井の頭歯科

「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」を観ました     No Other Land

2025年9月30日 (火) 08:49
https://www.youtube.com/watch?v=iOyhxAbsbO8
 
バーセル・アドラー、ハムダーン・バラール、ユヴァル・アブラハーム、ラヘル・ショール監督     yabayaymedia     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   35/96
現実がヘヴィー過ぎる。
基本的人権を尊重されてない人がいて、隣で平然と暮らしていける人の心の平穏が保てない事は自明だと思いますが、民族、というホモサピエンスという種の区別とは別に、概念として定義し、文化や習慣が違うと言って差別しているわけで、平穏が保てるわけがない。
井戸や家屋や学校を、軍が命令、違法建築として壊すシーンの生産性の無さ、人道的な破壊を見るに、かつてホロコーストを生き抜いた、経験した人々が起こしているとは思えないくらいの衝撃的生産性の無さ。
民族浄化を経験しかかったホモサピエンスが、他のグループに対して民族浄化を行っている、という恐ろしさ。
理性を駆動出来ない恐ろしさ、負の連鎖を生むであろう事は明白な状況が繰り返されている事の恐怖。
故郷は生まれた場所という意味で、他にあるわけがないが、ホモサピエンスのダメな部分が濃縮されている。
観て良かった。
軍人が被害を与えて、軍事裁判は行われたのだろうか?

「突撃」を観ました     Paths of Glory

2025年9月29日 (月) 09:10
https://www.youtube.com/watch?v=JJcmB1P-meI
スタンリー・キューブリック監督     MGM     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   33/94
現実が厳しいので、その逃避に。キューブリック作品は見応えありますね。
カーク・ダグラスが主演。この人はOK牧場のドクな訳で、近親憎悪が働いていたのですが(幼少期のトラウマとも言えます)、西部劇じゃないと、普通に観れますね。それにしても凄いフィルモグラフィー。wikiを見ててもびっくり。
1916年フランス。第1次世界大戦の中、ドイツと塹壕戦を戦っているフランス軍で・・・というのが冒頭で、また途中までナレーションあります。
タイトル「突撃」ですが、原題だと栄光への突破、くらいの意味に感じますが、どうなんでしょうね。そして勇ましい話しでは全くなく、非常に厳しい、現実の話しでした・・・
軍事法廷裁判、を扱った映画でもありますし、サスペンスもあるのですが、観た順番で言うと、大変有名なスピルバーグの「プライベート・ライアン」の冒頭シーンよりも、ある種のリアルを、私は感じました。
そもそも、映画ですから、何を持ってリアルと感じるか?は人によると思いますが、フランス軍が全員英語で喋ってるので、まぁそういうモノだし、塹壕戦を詳しく観たい場合はピーター・ジャクソン監督の「彼らは生きていた」を見ればよい訳です。でも、それでも、映画的な表現に満ちていて、ダックス大佐であるカーク・ダグラスの仕事ぶりを感じられる、キャプテンシーやリーダーシップを感じられる戦闘シーンになっています。というか戦闘シーンというよりも、虐殺シーンかも知れません。
軍事法廷裁判モノとしては私は初めてかも知れません。
軍隊という暴力をシビリアンコントロール下に置くため、規律も大切ですが、ホモサピエンスには感情があり、なかなか難しい事を求められます。だからこそ軍律があるし、決まり、ルールがある。
それでも、無能な人やプライドが高すぎる人物が指揮を執る軍隊での悲惨な場面は映画でよく見られますし、中でもリドリー・スコット監督「ブラックホーク・ダウン」は、絶対に嫌だ、という瞬間に満ちています。あんな軍隊の中にいるのは、きつすぎる。
カーク・ダグラスの深み、なかなかですが、どうやら脚本が最終稿と違うらしく、何処がどう違ったのか?知りたい。
キューブリック作品が好きな方、戦争映画としてもオススメします。

