井の頭歯科

「イミテーション・ゲーム」を観ました

2015年4月10日 (金) 09:30

モルテン・ティルドゥム監督     ギャガ

以前見たトーマス・アルフレッドソン監督作品の「裏切りのサーカス」(の感想はこちら)のような作品に見えたので、観てきました。とても良い映画です、隅々まで綺麗に見せようとする努力が払われた作品だと思います。キャストも衣装も美術も音楽も良かったです。ただ、少々脚本というか演出にはもう少し練っても良かったかも、とは思いますが基本的に大満足の映画体験でした。

1951年、アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)教授は自宅を荒らされた事で、警官が家にやってきますが、それを無下に断ります。変えって警官に怪しまれたチューリングの過去を探ろうとする刑事は第二次大戦中にブレッチリーという所に居たことは分かりますが、それ以外が全く不明なチューリングを怪しむ刑事は・・・というのが冒頭です。

3つの時間軸(第2次大戦後の冒頭の自宅を荒らされるシークエンス、第2次大戦直後に軍に協力するシークエンス、寄宿学校の生活になじめないシークエンス)を一緒に扱い、しかも上手く関連付ける事で、とてもスリリングな演出になっていると思います(後述しますが、割合そのうちの一つが上手くハマっていない気もしますが)。ただし、ストレートな見せ方ですので、さほど混乱もなく見やすかったです。

いわゆる「天才モノ」でもありますし、サスペンスの要素もあり、ですが私が最も近いと感じたのが「栄光なき天才たち」作・伊藤智義 画・森田信吾です。中でも島田清次郎の話し(島清ほどキャラクターの破天荒な人じゃありませんが・・・)と似ている気がしましたし、数学者という事でエヴァリスト・ガロアなんかも近い感じがします。もちろんキャストで被っている人やイギリスを舞台にしているのと、スーツというか衣装が素晴らしいのと、チームで挑むという形式で「裏切りのサーカス」にも近い部分もあります。

なんといってもアラン・チューリングのキャラクター、演じるカンバーバッチが魅力的です。カンバーバッチを初めて観たのは「裏切りのサーカス」のギラム役で、そのスーツの着こなし(確か灰色の混じった暗くて暗すぎない青に白っぽいピンストライプ)が素晴らしく印象に残りました。役どころも主役スマイリー(ゲイリー・オールドマン)の助手で、とても小気味良かったです。それが、この天才を演じると、非常にエキセントリックに見えたり、何かに集中していると他に何も見えなくなったり(その眼差しがまた良い意味で変)、そうかと思うと場の空気を読めていない子どもっぽさ、また私にとって特徴的だったのが後ろ姿でして、スーツの上着のポケットに手を突っ込んで歩くと急に子どもっぽさとは違うあどけなさというか、良い意味での不安定感があって良かったです。とにかくスーツ姿が似合うさすが英国人です。

そしてジョーンを演じるキーラ・ナイトレイがまたまた魅力的で、着こなしも笑顔も良いですし、芯のある女性までいかないけれど、ちょっと普通(当時の)じゃない、という微妙なバランスが良かったです。彼女の存在は事実としても、少々演出的なような気がしますが、彼女の着ている服装も素晴らしかったです。

またチームを組むメンバーで、元リーダーのヒュー・アレグザンダー(マシュー・グッド!ウディ・アレン監督作品「マッチ・ポイント」での害のない兄役の存在感の薄さが良かったです)の存在感が良かったです。ある意味リーダーに向いたキャラクターで自信家、しかし仲間を思いやる気持ちもある、それでいてモテる、というのも良かったです。また、仲の良いケアンクロス(アレン・リーチ)も何処にでも居そう感に溢れていて良かったです。で、やはりチームになる、チームとして立ち向かう、という部分は非常に単純に盛り上がります。またその作業が一つの機械を作り上げるというのが良いのです。

何度も繰り返される「僕の機械」というのが最後まで見ると意味が理解出来てそこも良かったです、クリストファーと呼ばれるチューリング・マシーン、カタカタと動いている様がカッコいいです。実物はどのような形なのか?分かりませんが、細かいものが連動して動く様を見ていると、機械が思考しているように感じられて良かったです。

スーツが好きな方に、数学者や哲学者の話しが好きな方に、そしてカンバーバッチが好きな方にオススメ致します。

アテンション・プリーズ!

ここから少しネタバレ含む感想になります。

出来れば鑑賞された方に読んでほしいです。

ただ、演出上の(脚本の、と言っても良いかも知れませんが)少し端折りがあって、ヒュー・アレグザンダーがまとめるケアンクロスなどのメンバーと、チューリングがジョーンという存在を経て「仲間」になるシーンがあります。ここでリンゴをプレゼントするんですが、皆が可笑しくて笑ってしまう場面です。場面そのものは確かに面白い。でも、ただこの1回だけでチューリングの人嫌いな面を散々見せておいて、このシーンだけで「仲間」になる事に違和感を持ってしまいます。もう少しヒューとの絡み、ケアンクロスとの(仲間になった後のバーのシーンは良いとして)絡みが必要だったと思います。そうでないと何故ヒューたちがチューリングが対立するデニストン中佐から身を持って庇うのか?説得力が無い気がしました。チームの結束を得るまでの障害が多いほど、その結束が出来上がった後は固くなると思うのです。この点が惜しいです。もう少しヒューとぶつかる場面が欲しかったなぁ。

あと、寄宿学校のクリストファーとのシークエンス、もっとさらりとでも良かったと思います。残り2つのシークエンスの間に一気に全部見せてしまった方が、観客のクリストファーへのチューリングの思いの重さがはっきりしたのではないか?と。なんとなくクリストファーと名付ける事の驚きを強調したかったんでしょうけれど、3つを軸にしてもそれほど込み入ってなければ2つの方がよりシンプルでもう少し尺も短く出来たんじゃないか?とも考えたりました。

が、とにかく大変楽しんだ作品、チューリング関連の本や、数学者や哲学者の話しを読んでみたくなりました。

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