井の頭歯科

「理想郷」を観ました

2023年12月6日 (水) 08:56

 

ロドリコ・ソロゴイェン監督    アンプラグド   吉祥寺アップリンク

タイトルでなんとなく観に行きました。

スペインのガリシア地方にフランスから移住してきたアントワーヌとオルガ夫妻はこの地で有機栽培の野菜を育て、そして古民家を改築しています。しかし、この地を風力発電の土地買収が始まっていて・・・というのが冒頭です。

この作品を観て思い出したのが、2023年最初の方で観たマーティン・マクドナー監督の「イニシェリン島の精霊」、サム・ペキンパー監督の「わらの犬」、何と言っても1番近いのが木下恵介監督の「死闘の伝説」です。どれも強い執着を感じさせる映画で、閉鎖的な田舎と都会の対比を見せます。

田舎と都会の対比、確かに恐ろしいですし、話し合いの通じなさ、徒労感を生み出します。論理的に話をしようとしても、糠に釘でカフカ的な迷路に迷い込み、お互いが、お互いを憎み合うようになっていきます・・・

田舎の人の、この田舎から抜け出せない狭い村に縛られたままの、だからこその疎外感、あると思います。全然共感は出来ないけれど、村の外を忌避するの、なんとなく理解出来る。

それでも、あるポイントを過ぎてしまえば、もうお互い負けを認める事が出来ない、相手を負かす事への執着になって、取り返しのつかない事が起きそうです。

執着、それは強い感情ですから、そこまで行ってしまうと、よほどの精神力が無いと、もう元に戻れないと思います。

出来るだけ執着の無い生活を心掛けたいのですが、もちろん良い方向に働く事もあるとは思います、それでも、何もかもを手に入れられるわけではないので、個人的には執着は無くしたい。

アントワーヌという都会人(この舞台のガリシア地方の村人から観たら・・・)で、論理的で話し合いで解決したい、ここまでは理解出来ます。

逆に村人の、この村しか知らない、という状況に置かれた人の考え方も、想像は出来ます、やりたいとは思わないけれど。

田舎には田舎にしかない苦労があるでしょうし、保守的だと思いますが、保守的な事全てが善き事とは思えませんし、進歩しない、改善しないのは、とても恐ろしい。

交わらなければ問題ないのでしょうけれど、この状況下はとても恐ろしいです。

映画はかなり射程の長い事象を扱っていますし、誰の、理想郷なのか?を考えるのが、とても面白い作品でした。

田舎が単純に、いい所だとは言えない、という実感がある人に、オススメ致します。

 

ここからはネタバレありの感想です。未見の方はご注意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アントワーヌが採るべき選択肢はあったのでしょうか?
貯水池にバッテリーを入れる、という全てを暴力的に解決する野蛮人に見えたと思います。
でも彼らは犯罪を厭わないし、その生活圏の中だけなら、警察でさえ、物的証拠が無いと動かない、文明から遠くても生きていける人の、理想郷、とも言えます。
アントワーヌがこの村を選んだ理由も、ちょっと弱いですし、本当に巡り合わせが悪い・・・
ただ、明確に村人の兄弟は犯罪者です。
でも、犯罪者が生きていける村、なわけです・・・恐ろしい。
だって、風力発電の誘致で得られるお金の使い道を聞かれた兄弟は、タクシーを借り切って街を眺める、ですよ・・・もう極まった村人と言っていいと思います。だから論理的とか話し合いが通じる人間じゃない犯罪者だけれど、この村の中の秩序では罰せられない・・・
それに、弟の方、全然喋れてない・・・そもそも言葉にも不自由な人なのかも知れない・・・という風にも見えるように作ってるのが、恐ろしい・・・
私は逃げるしか無かったと思います。
アントワーヌが失踪してからも村に住み続けるオルガの心境も、最初は分からなかったのですが、やはりこれも執着の形を変えた愛とも言えます。
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