「現金に体を張れ」を観ました     The Killing

2025年9月26日 (金) 09:16
https://www.youtube.com/watch?v=c0Odg-GY40w
スタンリー・キューブリック監督     MGM     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   33/93
現実がちょっと厳しいので、厳しいドキュメンタリーはちょっと。という気分になり、何故かキューブリックの作品が観たくなりました。みんな大好きなこの作品、私は恥ずかしながら初見です。
競馬場で馬を動かしつつ、レースに向かうくぐり戸を出たところで、タイトル。カッコイイ。というのが冒頭です。
まず、ナレーションがあるんですね。そして、このナレーションがある事で、非常に効果的な、ケイパーモノになっている、というか恐らくケイパーモノの最初期の映画なのでは?と感じました。もちろんトーキーで、という意味ですが。無声映画の世界もめっちゃ広いですから。
しかも、なんならフィルムノワール。そしてモノクロ映画なんですけれど、物凄くカッコいい、画角、音楽、演出、なんです。ちょっと七人の侍っぽさすらある。
そして個人的に1番思い出したのは、書籍ですけれどガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」です。これは映画化されてますけれど、どうしても観れない・・・DVD化すらされてないと思います。でも多分、キムズビデオにはあったんだろうな。
最後のカットの素晴らしさもあるんだけれど、ここで思い出したのは矢作俊彦「マイク・ハマーへの伝言」のラストシーン。もしかして、この映画から着想されたんじゃ、とまで思いました。
お金、の持つただの価値、持つ人による、汚れたイメージ、そしてそれが、ああなる事でに美しさ。その事に至るきっかけの、急に出てくるコメディリリーフ的な人物のギャップ。
スタンリー・キューブリック監督作品は、まだ数本見逃してるのがあるので、やはり観ないとな。
珍しく、邦題もいいな、と思いました。
映画好きな方に、オススメします。

「兵役拒否」を観ました     OBJECTER

2025年9月22日 (月) 09:02
https://www.youtube.com/watch?v=ZizCb7uQCJQ
モーリー・スチュアート監督     アジアンドキュメンタリーズ
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   33/92
街角の盗電師がなかなかスゴイ映画で、インド!ってなったのですが、映画好きの方から、こういうのもありますよ、と教えてもらったので観ました。
イスラエルの徴兵制度は18歳になると2,3年軍隊生活を送る事になります。しかし、18歳の高校生アタルヤはパレスチナ占領政策に非常に強い違和感を覚えていて・・・というのが冒頭です。
2019年の作品、つまりイスラエルのガザ侵攻は2023年の出来事で、その前にハマスの奇襲があった訳ですけれど・・・
徴兵制のある国での兵役拒否が、いかに重く厳しい現実を知る事になるのか?を感じました。
どう考えても、普通に、現在の、2025年のイスラエルの軍事占領、人工的飢餓政策は、人道的に許せないと感じますし、ホロコーストを経験した人たちが起こす事なのか?という疑問を感じますし、憤りも感じます。
だが、実際に、それを、自らの行動で、支援なり何かをしたか?と問われると、極少額の寄付をしたくらいで、何もしていないのと同じです。
そして、これがうちの国で行われたとしたら、私は何か行動を取れるのだろうか?と考えてしまいました。
まず彼女の一家が軍関係者ばかりなんですね。父も長く兵役を務めていますし、祖父もです。唯一、姉の夫だけが良心的兵役免除者でした。兄との交流で、いろいろ気付くアタルヤ。
まず現実を知る事から始めるのですが、ちゃんとパレスチナ居住区に何度も足を運び、パレスチナ側で、イスラエルの人との会話、対話を大切にしようとする人々、市井の人々とも会話を繰り返しています。
さらに、同じような良心的兵役拒否をしている人たちとも話し合います。
その上で、アタルヤの姿勢は本当に稀有だと思います。
何しろイスラエルで兵役拒否となると、恐らく日本で言う非国民という事だと思いますし、顔を出して、というのも恐ろしいと思います。当たり前ですが、コミュニティから排除されかねないわけです。しかも、兵役拒否をするという事は、収監される、という事なんです。
家族で軍経験者の祖父は、まず経験しろ、入隊する事が大切で、変えるなら内側から、というもっともな意見です。しかし、家族がほぼ全員軍関係者であっても、アタルヤと会話をする事は止めない。ここが凄かった。
普通に私なら断絶で終わると思います。
そしてある程度、イスラエルの置かれている現実を考えると、単純に兵役拒否者が増える事の意味も考えてしまいます。確かに単純な話しではありません。
しかしその上で、個人が決める事だという事に、寛容な気がします。いろいろ話し合い、平行線だとしても、そして歩み寄れない部分があるとしても、家族であったりする事、関係性が切れる事は無い、という信頼関係がある。個が個として存在している。
ただ、抗議活動として、街中で演説や話しをしたりするのも、それはデモであっても同じなのですが、抗議活動の充実はあるかも知れませんけれど、抗議している内容が変化するまでの時間があまりに長い、と感じてしまいます。
本当に難しい話しだと思いました。
国、国家、政府とか、決して触れたりするモノでは無いにも関わらず、生活を一変させられる力、権力があり、だからこそ、参加も抗議も必要なのですが、抗議のやり方、もう少し効率化出来ないんでしょうか?とは思います。
社会から排除させられる可能性を知りながらも個人の意見を貫く事の難しさに興味のある方にオススメします。

