井の頭歯科

「聖なるイチジクの種」を観ました

2025年8月8日 (金) 09:20

 

モハマド・ラスロフ監督     GAGA     U-NEXT
2025年公開映画/2025年に観た映画   目標52/120   28/72
最近軽めの、比較的観たい作品よりも観れる作品を選んでしまって、あまり好みを観てなかったですが、はっきりこの作品は好みの作品でした。やはり私は重め、ヘヴィーな作品、出来れば答えが明示されるものではなく、どうすれば良かったか?的に受け手が考えを及ばす自由のある作品が好きです。
でも今作は凄く単純明快に、答えが出ています。ですが、非常に単純な問いには、単純に答えが出て当然なんですね。
イチジクは宿り木さえも・・・という文章が出て・・・というのが冒頭です。
もうこの冒頭で、何がどうなるのか?を完全に指示しています、なんならネタバレみたいなものです。
とは言え、現在の、イスラム革命の起こった後の、神権政治を行っている実情にほど近いのだと思います。
全く知らなかったマフサ・アミニさんの事件(イランに住んでいたクルド人女性で、ヒジャブの着け方を理由に、風紀警察によって拘束された後に亡くなったが、警察発表は心臓発作 どう考えてもBlackLivesMatterの事件とほぼ同じなのではないか?と思いますし、2025年8月現在も続いている、イスラエルによるガザ地区への人工的な飢餓政策と同じだと思います、弱者は黙って権力者のいう事を聞け という風に見える≒家父長制)が起こった為に、政府への抵抗運動が起こっています。
そんな中、裁判所に勤めるイマンは出世をするも、良く調べずに、死刑執行に繋がる書類への、良く調べもしない時間も労力も足りない中での判断を迫られ続けられます。しかも上司には嫌われていますし、立場が少し上の仲間は、上司が命令しているのであるから構わない、逡巡している時間も無ければ、イマンにとって代わりたい人間はいくらでもいる、と説得してくるのです・・・
国家による統治に神が出てくるひずみとも言えますし、不満分子は神の名のもとに許さない、と言っているわけですが、下々の人間からすれば、立場がちょっとだけ上の人間が、神の名を語って、神の権力を笠に着て、恣意的判断で、下のモノを抑圧している。
大変に苦しい立場に置かれているイマンには家族がいます。妻、大学生の娘、そして高校生の娘、です。
どう考えても嫌な方に向かう話しであろう事は想像していましたが、割合ストレートに展開していきます。ある種、謎、ミステリーというよりは、ある種のフック、続きが気になる、という事に使われている気がします。
あまりネタバレをしたくないのですが、皆さんが思った通りになりますし、国家の中の、さらに最小単位である家庭の中の弱者、と言う感じで、二重構造が皮肉が効いていていいです。
それにしても、凄く、ある一部の、上層部の人にとって都合がいいシステムですよね・・・それがテクノロジーの進化、発達した現在に、通用するか?と言えば難しいからこその、圧力、悲劇が起こっているのだと思います。
社会構造と男尊女卑に興味のある方にオススメします。
アテンション・プリーズ。ここからはネタバレありの感想です。未見の方はご遠慮下さい。
イマンは非常に苦しい立場に置かれる裁判所、というか国家の中で暮らしています。そこで仕事を得て、そして生活しています。でも神権政治なんで、この社会の仕組みについての責任は、私は無いと思います。そして祖国ではあるものの、ココで生活しなければならないのであれば、ある程度、妥協はあると思いますが、それが他人の命を奪う可能性となると、即答出来ないです。
イマンの立場は非常に危うい。何しろ高給取りに、それもイランの現在の市民の一般的な経済度がワカラナイので何とも言えないけれど、家の中にエアロバイク式のルームランナーがあるのは、なかなかな経済的豊かさなのではないか?と思います。
でも、護身用に拳銃を支給される治安度。デモもあるが、デモに参加する自由はかなりの危険度を伴い、収監や禁固刑がある社会。それでも、ヒジャブの着け方で風紀警察に捕まり、事故か病死か不明であるが、いわゆる監視社会で神権政治を取る社会では、権力者の都合により事実が曲げられている例は、歴史の中でたくさんあります。現在の、そしてこの映画内のイランではどうなのか?私には分かりませんが。
で、そのイマンが拳銃を失くした事で、家族に嫌疑をかけるんですね・・・
家父長制の強い家庭であるこのイマン家では父が絶対。最も疑われたのが、姉で大学生、親友がデモに巻き込まれ散弾銃で撃たれている、でもこの謎、ミステリーはあまり重要じゃない気がしました。
イマンは国家というさらに大きな家父長制度の中では、妻どころか娘たちよりも弱い立場に立たされているにも拘らず、躊躇いもなく、妻と娘に嫌疑をかけ、さらに監禁へと向かいます・・・ビデオで撮影まで・・・
この国家の中の自分が、家庭の中での強権に無自覚だと言うのはあり得ないですし、存在理由くらいまで行きそうな、何かがありそうです。私はそれを「えばりたい欲」と感じます、一種の自己承認欲求です。ですが、立場が上であって、初めて自己承認が出来るかなり変わった状況です。ですが、立場が上になって、傅かれたいのです。そうでないと自己が崩壊してしまうんだろうと思います。男性というだけで優位を保って長く歴史を重ねると、自己を正視するという事すら出来なくなる弱さに繋がるという事実もある側面ある気がします。
とかなんとか言っても私はホモサピエンス種の中でも最底辺にいる能力の低い、しかも男性なので、当然、自己を正視する事は出来ないし、なんならこうして、私はちょっとは違います、という立場を取って、何かよりも上、という意識が無いわけではない、汚さもあります。
妻も最初3LDKに住める、ここまでくれば判事もすぐよ、手が荒れるので食洗器、疲れているだろうけれど忘れてないと思うけれど週末食洗器、というなかなか押しが強い、自己主張がある、妻なので、おお、とは思いましたが、段々と自分の立ち位置が、夫のすぐ下ではなく、娘の監督者としての能力を疑われている、くらいに落ち込んでいきます。ヘヴィー。
姉はもう少しなんかやるかと思いきや、言葉での反論で、無罪でして、やんちゃな妹の仕業なんですけれど、そして観ている時は何とも思わなかったけれど、なんで銃を盗んだのか?が判然としません。
父(子供からしたら 妻から見れば夫)に経済的に依存する事の恐ろしさを理解しつつ、家父長制の恐ろしさを目の当たりにして、果たして、この姉妹が結婚という制度を利用したいと思うか?という疑問もあるし、比較対象がもっと酷い生活と比べて、でしか選べないし、なんならそれが文化であり、歴史感だとして、まず選ばないんではないかな?と思うと、今のうちの国と似てなくはない。
仕方がないとも思わないですし、イマンの変容は多少の理解はするけれど、あまりにな気もするけれど、でもこれこそが所謂神権政治の圧力なのかも知れません。
私が1番気になっているのは姉の友人がどうなったのか?を知りたいです。
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