井の頭歯科

「ひゃくえむ。」を観ました

2025年10月11日 (土) 09:05
https://www.youtube.com/watch?v=Xy4bziLT-_g
岩井澤健治監督     ポニーキャニオン     吉祥寺オデヲン
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   37/98
あの「音楽」という映画をほとんど1人で完成させた、ロトスコープの使い手の岩井澤監督が、「チ。ー地球の運動についてー」と「ようこそFACT(東京S区第二支部)へ」という傑作漫画の魚豊さんのデビュー作「ひゃくえむ。」を映画化!
という事で、ハードル上がりますよね。でも、原作未読です。
個人的な結論としては、非常に興奮しました、凄かった。
100m走を描いた作品なんですけれど、そして、という事はどうしても「スプリンター」小山ゆう著という名作漫画もあるんですけれど、陸上競技についていろいろ知れる話しなのかと思いきや、才能と天才、の話しでした。
小学生で非常に才能あふれる走りがとても上手なトガシ(松坂桃李)は、走る事が逃避だという小宮(染谷将太)と出会い・・・というのが冒頭です。
小学校で1番、なんなら全国の小学生の中で1番早いトガシは、将来を期待されているのですが、単純に走る才能、もちろん努力もしているけれど、そもそも才能があるので、無自覚に早いです。
また転校生の小宮は走る事が逃避だと断言していますけれど、同じように走る事(逃避)に憑りつかれています。
この2名のそれぞれのアプローチを描いた作品です。
つまり「蜜蜂と遠雷」と凄く似ているテーマを扱った作品。ですが、漫画作品なのに、言葉の強さが、非常に印象的。パンチライン、名言が異常な頻度で繰り出され、しかも納得度が高いです。とてつもないレベルで繰り出されてきます。
そこに演者の、声の力、体重が乗ってくる感覚があります。特に、松坂さんは「蜜蜂と遠雷」に努力型の天才、として出演もされていましたが、今回は天賦の才の持ち主。無自覚に早い事で、覚悟が無くても踏み込める立場にいるからこそ、世界が広がると、井の中の蛙感を味わう事になります・・・かなりキツイ。
小宮は現実からの逃避を目的として走り続けています。しかし走りそのものは稚拙。だが、走る事に非常に強い想いがある。執着と呼べるくらいに。
この才能型と努力型、しかも、その上で、覚悟が無い才能と、覚悟のある努力、という掛け算があり、その他の才能も、結構出てきます。
才能型の日本クラス、努力型の大器晩成タイプ、刹那系のタイプ、様々ですが、そこにある意味人生単位の時間、情熱、考え、覚悟が乗ってめちゃくちゃに重い。なのに10秒くらいで終わってしまう。
名言はネタバレになりかねないので避けますけれど、言葉に力がめちゃくちゃにありますし、それを、俳優、そして声の俳優が出す説得力まで重ねられてて、非常にエモーショナルです。
しかも、ロトスコープ、現実の中に、アニメーション的、漫画的、人物が動く。虚構と現実の境目が微妙になる、ここも凄くエモーショナル。
結局の所、アニメーションの何が凄いのか?と問われたら、それは動き、なのではないか?思います。アニメーションとは1秒24コマの絵が少しづつ動いていくモノですが、その動きの、ある種のディフォルメ、なんならトレースして自分も動きたくさせる、真似してみたくなる、それ、であると思います。カリオストロの城の序盤中の序盤の、車止めの上をぴょんぴょんと走り抜ける動き、上半身は全く動かずに、足だけが動く、その動きそのものが心地よく見えるんだと思うのです。もちろんディフォルメされているのに、真似したくなる。
そういう意味で、ひゃくえむ。の題材である100m走、とてもアニメーション向けな作品。実写では出来ない、動きの面白さ。演出は凄く見た事ある新鮮味は無いものの、ロトスコープの面白味は大変感じられる作品。
その上で、言葉、音楽が使える映画の面白さもあります。漫画が、映画に、なっている。
1コだけ、序盤に出てくる、小宮くんの、小学生の口から放たれる、ネガティブ方向にぶっ飛んだセリフ「現実よりも辛い事をすると現実がぼやける」が本当に衝撃的。
走る、というホモサピエンスの単純な行動に、意味を持たせたり、競技にした結果、そこに憑りつかれた人たちの、軌跡に興味のある人にオススメします。