「街角の盗電師」を観ました     Powerless

2025年9月20日 (土) 09:05
https://www.youtube.com/watch?v=W57wmjn4Zac
ディープティ・カッカ―、ファハド・ムスタファ監督     アジアンドキュメンタリーズ
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   33/91
ついに手を出してしまいました・・・アジアンドキュメンタリーズ。
2013年の作品です。
インドの工業都市カーンプル。かつては東のマンチェスターと呼ばれた工業都市も電力不足により、400近くあった工場の半数が倒産しています。そんな中、街の人々から頼まれて電気を盗む為の配線を独自に行うロハは・・・というのが冒頭です。
2025年9月のうちの国の東京近郊で暮らしているのですが、まず基本的に体力を奪われる毎日です・・・暑すぎる・・・仕事場は冷房が効いていますが、身体も精神も弱い前期高齢者には、冷房にずっと当たり続けるのも体力を消耗する、というポンコツです。ですが、敬老の精神を持って触れていただきたい毎日です。今年は10年を重ねる事にしました。立派な中期高齢者になる予定です。死なないだけで頑張って生きるだけで精いっぱいです。
ですが、2013年くらいのインドはもっと、もっと、もっと過酷でした・・・私なら1日で死んでますね・・・まず気温が47度。47度って何?って感じです。そして、停電が多い。日によっては18時間ほど停電しているそうですし、なんならラストの字幕が、本当に恐ろしいのですが、絶対亡くなる人いたと思います・・・
そして、画面の何処にも、クーラーとかが出てきません・・・恐ろしいです。
工業化が進み、人口が急激に増え、電力供給が不足し、電力会社は不法な電力の盗電を許さないよう、政府から派遣された官僚を新たな担当者(女性)として厳しく取り締まるのですが、貧困層は、どう考えても盗電を繰り返すしかなく・・・といった状況が描かれています。
官僚的女性指導者は、かなり良い感覚の持ち主です。不正に対して厳格でありつつも、恐らく、官僚、警察の不正や賄賂の横行にたいして、かなり厳密に対応しています。そして、変化に対して柔軟な対応をしていますし、それを継続しています。
そこに、選挙が近づき、この事を民衆に訴えて票を得ようとするかのような男性まで出てきて、非常に混沌としているのですが、インドを見ている、という感覚がありました。
人口が多く、まだ教育も普及している感覚はあまりなく、経済成長のスピードが速すぎて、インフラ整備が追い付かない状況と思われます。
そんな中、盗電師こと、ロハはかなりの手練れだという事は分かりますし、彼の手口の入手先が分かった時の、この混乱の沼具合が良く分かる感じです。
そのロハの、見せたくなかったであろう家での姿と、何でも俺に聞いてくれ、的なインタビュー時の、まぁ態度のギャップが・・・
しかし、急激な成長を遂げるインドの、様々な問題の絡み具合が如実に知れます。
まるで、敗戦当時の日本も、そうだったんだろうな、という感覚です。
インドに興味のある方にオススメします。
私は、盗電師、という単語にやられて観てしまいましたが、面白いです。
原題は英語だと(官僚の女性は英語で話します)Powerless結構意味が違ってきますね。
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