井の頭歯科

「ブラック・ミラー」 シーズン2 5話 『White Christmas』を観ました

2019年7月19日 (金) 09:27

カール・チベッツ監督          Netflix

ダークなオリジナルオムニバスシリーズのブラックミラーのシーズン2を観てしまいました。やらなければならない仕事がたくさんあるのに現実逃避してしまいました・・・しかし、観て良かった大変良質な作品だと思います。1シーズンに1つは、大変面白い作品が含まれています、特にシーズン2ではこの「White   Christmas」が飛び抜けてクオリティが高く、脚本が練られていて面白かったです。

外界から離れたとある小屋に暮らす2人の男、5年も暮らしているのにほとんど話しをしなかったこの2人の男が、クリスマスに始めて話し始めます。マシュー(ジョン・ハム)は全く喋らないジョーに向けて、自分の昔の話しを語りはじめるのですが・・・というのが冒頭です。

素晴らしく練られた脚本だと感じました。そして映像のクオリティもとても高いですし、これは映画館で流しても問題ない作品だと思いますね。作風で最も近いと感じたのは、日本んの映画監督今 敏作品です。現実の底が抜けるかのような、リアルな感覚の溶解を味わえる作品。ですが、何も知らずに観ていただくのが最も効果的な鑑賞方法だと思います。

ネタバレは避けての感想ですけれど、自我とは何か?という大変哲学的な問いかけへの思考実験作品とも言えます。大変恐ろしい話しでもありました。

ブラック・ミラー シーズン2 の1話 『Be  Right  Back』はかなりヘンテコなお話しでした。イングランドの田舎と思われる場所に引っ越してきたマーサは、突然交通事故で夫アッシュを失うのですが、というのが冒頭なんですけれど、とても女性的な感覚があれば、ヘンテコに感じないのかも知れませんが、自ら起こしたアクションの結果を、責任を回避しているように和他私には感じてしまい、もう一つでした。

第2話『White   Bear』も設定的にはかなり飛躍している作品です。何の説明もないままに、ある環境に陥れられる女性を扱った作品なんですが、最後の最後に、これまで見ていた作品のある側面を見せつけられ、大変驚愕はするんですけれど、何かもうひとつ腑に落ちないんです、すごく、驚かせようと思った、というだけで、理由が無いんです・・・これもちょっと残念でした。

第3話『The  Waldo  Moment』は、青いクマのアニメーションキャラクターの中の人、補欠選挙に出る事になってしまったウォルド―の悲哀を描いた作品で、これもとてもクオリティは高いのですが、最後の最後とCIAはちょっとやり過ぎてしまった感があります。ですが、政治風刺モノとして面白かったです。

ディストピア映画が好きな方にオススメ致します。

「ブラック・ミラー」1シーズン 第1話 『The National Anthem』を観ました

2019年7月12日 (金) 09:21

オットー・パサースト監督         Netflix

ネットフリックスにずっとオススメされていたのですが、なかなか何シーズンも続くシリーズを観る時間が無いな、と思い手を出さなかったのですが、1シーズンが3話、2シーズンが4話と知って手を出しました。が、これがめっぽう面白いです。1話完結の、非常にダークなSF(?)作品です。

現代のUKと思われる国。その首相を務めるマイケルは早朝に電話で起こされます。ある誘拐犯からの動画で指示を受けています。国民から人気の高い皇室のスザンナ妃を監禁していて、その犯人の要求は・・・というのが冒頭です。

この犯人の要求がすさまじく予想外である点、そして、その為に周囲の人間が様々な行動を取るのですが、この様が、非常にリアルなのです。もし、このような事態に陥ったとして、取られる行動の、何が正しく、何が間違っているか?また、ある種の品位、人間性、人格、様々な点が問われるのです。

物凄く恐ろしいIFだと思います。仮に首相でなかったとしても、です。

興味本位の人間の、欲望に抗う事の難しさ、についても考えさせられます。

果たして、何が正しい行動だったのでしょうか?

