井の頭歯科

「ルリボシカミキリの青」を読みました

2010年10月21日 (木) 10:52

福岡 伸一著              文藝春秋

いつもの福岡さんの、科学的合理的思考と、文学的情緒的文体の絶妙のブレンド感がたまらないエッセイ集で、週刊文春の連載をまとめたものです。短くてキリのある時事問題を扱った福岡センセイのエッセイ、いつもながら気楽に読めました。

もちろん福岡ハカセのいつもの持論が展開されていますし(動的平衡、狂牛病、脳死と脳始問題、etc・・・)、そこはやはりいくつかの著作を読んでいると、より面白く読めますし、少し簡単すぎる、と感じることがあるかもしれません。また、何故福岡ハカセがこんな文才を持つに至ったのか?という一端を知ることが出来たように思います。絵本「海のおばけオーリー」や「はらぺこあおむし」、さらに「コレクター(ジョン・ファウルズ著)」、「芽むしり仔撃ち」、「ノルウェイの森」などその読書遍歴が少し明かされています、なるほど、という感じがしました。

恐らく何冊か福岡ハカセの著書を読んでいるからなのか、少し軽い印象を受けましたが、良く考えると週刊誌での連載、だからこその時事ネタを含む限られた制限の中でのこのクオリティーは満足できる内容だと思います。

中でも私が面白いと思ったのは、いわゆるコラーゲンとぷりぷりになるというイメージを論理だてて説得しているいわば当たり前の真実「コラーゲンの正体」、何かに見えるその実態はいかに見たいと望むものしか見えないという「空目」、何度も繰り返されてしまう騙されたい欲の存在(ホントに強く同意したい!!!)を炙り出す「健全なる猜疑心を!」です。

そして、他の著作(もちろん全てを読んだわけではないのですが)と違うのは、センス・オブ・ワンダーについて自身の経験を吐露してくれているところです。不思議がれる何かに触れた瞬間の時間の流れが変わってしまったかのような濃密な経験についての部分が、とても面白かったです。

もうひとつ付け加えるなら、川上 未映子さんの歯小説「わたくし率 イン 歯ー、または世界」読んでみようかと思いました。歯繋がり、としても。歯医者に言及されているところも、正直ごもっともな意見でした。みんな自分の「説」に引き込もうとしてます、確かに。そしてそれが信用を得る道であると信じきっているところあります、もちろん私にも。しかし、それだけでない、聴く耳を持つことも重要であるという自覚を無くさなければ(思考停止になってしまいますし)良いのではないか?と考えています。あまりに個々のケースに違いがありますし、全てを学ばないと治療が出来ないわけでもないのですから。ただ、難しい問題を孕んでいますし、これからもずっと考え続けることしかないと思っています。

福岡ハカセの著作を読まれた方にオススメ致します。

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