井の頭歯科

「勝海舟が絶賛し、福沢諭吉も憧れた幕末の知られざる巨人 江川 英達」を読みました

2014年2月14日 (金) 09:36

江川 文庫 / 橋本 敬之 著   角川SSC新書

漫画「風雲児たち」で知った江川太郎左衛門英達 36代。現在私が知っている人物の中でも1、2を争うほど尊敬できる人物です。尊敬とは軽々しく使う表現では無いと思いますし、生きている人物ではないので、生で出会えた訳ではなく、間接的(評伝や研究や創作であろうことを含む)な接触でしかありませんが、それでも尚、尊敬に値する人物だと思ってます。

尊敬できる(人がたくさんいるのも変な気がしますけど)歴史上の人物で尊敬出来るくらい知りたくなって調べた人物はこの江川太郎左衛門英達とフィリッポスⅡ世です。その他にも偉人はたくさんいますでしょうけれど、とても尊敬出来ます、フィリッポスⅡ世(についてはこちら)は偉大すぎて尊敬とは少し違う印象を持ちますけれど。そして偉大すぎるという意味では江川太郎左衛門英達だって偉大すぎるのですが、その姿勢を学ぶことは出来るような気がします。

数年前ですが、江川ゆかりの地である伊豆の韮山に友人と行きました、その時の思い出はこちらです。

そんな江川太郎左衛門英達、坦庵についての新たな本が出ていたので喜んで読みました。著者は江川文庫といわれる江川家に残った様々な文献を整理した人物です。平成14年から11年間かけてその全貌を明らかにした著者だからこそ知りえた新たな知識に驚かされましたし、知っている人物をもう1度他者の手によって書かれたもので知るのも楽しい読書体験でした。

江川太郎左衛門は幕末の人物で、有名なところでは今フジテレビのあるお台場を建設した人物であり、ちょっと(かなり?)癖のある天才佐久間象山も門下であったり、良質の鉄鋼を得るために必要だった反射炉建設に尽力したり、海防に心砕いて献策したり、農兵という身分制度を超えた発想を持ち出した幾人かの中にも入れられますし、イギリス船マリナー号を退去させた交渉、ロシア全権大使プチャーチンのディアナ号改修にも携わってのヘダ号建設、当時の軍事的最高機密に値する爆裂砲弾の製作、中浜万次郎(ジョン万次郎)の登用を訴え、軍事における食事の面からパンに興味を示してパンの祖ともいわれ、領地民から「世直し江川大明神」と言われる程の善政を敷いた人物です。隠密行動で領地の見回るなど水戸黄門様(実際には黄門様は諸国を行脚したわけではない)のフィクションを地で行った人です、一緒に行動した斎藤弥九郎ともども神道無念流の免許皆伝の腕前、まさに文武両道の人です。

で、今回の本で明らかになった1番の個人的な驚きなのが、実は江川太郎左衛門はいわゆる「尚歯会」に在籍していた資料は存在しなかった、という事実です。尚歯会の方々との親交は実際にあって手紙なども多数残っているんですが、属していたという資料は見当たらなかったというのです。私はてっきり江川太郎左衛門もその一員と思い込んでいましたので、驚きました。特に蛮社の獄に関わっての砲術の師である高島秋帆との関係を見ても、高野長英、渡辺崋山との関係で見ても、尚歯会との関わりが多かったので、そう思い込んでいました。

また、鳥居耀蔵との測量の際の話しも新鮮な描かれ方でしたし、何よりも江川太郎左衛門の書き記した絵画が多数載っていてとても面白かったです。

江川太郎左衛門の人柄を示す言葉の中で、ロシアとの交渉を行い、後にタウンゼント・ハリスとも日米修好通商条を結んだ岩瀬忠震の言葉を知れたのも良かったです。

ただ、本書のタイトルで勝海舟や福沢諭吉の名前を出すのは、少し抵抗感あります。そんな事しなくとも素晴らしい人物であると思います。

江川太郎左衛門英達に興味のある方に、オススメ致します。

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