井の頭歯科

「ショック集団」を観ました     SHOCK CORRIDOR

2025年7月5日 (土) 09:01

 

 

サミュエル・フラー監督     アライド・アーティスツ     DVD
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   18/58
長らく友人から借りていたDVDをやっと観ました。
精神科医に尋ねられる練習をしている記者ジョニー(ピーター・ブレック)は・・・というのが冒頭です。
恐らく、公開当時1963年のアメリカではショックを持って受け止められたと思います。精神科がどんなところか?知らない人にとっても、ある程度知っている人にとっても、それなりの恐怖体験ができる作品。
しかし、今観ると、それなりに歴史を感じさせますし、まぁとてもドラマティックになっている分、嘘とは言わないまでも、誇張はあると思います。
あと、モノクロの映画なんですけれど、全編じゃなく、カラーシーンもあります。凄くビックリする国が出てきますし、戦争のPTSD(という言葉は無かったけれど)があった時代の話し。
凄くアメリカナイズされた話・・・ピューリツア賞を取りたい、と願う事って、私は凄く志が低い上に、自分にその才覚があると無自覚に思えるお目出度さ、を感じます。ま、大妻女学院の校訓の事です。しかし、それも自らが、内発的に、自らに問いかけられ無ければならないのですが、まぁ思ってしまいます。
記者であれば、スクープとまでいかないまでも、社会的正義が警察や検察、権力によって正義が不履行な状態をジャーナリズムで変革させる、くらいの意気込みが欲しいですし、その結果、ピューリツア賞が取れたら、という順番だと思うので、まぁこの映画の結果には自業自得としか感じなかったです。
精神に興味のある方にオススメします。

「潜水艇タイタン オーシャンゲート社が犠牲にしたもの」を観ました    Titan: The OceanGate Disaster

2025年7月4日 (金) 08:53

 

マーク・モンロー監督     Netflix
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   18/57
なんだかんだと2025年ももうすぐ半分・・・しかしその割に今年公開の映画を全然観れてないので、ヤバい!と思って数をこなす為に鑑賞しました、我ながら志が低い。
まず、良く知らなかった事件ですが、有名だそうです。
タイタニック号の沈没した海域にツアーを行っているオーシャンゲート社が、そのツアー中に事故を起こし・・・というのが冒頭です。
う~ん、自業自得という感想しか生まれない・・・
確かに周囲の人もいろいろ忠告したり、被害の予想をしたりしているのですが、凄いナルシストである程度、能力のある人が相手だと、しかもその人にはカリスマ性があり、強引で、CEOだと、何も出来ない、というのが感想です。逃げるしかない気がします。
もっと深海についてもう少し知りたかったけど。
ここまで強引だと、もう仕方ない。それを拒めないメンバーしか残ってないんでしょう。
しかし閉所恐怖症の方には恐ろしいでしょうね。
それと、実際に、音を計測したからといって、何も対抗手段になっていない、という事実が恐ろしいです。このCEOは多分分かってやってたと思いますし、おそらくどうなるのかもわかった上で、いつかくるそのタイミングまで自分も騙していたんだと思います。恐ろしい事ですが。
しかしそれよりも、生死よりも、肥大した自分ののプライドを、守りたかった。
潜水艦に興味のある方にオススメします。

「ノスフェラトゥ」を観ました     Nosferatu: Phantom der Nacht

2025年7月1日 (火) 09:12

 

