井の頭歯科

「ラブレス」を見ました。

2018年12月1日 (土) 09:31

アンドレイ・ズギャビンツェフ監督     クロックワークス

2018年見逃し後追い作品その4です。

アンドレイ・ズギャビンツェフ監督の前作「裁かれるのは善人のみ」(の感想は こちら )も暗い話しでしたけど、今回も暗い話しです、暗い話しは嫌な人もいると思います、すみません。映画って娯楽ですけど、アッパーで単純なエンターテイメントな作品だけが映画ではなく、だからってアートにならなければいけないモノでもなく、あくまで表現の手段のひとつで、かなり大きな文化だと思います。特に作品を観た後に誰かと話したり、考えたりするのが好きなので、こういう作品も見てしまいます。何かしらの『教訓』だとか『得る物』が欲しいのかも知れません、浅はかですけど。

離婚寸前の夫婦には子供が1人います。12歳、小学校高学年か、中学生になろうか?という頃です。両親がいがみ合い、離婚する際には、子供をどちらも引き取りたくない、と言い合っているのを聞いてしまった子供・・・打ちひしがれたその子は・・・というのが冒頭です。

分かる気がします、アンドレイ・ズギャビンツェフ監督!なんとなくダークな感じにしたいんだですよね?うん、深みを感じてくれる人から評価して貰えそうだし、批評家受けイイと思いますよ、私も。

しかもベルイマンの『ある結婚の風景』と対になる作品にしたかった(Wikipedia情報を信じるなら)のも良く分かる。私も観ましたけど、とても良いドラマですもんね、ベルイマンの母国スウェーデンでのドラマ放送後の離婚率急激に上げたらしいし、インパクトありますよね(私の『ある結婚の風景』の感想は こちら )!

男女のすれ違いも、誰しも経験あるでしょうし、共感されやすいです。うん、意図も理解出来ると思うし、テーマも『ある結婚の風景』と同じだし、でも子供の扱いがかなり違って新鮮でさえあります。

でも、でも、です。確かに悪くないけど、上手くもないと感じてしいました…いや、『ある結婚の風景』とは尺が違いすぎるから対になる作品にしようとするのは、そもそも間違いじゃないのかな?と。映画で2時間程度では無理だろう思います。ベルイマンの『ある結婚の風景』はほぼほぼ会話劇で約5時間のドラマに対して2時間程度ではちょっと無理です。

しかも、割合引きの絵を長く使って何かを暗喩しているんでしょうけれど、ちょっと分かりにくいと思います…最初の棒とヒモの暗喩は何なんだろう…何か意味あるんだろうけど汲み取れなかったし、冗長に感じます。

また、登場人物に魅力が無いのが決定的に厳しい…『ある結婚の風景』の夫ユーハンの哲学者然とした男が陥る事の滑稽さとか女々しさなどの魅力が無いし、妻マリアンヌの弁護士業から他者へのコミニケーションスキルの上手さと夫への依存からくる甘えのギャップの魅力とか、ラブレスの夫婦では深みが感じられないんですよ。

ある決定的な事象をボカかさずに描くべきだったと思います。より先鋭化されられると思うのです。この点もこの映画から、私は残念に思う部分です。

ロシア警察というか公共機関のユルさもカフカ的でこの点は大変良かった。誠実みはあるが出来る事が限られてるのを理解させる警官の、でも事の重要性が全く共有出来ない感覚が良かった。

正直、この夫婦互いの浮気相手と言うか愛人をわざわざ出す必要あったのか?この点でも『ある結婚の風景』は出さずに描けてる分、部が悪いです。

ロングショットで引きの絵の綺麗さ、だけで含みを持たせたくなるのは分かります。また観客に考えさせたいのも、良く分かる。だからこそ決定的な部分をボカす、というのも分かると思いますけど。あまり上手くないんですよ、そう受け手の観客が、あ、そういう事でボカしてるんだな、って分かっちゃ、底が浅いと思います。別のちゃんとした理由があってボカさなければならない何かがあれば違ったと思うんです。アスガル・ファルハーディー監督、映画『別離』(の感想は こちら )の最後のシーン、凄く上手いと思いますし、オープンエンドと言われるモノですけど、それがこの作品には足りない気がしました。

ただ、両親の口論の際のドア閉めたら子供が、の演出はとても気が利いていて良かった。

しかしロシアってあんな巨大な廃墟があるんですね…そこはなかなか凄いです。

ロシアの暗さが気になる方にオススメ致します。

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