井の頭歯科

「アイリッシュマン」を観ました

2019年12月13日 (金) 09:10

マーティン・スコセッシ監督      Netflix

今年は大物が年末は目白押しです。この「アイリッシュマン」しかり「SWⅨ」しかり「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」しかり「マリッジ・ストーリィ」しかり。ですので、すっごく忙しい中を、なんとか劇場に行く時間を確保しなければならないのですが、Netflixなら睡眠時間を削るだけです。ですので、その中でも最も鑑賞に時間がかかる、この「アイリッシュマン」を観ました、最近その為の予習として、「グッとフェローズ」(の感想は こちら )も見ましたし。

1950年代アメリカ。フランク(ロバート・デ・ニーロ)はトラック運転手をして、肉塊を運ぶ仕事をしています。ある日、トラックが不調でボンネットを開けて調べていると、ある男が一緒に修理してくれます。フランクは自ら名乗って握手したものの、その男は名乗らずに立ち去るのですが・・・というのが冒頭です。

かなりの長尺映画だと思います、なにしろ210分ありますから、3時間越えです。そして、登場人物は非常に少ないと言ってよいと思います。主要人物は、トラック組合の長を務める大変気が短い男ジミー・フォッファ(アル・パチーノ)、フォッファと繋がりがあるマフィアのボスであるラッセル(ジョー・ペシ)、そしてラッセルに見いだされフォッファのボデーガードを務めるフランク(ロバート・デ・ニーロ)の3名と言っていいと思います。しかし、これが、そのキャリアを、人生を描く作品となっていて、老境に入り、自らの人生を振り返る視点で、進んでいきます。

やはり何といっても、すごくグッドフェローズ的な展開であり、ストーリィであり、キャスティングです。ですので、グッドフェローズが好きな方なら大好物になると思います。私はいまひとつ派ですが、このアイリッシュマンの、映画としての完成度は高いと思います。どうやって若い頃を演じたのか?という部分も、映画本編の後にある座談会のようなドキュメンタリーで明かされます。まさに最新の技術です。見た目も非常に綺麗ですし、構図もはっとさせられる部分がいっぱいありました。長い尺である事が、悪くない工夫もいろいろされています。

最も良かった、と感じたのが、ラッセルを演じたジョー・ペシです。グッドフェローズでいうとシセロのような感じが好感持てましたし、何といっても、非常に、眼差しが、恐ろしいのです。

この人物に対比されるのが、アル・パチーノ演じるジミー・フォッファです。非常に短絡的な思考の持ち主ではありますが、組合という巨大な組織に君臨していて、団結を促す表の顔と、非常に専制的な裏の顔を持つ人物として描かれています。ここに主人公であるフランクが、ラッセルによって、ボディーガードとして入り込むのですが、この3者の関係を、かなり細かく、しかもドラマティックに描いています。

重厚で、丁寧な作品。

私が最も気になったのは、フランクが考える事があったのか?という事と、雑貨店の店主に対する執拗な攻撃性です。

スコセッシ映画が好きな方に、グッドフェローズが好きな方に、オススメ致します。

アテンション・プリーズ!

ココからネタバレありの感想です、鑑賞された方以外はご注意下さいませ。

フランクは、自分で何かを判断した事があったのでしょうか?そして、単純に、自らの庇護者であるラッセルの言いなりのように見えました。あくまで今回はピエロ役なのかも知れませんが。そして、やはりCGを使って若返る革新的な技術は、素晴らしい。素晴らしいけれど、雑貨やの店員の手を踏み潰すシーンが最も顕著だったんですけれど、あまりに動きがオジサンでした・・・ここは悲しいけど、全然ダメ。やはり私は若い役は別人の若い役者にやらせるべき。特に老人が若者を演じるのは無理があると思います。逆に、若者が老人を演じる方が、まだ何とかなりそうです。

確かに単純じゃない話しですし、謎も多いんですけれど、フランクがフォッファを撃つのに躊躇が無さすぎる・・・この辺が完全に、ラッセルにもたれかかり過ぎな感じがしました。その事でフランクの異常性は理解出来るけれど、より小物感に繋がっている感じがします。

あと、最後は結局、家族と宗教ってのが、またグッドフェローズと同じように、特に罰を受けていない(収監はされますけれど・・・)し、組織の粛清も無いのが、飲み込みにくいです。

最後の方に、ベンチに座って2名の警官から聞かれても答えないのに、この脚本が存在するとなると、記者には喋っているのも、ダブルスタンダードな感じがして、私は好ましく思えないし、子供と話せない事に執着していく様も、あれだけ様々な事をしておいて、さらに自分だけにとっての救いを求める姿が女々しく感じました。謝るって何に、についての答えが、本当にダメ過ぎて仕方がない。まるで、家族の一大事(例えば母が急変して救急車を呼んでいるとして)に、父が、俺に出来る事は金を稼ぐ事だけだから、今出来るのは洗濯機を回すくらい(いや、妻が救急車で運ばれようとしているのだぞ!)、と見当違いの事をはじめるかのような、悲しさがあります。そこに、さらに神様にまで縋りはじめると、まさに哀れな感じで、フランクの信念って結局自分の都合だけなんだよな、という心持ちになってしまいます。そういう私も、きっと老人になれば、同じような事をし始める可能性があるとしても。その時は、まさに今の自分に笑われるとしても。

そして、やっぱり、長く、とても私は長く感じました。

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