シーズン1はこの後に第2話「Fifteen  Million  Merits」という完全管理社会の中でもオーディション番組の写す、グロテスクなリアルを扱った作品と、第3話「The  Entire  History  You」人間の視野範囲、つまり見たモノ全てを記憶出来て、しかもすぐに再生出来るチップが生まれている社会の闇を描いた作品がありますけれど、この2本は、それほど特殊でもない感じでした。もちろんクオリティは高いのですが、それぞれのSF設定を生かすのであれば、少々物足りなく、捻りも弱いと感じてしまいました。しかし、第1話は、想像を絶する展開で驚きましたし、大変考えさせられる話しだと思います。

ダークなSF作品が好きな方に、オススメ致します。

「ひらいて」を読みました

2019年7月9日 (火) 08:47

綿矢 りさ著       新潮文庫

映画「勝手にふるえてろ」の原作者、しかもかなり売れている作家さん、という事で手に取りました。基本的には気になった作家さんは処女作を読んで、その後追いかけるのか?を決めるのですが、たまたまその作品が無く、手に取り易かったので。

女子高生の愛はスクールカーストで言えば上の下、もしくは中の上、辺りのごく普通な生徒なのですが、クラスメイトのさえない男子生徒、地味で見た目もそれほどでもなく、しかも友人が少ない、その人が気になって仕方がありません。しかし、その男子生徒は・・・というのが冒頭です。

正直、文体は普通で、とても読みやすいです。主人公・愛のモノローグで進む青春(?)小説です、未だに青春小説というジャンルがあるのであるならば。ですけど。そしてもちろん、これは現代風に仕上がっていると思います、もう若者の感覚が分からない歳になったので、あくまで想像ですけれど。

で、この主人公の愛さんが、特殊。いや、こういう男子なら昔からいましたけど、女子で、というのが特殊。だけれど、こういう特殊さって昔もきっと思うだけなら、いたと思う。そして、その当時だと、そういう女子がいるかも、という部分が思考の枠内、想像の範囲内に無いのが男子の特徴とも言えると思います。それだけ多様性に開かれた社会になったのだとも言える。

が、私はこの愛さん、文庫の後ろの解説でも、宣伝でも、カースト上位という事になってるけど、それってこの子が自分で思ってるだけで、そんなに上位じゃなかったのかも?とも思います。あくまでポジションとしては保持しているのかも知れませんが、モノローグなんで何とも言えない感じがします。

しかし、女性の世界は本当に厳しいし、大変。やはり別の生き物に見えます。確かに繊細で感受性が高いかも知れませんけれど、こじらせてしまえば、より機能不全に陥るのは、と思ってしまいます。

何と言いますか、パンキッシュなんですね・・・

女性の作家さんで言いますと、金井美恵子さん、山崎豊子さん、山田詠美さん、桐野夏生さん、江国香織さん、宮部みゆきさん、角田光代さん、絲山秋子さん、特異な人だと山本文緒さん、辺りを何作か、は読んできましたけど、1番近いのは、山本文緒さんかも、というくらいに異質、私の読書遍歴ですと、ですが。まだ1作しか読んでいないので、何とも言えませんけど。

現代(もう古くなってるかも)青春小説を読んでみたい方に、オススメ致します。

「高橋ヨシキのシネマストリップ 戦慄のディストピア編」を読みました

2019年7月3日 (水) 09:48

高橋 ヨシキ著         スモール出版

NHKラジオで放送されている高橋ヨシキさんの映画レビューに加筆修正されたモノで、さらに、ディストピア映画を集めたものです。ディストピア映画は、ある種の近未来SFとも相まって、個人的に大好物のジャンルです。特に好きな作品というか、観た後に嗜好が変わってしまったとも言えるテリー・ギリアム監督作品『未来世紀ブラジル』です。何度見ているか数えていないくらい見ています。とても後味が、余韻のキツイ作品ではありますが、美術も映像も音楽も大好きで、忘れられない1本の映画です。そして、ディストピア映画は、何かしらの現代の暗喩を含んでいて、さらにその先を魅せてくれる感覚があり、とてもわくわくします。と、同時に、映画が終わった後、びっくりするくらい、映画の中も酷かったけど、現実も同じくらいヒドイな、という気持ちにさせられるのが、2重の意味でショッキングでより深く考えさせられるところが印象に残り易いのだと思います。

冒頭、高橋ヨシキさんは、ディストピア映画は、全員にとってのディストピアではなく、特権階級の少数の人間にとってはユートピアになっている、という説明に、ハッとさせられます。確かにその通りです。大抵は権力者側のごく少数にとってユートピアであり、それ以外の大多数の人にとってディストピアになっている、という点を指摘されるまで気が付かなかったです。さらに、その行為は善意を基に出来ている、という点も見過ごせない点です。特に人間は善なる存在と確信した時に、最も残酷になる事が出来る生き物だと思うのです。

