井の頭歯科

「ザ・ファイブ・ブラッズ」を観ました

2020年7月3日 (金) 09:07

スパイク・リー監督        Netflix

ブラック・クランズマン(の感想は こちら )も凄かったですけれど、やはりブラックユーモアあふれる作品でもありましたが、そこはスパイク・リー監督の真骨頂というか、マンネリズムと言うべきか、やはり、世界に対して、怒っている人、という認識があります。正確を期すなら、何故知らないのか?何故知っていて何もしないのか?という意味で怒っていると思っています。

そんなスパイク・リー監督の最新作にして、恐らく完成形、と私は感じました。スパイク・リー監督の集大成だと思います。

2020年のハノイにベトナム帰還兵であるポール、オーティス、エディ、メルビンの4名のアフリカ系アメリカ人が、4人のベトナム従軍時代の隊長であり、師でもあったノーマンの遺骨を探しにやってきます。しかし、それだけの理由ではなく・・・というのが冒頭です。

ベトナム戦争。アメリカに暗い影を落とした、大変にヒドイ戦争だったと思います。そして、従軍する人の中にも、多数のアフリカ系アメリカ人がいるわけです。

映画の冒頭は、大変有名なボクサーで、言葉では言及されてませんが、従軍拒否を行った事でも有名な、モハメド・アリの言葉で始まります。大変に刺さる言葉です。

当時の映像もふんだんに使われています。ベトナム戦争が、いかにアメリカに暗い影を落としたのか?を知ったのは、私は小説からです。ベトナムモノの名作と言えば、私には「カッチアートを追跡して」「ニュークリア・エイジ」「僕が戦場で死んだら」で有名なティム・オブライエンの作品群と、「拳闘士の休息」のトム・ジョーンズが思いだされますが、映画でも一大ジャンルになっています。そんなベトナム戦争映画を、スパイク・リー監督が、という驚きが大きかったです。

私は登場人物の中で最も、ノーマンが気になりました。

そして、やはり後追いで事実を知っていくというのは、どうしても、同時代性というモノが、その時の皮膚感覚、というモノが欠如してしまいますが、知識として知っている、マーティン・ルーサー・キングの暗殺と、ベトナム戦争は同時期なんですね・・・私はその程度の認識の生き物です、スパイク・リーの映画について何か言えるような人間じゃないんですけれど、感想として、そして無知であった事を忘れない為にも文章にしておこうと思うわけです。

差別、果てしなく続くこの行為は、卑劣ですし、何よりも下品だと思いますが、同時に、藤子・F・不二雄の「イヤなイヤなイヤな奴」という短編漫画に詳しいのですけれど、迫害をした集団の結束力を高めます、嫌な高め方ですし、持続力はさほどないんですけれど、即効性はあるんです。

そして何かと同化する事の気持ちよさ、これもあると思います。同時に気持ち悪さもあると思うんですけれど。本当は人と人が完全に分かり合えることは一瞬だって難しいし、同じだと双方が思っているだけで、突き詰めると違いは出てくるものだと思います。これは、私は、ムラ社会日本と言う意味で大きな場合や、それこそ宗教という巨大な場合もありますし、職場の組織派閥でも構いませんし、家族と言う単位という小さな場合もあり得ると思ってます。

今回は差別されているアフリカ系アメリカ人の中にも、様々な人がいる、という話しだと思います。当然、暴力的にその差別に対抗しようとする人から、もっと非暴力で訴えようとする人まで、グラデーションがあるのです。

そこに、ベトナム戦争のPTSDまでが取り扱われています。これがなんともキツい話しです。さらに世代間の、親子の話しも入ってきます。大変ヘヴィーな話しになっていると思います。

しかし、いつものスパイク・リー作品と比べても、その完成度、さらにスパイク・リーの主張のアジテーションとしても完成度が高いし説得力が強い、と感じました。

2020年に観るべき作品として、オススメ致します。

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