ヴェルナー・ヘルツォーク監督    Amazonprime
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   17/56
ヴェルナー・ヘルツォーク監督の雰囲気が素晴らしかったので、同じAmazonprimeにあったこちらを続けて観ました。
ドイツの港町ヴィスマールで不動産業として働くジョナサン(ブルーノ・ガンツ)は妻ルーシー(イザベル・アジャーニ)と暮らしているのですが・・・というのが冒頭です。
本作も素晴らしい作品!なるほど、これは凄い監督!
いわゆるドラキュラ伯爵の話しで、しかも1979年の映画で既に本作はリメイク作品。無声映画でドイツの作品が以前にあるようです。ドイツ映画って全然知らない世界ですし、唯一ヴィム・ヴェンダース監督作品しか観てなかったけど、これは凄く面白い鉱脈だと感じます。苦い涙のライナー・ベルナー・ファスビンダーも凄かったけど、このヴェルナー・ヘルツォーク監督も凄く上手い!
それと、また、クランス・キンスキーが出てきて、怪演をしています。この人そう言う人なのかも・・・しかも知らなかったけど、ナターシャ・キンスキーのお父さん、驚きです。
それと、凄くカワイイ猫が冒頭で出てくるので、猫映画かと思わせておいての、鼠映画でした・・・これは鼠が嫌いな人は最後まで見るの難しいと思います。マジで鼠映画。
イザベル・アジャーニも素晴らしい佇まいを見せていて、最高。とても上品な演技です。それと、夫に対する愛情の表現が素晴らしい。演出が見事なのか?彼女の持つ何かなのか不明ですが、素晴らしい。
だって、基本的に凄く顔の白塗りを多用する映画なんで、とても現実味は薄いシーンが多い訳ですが、その中においても、イザベル・アジャーニの存在感はちょっと飛び抜けてそれでいてリアルに感じさせる何かがあります。それに、バーフバリ伝説誕生の冒頭の川の場面の女性の四白眼みたいな演技もしていて、ですよ。本当に凄い。
とにかく雰囲気を可視化するの、本当に素晴らしい。世界観があるとはこういう作品の事だと思います。
ドイツ映画を観た事が無い人にオススメします。

「アギーレ/神の怒り」を観ました     Aguirre, der Zorn Gottes

2025年6月27日 (金) 09:06

 

ヴェルナー・ヘルツォーク監督    Amazonprime
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   17/55
インカ帝国がスペインに占領された後にエルドラド伝説が生まれた・・・という字幕が流れ・・・というのが冒頭です。
1560年12月25日にアンデス山脈の尾根を歩いているエルドラドの探索隊は実際に居た事実だそうで、主人公のアギーレも実際の人物の様です、あくまでwiki情報ですけれど。
ええっと、まず何気なくAmazonprimeに最近追加されて観れるようになった作品として挙がってて、全然知らないタイトルですし、監督だったので、観て見たわけですが、これはある種、ウィリアム・フリードキンの「恐怖の報酬」くらい狂っている(褒めています)映画でした・・・1972年の映画ですけれど、しかもドイツ語で発話されているのが、凄く気になるんですけれど、とにかく撮影が頭がオカシイ(凄く褒めています)事に挑戦し続けていますし、このロケーションをどうやって見つけてきたのか?恐ろしいほどの苦労があった事でしょう・・・そして、製作者側の苦労、出演者側の苦労、並大抵のことではないと思います。もしかすると何人か亡くなられてないか?不安になります。
冒頭のシーンも恐ろしいのですが、スペインの兵士、インディオ奴隷、貴族、神父、高貴な女性、飼育されている動物、馬、ラバ、装飾品もそうですけれど美術関連を施して、高地の山脈の尾根を、実際に長蛇の列で歩いているのです・・・ちょっとびっくりするほどのお金と労力がかかっていると思います。
恐怖の報酬フリードキン版もそうでしたが、マジック・リアリズムの傑作だと思いますけれど、本作も、相当なマジック・リアリズムの傑作、恐怖の報酬に負けず劣らずな作品。
これがドイツの映画監督に撮られているとは・・・
地獄の黙示録もそうですけれど、監督の持つ目指した方向以上のモノが出来上がった作品に触れる興奮は確実に感じます。稀な体験です。
特に撮影、美術、その過程も含めての過酷であろう撮影を想像すると、ちょっと驚きです。あと、音楽が素晴らしい。要所でしかかからない劇伴が凄い完成度で、これがよりマジック・リアリズムの面を補強していると思います。全然知らなかったけど、ポポル・ヴ―名前を覚えておこう。ちょうど同時期のドイツのバンドCANを知ったのもここ数日なんだけど、変なシンクロニシティだけど、覚えやすくなった。
あ、確かにクラウス・キンスキーの凄さもあるけど、まぁこの映画では映画そのものが凄すぎる。
マジック・リアリズムが好きな方、恐怖の報酬フリードキン版が好きな方にオススメします。

