井の頭歯科

「死にたくなったら電話して」を読みました

2022年12月9日 (金) 09:36
李龍徳 著     講談社文庫
割合よく思う話しですが、個人的にも同意しますけど、だいたいにおいてデビュー作品にその人のエッセンスのようなモノが濃縮されている気がします。もちろん技巧的になったり、経験を積んで変わる事はあっても、ベクトルの出発点としてのデビュー作品には、その人の核がある気がします。
特に、絵画、音楽、映画、ダンス、よりも、小説にその傾向の強さを覚えます。
古本屋でタイトルだけで気になって手にした作品です。
大学浪人生の主人公がある女性と出会って・・・というのが冒頭です。
李龍徳さんの処女小説(という表現ももう少し新しくしても良い気がします、初小説とか)です。
とても変わった文体に感じましたが、ざらっとした感覚ですし、でも、読ませる力があり、なおかつ、読みやすい文章で描かれる、こことは違う ように見える 現代社会日本を描いた作品です。とても抑圧されている、とも思えますし、世代的にそう感じる人も多いであろう事も予想出来ます。誰も生まれる時代を選べないですし、どのような環境に生まれるか?を決める事が出来ない以上、その世代による、上下の近い年代を鑑みての、不公平感を感じる事はあるだろうと思います。
特に最近の失われた20年とか30年とか言われている世代に、多感な幼少期を過ごされる方々には、その前にバブル期があった事を鑑みると、何か重荷を背負わされた感覚があるのかも知れません。
ある種の村上春樹性主人公(まあいろいろありますが、主人公だからこそ、何もない空間をあけてある事で、読者が共感出来る部分があったり、意味も無く存在が認められたり、です)がある女性に影響を受けて・・・という話しなんですけれど、結末がどうもしっくりこない部分はあるにしろ、しかし確実に何かを残しますし、たくさんの特殊な本からの引用には、ある種の肯定があります。私も「もっともだ」と思わせる部分がありました。
ちょっと露悪的にも取れますけれど、それこそがこの作者の現実なのではないか?とも思えた、という事です。でも、ちょっと忙しくなる前に読んだ(1日で読めます)ので感想が薄い感じになってしまいましたが、面白く読めました。
現代日本の現状に違和感を思えている人に、オススメ致します。
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