井の頭歯科

「エル」を観ました     EL

2025年6月13日 (金) 09:15

 

ルイス・ブニュエル監督     Amazonprime
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   17/51
少し間が空いて急にルイス・ブニュエルが観たくなり、探して最初に見つかったのが、こちらだったので観ました。こういう説明しない、ある程度解釈が開かれている、という作品について、ああだこうだ、と頭の中で考えるのが楽しいです。もしかすると私は会話相手がいなくてもいいのかも知れないと思う事があります。もちろん好きな事が同じ人と話すのは楽しいですけれど、議論を楽しむ事が出来るのって、絶対的信頼関係が成り立たないと難しいですし、絶対的な信頼関係であっても、崩れるかも知れないという緊張感も必要ですから。
教会の信徒の足を洗う神父が・・・というのが冒頭です。
私はロマン・ポランスキー監督「反撥」を思い出しました。男女の違いはありますけれど、いわゆる、強迫観念症のお話しです。
それをロマンティックにも、ドライにも、そしてシュルレアリズムにも撮っている作品。あと、アルフレッド・ヒッチコックの「めまい」のラストカット、この映画のオマージュなんじゃないか?と感じています。誰か言及して調べている人いないのでしょうか?
どんなにお金持ちでも、どんなに敬虔な信徒でも、どんなに周囲の人から尊敬されていても、夫婦関係についてははかり知る事が出来ません。そして本当の所、一緒に生活してみなければ理解出来ない何かがあるかも知れません。
恋愛状態の脳内は、基本的にアッパーにクスリが決まった状態、あるいは酩酊している状態なので、視野狭窄が極まった状態にあるので、大変心地が良く、中毒性が高いわけです。
でも、それこそ歴史的に見たら、うちの国で恋愛結婚が、ロマンティックラブイデオロギーが流行ったのって割合最近、昭和になってから、なんなら先の大戦以降のお話しだと思います、一般的になったのって。
ヨーロッパだって18世紀後半ですよね。それまでのホモサピエンスの長い歴史の中では、割合少数派だと思います。ま、だからこそ、悲劇性も特異性も高まります。物語の、小説のチカラは大きいです。
閑話休題
という部分から、急にカットバックして、過去が語られるのですが、凄く構成がイイですね。というか今観ても新しさを、古びた感じがしない、センスを感じます。
ま、私がこういう話しが好きだから、というだけかもしれません。
もし、感情に身を任せ、判断を直観に頼り、思った通りにしないと不満を溜め込む、というのが如何に困った存在であるか?を見せる作品であると同時に、私にも、あなたにも、何時でも訪れる可能性のある物語とも言えます。特に精神疾患としては、高齢であっても、発症する可能性はあります。
そして凄い強い男尊女卑といいますか男性の優位性が、担保される事で男性の尊厳が保たれているという規範、が描かれています。そして、そういう文化という事も、その方が適材適所だった時代だという事も理解出来ます。が、決してフェアではない。
私の今のところの最も根源的なものさしはフェアであろうとする、という事だと、やっと最近気づきました。完全な結果のフェアではもちろんなく、かといってアファーマティブアクションが不必要だとも言えない。しかし程度には揺らぎもあると思いますし、そもそも完全なフェアはあり得ないけれど、ジョン・ロールズの言う未知のベールの考えは重要な気がします。もし、完全な公平性を目指すなら、相続税は100%にするべきで、もちろんそんなことはなかなか出来ないし、出来たとて、必ず抜け道や、金銭では無い基盤を残したりすることになる。でも、現在の状況の中で、フェアである事を重要な点である事を、せめて共通認識持てたら、という夢を見ている、という事です。だって、どんなに正しくとも、ホモサピエンスはそれだけでは、全員が納得するなんてことは無いし、万人の闘争状態に逆戻りする事を厭わない人もいる。本当に世界って不思議です。
この映画の中の時代、そこでは女性の役割が、恐らく宗教的にも、そして文化的にも、非常に厳しい状況であった事は理解出来ます。かなりキツイ生活になりそうです。
ルイス・ブニュエル監督のセンスを感じてみたい方、エンターテイメント性だけが映画だと思わない人にオススメします。

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