井の頭歯科

「異人たち」を観ました 

2024年5月7日 (火) 09:17

 

アンドリュー・ヘイ監督     サーチライトピクチャーズ     シネクイント渋谷
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は9/39
2023年に亡くなれれた個人的に好きな脚本家の1人である山田太一さんの小説「異人たちとの夏」を原作にしたイギリス映画です。個人的には原案、とした方が素直に観れると思います。山田太一さんにとってこの小説が個人的な感覚のモノであったのと同じように、この映画は監督であるアンドリュー・ヘイの個人的な映画だと、観終わって感じました。
原題は All of us Strangers 確かにちょっと山田太一さんの原作とは違うテイストを感じます。
ロンドン市内のマンション高層階に住むアダム(アンドリュー・スコット)は脚本家で、自身の両親の話しを基に脚本を書こうとしているのですが・・・というのが冒頭です。
まず、大変に美しい映画です。流石アンドリュー・ヘイ監督です。とにかく風景が美しい。オープニングのカットはもう最高に美しい。多分一生覚えていられる。
それと主演者2名の両方が素晴らしい演技。抑えつつも、何かを抱えている感じが醸し出されているけれど、そこまで演出も強くなくて、自然。で、当たり前なんだけれど、ポール・メスカルが、本当に上手い・・・なんというかこの人、精神的な不安定感に驚くほど親和性が高い気がする・・・この人そのものが心配になるレベル。伏し目がちなのも、悪くない。が、これは後で言及するけれど、ちょっと行き過ぎな感覚もあった・・・でも、それが自然なんでしょうけれど・・・
原作未読ですが、大林亘彦監督作品は観ています。で、結構な改変点がいくつかあるのですが、ネタバレ無しの感想なんであまり言えない・・・
ただ、非常に個人的な、それも監督にとっての、個人的な映画なんだと思います。それを、原作者に許可を取り、映画化するっていう事が凄い。
主人公の名前はアダム。それだけでも、それなりの含意を感じるけれど、演じる役者がアンドリュー・スコットで、監督の名前もアンドリューで、職業は脚本家。もう監督の分身としか思えないです。流石に監督の個人的な背景がどうなのか?とかは調べないですけれど、まぁ、色々そうであったとしても、そうでしょうね、としか感じないです。でも、それぐらいの感覚、魂込めました、みたいな感覚もありました。
それと、音楽もかなり良かった。それに、懐かしさもある。知らない曲もあったけれど、美しい、という共通項は感じられました。
とてもファンタジックな話し、だと思いますし、個人的なある種の感情の吐露、と捉える人が居てもオカシクナイ脚本。それを、さらにアンドリュー・ヘイ監督の個人的な要素、あるいは傾向を入れて、当たり前ですけれど、ロンドンの映画に、現代にアップデートして見せている訳です。なんか、徐々に、思い返して、評価が高まる作品だと思います。
で、どうしても考えさせられたのが、セクシュアルな場面のリアルさ、という事です。仮に、男女カップルのセクシュアルな場面は、これまでの映画の中でも、結構リアルに描かれてきていますし、それを楽しんできた、とまでは行かないけれど、まぁそれなりに観てきたわけです。けれど、女性側から見て、どうだったんでしょうね・・・同性の裸を見る、という事に関して、何も考えていなかったんですけれど、結構なリアルさで見せられると、それなりに来るモノがありました・・・でも、監督としては必要だったんでしょうし、まぁ大人になって生活していて、パートナーがいるという事は、別に普通にセクシュアルな関係を結んでいるでしょうし、それが当たり前なんだけれど、隠す前提だと、他者のセクシュアルに対して全くの無知なわけで、センシティブなことだから、それでもいいけれど、もう少し開かれてても良い気がします。そうじゃないと結構な誤解を生むと思うし。
それと、どうしても、監督も脚本もカメラマンも男性が圧倒的に多いので、女性を写す事に躊躇いがない。でも、それが文化の進化してきたベクトルの基の方というだけなのかも知れない。今まで割合無意識でしたけれど、これからはもっとはっきり意識してしまうだろうな・・・という事は没入感は得られなくなる、という事になるし、例えとして例に出す事何回目かだけれど、記者会見をしている側からの視点、今後絶対必要になると思う。放送側もその事を自覚した方が良いし、男性目線をカメラだけが追うのではなく、女性側の視点をカメラが追うと、もう少しフラットになると思う。まぁ映画は娯楽だから難しでしょうけれど。
あと、クレア・フォイが頑張っているんだけれど、映像って残酷なまでに肌の質感とかくぼみというか皺を見せるんですけれど、これがかなり来てる。もう少しメイクとかしてても良かった気もするんだけれど・・・それと、この母親の立ち位置が、大林監督版との違い、かなり大きく感じました。まぁ仕方ないのかも、だけれど・・・
あと、お父さん役のジェイミー・ベルの演技も良かったと思います。葛藤を抱える人物の、それも外交的な、体育会系男の性格の人の苦悩、かなり表現として難しいと思うけれど、良かった。
ポール・メスカルの今後は凄く気になる。
勝手な私の解釈だけれど、孤独を埋める事は、神にも出来ないと思うし、どんなに家族や恋愛関係であっても、人は孤独だし、100%の意思疎通は出来ない。でも、それでも、コミュニケーションをとる価値はある。何故なら、それこそが希望だからだと思う。
ラストにかかる曲を私は知らなかったけれど、歌詞の単語でドラキュラとか入ってたから、これは間違いなく監督にとって思い入れのある曲なんだろう。
どちらかと言えば、山田太一原作、という事よりも、アンドリュー・ヘイ監督作品を観た事がある人に、オススメします。
アテンション・プリーズ!
ここからは、ネタバレありの感想ですので、未見の方はご遠慮くださいませ。
ネタバレありとしては、やはり、ファンタジックな話しなんだけれど、これ、もしかして、全員死んでるのでは?と思わずにはいられなかった。
両親、死んでる
ハリー、死んでる
アダム、死んでる、もしくは死にかけている、または、これから身投げして死んでしまう
のアダムの見た夢
だとすると、悲しいけれど美しい映画という事になると思う。
叶わないからロマンスが生まれるし、そのロマンスは強烈なものになる。
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