を1周する間に中のビールを飲み切って早く帰ってきたチームが、参加者全員分のビール瓶の返金代金が賞金になる、というゲームの後に、街に繰り出して騒ぎを起こします。高校ではこの騒ぎを受けて校内での飲酒を禁止するのですが・・・というのが冒頭です。

主人公は高校教師で、マーティン(マッツ・ミケルセン)は歴史教師、心理学の先生ニコライ、体躯教師のトミー、音楽教師のピーターの4人の中年男性です。

彼らはある意味に於いて、それぞれが人生に行き詰まっています。妻帯者は2名のみですし、その2名も妻からはほとんど相手にされていませんし、生きがいそのものを失っているような生活で、仕事も当然成果を上げているとは言えない状況です。

しかし、ここで心理学教師がとんでもない提案をします、ある哲学者によると人間にとって最も良い状態は血中アルコール濃度が0.05%の時である、とする説を証明しようという提案をします。

当然、生徒に対してアルコールを禁じているわけですし、そもそも仕事中に飲酒が認められるわけがありませんけれど、ある程度の効果が、認められてしまいます。その効果の現れる演出は、素晴らしい演出でした。こういう授業だったら私もまた受けてみたいです、特にマーティンの歴史の授業は、他国の歴史授業でもありますし、非常に面白かったです。そして音楽教師の授業も素晴らしかった!ココが良かったので説得力がすさまじく上がりました。

しかし、当然ですが、飲酒による酩酊、単純に酔っぱらった状況は冷静な判断が出来るわけではなく、非常に厳しい現実も突き付けてきます。

中年男性4人が主人公である点が個人的にはとても良いと感じましたし、結局お前ら男性は中年というかなりの年齢になっても幼いままなのか?と言われてしまいますけれど、ココは私は、はい、そうです、と答えたいと思います。全然種類は違うけれど、総じて人間は愚かですし、そもそも間違いや失敗を起こしますけれど、特に男性は幼い事、それも精神的な年齢は実年齢よりもマイナス20くらいだと思います、恐らく2021年の現代日本では体感で男性が成人するのは恐らく40歳くらいだと思います。そして、そういう風に育てられていると思います。もちろん40歳までに仕事を持って、飲酒も行っているでしょうし、納税もしていると思いますけれど、精神的に大人と言えるのは恐らく40歳くらいだと実感していますし、もっと遅い人は、私を筆頭にもっと時間がかかるような気もします。

飲酒は、合法的なドラッグと言って良いと思いますし、適量が、人によっても、体調によっても、そして気分によっても、違うので、何とも言えませんけれど、娯楽の一つであると思います。

だから、適量が分かるようになるには、結構時間がかかりましたし、それなりの代償を支払いましたが、私にはとても必要性を感じる飲み物です。少なくともお酒を飲める人とは話が出来そうですし、飲みにケーションと非難されようとも、効果は絶大だと思います。特に組織に属していて会議を経験している人はご理解いただけると思いますが、会議の中では重要な事はあまり決まらずに、会議後の飲み会でほとんどが決まると思います。

この映画を観た後であっても、飲酒をして楽しくなる事には、とても大きな意味があると私は思います。

マッツ・ミケルセン、凄くイイ俳優さんだなぁ、と改めて思いましたし、踊るマッツ・ミケルセンが観られるなんてラッキーですし、踊りって人間が作り出した最も良いモノの中の1つだと思います。感情表現との相性が、歌と同じくらいイイし、歌よりも技巧的な鍛錬が求められるのも、素晴らしい。

あと全然知らない俳優さんですけれど、心理学の先生も凄く良かった、でも40歳ってホント??私よりも10以上年下なんですか・・・

飲酒の機会を奪われた人に、是非ともオススメしたい映画でした。

私は間違いなく、この4人の中ならトミーなんです、気をつけないといけないのと、すっごく憧れる。

「ブラック・スネーク・モーン」を観ました

2021年9月24日 (金) 09:19

クレイグ・ブリュワー監督     パラマウントヴィンテージ

またまたまた、また映画好きの友人のオススメでもうすぐU-NEXTで観られなくなってしまうので、なるはやで!という指令があり、全然知らない作品を、もう何だかワカラナイけれど、この方のオススメなら観なきゃ、という条件反射になりつつある動きで、見ました。結果、観て良かった!

