井の頭歯科

「リチャード・ジュエル」を観ました

2020年11月20日 (金) 09:11

クリント・イーストウッド監督     ワーナーブラザーズ

とても、とても評価されているイーストウッド監督御年90歳!そして現役の映画監督です。そして私はかなり見ている作品の多い監督ですけれど、そこまで好きじゃないです。そして上手いともあまり思えません、普通に良作である事は認めますけれど、かなりのマンネリズムでもあります。それに、90歳の監督って凄いですけれど、フレデリック・ワイズマンも90歳で映画撮り続けていますし、アレハンドロ・ホドルスキー監督もまだ新作が公開されています、91歳!みんな凄いですね。

でも今作は良かった。

リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は法執行官に憧れる、しかしうだつの上がらない男です。かなり太目ですし、規則を守るために大目に見る、という匙加減が出来ない男です。そんなリチャードが雑用係りを務める会社で唯一、リチャードを馬鹿にしない弁護士ブライアント(サム・ロックウェル)との友情めいた出会いもつかの間、リチャードは会社を解雇され・・・というのが冒頭です。

どうしたの?イーストウッド??というくらいイーストウッド性が希薄でした。なんなら悪役にイーストウッド性を感じたくらいです、つまりいつもと逆の構造をしています。

イーストウッドのイーストウッド性とは、完全にマッチョ嗜好と考えて頂いて良いです。もっと言えばイーストウッドにとっての都合の良さ、と言い切ってもイイです。あくまで私の感想ですけれど、名作と言われ評価されている「グラン・トリノ」も「ミリオンダラー・ベイビー」も「許されざる者」もイーストウッドに共感して、同調して、シンクロしていれば、大変気持ちの良い話しですが、他者から見たら傲慢で暴力的な男が、その暴力を笠に着て独善を繰り広げているだけ、に見えます。最後まで責任は取りませんし、その辛い立場を背負う俺はカッコイイという部分をニヒルにまで高めていますから、それは大変快いと思いますが、周囲の人間にはたまったものではありません。

結局、ほとんどの作品が、最後は暴力を使って、悪(もちろんイーストウッドにとっての)を懲らしめます、自分の振るう暴力には寛大で、女性は弱くて守られるべき存在で、そして俺が法律、という事です。そんなイーストウッド性が感じられる人物が悪役なんて、とてもびっくりしました。やってる事はいつものイーストウッドなんですけれど、構造が逆転しています。

リチャード・ジュエルを演じるポール・ウォルター・ハウザーの体形と表情、すごく典型的なルサンチマンを溜め込んだ鬱屈した男性像に見えますし、正直偏見を持ったルサンチマンを溜め込んだ役を演じてきている気がします、特に「ブラック・クランズマン」の時のことですけれど。その「ブラック・クランズマン」の白人至上主義者の役名アイヴァンホーが主人公のように、見える人物が今回の主人公リチャード・ジュエルです。

しかしリチャード・ジュエルはアイヴァンホーとは違って・・・というのが今回です。どう違うのかはネタバレになってしまうので避けておきます。

それから弁護士訳のサム・ロックウェルが素晴らしかったです。最近のサム・ロックウェルは本当に良い役ばかりですし、とてもふり幅が広くてイイですね、役者が好きなタイプの役者さんだと思います。「スリー・ビルボード」も「ジョジョ・ラビット」も良かったですが、どの出演役も似ていない、というのが凄い所だと思います。

それと、母親役でキャシー・ベイツが出演しているんですけれど、ああ、本当に遠くまで来たな、私、と感慨深いものを感じました。キャシー・ベイツと言えば、私には何といっても「フライド・グリーントマト」なんです。素晴らしい名作なんですけれど、なんか本当に時が経ったな、とつくづく感じました。

メディアと政府組織にタッグを組まれると、どうにもならない気がしますし、この1件で、救われた人物もいますけれど、裁かれなかった人物も多数いるのが、とても気になります。

クリント・イーストウッド作品があまり好みでない方に、オススメ致します。いつも言ってますけれどクリント・イーストウッドの最高傑作は「センチメンタル・アドベンチャー」です、私にとって。

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