井の頭歯科

久しぶりに、

2018年7月20日 (金) 09:17

チケットをいただいたので、観てきました。

井上バレエ団 ピーター・ファーマー美術 『白鳥の湖』全幕 関 直人振付

全幕の白鳥ですから、大変有名というか、バレエ作品の中で1番有名と言ってよいかと思います。

私は14日に観に行きました。

まず、ジークフリートを演じた清水さんが凄く良かったです。王子の風格やオーラが感じられ、しかもとても明るい佇まいを身にまとっていて、大変好感持ちました。どうしてだか(身長とか身体のキレでしょうか?)オーチャードホールで熊川さんが演出した『パッシング・ヴォイス』を踊られた堀内元さんを思い出しました。とても基本に忠実で。奇をてらった事はしない、淡々とした踊りであったので、より高貴な雰囲気を醸し出していて、素晴らしかったと感じました。正直ダンスの部分はそもそも少ないのですが、マイムの部分にも気品があって、これがノーブルというものなのでしょうか?好みとして、好きです。

オデットは源さん。プロポーションは素晴らしいものがあり、見た目映えます。ですが、こんな事を全く踊れない観客に言われたくないでしょうけれど、やはりプロはお金を取っているので、あえて、批判的な事を話してしまいますが、少々本気度が足りない、と感じました。執念といいますか、どうしてもコレを表現したい!という想いがダンスからは感じられなかったです。なにかちぐはぐな印象で、それなのに、顔の表情だけは強いのでより印象がアンバランスになってしまいます。それでも、2幕のアダージョの後、とても盛り上がる部分での足の動き(アントルッシャカトルって言うらしいです、その程度の素人の意見です)は良かった。もちろんこういうオデットが好みの人が居ても良いと思います。でも私の好みでは無かった・・・身体が硬くて空間を大きく使えていないのも・・・

オディールの田中さんは個人的には良かったと思います。少なくともオデットよりは説得力がありました。でも出来たらもう少し妖艶さ、オデットには無くてオディールにはある色香があっても良かったように感じました。ピルエットと呼ばれる回転モノはかなり良いのでしょうけれど、全体として小ぶりな印象なんですね、空間を大きく使って欲しかったです。

で、このオデット、オディールに絡むロットバルトの説得力は結構ありました!マイムの手のひらの使い方、印象的な指の開き方、など、マイムの説得力はこの舞台の中で1番輝いていたと思います。衣装も化粧も良かったけれど、目の力がさらに良かったです。

で、もう一言書いてしまうと、ジークフリードの演技が、オデット、オディールに完全に合わせに行ってあげてる、のがもったいないと思うんです。少し降りてきてくれていて、そうじゃなく、それぞれ高みを見せて欲しい、と思ってしまったんですね。

ちょっとだけ、脱線すると、というか本当に好みの話しになりますけど、かつての井上バレエのプリマであった藤井 直子さんの踊りは素晴らしかったと思っています。決してプロポーションが飛び抜けて素晴らしいわけでは無く、ピルエットもそれほど切れが凄いわけでもなく(いや、主役級だと、という感じです、もちろんプロポーションもピルエットも凄いんですけど)、それでもなお、存在感と佇まい、その上での藤井直子さんでしか出せない個性を感じる事が出来ました。言葉にすると非常に陳腐ですが、チャーミングで浮遊感のある、人間離れした地に足のついてない感覚がありました。これってそう簡単には醸し出せない何かだと思います。藤井さんでしか見られないからこそ、その個性をまた観に行きたくなるんだと思います。海外のダンサー含めても、ちろん生で観れたわけではないけれど、中でも1番好き、と言えるのはやはり藤井さんだと思います。エトワールに上がる前のドロテ・ジルベールも好きなベクトルにいますけど、最近は変わってしまったなぁとも思います。ダンサーの首藤さんがおっしゃってましたが、バレエは若さの爆発、みたいなニュアンスの話しをしていましたが、確かにその通りな部分もあると思います。技巧的に上達しても、パッションは落ちてくる事ありますし。

でも結局のところ、個性が足りないという意味で今回のオデットとオディールは残念だった。

しかし、群舞の、コール・ドの素晴らしさは特別に良かったと思います。照明の効果を含めて、の評価ですけど、本当に素晴らしく幻想的でしたし、群舞でしか出せない何かが確実にあって、私には完全に主役を食っていたと思います。2羽の上手の髪の毛のややブラウンな方、4羽の1番上手側の方は見ていて訴えかけるモノを感じました。群舞の中でも目立たず、それでいて2羽や4羽の時に個性を感じさせるのはなかなk難しいと思います。照明も美術を引き立たせる演出で素晴らしかったです。

古典芸能って細部の解釈の、狭いが故の面白さ、が特徴だと思います。落語とも似たものを感じます。その細部にこそ、解釈の僅かなゆらぎの中で、この演出が見せたかった何か、に説得力や強さがあると、その舞台を観た人にとって、永遠とも言える刻印を押されるのに等しい体験になると思います。そういう体験を求めている人、案外多いと思うんですけど、どんなんでしょうね。

今度はもう少し違った、例えばマシュー・ボーンの白鳥を観てみたくなりました。

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