現代のアメリカ、恐らく南部。あるカップルが別れを惜しんでいるのですが、どうやらロニー(ジャスティン・ティンバーレイク)は軍隊に入隊するようです。彼女であるレイ(クリスティーナ・リッチ)は悲しみに暮れているのですが・・・というのが冒頭です。

冒頭の冒頭に、おそらくブルースの有名な方の、ブルースとは何か?という言葉が差し込まれるのですが、恐らくこれがテーマだと思います。男女の愛、それがブルースなのだ、というのですが、それだけではなく、そこに赦し、もう1度関係性を結べるのか?そして克服する努力を払えるのか?というのがテーマだと思います。凄く、難しい問題ですが、ここに流石アメリカ、プロテスタントが作った国だけに、やはり神が存在するのです。

南部のアフリカンアメリカンとして生きるだけでもかなりのハードモードだと思いますが、ここにもう1名の主人公であるラザラス(サミュエル・L・ジャクソン)は、理由は不明ですが、妻が家を出て行こうとしています。推察するしかないのですが、恐らく敬虔な信徒の生活に疲れたのだと思います。敬虔な信徒としての生活を守りたい、しかし妻はその生活をしたくない、という人格が二分されるようなジレンマに陥っています・・・

ココに至り、とある事件から、ラザラスはレイを介抱する事になるのですが、この苦難を、ラザラスは神から与えられた試練と捉えて、進んで自ら、対処しようとするのです。

この神が試練を与えて試されている、という考え方の持つ恐ろしいまでの作用を考えると、宗教の持つ恐ろしさを考えずにはいられません。良い方に働く分には善き事で済みますが、悪に対しても同じ事をしていた事は歴史が証明していますし。特にプロテスタントの中でもカルヴァン派は既に神のノートには結果が記されている、という考え方すらありますし、なかなか難しいですね。

ただ、私個人は神の存在を証明も、神の不在の証明も出来ませんが、基本的には過酷で不条理溢れる世界を生き抜くために人間が考え出した存在だと、今の所は考えていますし、宗教がある事で人間が(科学文学芸術音楽すべてひっくるめて)進化進歩してきた事実を認めた上で、宗教を乗り越える事が出来るような気がします。神が言っているのではなく私自らが善き事として選択している、覚悟を持った選択であるしその結果を受け入れる努力を払う気持ちがある、という事なのですが、もちろん抗ったりもします。もし神がいるのであれば、理由はなんにしろ、余りに過酷過ぎると思います。しかし宗教を軽視するのではなく、尊重しますし、だからこそ無神論者も同じように尊重されるべきだと思うだけです。

サミュエル・L・ジャクソンが凄く渋みのある、大人であり、大人であり続けたい、責任や結果を引き受けたい、という強い意思を持ったしかし苦悩する男を熱演しています。ギターは演奏しているのか?不明ですけれど、素晴らしい。

あ、もちろんこの映画でも、いつものサミュエル・L・ジャクソンのセリフを聞かしてくれます。なんだこのスタンプラリー感は。

クリスティーナ・リッチ、多分初めて認識しましたが、この体を張った演技の説得力と、何と言いますかキツイ現場だったと思います、結構裸足であるかされますし・・・最も難しい演技とも言えますが、役者さんってスゴイですね。

黒い蛇の蠢き、欲望とか邪な考えとかなんでしょうけれど、そりゃ若いと難しいですし、年を取っても抗う事の難しさを覚えますね・・・

あ、この映画の中の最も大きな被害者はリンカーンだと思いますね・・・凄くトラウマになると思います、怖かったとしても、楽しかったとしても。

人間の業について考えてみたい人にオススメ致します。

「シュシュシュの娘」を観ました

2021年9月21日 (火) 09:15

入江 悠監督     ブロッコフィルム

緊急事態宣言はずっと続いています。美術館は予約制になり、映画館も8時まで、でも、吉祥寺の街並みは普通に人混みですし、こうなると、個人的な意見ですけれど、夜間の仕事に携わる人々の食事事情や、仕事を奪われた方への補償など、もう少しきめ細かなセーフティネットがあるべきだと思いますし、せめて何で8時なのか?を説明すべきだと思うのですが、まぁ何を言っても、これが私のレベルなんでしょう。もう少し科学的根拠を基に決めて貰えるとありがたいんですけれど、多分、空気の支配的な、責任回避能力と同調圧力の強いうちの国だと仕方ないでしょうね。残念です。

