井の頭歯科

「荒木 飛呂彦の奇妙なホラー映画論」を読みました

2011年7月12日 (火) 08:37

荒木 飛呂彦著         集英社新書

かなり好きな漫画家さん、荒木 飛呂彦さん、私の世代ではヤラレタ人多数いたのではないでしょうか?個人的には中学生くらいに「魔少年ビーティー」と「バオー来訪者」で少年心を鷲掴みされました。単純なマンガ的展開だけではないサプライズや、頭脳戦、独特の絵柄に擬態語、とにかく斬新でセンスある漫画家さんだと思ってました。その後の「ジョジョ」シリーズも途中までは読みましたが、段々こちらがオトナになって行く過程で読まなくなりましたけれど、個性溢れる方だと思います。

そんな荒木さんの映画論、少し変わった切り口で面白いですし、この方もたくさんの映画を見てらっしゃいますね。しかも最初に荒木さんの個人的ホラー映画観が示されていて、これが秀逸。凄く説得力ある文章でした。さらに個人的なホラー映画ベスト20も挙げられていてこれも見てない作品も多いものの、傾向みたいなものがあって面白いです。

私はホラー映画が好み、ということはありませんし、スプラッター作品にもあまり興味ないのですが、サスペンスという意味に於いては気になる部分があります。そして「恐怖」という感情のことについてはやはりスティーブン・キングのことを考えてしまいます。荒木さんもジャンルに分けて各章で語っているのですが、その中にスティーブン・キングをひとつに扱っているのに共感しました。個人的スティーブン・キング映画の中でも最も怖いのが「ペット・セメタリー」なので荒木さんとの若干の違いはあるものの「ペット・セメタリー」に言及してくれていますし、「怖さ」という点で最も「怖い」との評価ですし、その評価する部分に同感致します、いい映画だと思います。また作家(漫画家)であれば「ミザリー」ほど怖いものもないでしょう。役者の演技の凄さも「ミザリー」のポイントを高くしていますよね。

ただ、割合怖くないというかう~ん、なのが荒木さんの大好きなゾンビ映画です。確かに荒木さんの説明は非常に素晴らしく腑に落ちます。でも、そのゆるさに個人的には恐怖を想起しないです。あくまでゾンビの衝動というか特性というか、本能で他者を(無論感染してゾンビになるまで隣人であり、友人であり、最愛の人であったとしても)襲うのであって、ゾンビ本人の悪意は働らいていない部分に私は怖さを感じませんでした。なので比較的最近の作品ですけれど「28日後」などはそのゆるさの部分に対しては個人的には笑いを狙っているのではないか?(例えば階段を駆け上がってくるゾンビが一瞬カメラ目線で笑っているように感じたり)というような印象さえ受けました。映画ではありませんが、テレビゲームのヒット作「バイオ・ハザード」(これ映画にもなってましたね、映画は未見です)でも同じですが、ゾンビに襲われるからではなく、驚かす演出で怖いのではないか?と思うのです。

で、やはり個人的に恐ろしい、と思うのは「不条理」系ホラーです。スティーブン・キング作品の怖さも特質ですし、心理面での駆け引きや、分かっているけれどやらなければならない使命感を絡め、さらに良く分からない何かのせいで浮かび上がる人の悪意が恐ろしいのは「理解」出来ても、不条理の極めつけには「理解」出来ない怖さがあります。ミヒャエル・ハケネ監督「ファニー・ゲーム」の恐ろしさは個人的には群を抜いて恐ろしいです。

ホラー映画と呼ばれる範疇よりは、ずっと興味あるサイコホラーとサスペンスにも章を割いていて、ここは特に好きな説明でした。後味が悪い映画こそ記憶に残る映画でもありますし、そういう意味において「セブン」はとてもよく出来た映画だと私も感じます。またモンスターという意味でも不条理という意味でも恐ろしい「ノーカントリー」の殺し屋シガーも怖いです。

ホラー映画に興味のある方にオススメ致します。

荒木さんが扱った映画の中で私も見たことある映画であって最も個人的に怖かったのは、間違いなく「ファニー・ゲーム」です。ただ、扱っていない作品を入れると、最近見た「ブルー・バレンタイン」が最も恐ろしい映画です。荒木さんのホラー映画の定義に従えば、間違いなく「ブルー・バレンタイン」はホラー映画でもある作品で、傑作です。

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