井の頭歯科

「カード・カウンター」を観ました

2023年12月19日 (火) 09:13

 

ポール・シュレイダー監督     トランスフォーマー     U-NEXT

2023年見逃し後追い作品 その7

2023年公開映画の40本目/今年93本目  36/100 を目指しています。

ただ、なんとなく、オスカー・アイザックが主演している、で観る事にしたのですが、監督がポール・シュレイダー監督なんで、まぁなんとなく惹かれるものがあるのは分かってましたけれど、言葉に簡単に出来ないのですが、観終わった後、いろいろ考えても上手く言葉にならないけれど、なんか凄いモノを観た感があるのは、前作「魂のゆくえ」でも感じたポール・シュレイダー監督脚本作品です。

前作「魂のゆくえ」も凄かったですけれど、脚本の好みも合いますし、主演をやる人のキャスティングも好みです。イーサン・ホークもオスカー・アイザックもタマラナイ魅力があると思います。そして内に秘めたる何か、を感じさせるのが上手い役者さんだな、と思いました。

ポーカーゲームの映像が流れる中、男(オスカー・アイザック)がモノローグで語り掛けてきます、自分がムショ暮らしに慣れるとは思わなかった、そこでカードを覚えた、と独白して・・・というのが冒頭です。

前作「魂のゆくえ」も、かなり解釈の開かれた作品で、観る人によっては、なにがなんだか??という部分もある、何と言いますか、スピリチュアルな体験を映画化したようにも見えるのですが、それは映像的比喩として、であって、本当は、という手法、結構自分好みなのかも知れません。

今作はスピリチュアルな、夢的な、幻想的なシーンは無いのですが(一か所あるにはあるんですけれど多分現実)、それでもなお、今作も、非常に重い、ヘヴィーな作品。ある意味また『魂』を描いた作品です。

オスカー・アイザックは私はポー・ダメロンでしか見た事が無いのですが、イイ役者さんですね!渋い上に、何を考えているのかワカラナイけれど、相当な何かを乗り越え、心的傷を抱えた男、に凄く見えます。

今作の主役ウィリアムの心の傷、トラウマ、は相当に根深い事を表すのに、部屋の装飾、があります。何でこんな事考え付くのか?本当に謎ですけれど、相当な 何か を感じさせるに十分です・・・

ポーカーゲームを生活の糧にしている、ほぼ隠遁生活を送るウィリアムにとって、モーテルが生活の場なのですが、そこに、ある装飾をしない限り、心の平穏が保てない、というように見えるのです、言葉では一切説明されないけれど、ちゃんと理解出来るのです。

そして「魂のゆくえ」のイーサン・ホーク同様に、オスカー・アイザックも、また、日記を書いています。なんだか凄く、類似性を感じるキャラクターです。

現実と折り合いを付けながら、心の傷を庇いつつ、しかし突き放した世界を孤独に生きている男の、哀愁というか、そうとしか生きていられない男、の刹那を感じさせてくれて、非常に好感持ちました。

この映画について、ずっと考えてしまう映画。

不穏感を音楽でも感じさせてくれると言う意味なら、今年の暫定ベスト「オオカミの家」もそうなのですが、今作は生々しさ、という意味で一ひねり感じました。それに劇伴も凄く良かったです、久しぶりにロックを聞きたくなりました。

多分誰かと話していても合意や同意を得られないのだけれど、簡単に言葉に出来ない共感を呼ぶ個人的に忘れられない映画。

俳優さんはどなたも素晴らしく、きっかけを作る相棒にタイ・シェリダンが居るのですが、もうちょっと若い頃のアダム・ドライバーに見えなくもないです、それくらい良かった。

さらに、本当にチョイ役なのに引き受けて全力で演じきったウィリアム・デフォーが、もう何と言いますか、この人じゃなきゃ出来なかったキャラクターで、しかもリアリティを感じさせてくれます。

ウィリアム・デフォーに、「すべての行動は自己責任だ」と言い切られると、本当に恐ろしくなります・・・

トラヴィス・ビックルが好きな方に、オススメ致します。あるいは、何かを待って生活している人に。

 

 

 

 

ここからはネタバレありの感想なので、未見の方は自己責任で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、この人、こういう傾向の人なんだろうけれど、きっかけを待っている人に、見える。それだけの傷を負ったし、しかも自分の責任でもある事を重々承知なんだが、それでも、この選択を強いた相手が、のうのうと生きている事への違和感もあるし、でも世界は理不尽で、私のヘヴィーな状況でも、生きて行かねばならないので、感覚を閉ざして、この世界をサヴァイブしている。だから、ポーカーを仕事にして、転々と、誰とも関係性を持たないようにしているし、普段は何をしているのか、と問われても、ポーカーを金を稼ぐ以外の何の為にと聞かれても、同じように、ヒマを潰している、と答えている。
答えているけれど、それはキッカケを待っているだけで、どうしようもなく、息苦しい生活で、眠れず、眠れても悪夢を見て起き、強い酒を煽り、そして無意識でも何かのきっかけを待っている。モノローグでも語られている、小さくかけて小さく儲ける、存在を消して生きてる、そして、何かを待ってる。
あの部屋の梱包、恐ろしいですね、常に、臨場感として、死が存在しているんだと思います、共感しかない。
一瞬、Cのカークに、この世で良い事を行えた事を心の糧にして、良い結末に向かうのかとも思ってしまいましたが、そんなわけポール・シュレイダー監督脚本映画で起こるはずもなく、でも結構まさか、の展開でした。
その後にその時、待ち続けた時、すべてを賭けてもイイ時が訪れた事になり、カークの願いを叶える事にして、まさにすべてを投げ出して、でも、自身の罪や罰や重荷が消えるわけではないのに、手を下す。
M・アウレリウスの「自省録」は読んだ事が無いので、読んでみようと。
セリフも好きで、
「過去で未来の期待値が変わる」
「過去の行為が作った重み それは永久に取り除かれない」
「むしばまれる」
「こいつ何様のつもりだ」
「お前が(母親と)会えば俺は女と寝る」
「誰でもティルトする、俺もするし、親父もする、お前もだ」
「限度に達した自分に気付くのは難しい」
もうサイコー。
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