井の頭歯科

「完本 1976年のアントニオ猪木」を読みました

2023年2月24日 (金) 09:23
柳澤 健著   文春文庫
私はプロレス弱者です、今までどちらかというと、冷ややかな目でプロレスと言うモノを観てきました。いや、正確に言うなら見てすらいないです。例外的に、小学生から中学生くらいの時にタイガーマスクが出てきたときに、何回かテレビで見た、程度で、その後は本当に数試合テレビでパンクラスを観た事があるというプロレス弱者です。そしてプロレスへの愛がないので、どうしてもよく分からない感想になりますし、そういう文章を読みたくない人には読まないで欲しいと思います。すみません。ですが、いろいろ考えた事をつらつらと。
まず、一番良く分からなかったのが、なんでみんなそんなにプロレスが好きなのか?という事です。ここが1番良く分からなかった。ファンタジーやスペクタクルは他のジャンルでも十二分に味わえる、でも、プロレスにしかないロマンみたいなものがどうしても理解出来なかったです。でも、とにかく、好きな人は凄く好きで、そうでもない人には全然伝わらない熱量みたいなモノがあり、人によって違うんでしょうけれど、外から見て、この書籍を読んだ後に感じたのは、熱狂です。とにかく熱狂してい、言葉は悪いけれど、自我を失うくらいに熱狂している。
では何故そこまで熱狂しているのか?が分からないけれど、とにかく、熱が違い過ぎると感じました。
著者である柳澤さんは「プロレスとはリアルファイトではなく、観客が求めているファンタジーを見せる演劇的なショー」と言っています。かなりプロレスを観ている人たちの中でもどの程度なのか?分かりませんが、異質なのではないでしょうか?この本の中には様々な立場の格闘家やプロレスラーが出てきますけれど、ショーならば、わざわざ最高の格闘技はプロレスである、なんて言わなければ良いと思いますが、その辺も事情を込みで好きなんだと思います。かなり幼い頃に、好きなのか?違うのか?がはっきりするジャンルのような気がします。後天的にプロレスが好きになった人の話しを聞いてみたい。サンプルとして少ない気がしますけれど、どうなんでしょうね。
あくまでショーなのに、格闘技として最強、とか凄く話しを盛っている感じがしますし、それも込みで今でいう『炎上商法』のようなやり方だと思います。それでも生身のライブで行われているショー、つまり舞台芸術なのだとすると、まぁなんとなく理解出来るとば口には立てた気がします。実際のプロレスを観るよりも、私はこのような検証性の高いルポルタージュの方が飲み込みやすかったかも知れません。
なんというか、みんなで虚構を信じよう、その信じている人達の結束が非常に強い感じがします。なんだか信仰の話しみたいです。
さらに、プロレスの中でも(私にとっての)代名詞のようなアントニオ猪木さんについては、なんか張り手をする人、とか、参議院議員だった、くらいしか記憶が無いのですけれど、この人が、プロレスよりも私には分からない人でした。凄く執着の強い人に見えました。多分、ご本人の話しが無いと、確執と言われている馬場さんとの関係については、何とも言えない気がしました。
著者の言う通り、モハメッド・アリ選手とプロレスをした方が、明らかに得が大きかったと思いますし、その際も巻末のインタビューでも言葉を濁していますけれど、感情による、それも自らがフェイクというか演出をこれまでもしていて、しかもその上に大変誇大妄想的に見える『プロレスが最強の格闘技』という自らが提唱しているファンタジーを、急に尊重し始める辺りが、凄く飲み込みにくかったですし、だからこその人気なんだというのも理解はしますけれど個人的な好みでは無かったです。凄く子供じみているようにも、見える。その辺の説得力が、直に肌で感じられている人には響くし、心酔している(という表現になってしまうのですが)人にはカッコよく映る、という事なのかな?とも思いました。
この点も著者が何度も言及しているのですけれど、ルールが違う競技は普通、試合にならないわけです、フットボールとラグビーでは試合にならないわけですし、全くその通りなんですけれど、そう書いている著者も、それでもプロレスに対する思い入れが強い。この辺が清濁併せ持つ、とか半信半疑、というよりも、心情として肩入れする側が存在している感覚を覚えました。プロレス好きで知られるプチ鹿島さんはどう読んだんでしょうね。
にしても取材力とか文章の読ませる力はとても高いので、かなりぐいぐいと読ませます。結局どうなるのだろう?という先が気になるフックが強い。
なんにしても、凄く感覚が問われる読書体験でした。感覚と言う意味で私には合わなかったというだけで、ルポルタージュとしてとても面白く読めましたし、木村正彦が出てくるのも面白かったです。

もし、最強の格闘家が存在するとしたら、それは、相手のルール、競技で戦って勝利し続けられる人だと思います。だって、オリンピックだって、競技の中に階級やら男女別やらたくさんありますよね?そもそも格闘する人たちが違うルールで戦っているので、その中の1位(と言っても団体とかいろいろあるんでしょうし)が最高位でいいんじゃないかと思いますけれど。

多分プロレスというスポーツ(いやスポーツじゃないかも、競技でもなく、ショーでもないし、そういう事を明確にしない事にしているのかも)が好きな人は心の何処かで、なんとなく、負い目を感じているんだと思います、フェイクなんじゃないか?とか周囲の人に疑いの目や、揶揄を受けたからこそ、最強の競技である事を証明したいんじゃないでしょうか?柔道の選手は柔道の世界選手権の優勝やオリンピックの優勝を目指すでしょうし、プロボクサーはチャンピオンを目指していると思いますけれど、プロレスは最初から世界最高の競技である事の証明を、他のスポーツや競技と比べようとしている気がします。そんな事しなくても面白ければいいんじゃないか?とは思いますし、多分、猪木さんがファンタジーとして、最強を謳った手前、そのストーリィから逃れられなくなったんじゃないかな?とも思いますけれど。
それでも、個人的に数少ない私の友人の中にも、たくさんの方々がプロレス好きを公言されていますし、個人の感覚としては、男性の7割くらいの人がプロレスが好きな人な感じがします。そう言う意味では私は少数派です。もうある意味マジョリティなんですから、あまり世界最強を謳わなくてもいいような気がしますけれど。
でもそんな私の感想なんてどうでもよいくらい、私の世代は圧倒的にプロレスに好意的ですし、猪木さんの訃報を聞いてショックを受けている人が多かった気がします。

今回手に取ったのは、師匠のオススメだからです、押忍!まだまだ精進が足りない気がします・・・

異種格闘技について興味のある方、日本のプロレスの歴史が気になる方にオススメ致します。

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