井の頭歯科

「福田村事件」を観ました

2023年9月15日 (金) 09:21

 

森達也監督   太秦   吉祥寺アップリンク

公開7日目の朝一で観てきましたが、物凄く混んでいいましたが、もっと混んでいたのが、山田洋二監督作品『こんにちは、母さん』で、高齢女性が大挙して押しかけていて、誰が観るのだろう?と思っていた作品でしたが、ちゃんと受容はあるんだな、と確認出来たのは良かった。びっくりしたけど。

ネタバレ無しの感想です。出来れば多くの人が観た方が良いのですが、でも観た方が良い人には届かず、何となく、観て溜飲を下げたい層に響くであろう作品になってしまったのではないか?と思ったのが観終わった後の最初の印象です・・・

小池都知事(私は東京都民なので責任がある・・・)や松野官房長官(選挙区は千葉3区)のような人物が現在に存在するうちの国で、非常に重要な事件を扱った、劇映画であり、実際の事件を基にした映画です。

過去の過ちから学ぼうという姿勢が無い、という事が恐ろしいですし、私含むうちの国の集団心理や同調圧力を考えると、本当に恐ろしいのですが、自国民を殺害しているという事実は変わらないわけで、本当に恐ろしです。

もっと言うと、過去から学ぶよりも、自国の良い部分、心地よいものしか見たくない、という姿勢を保守とは呼ばないと思いますし、なんなら無かった事にしてしまう、というのが恐ろしい。心地よい方を選んだ、とも言えるし、ゲッペルスのいう『しつこく同じように繰り返せば、嘘でも信じる』というプロパガンダが今でも十分通用する、という事を現在の国家レベルで行っているのが恐ろしい。しかも報道があっても問題視すらされていないし、既に手遅れな感覚がある。

立場的に、アメリカにおける黒人差別の歴史と同じ構造もあると思います。差別していないという事にしていても、内心恐れているからこそ、そして迫害している自覚があるからこそ、恐れているわけで、それが大きな災害時に、冷静さや事実確認を疎かにしてしまいかねない状況の時に、今でも起こる事件だと思います。

そう言う意味で作られた意義はことのほか大きい。特に邦画では珍しいからこそ、意義は大きい。

大きいんだけど、そして、時系列が必要だし、それなりの時間がかかるのも十分理解出来るんだけど、劇映画としてのテンポの悪さ、136分は、流石に長すぎるし、テンポの悪さが余計に目立ってしまっているのが本当に残念。

役者は総じて良いキャスティングで、中でも東出昌大、田中麗奈、永山瑛太の3名は非常に良い演技で(演出に問題があるとしても)満足です。中でもキャラクターと演者の違和感が最もなかったのが、初めて観る杉田雷麟さんです。凄く存在感含めて、キャラクターに合っている。今後この人が出演する作品なら見てみたいと思わせるに十分な魅力を感じました。

過去の、というか今でもネットが遮断されるような、混乱時に起きかねない惨事について学びたい方にオススメします。

もっと劇映画として、完成度が高かったら、観た方が良い友人の分までお金を払ってでも連れて行きたい作品になってたらなぁ・・・

 

 

アテンションプリーズ!

 

 

ココからネタバレありの感想です。

 

未見の方はご注意くださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレありの感想だと、まず、主人公の帰国夫婦の話し、カットできたんじゃないかなぁ・・・新聞記者の話しも、基本カット出来ると思う・・・そして出来ればモノクロでもよかったんじゃなかろうか・・・

 

 

 

 

それで100分くらいにまとまってたら・・・と妄想します。

 

 

 

 

村の緊急事態を告げる鐘を鳴らす、というシーンで、私は増村保造監督作品「清作の妻」を思い出さずにはいられなかった・・・そう言う意味で、増村保造監督はやはり偉大。天才的な監督だと改めて実感してしまった。本作で描かれている問題を、既に照射している作品と言える。

 

 

 

 

恐らく「朝鮮人なら殺してもいいのか?」という永山瑛太のセリフが本作を表しています。緊急時なら、とかいろいろ条件を付ければ、私も当然含んで、起こしかねない状況を描いています。

 

 

 

 

それを無かった事にしない為に、本作が作られた意義は大きいのですが、様々な事象を入れる為に長尺になり、かつ演出が鈍重になってしまったのが、個人的には悔やまれます・・・

 

 

 

 

柄本さんの件も、確かに閉鎖的な大正時代の村社会を理解させるために入れるべきだったのは理解するけれど、個人的には切って良い部分なのではないか?と思います(そう言う意味でも「清作の妻」は凄い!)。

 

 

 

 

もっと映画として興味深く出来るんじゃないか?と、増村保造監督作品、そしてスパイク・リー作品を観ていると感じてしまった、というのが実情です。

 

 

 

 

軍人でもないのに軍服を着ている、自尊心を満たすために国家とか軍隊とかより大きな存在に依存している人間がどれほど危険か?を表しているのだけれど、そういう人は見に行かないだろうと思われるので、主義は正しくとも、手法をもっと考慮しても良かった気はするけれど、製作者側の想いもあるだろうし、これはこれで仕方ないのかも。

 

 

 

 

結局のところ、映画化しているフィクションなので、仕方ないのかも知れませんけれど、今作の殺害シーンももっとリアルでも良かったのではないか?とも思うし、何と言っても、その後の加害者がどう罰せられたのか?恩赦があった事実含めて、そこまでは描いて欲しかった。

 

 

 

 

本当の所、女性が最初に手を出したのであろうか?

 

 

 

 

それと、帰国夫婦の夫、村長、そして村民たちの止められなかった、という罪は、個人的にはキツイけれど重いと感じます。傍観し、時流に流されやすいうちの国だからこそ、こういう場合の対処法が知りたい。恐らく、これ以上体制派や主流派に抵抗すると、村八分や実被害を受ける事が分かっているからこそ、みんな傍観する事を覚えたと思うし、そこには空気の支配が発生する個人の無い世界、世間があると思うので・・・

 

 

 

 

だらだらとした感想になってしまったけれど、それでも、作られた事に意義がある作品。 しかし東出くんは、なんだかアダム・ドライバーみたいな立ち位置になっていきそうで、それはそれで凄い。

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