見ていない作品も多かったのですが、何と言っても『1984』の恐ろしさは、ずば抜けています。私は映画版を見ていませんが、書籍で読んでとてつもない小説だったな、と感じました。ここまでの恐怖を感じる事はあまりないと思います(小説「1984」ジョージ・オーウェル著の感想は こちら )。

そして、2019年の現代日本が、非常に1984的なディストピアに近づいていると感じます。

まず基本として、私は日本国籍を持つ日本人です。そして民主主義を掲げているこの日本での最高意思決定機関は国会の場だと思います。ですので、民主主義的な選挙というシステムを経た結果、議員となった人物にはそれ相応の責任も発生します。そして、敬意を払える人物であると仮定しています。その人が議員になるためにはそれ相応の数の人間の支持があったからです。そもそも相手への敬意が無い人物と議論は出来ません。もちろん立法府である国会の決めた事ですから従いますし、また、間違った決定であれば、異論を唱えます。しかし、それは政治家がある程度機能していればこその話しであって、官僚をコントロール出来ていない状況(いや、もっと言うと恣意的にコントロール出来ている状況が)は、かなりマズイと感じます。本当に1984に出てくる真理省じゃないですけれど、政府発表に恣意的なデータ改ざんがある、という事は、既にこれまでの発表の信憑性を、著しく損なっている訳です。今までは無かった、今回の事が唯一の誤りであった事を証明する事は出来ないし、信用が無くなった事を意味します。大変恐ろしい事態です。が、それでも内閣が責任を取らない組織である現在の状況は異常だと感じます。また、本当に、印象でしかありませんけれど、小学校の名前に首相の名前を冠しようとする学校への便宜を計っていた可能性があるなんて、ハッキリ言ってどうかしてます。そういった疑いをかけられる事でさえ、ヒドイと思いますが、その関係性を露わに出来ていない現状、そして学校の関係者との親密な関係を疑わせる写真や夫人との関係や顛末(その後は関係が無かったかのような振る舞い)を見ていると、ディストピアに感じます。と同時に、経済政策だけは支持できていたのに、消費税10%に上げる事態が引き起こす未来に暗澹たる気持ちになります。これも選挙の結果、そして私含む主権者が選んだ結果なんですよね。どんな人物でも(政治家も)完璧な人はいませんから、それぞれの立場の主張を、議論で、取りこぼしの少ない、マイノリティを排除ではなく包括する(同じ国籍を持つ人間)ために、玉虫色の決着があると思うんですけれど、ルサンチマンを溜め込むと無理なんでしょうかね。義憤に駆られた人間がどんなに残酷になれるか?を合わせて想像すると恐ろしくなります。程々を知らないと必ず遺恨を残し、憎悪の連鎖が始まるだけなのに。

閑話休題

取り上げられている作品の中で気になった、まだ観ていない作品は、いわゆる反体制側の人間を狩るマンハントを法治に取り込んだ世界の『懲罰大陸☆USA』ピーター・ワトキンス監督作品、核戦争後の世界で犬と暮らす『少年と犬』L・Q・ジョーンズ監督作品、ルワンダのジェノサイドを描いた『ホテル・ルワンダ』テリー・ジョージ監督作品、黒人と白人をただ単純に入れ替えた世界の異様さをあぶり出す『ジャンクション』デズモンド・ナカノ監督作品、です。

ネットですと顔の見えない関係が成り立つ事で、非常に過激な言葉を使う人が多いですけど、もう少し相手に敬意を持たないと、コミュニケーションが成り立たないと思います。人前で使わない言葉を平気でネットに上げる人も、多分、顔の見える状態ならまず言えないと思います。どれだけ負の感情を溜め込んでいるのだろう?と思うと恐ろしくなりますが、これも、『自分の側に正義がある』と思っているからこその、残虐性の表れだと思います。やはり生きてる人間が1番恐ろしいです。

近未来SF、ディストピア映画に興味のある方にオススメ致します。

「天皇のお言葉 明治・大正・昭和・平成」を読みました

2019年6月28日 (金) 09:15

辻田 真佐憲著     幻冬舎新書

辻田さんは近現代史研究者でありますが、とても楽しく、できるだけフラットに語ってくれる語り口が素晴らしく、それでいて丁寧です。データや参考資料や文献も事細かに記載されていますし、だからこそ原典を当たろうとすると簡単に当たれます。さらに、その資料の成り立ちから、どの程度の信憑性があるのか?または両論併記した方が望ましいものは両論併記で記載されていますし、至れり尽くせりです。それなのに、語り口がさわやかで、イデオロギーを感じさせません。あくまで、事象に対して、の判断の積み重ねた結果の結論はなかなかすさまじい説得力があります。