「銀河特急ミルキー☆サブウェイ」を観ました

2025年10月10日 (金) 09:04
https://www.youtube.com/watch?v=iHd7eWUXuLU&t=13s
亀山陽平監督     シンエイ(株)     YoutubeとU-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   34/95
タイトルは凄く馬鹿みたいです。ですが、素晴らしい作品でした。
3Dアニメーションですが、それほど絵柄に凝ったものではありません。また、特に主義主張がある作品でもありません。基本、ノリだけで進みます。
1番良いのは、センス。次いでテンポ。そしてキャラクターです。この3つで全ての魅力を出しています、凄い!
1話3分のアニメーションで12話、40分ほどの作品ですが、本当に、次が待ち遠しい体験でした。すべてがオリジナル!志が高いと言わざるを得ない。
どのキャラクターも魅力的。そして、どうやってこれ声あてたんだろう、と思いきや、なんとプレスコでした、納得。
やはりテンポをキープしたり緩急や間を作るのにはアフレコよりもプレスコですね。
何度も繰り返し見てしまう中毒性の高い作品、過度の摂取は控えましょう、とオススメすると同時に注意喚起したくなる作品。
80’あのジャンクの時代こそノスタルジー的に光り輝く、という事が理解出来る方に、徳にオススメします。
しかし、ナンシー関の「ヤンキーとファンシー」は本当に言いえて妙。

「爆弾犯の娘」を読みました

2025年10月7日 (火) 09:15
梶原阿貴著     ブックマン社
いつも刺激を与えてくれる友人Kくん。同じようなラジオを好み、同じようなカルチャーを好きで、映画、書籍、音楽に造詣が深く、大人になった後に友人になったのですが、年下なのに好きなモノのベクトルがおおよそ同じな貴重な友人です。その友人との会話で話題になったので、手に取りました。
2024年に逮捕された桐島聡。彼は1974年から75年にかけての連続企業爆破事件の犯人で、実名を明かしたのは入院してからで、その数日後に病死されました。つまり指名手配から50年くらい潜伏生活をしていたわけです。
その事を映画監督高橋伴明監督が映画化するのですが、その時、脚本を任されたのが著者である梶原阿貴さんです。
監督から、5日で初稿をあげろ、と指示される場面から、このノンフィクションは始まります。
何故著者である梶原さんに脚本を指名したのか?は読んでいただくしかないのですが、ノンフィクションです。
一応、著者の事で誰でも知り得ている情報、私の知っていた情報を言うと、映画「桜の園」中原俊監督作品に、俳優として出演されています。詳しく覚えていないけれど、観ています。そして、クリップしているが観ていない映画「夜明け前までバス停で」の脚本を書いている人。
なかなかハードモードな道を歩まれているのですが、大変興味深く読みました。
感覚として、やはり本人でなければ分からない事、かなり多くある作品だと思います。それと、石橋蓮司さん、全く知らなかった緑魔子さん、ちょっと調べてみたいと思いました。
演劇に興味のある方、というかこれはなんでもそうなんですけれど、演劇を演じている自分に興味がある人だと、響かないかも知れないけれど、そして大半がそんな人に見えるけれど(これはバレエの世界で特にそう感じる)、そうではなく、演劇に興味のある人にオススメします。

