井の頭歯科

「邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相」を観ました

2020年2月21日 (金) 08:44

バーバラ・シュローダー監督       Netflix

何となく覚えていた事件、その真相や、その後の展開を追いかけたドキュメンタリーテレビシリーズです。

2003年、アメリカ合衆国、ペンシルバニア州、エリー。大胆にも日中に銀行強盗を行った男が出没、もちろんすぐに警察が取り囲むのですが、その首には何かが取り付けられていて、しかも胸に大きな機械が取り付けられています。その男は、私には爆弾が付けられている、と警察に話すのだが・・・というのが事件の冒頭です。

とても悲惨でそして、とても不思議な事件を扱ったドキュメンタリーテレビシリーズです。が、邪悪な天才、というのは少々オーバーだと思いますし、そもそもドキュメンタリーという手法だから=真実とも言えません。いくらでも誘導できますし。しかし、それでも、この事件の、大変特殊で、複雑で、そして何が真実なのか?がある程度分かるまでの時間のかかり方、変な日本語になってしまいますが、謎性というものに、ワカラナイ事だからこそ興味を刺激する、という事を、考えさせる事件だったと思います。

大変特徴のある自己主張の強いある人物と、これまた大変頭脳明晰ではありますが自己顕示欲の強い個性のある人物が出会ったしまった不幸、と私は感じました。

多分、ミステリーというジャンルのフック(人が惹きつけられるチカラ)の強さ、と同じ意味で、この事件の複雑怪奇な部分に興味のある方に、オススメ致します。

「GET OUT」を見ました

2020年2月18日 (火) 09:14

ジョーダン・ピール監督    ユニバーサル・ピクチャーズ
2017年の映画でしたけれど、見逃してしまい、その後なかなか見れなかったのですが、ついにNetflixに登場したので見ました。大変面白かったです。
クリスは付き合っている彼女の実家に、両親へのご挨拶に向かおうとしています。クリス(アフリカンアメリカン、という表記も分かるんですが、しかし黒人しか表記が無いのも、そろそろどうかと思うんですけれど・・・長いけどアフリカ系アメリカ人にします)はアフリカ系アメリカ人で、恋人ローズは白人(という表記もなぁ・・・ホワイト系アメリカ人って言葉はあるんでしょうか?)なので、その事を両親に伝えてあるか?が気になっています。そして2人で車で出かけるのですが・・・というのが冒頭です。
はい、凄くホラーテイストな映画ですけれど、もちろんそれだけではない映画でした。大変ビターな味わいのある、エスプリの効いた、作品です。私は自分の事が、アンフェアでないように、差別的でないように、気をつけているつもりでも、態度で、言葉で、差別的な事をしてしまいます。または、後で考えると、あ!というような事がある人間です。ので、余計に身につまされるような要素を扱っているように感じました。
その集団の中での立ち位置と言いますか、暗黙の了解を犯してしまったかのような、恐ろしさがあります。立場も理解しているつもりであっても、間違えてしまう事、身に覚えがあるので怖いです。特に、これなら大丈夫、と思った矢先に起こる事が多い気がしますし、そういう時ほど重大な失態をしてしまうように感じます。
自分たった1人だけが、異質な空間に入り込んだ時の恐ろしさを感じさせる映画ですし、その点を、その他大勢が、分かっていますよ~理解ありますよ~と言いながらも、そのポイントが妙にずれている、そんな感覚に陥る、そんな映画です。
まず何といっても、アフリカ系アメリカ人の女性の使用人ジョージナを演じている方の演技力、その笑顔がひきつりつつも一筋だけ流す涙の演技は意味が分かると鳥肌モノの演技力です。もう1名、パーティに招かれたアフリカ系アメリカ人の青年の、とある場面で瞬間的に変化する演技の凄さ、に驚かされました。
私は差別に理解ある方、と思っている方(当然少しは思ってた私含む)にオススメ致します。
アテンション・プリーズ!
ここからネタバレありの、個人的な、こうだったらもっと怖かったな、という映画の結末の話しになります。
未見の方はご遠慮ください。
とても上手い話しでした。
でも、私だったら、ここまで捻りとキックが効いている作品なら、クリスがパーティで会う紳士淑女の中に警察関係者を1名いれて会話を少しはする客の1人として登場させておきます。この周囲の人々もみんな理解ある人ばかりだよ、的な会話を交えつつ、警察関係者である事だけを伝えておいた上で、クリスが家から脱走、ジョージナを車に運んだ上でローズに撃たれて逃げ出した後、友人のロッドは登場させないで、ローズに馬乗りになった後に、パトカーが到着、何も知らない警官がアフリカ系アメリカ人の男が、ホワイト系アメリカ人女の上に馬乗りの状態を見ただけでクリスを犯罪者と断定、クリスが両手を挙げて投降、クリスが説明しようとするのを遮り、暴行して黙らせた上で、警察上層部の1人としてパーティであった人物が登場し「連行しろ!」と怒鳴った上でにやりと笑いつつエンドクレジット、みたいなバッドオープンエンドになってたら、もっと好みでした。

