井の頭歯科

「Mary & Max」を見ました

2011年12月2日 (金) 09:53

アダム・エリオット監督       エスパース・サロウ

クレイアニメというジャンルをご存知でしょうか?粘度を使って少しづつ動かしながら(1秒間を24コマ撮影するだけでも大変です!)撮影するタイプのアニメーションです。私は普通のアニメーションを子供の頃は浴びるように見ながら成長してきたわけですが(はい、世界名作劇場の『フランダースの犬』から『赤毛のアン』辺りまでや、もちろん『ルパン3世』や『ガンバの冒険』などきりが無いですね)、このクレイアニメは何かしら温かみを感じさせますし、好きです。有名な作品で言いますと『ウォレスとグルミット』でしょうか?有名じゃないかも知れませんが、チェコのクレイアニメの天才、イジー・トルンカ監督の『手』と『電子頭脳おばあさん』、同じくチェコの監督でブジェチスラフ・ポヤル監督の『ナイト エンジェル』はクレイアニメの(正直言えばクレイアニメじゃなくアニメの中でも、いや、短編映画作品としても!)傑作だと思います。

そんなクレイアニメの新作を見かけたので借りてきました。やはりなにかしら普通のアニメーションにはない何かがあります、何かを宿らせることが出来るように感じます。

オーストラリアに住むメアリーは8歳。友人は1人もいないですし、いじめられてますし、見た目にも額にアザがあることも手伝って内省的です。好きなものはチョコレート、父にも母にも構ってもらえない孤独の中にいる女の子です。そんなメアリーは母親に連れられて郵便局で見た電話帳から変わった名前をアメリカのニューヨークに見つけます、それがマックス・ジェリー・ホロウィッツです。マックスもやはり孤独な44歳の男であり、精神科に通院していますし、様々な職業を転々としています。やはりチョコレートが好きで、チョコドックなる食べ物を好み、空想の友人ラビオリ氏以外には友人がいません。そんな2人がひょんなことから文通をしてゆくのですが・・・というのが冒頭です。

孤独な環境にいる、という共通項はありますが、全然違う2人が友情を温め、文通という手間がかかるコミュニケーション手段を経ることによって見える世界が面白く、なかなかブラックなジョークも多くて子供向けではないビターな仕上がりになっています。メアリーの世界はセピア調で、マックスの世界はモノクロで基本的には構成されていますが、毒々しいまでの赤い色は特徴的に描かれています。そういった細やかな演出も効いていますが、何より非常に重たいテーマを扱っています。恐らくこの作品はクレイアニメでしか表現できない世界を表現出来ているのですが、それだけでなく、クレイアニメでしか描けないストーリィを扱っているように感じました。それは『不完全さ』と『許し』です。

非常に重いテーマながら、しかし見事に描ききっているのはまさにクレイアニメのコミカルさを介在させたからと、音楽のチカラが大きいと思います。映画の中でかかる音楽はどれも良かったのですが、中でも「ケ・セラ・セラ」の悲しさといったらなかったです。悲しいけれど、素晴らしいのです。

また、タイプライターを使った音の場面、凄く面白いです!

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大人な人に、不完全な人間であるという自覚がある方にオススメ致します。

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