井の頭歯科

「哲学ディベート 〈倫理〉を〈論理〉する」を読みました

2011年5月26日 (木) 10:27

高橋 昌一郎著          NHKブックス

少し前に読んだ「理性の限界」の著者のディベートもの、非常に面白く、しかもかなり以前からこの形式の本があると知って興味が出て図書館で借りました。私が読んだ「理性の限界」という本は、明らかに読み手が知らない物、知らない事を知る楽しみを得られるように作られた戯曲のような形式の本でしたが、たしかにディベートともとれる形式でもありました。今回読んだこの「哲学ディベート」はもっとディベート寄りで、且つ勝敗のあるものではない、考え方感じ方の話しであり、ひとつのテーマに対して様々な角度や立場や意識から検証することで、物事を考える時の論理性を高める思考回路を強化することを目的としている本です。まるで、あのサンデルの講義をもっと人数を絞ってやるようなものです。だから非常に面白いです。

議題には様々なものがあり、文化(食文化、命の授業について)、人命(代理出産、生殖産業について)、人権(死刑制度と終身刑)、自由(メーガン法、売買春)、尊厳(安楽死と自殺)をおおきなテーマとして取り上げるのですが、どの問題も一応に何が正しく、何が間違っているのかを簡単に判定できないが、しかし一定の線引きが社会生活には必要なものであってそのラインの引き方にいろいろ考える余地があるのではないか?ということです。

一応、教授が司会のようなもの(と言うよりは交通整理をする役目だと考えればイイです)をしますが、そこに文学部Aさん、法学部Bさん、経済学部Cさん、理学部Dさん、医学部Eさん、というバックボーンの違う学生5人が特定の議題テーマに対して現状を、あるいはあるケースを基に説明、その後賛成派と反対派に別れ、それぞれが論理的に理由を述べる、というディベートを繰り返します。

恐らく重要なのは結論が出る、と言うことではなく、結論が簡単に出せない問題を論理的に考えその死角を出来るだけ無くすことを学ぶことにあるのではないか?と感じました。

取り上げたテーマの中でも特に面白かったのは、犬食を扱った問題は今の捕鯨問題と同じで興味ありますし、代理出産の話題はどうしても最後に行き着くのは親になる人間の利己主義の問題に近づくという指摘も面白かったですが、中でもやはり〈自由〉を扱った問題が1番根深く個人の判断の裁量の広さが大きいので特に興味深かったです。自己決定権の話しはかなり深い話しに繋がっていくのではないかと。これ一つにテーマを絞ってもかなり面白く深めていけるのではないでしょうか。

また、アルベール・カミュの『自分が生きるための理由が、自分が死ぬための理由になっている』という文章も知らなかったので面白かったです。

さらに、この本ではサンデルの講義に出てくる主な『正義』の考え方がかなり出てきたのも、面白く読める理由だったかもしれません。功利主義におけるベンサムやスチュアート・ミル、カントの普遍的道徳も面白かったです。

サンデルものを読んで面白かった方にオススメ致します。

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