井の頭歯科

「恋の病 〜潔癖なふたりのビフォーアフター〜」を観ました

2021年9月7日 (火) 09:19

リャオ・ミンイー監督     SPOエンターテイメント

タイトルからはあまり連想できない映画ですし、結末です。かなりビターですし、凄く今の流行りを意識した展開でして、そこに好感を持ちました。

強迫性障害で重度の潔癖症のボーチンは、自分でも自覚している変人です。何度も手を洗わないではいられませんし、1日に1回は必ず部屋全体を異常に掃除してしまいますし、外出は月に1回で、グローブと雨合羽を着ないと晴れていようが外出することが出来ません。そんなボーチンがいつも行くスーパーが休みでたまたま別のスーパーに行くと、同じような恰好の女性を見つけ・・・というのが冒頭です。

コメディタッチ、と言って良い作風ですが、それだけではありません。この映画はかなり練られた脚本で出来上がっていますし、テンポも素晴らしく、なおかつ、色の演出が素晴らしいです。

私はこの女性の雨合羽の色使いを観て、どうしても連想してしまうのが、アードマンスタジオの傑作クレイアニメ「ウォレスとグルミット」のグルミットのレインコートです。

誰にでも訪れる、私だけがあなたを理解している!といういわゆる恋愛初期の妄想のなせる技である勝手な思い込みと、恋愛終盤に訪れる、あんなに理解出来ていたつもりなのに何を言っているのか全く分からない、というまぁ都合の良い考えをちゃんと描いています。

破局カップル映画というジャンルがあると思いますし、私は恋愛関係と言うモノは、ある種の思い込みだと思いますし、必ず終わりが訪れます。ま、例外的にその対象が振り向かない場合は終わらせるのは大変になりますし、逆に終わらせる事が出来ない事もあるかも知れませんけれど、基本的には終わります。その終わりの顛末は、どれ一つとっても同じではないのに、共感を呼べるものだと思います、もっと言うとあるある、という瞬間が大変に多く、しかも、私だったらこうした、こう回避できたはず、という事を考えたくなったり、あれはアイツが悪いだの原因を考えたりしたくなるものだと思います。特にまだ初めての事が多いときには。

そんな破局カップル映画の新たな名作の一つと言えると思いますし、ラストの展開は初めて見た、といってイイと思いますし、ヘヴィーになり過ぎない部分が良かったです。

特にこの映画の主人公たちは重度の強迫性障害であり、これは病です。しかしこの病は、病の人でないと理解しにくい、という大変運命的(に見える)装置が効いていて、これが終盤に、〇〇します。

私は相性悪い監督ですが、デイミアン・チャゼル監督のやり方を踏襲しつつ、もう少し先に行っていて、その点が素晴らしかったです。映画はちゃんと進化している。

台湾映画、侮りがたし!

台湾映画をあまり見た事が無い方に、オススメ致します。

ヘンな話しですけれど、現代の(2021年9月現在の私の感覚ですと)人々が恋愛だの結婚だのにコストをかけにくくなるのは当然で、未知の、しかも非常にコストがかかる事業(あえて、事業)にかける労力は、自分の趣味やゴールが設定しやすいモノにかける方がはるかに安心でコントロールが効くと思うのは当然ですし、よりはっきりと、わがままになったんだと思います。そしてこれは恐らく進化なので、後戻りさせる事が出来ません。今後はもっと1人世帯が増えて、少子化は進むと思います。もしくは家族をアウトソーシングがより進化したと言っていい。だって3世代家族を止め、核家族化した時から、この現象は始まっているし、それを始めた人たちは認識できていなかったかも知れませんけれど、親との同居(もしくは義理の家族との同居)が嫌で核家族化した事と同意だと思ってます。

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