当然、映画業界も非常に厳しい状況なんですけれど、私みたいに文句を言っているだけじゃなく、行動を起こしてくれている監督が、今作の入江悠監督です。自主製作でミニシアターでかかる映画を作る、めちゃくちゃ大変でお金がかかり、回収出来るか?不安になると思うのですが、それを完成させて、しかも、スタッフに新たな経験を積ませるために学生スタッフを雇っているのが特に素晴らしかった。

いろいろご意見ありますし、別に記載しなくてもいいんですけれど、出来ればミニシアターで観たかったので、ポレポレ東中野で観てきました。私の観た回は観客は10名だったと思います。そしてポレポレではレイトショーでかかっています。

私は入江監督作品は1作しか観てないです・・・すみません。でもミニシアターの為に映画を作っていただけるのは凄く素晴らしい行為だと思います、少しでも足しになれば、と思い足を運びました。

日本の地方都市の市役所に勤める鴉丸(カラスマと読む 福田沙紀)は非常に目立たない職員なのですが、市長の進める移民排斥条例に強固に反対する祖父の為に同僚から煙たがわれています・・・というのが冒頭です。

すっごく変わった映画ですし、自主製作で、ミニシアターの為、役者の為、そしてもう一つ偉いなぁと思ったのが若手というか学生の指導、後進の育成の為、という目的で作られた作品という事なので、志が高いです。

だから、作品の完成度で勝負している作品ではないと思いますし、何も知らないでこの作品を評価するのとは全然意味が違うと思います。この映画の外側の部分が重要なので、本当に批評って難しいと思います、私は素人の一観客なんでただ思った事を書き綴っているだけですけれど。

ネタバレは厳禁な作品の部類に入ると思いますので(HPでもネタバレにはCAUTION!とされています)、ネタバレ無しの感想です。

良かったところ!

監督の意気込み、地方都市の空虚さの映像化、主演・福田沙紀さんのダサカッコイイオープニングダンス!インターンスタッフの多量な採用、細かな部分でもいろいろありますけど、とにかく完成させてくれたのが嬉しいです。

一応気になった部分も挙げておきます、じゃないとフェアじゃないので。私は脚本のリアリティラインの設定、特にその変動については仕方ないと思いますが、もう少し練れたような気がします。もう1つは言葉の、表示、もっと言うと条例の言葉使いが気になりました。あまり直接的な言葉を用いていないのがリアルな今の社会なのに、あまりに直接的な感じがしました。
でも、この気になった部分なんて当然監督は分かってやってると思いますし、そういうすべてひっくるめて、今のうちの国のムラ社会っぷりが分かる作品だと思います。

なんだかちくわが食べたくなってきました。

「イゴールの約束」を観ました

2021年9月17日 (金) 09:27

ダルデンヌ兄弟監督作品

好きなダルデンヌ兄弟監督の作品です。私が知ったのは「午後8時の訪問者」(の感想は こちら )でして、その後「その手に触れるまで」も観ていますけれど、かなり好みの監督です。

ベルギー1990年代と思われます。イゴールは恐らくミドルティーン、しかしタバコも吸いますし、他人の財布を盗む事にも躊躇がありません。父と2人でそれなりに後ろ暗い経済活動(移民の不法入国斡旋)をして生計を立てているのですが・・・というのが冒頭です。

『プレイス・ビヨンド・パインズ/宿命』の後に観ていると、このイゴールとなんとなくバイク繋がりとか、いろいろ考えさせられるのですが、これは少年の成長物語です。しかし、非常に厳しい生活の中での話しです。

子供が子供でいられる時間は、およそすべての時間が等しく限りないモノである事を承知していても、中でも人間のある種の一生を決めてしまう時間でもあるように感じます。その中でも、これから大人になる(=私は自分の生活費を自分で稼げるようになる事、と考えています)その前に、金を稼ぐ、という行為をする、仕事に携わる、非常に厳しい境遇にイゴールは生きています。だからそのかけがえのない時間が、とても少ないです。無駄にも感じられる事もあるかも知れませんけれど、それが豊かさ、という事です。

しかし、それでも肉親である父との関係を主軸に世界を視ているのですが、ある事件があり、その衝撃、その後の信頼していた父への不信感、事件があった時に1番近くに居て、しかもある種託された、まだ幼いイゴールの決断、そしてその託された約束がどうなってしまうのか?というサスペンス要素もあります。