「『世間とは何か』」を読みました

2020年2月15日 (土) 08:54
阿部 謹也 著   講談社現代新書
やはり師匠のオススメだったのと、山本七平著「空気の研究」、河合隼雄著「母性社会日本の病理」と繋がる話しだったので興味があり、手に取りました。
世間という事象に対して研究されている人が居る事も知らなかったのですが、この本は1995年に発行されていまして、割合最近じゃないか!と驚いた次第です。ま、今から25年も前なんですけれど、山本七平著「空気の研究」は1977年、河合隼雄著「母性社会日本の病理」が1976年と比べると、本当に最近という感じがします。
世界、社会という単語と、世間の違いを感じる事は今までもありましたが、この本ほど詳しく考えた事はありませんでしたし、実際には私も世間の中に生きているわけです。つまり世間の掟が個人に優先している、と感じる事は多々あります。自分に責任や非が無かったとしても、世間を騒がせた事をお詫びしたい、というセリフを何度聞いているか?と思うと、2020年の現在でさえ、繰り返されています。それをオカシイと思うと同時に、世間の掟によって守られてもいるわけです、暗黙の了解の上に。
カントの「啓蒙とは何か」を例に挙げて論じている、この非言語系の知について、著者の阿部さんの論旨は大変わかりやすく、そして腑に落ちます。そう、我々は、個人の責任を負っているのではなく、我々が所属する世間の責任を負っているにすぎず、世間に生かされている、とさえ言えるという結論は、かなりショッキングでもあります。
その後、日本における世間の成り立ちを見ていく過程で、大変面白かったのは、世間から離れようとする人物は隠者になるしか道が無く、そういう意味でこの本で扱っている、吉田兼好という人物には、大変興味が湧きました。古文を全く得意としなかったので、特に日本の古典文学については何も知らないに等しい私としては、大変驚きました。かなり好きになれそうな人物です。
また、鎌倉時代辺りの裁判というか審判における神判、いわゆる刑事事件の被疑者が身の潔白を証明するのに起請文を書いて奉納し、その後一定期間の間に、鼻血を出したり、鼠に衣服をかじられたり、病気になったり、食事をむせたりしなければ、嫌疑を払拭できなかったという事実も、大変に驚きました。なおかつ、盟神探湯(くかたち)と呼ばれる、神に誓って熱湯のなかにある小石を拾う者の手は火傷しない、邪悪な者の手は火傷する、という判断にもびっくりします。しかし、世間の掟として、この行為が行われていた、とすると、大変に恐ろしい事だと思います。
また、夏目漱石の個人主義、永井荷風の気質としての厭世、そして、その間を生きたような金子光晴の個人主義には、まさに共感としか言いようのない感覚があります。特に永井荷風は、大変偏屈で、しかもお金があったからこそ出来た非常識人としての矜持やふるまいに、憧憬さえ感じます。断腸亭日乗を読んだ時も思いましたが、個人としての、その生き方には尊敬すら感じます。
個人という主体が存在するのか?という事を、考えた事がある日本人の方に、オススメ致します。

「運び屋」を見ました

2020年2月7日 (金) 08:52

クリント・イーストウッド監督     ワーナー・ブラザーズ

今劇場でやっているイーストウッド監督作品「リチャード・ジュエル」を観に行きたいんですが、ちょっと風邪をひいてしまい・・・大人しくしているので、Netflixにて、イーストウッドの前作を見ていなかったと思いだしたので、観ました。相変わらず、イーストウッド節の映画です。流石、というべき部分もありますし、またか、という部分もあります。

百合の花の園芸家で一角の人物と評されているアール(クリント・イーストウッド)は、一人娘の結婚式をすっぽかして百合の品評会に出席しています。周囲の人々にも一目置かれ、まんざらでもない様子です。が、インターネットの発達によって・・・というのが冒頭です。

とてもオーソドックスな映画。こういう作品が好きな人からは、とても評価されると思います。そして、ハードボイルドな漢(と書いて、オトコ、と読むタイプの)の人にとってさらに心地の良い映画になっていると思います。ですが、イーストウッドの映画、その上質さ、はさらに深まっていると思います。

これは毎回、いつもいつも、いつも思う事ですが、監督であるクリント・イーストウッドの、イーストウッド性なるものを凝縮させているので、まぁ、アール=イーストウッドに感情移入して『酔って』観れる人には、サイコーの映画体験になると思います。本当に元気で、漢の子な映画。でも、確かに良い作りで、とてもシンプルな強さがあります。

しかし、私はどうしても、結局のところ、クリント・イーストウッドは絶対に損なわれない世界の話し、なのが鼻についてしまいます。許されざる者なんだけれど、イーストウッドだけ、は、許される話しなんです。家族にも、そして自分の名誉にも。

