井の頭歯科

「皆殺しの天使」を観ました

2020年12月4日 (金) 09:07

ルイス・ぶみゅえる監督     V・I・C

映画好きの友人からお借りした、みんな知ってる、しかしあんまり観ている人の少ない難解だけど名作に位置付けられてる作品です。

スペイン語圏、プロビデンシア通りに面するとある豪邸。大きな正面門から使用人と思われる男が、言い訳を言いながらも、立ち去ろうとしています。執事は残って仕事をするように伝えますが、食い下がり、ならばクビだと伝えても、なお去っていく使用人。しかしこれは序章に過ぎず・・・と言うのが冒頭です。

私は不勉強なために全然見てこなかった、スペインの映画監督で、サルバドール・ダリの親友、みんな知ってるのは「アンダルシアの犬」とかですね。どちらかと言うと耽美的な作家として知られていますが、私はアンダルシアの犬しか見た事が無いです。ので、全然知識無しの私の感想です。多分いろいろ知ってる人ほど解釈が出来る作品です、そういう作りになってます。

で、ネタバレ的なモノを含んだ感想にならざるを得ないんです、しかもかなり古い作品ですし、古典と呼んでいい作品だと思うので、あえて、ネタバレ注意的な但し書きも入れません。

不条理劇の有名な形で、何故?とかどうして?に結論や答えを出さないタイプの作品、すぐに思い浮かぶのが、見た事がないけれど「ゴドーを待ちながら」ですね。これもいい劇団で見たいといつも思ってますけれど、なかなかチャンスが無くて見ていませんし、原作戯曲も読んでませんが、どんな話なのか?はだいたい分かっている、何故か?どうしてか?が明かされない作品です、構造は似てますね。

とにかく、執事は1名残して全員が何故か邸宅から出て行き、理由もあるようでなく、20名ほどの招待客は帰ろうとしてもいろいろ理由があって帰ろうとする気力を奪われます。一夜が明け、流石に帰りたくなる上流階級の面々を尻目に、それでも帰れないどころか、部屋を何故だか出る事が出来ません。

帰りたいのに帰れない、そして食糧も無く、水もなく、とどんどん困窮していく20名の上流階級者たちの、極限状態での様々な葛藤、がテーマなんだと思います。極限状態に置かれたからこそ、満足に食事も、プライベートも無くなった空間で、それこそ上流階級者の内幕が暴かれていきます。紳士ぶっていても、自らの生命の安全を願って、女性であろうと、身内であろうと、自らの欲望の為にならば蹴落とそうとする様は、滑稽を通り越して、醜悪ですらありますが、それでも帰れない。

多分不条理劇ですから、あまり何故?とかどうして?はどうでも良くて、その不条理な状況に置かれた上流階級者が右往左往する様を単純に楽しめればそれでいい気がします。

私は、医者が、最後まで理性が保たれる部分が、凄く良かったと思いますし、また逆に、ホストにその責任を取らせようとする人にも、ある種の同意を覚えます。でも、それを言っちゃあオシマイよ、ですけどね。

とにかく、1番気になったのは、入場シーンが何故か2回あった事。あれが全ての謎の始まりのような気がしますし、ココが上手く解釈出来る批評なら、是非聞いてみたい。

ラストの教会で、恐らく今度はさらに100名近い大人数での、再度の再現はきっとさらに難しいでしょうから、それこそ永遠に解けない、時間の墓場へ向かう死出の旅へと旅立つ気がしますし、だから、神は死んでる、という事なんだと思います。

不条理って生きてると普通に置きますし、それも何度も怒りますものね。

不条理な事をある程度、消化できる人にオススメ致します。

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