何といってもイゴールを演じた子役が素晴らしく、少し不器用で崩したリバー・フェニックス、は言い過ぎかもしれませんけれど、本当に目線が良かったです。表情が顔に出てしまう子供でありながら、働いている、父親の片腕だという自負、を感じさせる二面性が凄かったです。

かなり重い決断に至るまでを、丁寧に扱った作品。映像は古く感じますけれど恐らくそう簡単には古びない作品。

移民として生きねばならない人の心もとなさ、とてもヘヴィーです。

それと、文化としての呪術、あるいは占いみたいなものは個人的には、そろそろ人間社会からはもう少し『遅れたモノ』という扱いがあってもいい気がします。もちろん、それを楽しみに能動的に受け取りに行く人の楽しみを奪おうという訳ではありませんが、迷信的なモノの扱いは難しいですね。

子供と接する機会のある人に、オススメ致します、流石ダルデンヌ兄弟監督作品!!!!!

「山田五郎さんの オトナの教養講座」を観ています!

2021年9月14日 (火) 09:15

山田五郎のオトナの教養講座 YouTubeの番組です、すごくゆるくてためになる、私のようなレベルの人にも楽しめる美術の番組です。

山田五郎さん、美術批評家としても、編集者としても有名ですけれど、このチャンネルの存在は最近知ったのですが、すっごく面白いです。

美術館には本当にたまにですが、行くことがあります。そして、どうせ行くなら楽しみたいので、少し調べて行ったりもします。ですが、美術について、全然詳しくないです、やはり単発で行くからだと思いますし、好きな作品はその時々でありますけれど、俯瞰してみる事が無かったからだと思います。

高校生の頃にダリが来ていたことがありまして、そこから時々観に行くようになりました。ダリは凄くヘンテコで最初に観に行って正解だったと思いますし、今でも好きなんですけれど、例えばなんでシュールレアリズムになったのか?後年宗教画を書くようになったのか?とかいろいろ不思議な事があるのですけれど、そういうのを調べていくえるのはインターネットが簡単に触れられるようになったからで、高校生の頃はまだそんな便利じゃなかったです。

その後に観て好きになったのは、パウル・クレーとか、セザンヌとかです。でも詳しくは無かった。

それがこのオトナの教養王座を観て、ああ、なるほど!と思えるようになりました。特にフランスのルネサンス以降の画家について詳しく、いろいろな方を紹介してくれています。

それも山田五郎さんの解説が、とても楽しく、知らない人でも楽しめるようになっています。

まさかアンリ・ルソーがそういう評価だったのか!というのもびっくりですし、この天然のアンリ・ルソーがいなかったらピカソもいなかったのか?と思うと衝撃的です。そこにセザンヌのこういう風にしか描けなかったことが、これって新しい!と思う人が出てくることや、そこに日本の版画、浮世絵の存在、それにもちろんゴッホについても影響が与えられ過ぎていてびっくりでしたり、絵だけでなく、そこに作者の物語を、それも点と点が繋がっていく面白さがあり、まるで美術版「風雲児たち」みたいです(私にとっては最大級の誉め言葉です)!

特に面白かったのは、すっごく変な人で盲目になっても形作り続けたエドガー・ドガ(しかし、そっち方面の人でしたか!バレエ関係の絵が多かったしパトロンの話しは知ってましたけど、衝撃!)、生首ドーン!の出現は知ってましたけれど今となってはサロメがファム・ファタルになってしまったのは単なるきっかけであまりの衝撃の結果なのだと知れるギュスターヴ・モロー、オランダの水木しげるって表現が素晴らしすぎるヒエロニムス・ボス、私はこういう破天荒な反逆児的なスタンスにはすぐにやられてしまう兄貴ギュスターヴ・クールベ、ちょっとパウル・クレーに近さを感じる点々の人ジョルジュ・スーラ、その他凄く面白い人物描写で物語で絵を、作者を紹介してくれています。

まさに教養、今多分1番私に足りないのは教養だと思いますし、早くまた美術館に行きたくなりました。企画展も良いけれど、常設展にももっと目を向けてみようと思いました。

しかし、アンリ・ルソー、そういう人だったのか、と思うと、今まであまり好きになれなかったのが納得出来ました・・・でも味があるってそういう事なんですねぇ~

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