好きに生活し、家庭を顧みなかった男の、許される話し。うん、2020年になったけれど、やはり男の人にはハードボイルド(的なるもの含む)は必要だし、女の人にもハーレクインロマンス(もちろん、的なるもの含む)が必要ですし、それぞれそういう部分を許せる、大人な対応をしたいし、そうなりたいですね。

久しぶりに聞いた「on the road again」が懐かしいです。

でも、私はやっぱり、イーストウッド作品は「センチメンタル・アドベンチャー」だと思ってます。まぁもちろん、大変ロマンティックな映画ですけれど、最近のイーストウッド作品よりも、負けを認める、強さがあって、そこがいいです。

そういえば「センチメンタル・アドベンチャー」にも息子が甥っ子役で出ていますが、娘役が、本物の娘ですし、イーストウッドはたしか何回も結婚していて、息子や娘だけでなく、当時付き合っている女性を映画のヒロインに抜擢(というか・・・)する、大変実人生と映画のコミットが強い作風です。もちろん、偉大な映画監督で、偉大な役者である事は当然ですけれど。同じ年の映画監督として、アレハンドロ・ホドルスキー監督と、フレデリック・ワイズマン監督がいるのが、不思議な繋がりを覚えます。3者3様の映画監督ですが、どなたも偉大。最も一般的に名前が知れているのはイーストウッド監督でしょうけれど・・・

「ジョジョ・ラビット」を観ました

2020年2月4日 (火) 09:35

タイカ・ワイティティ監督     フォックス・サーチライト・ピクチャーズ

最初から結論になってしまいますが、物凄く凄く良かったので、是非たくさんの方に観て欲しいです。

私はたまたま時間が合ったので、吉祥寺オデヲンのレイトで観ましたが、もっとたくさんの人が観る映画だと感じました。

『愛が最強』というキャッチコピーは、響く人には響くでしょうが、だから行かないって人もいると思うので、そういう人に、声を大にして言いたいです、ベタでもあるけれど、それだけじゃない素晴らしい作品。私が、そういうベタな作品だったら全然評価出来ない、わざわざ行かない人間ですけれど、大丈夫です。

第2次世界大戦中のドイツ。10歳の小さな男の子ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、お母さん(スカーレット・ヨハンソン)と2人暮らしです。戦争中でドイツのプロパガンダを浴びて生活しているせいか、また孤独な為なのか、イマジナリーフレンドがヒトラーという子供です。唯一の友達ヨーキーと一緒に、少年少女を集めた軍事訓練合宿に参加する事になっているのですが、大変不安を抱えていて・・・というのが冒頭です。

最近のスカーレット・ヨハンソンは、立て続けに良作に出演していますし、もはや演技はベテランの域に達したと思います。よく考えるとすごく難しいと思われる事を、事も無げに出来て安心感があります。流石のキャリアのなせる業。
しかし何といっても今作の白眉は、ジョジョくんとその新たな友人になるエルサを演じたマシン・マッケンジーさんです。ネタバレに繋がってしまう為に伏せますけれど、とても魅力的!
そこに、友人のヨーキー役の男の子を演じるアーチ―・イェーツくんの好演も光ります。微笑ましい好演です。
さらに、サム・ロックウェルが、物語をイイ意味でソリッドにしてくれています。サム・ロックウェルさんも最近様々な良作に出演していて、まさに旬の役者さんですね。
大変ファンタジックな作品になっています。が、これは現実をさらに鮮明にするために行っている為だと私は解釈しました。ある意味ジャン=ピエール・ジュネ監督『アメリ』が好きな方ならまず大丈夫な作品だと思います。
ベタな事象を、ベタなだけで届かせるのは、とても難しいです。が、脚本を練りあげ、緻密に背景を描き、演技に注意を払って、細部にまで目を配らせた上で、最後に当たり前の事を訴えかけると響くのと同じだと思います。たくさんの本、映画、舞台、写真、絵画を観る事で、人は少しづつ細かな差異に重大な意味が潜むのに気が付けるようになると思います。落語のオチを知っていても、噺家によって好みがあるのと同じだと思います。そういう意味で、この作品は優れていると思う次第。ま、今の私には、という事ですので、めちゃくちゃ浅いとは思いますが。
案外、愛の押し売りは少ないですから、大丈夫です。
また、敬意を表する、それも全体主義的な事への同調と同意、と捉えられるある行為を、そのまま行っているのにもかかわらず、見事に笑いに変えた監督タイカ・ワイティティの凄さ、そして自らヒトラーを演じる事での突き抜け感と、あくまで役者じゃなく監督がわざわざ批判を呼ぶ役目を引き受ける覚悟は、賞賛に値すると感じました。

ジャン=ピエール・ジュネ監督作品が好きな方に、ベタなモノと距離を置いている人に、オススメ致します。

今年は始まったばかりなのに、こんなに面白い作品が多くて、時間が無いのが残念。パラサイトも今作ももう何回か観たい作品です。

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