「盲山」を観ました     Blind Mountain

2025年10月3日 (金) 08:56
https://www.youtube.com/watch?v=U0AD6cjivRw
リー・ヤン監督     スタジオカナル     Stranger
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   36/97
友人がオススメしてくれたので、観に行きました。
1990年代の中国。大学を卒業した白雪梅(バイ・シューメイ)は仕事を求めて、女性の友人とその上司である製薬会社の仕事で、地方に漢方の薬草を探してくれる方を探す為に田舎に来ましたが・・・というのが冒頭です。
かなりの衝撃作品です。
いわゆる人身売買が行われていた、という事なのですが、だとしても酷いですし、これが1990年代の中国か、とも思います。
映画製作は2007年公開、2007年のカンヌのある視点部門で受賞しています。が、2007年の話しで、その時の1990年代の話し、です。つまり10年以上前の話しですが、2025年からだと、30年近く前の話し、になります。現在は分かりません。当たり前ですが、フィクションです、恐らく事実を基にしているでしょうけれど。
そしてなんで今日本公開になったのか?も謎。この辺の事情知りたいですね。
ただ、だとて、です。全然、恐らくどの国でも、そして田舎に行けば、近い事、行われているのでしょうね・・
主人公女性、悲惨で可哀想だと、私も思います。ですが、その夫も、ある種の地獄。
主演の女性以外、そして恐らく最後に出てくる警察官2名は演技経験者だと思います。が、それ以外はすべて、本当の村人で、演技未経験の方が、出演されています。ドキュメンタリーではなく、作劇されているわけです。
嫌なのは、人身売買、法治、というのがある、そういう建前ではあるけれど、都合の悪い、閉鎖された地域、空間であれば、そんなものは無いし、1990年代の話しじゃなく、現在でも、そして、今のうちの国でも、なんなら地方の田舎ではなく、都会の核家族家庭内でも、程度は違えど、同じ事が起こっていると思います。
ネタバレを避けての感想なので、何を言っているのか?となるかも知れませんが、結論として、何が悪いのか?というと、儒教なんじゃないか?と思うのです・・・儒教全てが悪いわけではもちろんありませんが、儒教OSをインストールしている東アジアの国、地域、そこで暮らす人に、個はあるのか?と思います。
しかし、それを知るには、学問なり教育が必要。
その教育が無い場合、何が選択肢としてあるのか?と言われると、非常に厳しい・・・
あと、食事シーンは秀逸です、恐らく、絶対に、お金を払ってだと食べられない料理っぽさがありました。美味しそうではあります。
女性の方、そして女性と関りのある男性に、オススメします。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想ですので、未見の方はご遠慮ください。
で、監督の意図が、分かるけど分からないんです。
果たしてこの映画の脚本はどう書かれたのであろうか?
モデルケース、合ったのかも知れませんし、なかったのかも。また、取材を行ったかも知れませんし、していないでエモーショナルにしたのかも。どこまで意図が、恣意的に行われたのか?不明です。
だから、極度に主人公女性を苦しめる感覚なのかも、とも思います。まぁ実際に酷いんですけれど。
そして、どう考えても、学習が無い事が大きな問題なんですけれど、高卒は村に1名しかいなくて、しかもその高卒が学校の先生で、列車を見た事が無い、と言っている・・・
子供は学校である程度の学習が受けられるけれど、孔子のような儒教思想を学んでいる・・・
近隣の病院では、料金の先払いが無いと、治療行為を行わない様子が描かれています・・・
この地域では、学問、知識が更新もされなければ、忌避されています、なんなら読書すら不要でそれよりも働け、と言われる世界・・・恐らく、本当に余暇が無い、余裕が無い生活なんだと思います。
ここが地獄に見える。
法治も届かない、村人全員が共依存関係。田舎怖い、の上位存在。地獄です。
唯一の知識がある先生、登場時から、まぁダメなんだろうな雰囲気が醸し出されていましたが、ダメにしてもここまでとは・・・
主人公の学びの無さも気になる事ながら、果たして、村人たちの、つまりずっとこれまでもこうやってきた、だからそれ以外を知らない。
恐らく文盲の可能性、高いので、書籍(といっても、画像で確認出来たのは全て雑誌・・・)をしている人を、嘲笑しているし、文盲の自分たちを蔑まれているのではないか?という被害者意識もかなり高そう・・・
普通に、まず、地図を手に入れたり、自動車、自転車等の移動装置を手に入れる機会を探るべきなんですが、まぁかなりの監視下の中では難しいのかも。
この完全に詰んだ状況で、最初、恐らく普通程度に優しい、しかも妻を金で購入している関係からか、ある程度の優しささえ最初は見せていた夫ですが、家族、周囲の村人に、教えられるまま、暴力という解決手段を用います。学んだから、です。それ以外の考えが及ばない。
この夫の状況、というかこの村の状況で、仮にその中の村人、あるいは両親が妻を購入した夫の立場で、何が変えられるのか?私には何も思い浮かばないです。
学習する機会さえないのですから。
その中での唯一の解決策が、暴力。そしてもう1つが、儒教です。
暴力は、まぁ理解できます、何でも暴力で解決してきたホモサピエンスの歴史がありますし。しかし、儒教の、目上の人を敬う、という、アプリオリに年齢で権威を取れる合意形成、万人の闘争状態を抜け出す為に出来る数少ない無知のままでも行ける手段なのかも知れません・・・が、だからこそ、社会科学や歴史や学習、必要なのに、これだけ閉ざされた社会だと、本当に詰んでると思います。
映画や本の中でも、田舎で嫁を娶ると、牛馬の様に働かせる、みたいな文言を、うちの国でももちろん使っていたし、そこには何らかの階層を感じさせるニュアンスもありました。いわゆる男尊女卑思想ですね。さらに、人身売買とは程度の違いはあるモノの、共働きの兼業主婦だけが、家事の負担率が高い事、別に同じリアリティーだと私は感じますし、男尊女卑思考≒儒教思想≒封建制度、という事なので、まぁ、自らを保守と語る方のほとんどは、今現在も同じだと思いますね。理解がある、ように見えていて、実際に自分の権威や立場を、実際に自分の場合には、そう簡単に手放そうとはしないでしょう。もちろん私も男性なので、そういう無自覚に振る舞っている事、多いんでしょう、それに気付けないのが恐ろしい。気づけているようで、ワカラナイのが、恐ろしい。
私は、ラスト、惨劇がついに始まるんだ、と思いました。いわゆる昭和残侠伝よろしく、殴り込みが始まるんだと。
始まりはしたけれど、あの後、どうなるんでしょうか。ある意味、解決方法は無いのであれば、こちらも、暴力を出すしかないのでは、と感じました。
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