井の頭歯科

「シェーン」を経ての、映画「ローガン」を観ました

2017年6月16日 (金) 09:40

シェーン、というアメリカ映画があります、古き良き作品という事になっている古典ですね。このシェーンを何度か見ているのですが、個人的にはどうしても乗り切れないのです。シェーンはいわゆる流れ者ヒーローの原型になった物語です。ある強者に搾取される困った弱者の集団に、どこからともなく現れ、味方になる凄腕の流れ者、そして悪を懲らしめたうえで、弱者の集団から立ち去ってエンディングという流れです。

主人公シェーンに感情移入出来れば、凄く心地よいヒロイックな気持ちにさせてくれえる作品だと思います。ヒーローは得体のしれないミステリアスな魅力に溢れ、腕力的な強者であり、すべてを終えて去ってゆくヒロイズムって奴です。

昔からこれに違和感を覚えてまして。どこかしら自己陶酔を含んでいると感じるのです(自己陶酔の何が悪い!と言われると特に悪くないです、すみません、でもあんまり個人的に好きになれない、という程度です)。
シェーンの場合は撃たれていて、これから死ぬのが分かっている、という解釈もあったと思います。人それぞれの解釈が許されると私は思いますし、誤読も受け手の自由だと思います。

ジェーンの立場に立てれば確かに心地よいんですが、当たり前ですが、そう簡単になれません。また、弱い立場の人間(良き人物も、悪い人物も、そして悪い人物に仕える人物も・・・)にも等しく、暴力が揮われます。なんとなく、物凄く悪者扱いされている人にも、それなりの事情があったりするんじゃないかな?とか考えてしまったりするのです。子どもの頃の話しで、今では鮮明に何もかもを覚えているわけではありませんが、子供ながらにも、ずいぶんと都合よく退場してしまうものだな、そしてひいては西部劇って本当に単純な勧善懲悪の世界なんだな、と思っていたのです。まぁわけあってたくさんの西部劇を見る環境に育ったもので・・・

この原型を推し進めると、イーストウッドの西部劇映画はだいたい当てはまると思います、「ペイルライダー」しかり、「許されざる者」しかり、そして名作という事になっている、「グラン・トリノ」(の感想は こちら )もです。毛色の違う西部劇で言えば、コメディタッチにする代わりに、漢(オトコ、と読んで欲しいです)・イーストウッドが負けを受け入れる「ブロンコ・ビリー」の方がずっと潔いと思いますし、もっと異色の「センチメンタル・アドベンチャー」はさらにその先を魅せてくれます。

なんでこんな昔の映画の話しをしているか?と言えば、それは先週観た映画「ローガン」で、古き良きアメリカの象徴として、映画「シェーン」が扱われているからです。

ローガンとはこの映画の主人公の名前です。パラレルワールドを舞台にした、ミュータントと言われる特殊能力を持った人間とその世界との軋轢を描いた作品のようです。というのは私も詳しくないのですが、この映画「ローガン」がとても人気があり、しかも割合いろいろな人が絶賛しているので足を運びました。

驚異的な回復力を持つミュータントであるローガン(ヒュー・ジャックマン)は、世間からはミュータントが絶滅しつつある事を知りながらも、素性を隠して、生きています。また徐々に自らの体力の衰え、驚異的な回復力の減少、老化を自覚しながらも、師と仰ぐ人物であるが今は認知症を患う同じミュータントであるプロフェッサー(パトリック・スチュアート)と隠遁生活を続けているのですが・・・というのが冒頭です。

映像が非常にソリッドでして、構図としても非常に良い、雰囲気ある、見た目カッコイイ映画でした。脚本も、ここまでシェーンを取り上げるなら、もう少しぼかした表現か、暗喩で済ませた方が含みがあって個人的にはもっと評価できたと思いますが、それでも十分に楽しめる作品でした。

キャストも素晴らしく、ヒュー・ジャックマンの衰え行く肉体や、背中で語る哀愁のようなものをうまく表現出来ていると思いますし、キーパーソンであるプロフェッサー役のパトリック・スチュアートも老獪な演技力を見せてくれます。さらに子役のダフネ・キーンの見た目の良さ、目線の冷たさ、言葉というか叫び、そのどれもがチャーミングでした。

もし、今までに何作も作られているこのシリーズを追いかけ、このローガン=ウルヴァリンに愛がある方から見れば、とても素晴らしい、そしてヘヴィーなラストが待っています。そしてこのキャラクターのある種の終焉として見事なラストだとも思います。

誰しも老いや衰えや、そして死を避ける事が出来ません。が、この主人公はその老いや死が起こらない事が特異能力だったのです。だからこそ、より老いや衰えや、死を見つめる眼差しが深いと思います。

もちろん不満な部分もあって、その死への眼差しが脇役にも、もう少しでいいから振り分けて欲しかった。そこが最も残念です。

ローラ役が美しい女の子、というのもそれほど美醜に優れていなかったら、とか、男の子だったら、とかは想像してしまいます。最後にある理解のポイントの感覚に僅かながら変化が生じるかも知れません、人によっては、という事ですが・・・

老い、衰え、について、終着点を考えてみたい方にオススメ致します。もしくは、ウルヴァリンシリーズを見てきた方に。

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