しかし、私にとって天皇陛下のお言葉を理解するのは、なかなか難しい作業だと思います。何故なら、それぞれが勝手に解釈して『私が天皇陛下のお言葉を最も理解している』として取り入ろうとする人がたくさん居そうだからです。しかも非常に重い使命や責任や文化、そしてある種の幻想さえも背負う、日常が非日常な方のお言葉は、大変重みもありますし、理解しようとするハードルが高い感じがします。また理系の為にいわゆる歴史の知識が乏しい上に、興味がある部分は知っているけれど、それ以外へのヒロガリに欠ける部分が多いので、さらに難しく感じます。その上、明治・大正・昭和・平成と近現代史となると、さらに難しい解釈や取り方が出来るますし、本当の意味で細かな事実さえ知らない部分も多いです。

しかしそんな不安も、最初からほぐしてくれるのが辻田先生です。近現代史に詳しくなくとも、また、ある程度知っている人にとっては、さらに詳しく、様々な事象について解説してくれている上で、陛下のお言葉の意味を考えよう、という書籍です。

明治天皇の、話し言葉では当たり前なのかも知れませんが、京都弁を、文章で読む事で、少し可笑しみが、そして親しみさえ感じられます。また、とても外交に、決して武力を好んで用いようとは思っていなかった部分を知れたのも良かったと思います。たとえ苦難の道だとしても、その苦しみを共に味わう気概の持ち主であった事も、新鮮で懐の広さを感じさせてくれます。何よりも教育問題にこれほどまで心砕いて、西洋一辺倒にならない工夫を、儒教的な側面を残しつつ、良い部分の西洋を取り入れようとした、そのバランス感覚は、素晴らしいと感じました。そして、すっごくお酒が好きな点も、個人的には共感できるところです。そして国家元首としての人物評価の高さ、その深度にも、感服します。

また、非常に人間的な部分、日露戦争時の、あくまで私の意図では無かった、と思えるような宣戦の詔勅の部分や、大津事件におけるニコライ皇太子へのお見舞いの件は、まさに人間的な、と言える様々な感情のゆらぎを感じる事が出来ました。

そして有名な、教育勅語についても、詳しく書かれていたのは、大変面白く読みました。あくまで、天皇と臣民の上下関係であり、天皇陛下自らこれを守るのであって臣民もこれを守って欲しい、という意向のものであった事実は知れて良かったです。補論として、愛国コスプレとしての教育勅語、という短い論があるのですが(P62~65)、この部分は大変切れ味鋭い論評になっていて、全く同感です。中身を知らない(知ろうとしていない)で、とりあえず「教育勅語」を肯定しておく、その事が戦後民主主義の否定=反左翼=保守派である事の信仰告白、という図式は、とても明快です。ぐうの音も出ないほどの正論でした。それをもって愛国コスプレと名指す言葉の選び方も、ウィットが効いていて良かったです。あくまで、保守派でいる事が大事なのであって、保守が何なのか?を突き詰めようという訳では無い輩を見分けるリトマス試験紙のようです。

そんな明治天皇が好んだのが和歌であったのに対して、大正天皇は漢詩を好まれていた、というのも不思議な感じがします。

ご病気のために事実上の在位は10年なのですが、フランス語をある程度話せたり、和歌よりも漢詩をたしなまれた事実も知れて良かったです。漢詩の方がかなり複雑なルールや韻もあって特殊性は高いと思いますが、ご病気になる前はかなり明晰な方であった事が偲ばれます。

そして昭和天皇についての記載が最もボリュームあります、在位も長いので当然だと思いますが。著者の辻田さんの言うリアリストという言葉はとてもしっくりと感じられました。あくまで当時の、リアリストなのですが。

かなり潔癖な態度を取られる1928年の関東軍高級参謀・河本大作による張作霖爆殺事件に対して、軍法会議にかけるとの約束を反故にした当時の内閣総理大臣・田中義一に対しての失跡は、非常に冷静な判断だと思います。しかし、その為に内閣総辞職になってしまうのですが、この辺の政治的な役割と言いますか、大権も、それでも天皇陛下お1人の判断ではなく、側近や元老など様々な人の意見を取り入れての結果なのだと思います。しかし、だとしても、大変大きな権力だと思うのです。

