夕木春央著 講談社文庫
有栖川有栖さんが帯で「この衝撃は一生もの」とまで書かれているので・・・ええ、まぁ誇大広告であろう事は理解しているのですが、何せ初めて読む作家さんだったので。それと、タイトルは素的だな、とも思いましたし。
これ、設定だけ出だしで書きますけれど、まぁ、宣伝でも使われていますからネタバレには当たらないと思いますが、なかなかです。
山深い場所にある捨てられた地下施設、方舟。地下3層構造で、たくさんの部屋があります。しかし地下3層目は水没しつつあり、この地下施設に大学時代の友人7名が泊りに来ると、そこへキノコ狩りで遭難した親子3名が加わり、そしてその夜に巨大地震があり、2つしかない出入り口のひとつが塞がれ、誰かを犠牲にしないと全員が水没する状況になり、そこで殺人事件が起こり、その犯人こそ、その犠牲者になるべき・・・
と、てんこ盛り過ぎるんですね・・・料理なら胸焼けを起こしています・・・
そして、とにかく、登場人物が、凄く、そういうモノだとしても、なんだかなぁと思う行動をとるんですよね・・・
みんなどんでん返しが好き過ぎると思う。
正直、この作品、いわゆるジョン・アーヴィングが言ったとされる、物語はラストシーンから書かねばなるまい、という手法で描かれている気がします・・・そして、どんでん返しの 為の 後付けの理由を作った結果、この作品が生まれたんだと思います。
人物描写もそこまで、ではないし、あくまでミステリなんで、そこに拘泥し過ぎているけれど、だからこそ進化した日本の本格ミステリというジャンルの、進化の袋小路みたいな感覚になりました・・・
いや、逆算とは言え思いつくの凄いけど、まぁ現実にはあり得ないだろ、それは、という大筋なんですよね・・・
地下の施設方舟、同じタイミングで家族と遭遇、巨大地震、浸水があってタイムリミット、殺人・・・どんだけ重ねないとこの状況が生まれないんでしょうか・・・
それと、閉じ込められた後っていわゆる相互監視って起こるモノじゃ・・・安全性への配慮が無さすぎる・・・なんなら少なくとも2名か3名のグループで行動するのが普通!
あと、水位が上がれば同時に浮かんでいけるルートを探すとか、滑車を動かすのに横で動かせる仕組みを作る方が現実的な気がするし、塞がれる仕組みも、そりゃ謎の施設だから、そこまでの設定は要らないかも、ですけれどいくらなんでも、とは思います・・・
とは言え、そういう全てを、日本の、本格ミステリ、という名のジャンル小説として飲み込める人になら、響きそうです。そういう意味ではマッチ棒でお城を作りました、的な凄みはあります。でもどうせ作るならもう少し人が住めたり実用性があった方が、とかいう野暮みたいな話になってしまいます私の感想も。
昔は私も、本格ミステリ好きだったけど、今は遠くに離れてしまったな、という感慨にふける事になりました。
島田荘司、に見いだされた人々のジャンルだった頃は付いて行けたけどね。
この界隈での最も好きな作家で言えば法月綸太郎さんですし、やはり誰にも超えられない島田荘司の「占星術殺人事件」はちょっと頭抜けていますよね。
ミステリが好きな人にオススメします。ただ、味付けがかなりキツいですよ、とは付け加えておきます。