井の頭歯科

「レ・ミゼラブル」を観ました

2013年1月15日 (火) 08:49

トム・フーパー監督     ユニバーサル

大人になってから原作は読んでかなり好きな小説になりました、そのミュージカルを映画化したものです。原作小説の素晴らしさは言葉が尽きないです、ジャン・ヴァルジャンの一生涯を追いかけた物語ですが、まさに王道と言える骨太のストーリィであり、胸打つ小説です。そのミュージカルを映画化、何しろ岩波文庫で全4巻ですし簡単に映画に出来るような尺ではないんですが、大幅に色々カットしつつも「レ・ミゼラブル」という大枠を捉え、出来うる限り端折らないという非常に難しい手間をかけていますし、曲がなかなか良かったです。ミュージカルを見ていないのでもっと曲を知っていたら楽しめたと思いますが、私でさえ知っている「夢破れて」と「民衆の歌」の2つは本当に良かったです。

飢えている妹の為に一斤のパンを盗んだことで投獄されたジャン・ヴァルジャンは19年もの長い獄中生活の果てに仮出獄します。人々から蔑まれ虐げられ、心を閉ざしてしまったヴァルジャンですが偶然出会ったミリエル神父の優しさに触れます。が、そこから銀食器を盗んで逃亡。しかしすぐ捕らえられ神父の前に突き出されると、神父は銀食器はヴァルジャンに与えたものだといって縄を解かせます。善なる心に目覚めたヴァルジャンは・・・というのが冒頭です。

原作ですと、銀食器事件のあと些細なさらなる小さな悪事をきっかけに善なる心に目覚める素晴らしく説得力有るシーン(プティ・ジェルヴェ!)があるのですが、そういういろいろな細かい(しかし、本当はだからこそ、重要で深みある)エピソードは省きながらも、大筋で間違わないミュージカルに仕上がっているのは脱帽です。僅か数時間で「レ・ミゼラブル」の世界をほぼ最初から最後まで堪能出来ます。

決して常に善なる心を宿したわけではない男ジャン・ヴァルジャンの心情、法という善を追求する男ジャベールの執念、悪徳だが愛嬌ある小悪人テナルディエのしたたかさ(原作だともっと悪に染まった存在なんですが)、一途ながらも報われぬエポニーヌの想い、カリスマあるリーダーであるアンジョルラスの美徳、翻弄されるファンティーヌの悲劇、恵まれたコゼットとマリウスの幸福、名も無き民衆の蠢き、それぞれを歌に乗せて見せ、しかも説得力ある素晴らしい演出でした。

パリの町並みとバリケードのシーン、そして民衆の歌う映像は映画だからこその素晴らしさがあり、役者さんのそれぞれの独唱、あるいはデュエットやトリオにも説得力あったと思います。特にやはりバルジャン役のヒュー・ジャクソンとファンティーヌ役のアン・ハサウェイはとても良かったですしイメージに合ってると感じました。ラストシーンも原作とは全然違いますが映画として正しい判断だと思います(原作の最後の墓石で幕が引かれるのは情緒的で素晴らしく余韻を残しますが、映画だと盛り上がって終わって良いと思います)。

ミュージカルが好きな方、原作を読んだことがある方にオススメ致します。

私は原作が好きだからこそ観に行ったのですが、期待以上に良かったと思います。やはりこの物語はジャン・ヴァルジャンの物語。私にはコゼットもマリウスも枝葉の、ジャン・ヴァルジャンの生きた波を描くための人物に見えます。いろいろと好きなシーンがたくさんあるので、ミュージカルや映画ではなく、原作を読み返してみたくなります。また心惹かれるキャラクターはジャン・ヴァルジャンとアンジョルラスです。日本にもアンジョルラスのような人物がいたらいいのにと思うのです。市民が立ち上がるための革命を目指すアンジョルラスを慕うABCの友の中でもグランテールとの最期の場面良かったと思います。もっとABCの友たちに光が当たっても良かったと思いますし、マブーフ老人やフォーシュルバン爺さんの話しにも光が当たって欲しかったですが、こういう好きなシーンを挙げていくと本当にキリが無いです。

また、無神論者の私でも、神が存在していた世界の物語だと思います。きっとこの物語の舞台であった頃は今よりももっと神が身近な存在であったのだと思うのです。あるいは神が必要とされていた時代とも言えるかもしれません。最後の最後、原作でヴァルジャンがマリウスとコゼットに生涯を振り返りつつ語るシーンを読み返したくなりました。古典作品で王道の名作小説だと思います。

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