また、昭和天皇陛下の感情が露わになった2.26事件についても、武装蜂起した青年将校を庇う事無く、それよりも、打たれた老臣を気遣うお言葉は、大変重く感じます。あくまで私見ですが、この祭り上げられ、権力者を任命する役割、としての天皇という立ち位置の難しさを感じずにはいられない事件だと思います。

また陸軍への不信感、特に独断専行をする関東軍への不信感は強かったようで、特に、杉山元参謀総長に対して、『汝は志那事変の陸相なり、その時、陸相として「事変は1箇月位にて片づく」と申したことを記憶す。しかるに4箇月の長きに亙り、未だ片づかんではないか』というお言葉は大変最もだと思います。人物評にも長けていて、石原莞爾を『満州事変の張本人』、板垣征四郎を『完全に軍の「ロボット」』、松岡洋右を『ヒトラーに買収されたのではないか』とまで言われています。最も、海軍軍人への言及の少ない本だったので、海軍への評価は不明ですが・・・

そして英米に対する宣戦の詔書に、英国への配慮があった事を知れたのは良かったです。英国にも渡英されているのもありますし、明治天皇も親しくされていたからなのだと思います。さらに終戦(と言いますか、敗戦ですよね)に至るまでの、三種の神器の取り扱いや、ご聖断の苦しみを考えると、当時の昭和天皇陛下のご年齢は僅か43歳・・・あまりに重い責任だと感じます。

明治天皇は大変お酒を好まれたのに対して、昭和天皇はお酒にトラウマまであって、ほとんど飲まれなかったのも、意外な感じがします。

そして、戦後に入って、「勅語」という言葉は「お言葉」に改められるのですが、そのお言葉には、本当に様々なモノがあって、やはり生きていらっしゃる人間なんだな、と強く感じました。特に、私が微笑ましいと感じたのは、テレビ小説「さかなちゃん」の録画を侍従に頼まれる事です。また、靖国参拝についての言及があった事、事にA級戦犯合祀が御意に召さず、とされているのも知れて良かったです。

続いて平成の時代。平成天皇の、即位にあたって「憲法に定められた天皇の在り方を念頭に置き、天皇の務めを果たしたいと思っております。国民の幸福を念じられた昭和天皇を始めとする古くからの天皇のことに思いを致すとともに、現代にふさわしい皇室の在り方を求めていきたいと思っております。」という言葉の重み、そして、その事を実現するに至る、『旅』される公務の数々を見るにあたり、本当に、象徴としての天皇とはどういうことか?を考え抜いたのだな、と思います。本当に大変な重責を担わなければならない存在であるのだ、と認識を新たにしました。

日韓ワールドカップ共催におけるご発言の、続日本書紀における皇室の韓国とのゆかりをご紹介する懐の深さ、東京都教育委員米永邦雄への強制になるということではないことが望ましい、とのご発言にも、優しさが溢れていると思います。そして、何度も繰り返される『先の大戦(中には『満州事変に始まるこの戦争』という明記もある)に対する深い反省』というお言葉、この言葉の重みにも思いを馳せる事になります。

最後に、ビデオメッセージ。このとてつもなく幾重にも意味の含まれたメッセージを読み解くのに、今までの天皇陛下のお言葉、それも明治から大正、昭和、平成、とみてきたからこそ、の読み解きはスリリングでさえありました。象徴的行為と国事行為、中でも象徴としての『祈り』と『旅』についての言及は、様々な発言を見てきたからこその、重みを感じました。天皇は高齢化する、という避けられない事態をどのようにするのか?についての強いメッセージだと思います。しかも、この内容を有識者会議で批判された事についてのお言葉もあり、やはり大変重いと思います。

読後、最初に思った事は、このような重責を1人の人間に任せる事で成り立つ社会のままで良いのか?という疑問でした。もちろん尊い存在ですし、極端な廃止論ではなく、負担の軽減、あるいは役目の分担、という事です。しかも現状、大変厳しい状況に置かれていると思います。男系男子に限る方の意見も聞いてみないとよくわからないのですが、このまま男系男子にこだわると、繋いでいけない事態になりかねないと思いますし。

とにかく、大変スリリングで面白い本でした。天皇陛下のお言葉が気になる方に、近現代史の天皇陛下のお言葉で振り返る事に興味のある方に、オススメ致します。

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