「クララとお日さま」を読みました

2025年6月25日 (水) 09:41
カズオ・イシグロ著     土屋政雄訳     早川書房
いろいろ読んではいますが、読めなかった作品もある方。「充たされざる者」は途中で挫折しました・・・あと「わたしたちが孤児だったころ」はスルーしてしまっていましたが、久しぶりに読みたくなり手に取りました。
AFという子供むけロボット(?)であるクララは最新鋭機では無いものの高い洞察力を備えています。そのAFであるクララの一人称で語られる、病弱なジョジ―との物語です。
流石、カズオイシグロ作品。ある種徐々に分かる様になっているので「私を離さないで」「日の名残り」に近い構造にはなっていますが、ついに人物ではない語り手になって、さらに想像する余地を広げる感覚があって、なるほど、と感じました。
様々なテーマを織り込んでいますし、凄く多層で多様な作品。ざっと感じたままに挙げると、共感、機械と命の境目、分断、遺伝子コントロールの制限、過去との関わり、エゴ、宗教、信仰、崇拝、倫理、本当に様々です。
恐らく、近未来の世界を描いていますけれど、もしかすると、この世界では無い世界を描いている可能性すらあると思います。
そしてあまり踏み込んで説明されない部分に、より読者が考える、能動的に取りに行く仕掛けが素晴らしいと思います。誰にでも分かる様に、も理解はしますけれど、ホモサピエンスなので、自分の解釈があって然るべきだと思うのです。そういう意味でホモサピエンスに、テレビのインパクトは大きかったけれど、罪の部分も大きいなぁ、と思います。とても分かりやすさを目指してしまったのは、結構罪深い。説明される事に慣れ過ぎてしまった。
クララの行きついた場所。その悲しみを考えてしまいます。
宗教についても、かなり深く考えさせられる書籍。アニミズムの発祥についても考えさせられますし、なんというか、結果が全く違った場合であっても、恐らく、周囲を含むクララの行動は変わらなかったのではないか?とも思うのです。
ここからは、少しだけネタバレに繋がる感想も。出来れば未読の方は控えていただきたいですが。
凄く、今を予言していたとも言えますね・・・2017年の作品ですけれど、強い分断を、というか分断の仕組みがどのように成り立って行くのか?を描いた作品でもあります。
ホモサピエンスに、しかも人的に、後天的に、能力を付与する事で、得られたのは向上もあるけれど、より強い選民意識が生じ、それが分断を呼ぶわけです。人的にも力を付与する事で、確実に選民意識が生まれる、しかもそこに貧富の差の中で、能力の付与に一定のラインが生まれている。これは既に、貧富の差があるだけでも、学習に差が生まれている今の社会と何ら変わらないわけです。
そんな中でホモサピエンスではない、つまり人権すら与えられていないロボットの立場も、ロボットというだけで差別されたりしていますけれど、これ移民だったりの暗喩にも取れますし、何なら最も命令に忠実で親切心があるのは、この登場人物たちの中ではAFだったりします。母親もジョジ―も出てくる登場人物の人間は、とてもワガママで自己中心的です。
ロボットではあるものの、個性がある。そこに意識がある。プログラミングされているとはいえ、動き出した、経験を積む時間的経過が存在するこの意識を、私は生命としかとらえられなかったです。
そのAFの信仰、そして祈り。私はこの祈りなり崇拝と自己犠牲を厭わない行為が、まさに利他というホモサピエンスの行動に見えました。だから、奇跡が生じたこの物語の道筋は美しく見えるし、その結果のクララの行き着いた先の落差に悲しみます。
本当は奇跡が起こらなくとも、祈りと自己犠牲の行為の尊さに遜色はないと思うのです。
とは言え、祈る姿勢そのものは理解出来るのですが、本当の所、祈るのは最後で、その前に、出来る事をすべてやり切ったかどうか?が重要だとも思うのです。感情としては祈りに理解はあるけれど、祈る事だけで成就する事はあまり無い事も理解出来るからです。
それでも、内発的に、どうしようもなく、祈る事はあるけれど。
クララの幸せがジョジ―の成長であったのならば、クララは幸せだと思う。しかし、その境遇はあまりにも厳しく、何を命と考えるか?で私は複製や代謝や進化や次世代に繋げられるという定義よりも、利他の動きが取れるモノを生命と感じてしまう事を理解出来た気がします。
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