井の頭歯科

「アルファヴィル」を見ました

2017年6月9日 (金) 09:25

ジャン=リュック・ゴダール監督    日本アート・シアター・ギルド

ひょんな事から仕事関係の方からお借りしたのですが、その方はなかなか文化に造詣の深い方で、東西に分かれて居た頃のベルリンに住んでい事もある、という人です。ちょっと話すだけなのに、いつも驚愕的な事を話してくれます。クラウス・キンスキーとか、裸のラリーズとか、エルンスト・ユンガ―とか、マンディアルグとか、平野威馬雄とか、普通なかなか出てこない単語を会話の中に入れてきてくれます、ある程度分かってしまう私もどうかと思うことありますけど。そんな博学とはちょっと違うんですが、自らの嗜好を研ぎ澄まして深めようとしている方のオススメだったので見ました。

ジャン=リュック・ゴダール監督については全然見れてないので、私ごときが何をか言わんやですが、とにかくヌーヴェルヴァーグの監督、という事です。ヌーヴェルヴァーグについても、全然知識がないのですが(僅かに見た事あるのは、エリック・ロメール、アニエス・ヴェルダ、フランソワ・トリュフォーくらいです、それも数作づつなんで・・・)、もう少し今後は勉強したいと思ってます。

いわゆるディストピアを描いたSF作品ですが、1965年公開という事を考えるとキューブリックの「2001年宇宙の旅」が1968年ですから、なかなかに早いです、ゴダールのフィルモグラフィの中でもかなり初期な作品という事になると思います。

外宇宙からレミー・コーション(エディ・コンスタンティーヌ)がアルファヴィルという都市に着きます。このアルファヴィルでレミーは新聞記者の偽名を語りつつ、アルファヴィルの指導的立場にいるブラウン教授の奪還と、アルファヴィル潜入後に消息を絶った仲間アンリを訪ねる使命を持つ諜報機関員、スパイなのですが・・・というのが冒頭です。

非常に奇抜なアイディアに満ちた作品でして、SFなのに当たり前ですがCG処理とか一切ありません。そもそもそういう風に作っていないのです。でも、ちゃんと未来の、ように、見えるんです。

また映像的な工夫もあって、そこも結構気に入りました、ネタバレに繋がるので言及は避けますが。

特異な建築物、靄がかかった風景、奇妙な挨拶、トーキョーラマとか遠隔通信とかいう名称、光源を動かす事での影の移動で魅せる(これってすごくニコラス・ウィンディング・レフン監督作品「ドライブ」を思い出させます。「ドライブ」の感想は こちら )、かなり特徴的な斬新な映像表現に加えて、意味が分かるようでいてなかなか分からない微妙な感覚で不安感に陥れたり、と非常にテクニカルなイメージがあります。名称のアルファヴィルって名前も凄いですし、第3級誘惑婦という職業、論理さを突き詰める為に感情の発露を犯罪にまで高めてしまう法意識、死刑の方法など、とにかく秀逸な表現が続きますが、ストーリィは非常に単純なクエストモノです。今ではよく見かけるストーリィなんですが、当時はとてもショッキングだったと思います。

論理に対抗する主人公の行動には少々疑問を持ちましたけどね・・・

主人公のエディ・コンスタンティーヌの演技は普通な感じがしますが、監督であるゴダールの、ヒロインであるアンナ・カリーナを見つめるようなカメラワークと、異常に接写というかアップが多いのが特徴的でした。相当な美形で表情が乏しいためにクールに見えるんですが、まつげがちょっとどうか?と思う程大きく、妙に気になってしまいました。この当時の未来感ではこういう事なんでしょうか?またアンナ・カリーナの衣装はかなり気に入りました、凄く素敵な衣装です。

難解になりそうでならない絶妙なポイントで留まっている不思議な作品です。SFやディストピアモノが好きな方にオススメ致します。

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