井の頭歯科

「君たちはどう生きるのか」を観ました

2023年8月15日 (火) 08:54

宮崎駿監督   スタジオジブリ 東宝   ユナイテッドシネマとしまえん

公開から4日目でしたが、休日だったので、都内の映画館は朝から夕方まで、この作品の空席がほぼ見つかりませんでした・・・が、このユナイテッドシネマとしまえんだけは別で、助かりました。早起きして観に行って良かったです。

とにかく何も情報が無いのですが、それが今回、恐らく遺作になる可能性が高い、しかも日本のアニメーション映画の、誰もが知っている監督、宮崎駿監督の作品であるからこそ、この形が出来たんだと思います。きっとどんな監督でも、本当は事前情報を出来るだけ少なくしたいはずです、それで人が来てくれるのであれば、ですけれど。

で、ポスターとタイトルしか分かりません。しかもかなり古い小説のタイトルで、そのまま映画化するとは思えないですし、私も最近は予告編も観ないようにしていますし、完全にまっさらな状態で観に行きました。

 

 

観終わって、凄く複雑な感覚があります。単純に良い、とか悪い、とか言えないな、という感覚です。でも、これが遺作になってしまうとすれば、個人的には残念、と思ってしまいます。前作の「風立ちぬ」が凄く良かったからこそ、です。

それでも、日本のアニメーション映画監督、ある一定数の方々は子供のころから馴染んだ世界を作ってきた方の引退作品(えっと何回目でしたっけ?)ですし、あの宮崎駿監督の作品ですから、是非劇場に観に行ってほしです。出来るだけ何も情報を入れないで。

 

1970年生まれですので、どうしても、世界名作劇場を観て育ちましたし、そう言う意味では、高畑勲の演出と宮崎駿の絵にずっと影響を受けてきたわけです。その総決算作品と、言えなくもないし、でも、ちょっと、な感じでした。

 

宮崎駿作品を観た事がある人に、オススメ致します。

 

 

アテンション・プリーズ!

 

 

ココからネタバレありの感想です、未見の方はご遠慮ください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストーリィは複雑では無いですし、ほぼほぼ筋としては理解出来ます。出来ますけれど、結構ワカラナイ部分がありますし、なんで?という部分も大きいです。

 

 

まず、昭和、しかも先の大戦末期と思われる日本が舞台です。空襲によって母親が病院で亡くなってしまいます。そこでマヒト(主人公の名前)は父と疎開。疎開先が不明ではありますけれど、普通に田舎です。しかも、そこでは初めて会う母の妹であるナツコ(と言われると、どうしてもドカベンの岩鬼の言う『なつこは~ん』が出てきてしまいます・・・DAINASHI)と父は再婚する事になっていて、既に妊娠中です・・・これだけで相当困惑ですけれど、まぁ昔の日本でも世界でも、行われていた順縁婚という奴だと思われます。なくはないけれど、かなり強引ですし困惑して拒絶するマヒト。疎開先の家もかなりの広さですけれど、裕福でしょうけれど、旧家にはたくさんの老人が仕えているのですが、その人々にも、ナツコにも心を開かないです。

 

 

旧家の庭はかなり広く、そこにアオサギが住んでいるのですが、ポスターで描かれている重要人物です。ですけれど、こいつが何なのか?説明もなく、かなり謎です。ですが、謎はめちゃくちゃいっぱいあって、本当に飲み込みにくいです・・・

 

 

強引にあらすじだけを追うと単純で、宇宙から飛来した隕石のデカいヤツに心奪われた博識の大叔父が突然消えてしまい、その中に取り込まれてしまったと思われるナツコをマヒトが救いに行く話しです、行って帰ってくる物語とも言えます。

 

 

困惑し拒絶していたマヒトが状況を受け入れ、そして成長するのきっかけであり、完成しちゃうのが「君たちはどう生きるのか」という本で、この描写がめちゃくちゃに短いので気がつきにくいし、後から考えると、このシーンしか成長というか転機が無いんですよね、しかも読書体験で変化しているので、描写もそれほど劇的でもないですし、なんなら割合序盤にあるんです・・・で、ここからもう完全に良い子になってる。この変化を起こすところカタルシスが生まれるのが成長譚という事ですけれど、それが無いんですね。

 

 

で、不思議な隕石の周囲を館で覆いかぶせた、この中のファンタジー世界の理屈も良く分からないですし、もうこの世界が、今までの作品のセルフオマージュに満ち満ちています。

 

 

恐らく、最初のイメージ、館の中に入った後、海に浮かぶ小島に分け入るのですが、これは間違いなく、ベックリンの「死の島」だと思われます。その近くには様々な帆船が列をなしているのですが、これもセルフオマージュで、「紅の豚」の死んだ戦闘機ノリが空高く上がっていくのと同じですし、とにかく、かなり過去作のオマージュに観れる絵です。

 

 

やたらと血脈にこだわって見たり、何かあるとすぐに抱きしめて終わらせる感じだとか、とにかく宮崎駿っぽさ、というか本人なんですから当然でしょうけれど、今までのイメージを踏襲するので、絵として新しかった、動きとしてスゴイ、というのは冒頭の5分くらいの火事のシーンだけ、です。それ以外はかなり見た事ある感じしかない、と言って良いと思います。しかも、全盛期と比べると、明らかにクオリティとして下がってきてしまっています・・・

 

 

話しの筋として、1度で上手くいかせるわけにはいかないのも分かるんですけれど、上手くいかなかった事に対しての対処法があるわけじゃないのに割合短時間で再挑戦になるので、無策に見えてしまったり、謎解きのカタルシスもあんまりなくて、とは言え映画ですから3時間を超えるのはちょっと無理でしょうし、最後の方はかなりドタバタになってしまっています。

 

 

マヒトは多分、宮崎駿さんの分身でしょう、子供の頃に父親が働いていた軍事産業に愛蔵入り混じった感覚があった事を父の工場で示されていますし。炎を使う少女は、宮崎駿監督の好む無垢なる少女像から1歩も外に出ませんし。ある意味とても古い女性像からは離れられなかったんだろう、というのも理解出来ます。

 

 

アオサギについて、私は全く謎の存在だと思うのですが、SNSで観た音楽ライターの小室敬幸さんの「今作の下敷きになっているのはモーツアルトの『魔笛』なのでは?」でやっと理解出来た気がしました、たしかに不安定なパパゲーノですね。魔笛だと思うと納得できる気がしました。

 

 

全てのアーティストが晩年に向かってクオリティが高まるわけじゃないですし、仕方ないけれど、前作「風立ちぬ」が良かったから、少し個人的には残念。でも、作ってくれてありがとう、というくらいの気持ちにはなりました。当たり前ですけれど、宮崎駿作品としては、結構繰り返しな感じだと思います、何でも抱きしめて解決は、いいよなぁ、うらやましい。

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