井の頭歯科

「オネーギン」を観ました

2012年10月5日 (金) 09:04

東京バレエ団         ジョン・クランコ振付

私は時々ですが、バレエを見ます。なかなか難しい、ある程度リテラシーを求められる芸能だと思います。が、そこにはこちらから寄せていく幅が、行間があるために、受け手側の解釈をある程度許しますので、その自由度が面白いです。言葉を使用しないで踊りで表現するという事はかなり難しいことでしょうし、誰しもが演者である踊り手になれるわけではない所も、受け手の想像が及び難い部分だと思います。女子の方々は子供の頃に多少触れる世界ではありましょうけれど、男子であった私は大人になってから触れた世界だったので、最初は全然分からなかったのですが、徐々にですが面白いと思えるようになってきました。

あの、オペラ座エトワールだったマニュエル・ルグリ(私はこのルグリという人物を知らなかったなら、バレエにココまで興味持たなかったような気がします、人柄も尊敬できる稀有なダンサー、高貴な、精神的な貴族、と言えるような人です)が引退公演で選んだ演目が「オネーギン」であった、という事に興味を受け、気になってはいたもののなかなか観る機会が無かったうえに腰も重い性格な為に、今頃観に行ったんですが、これは観に行って良かったです。

私はバレエリテラシー低いですし、勝手な個人的好き嫌いという感情で判断する部分多いと思いますが、何故そういう感情を持ったか?を言葉で説明出来れば良いと思っています。文化ってそういう側面あると思いますし、究極のところは好き嫌いだと思うのですが、その手前でもっと言葉を尽くすべきだとは思いますし、誰かと語り合って、違うだの、その通りだの、という議論が楽しいのだと思うのです。なので、感情を言葉に出来る技術を磨くべきだと考えるます。だからこそ、こんなブログを続けているんですが(笑)

原作がプーシキンの小説であり、オペラにもなっているのですが、オペラでの音楽はチャイコフスキーが作曲しています。が、このバレエは音楽はチャイコフスキーの別の曲を使っています。

オネーギン役のエヴァン・マッキー(上の写真の人物)が素晴らしく良かったです。長身の男性の踊り手で、非常に表現豊であり、説得力ありました。オネーギンの役どころは普通とちょっと変わっていて、かなり不機嫌であることを表現する場面が多く、鬱屈としているそういったネガティブな面を出すキャラクターはあまり見たことが無いです。そこを説得力もって演じるのはかなり難しいと思うのですが、これは振付のクランコと演じるエヴァン・マッキーの両方の素晴らしさだと思いますが、良かったです。オネーギンの衣装も素晴らしかった、しかしこの長身でこの演技の大きさは本当に凄いです。

ヒロインであるタチアーナを演じたのが吉岡さんですが、私は何度かしか見たことが無いダンサーでした。また、このタチアーナは非常に難しい役だと思います。個人的好みで言うと、1幕は説得力を、技量と役柄を感じるものの、2幕、3幕と進むうちにちょっと醒めてしまいました。この物語のタチアーナの難しさでもあると思うのですが、特に3幕でグレーミン公爵夫人となったタチアーナがオネーギンを惹きつける説得力に欠けると感じます、あくまで私の解釈ですけれど。3幕での夫人としての、それ以前にはない何か、がオネーギンに突き刺さる、という部分があった方が説得力あると思いますし、何となく演出ではそのような何かを感じさせるんですが(多分グレーミンとのパドドゥの場面)・・・受け取る私の側の問題かも。

実際オネーギンは過去のタチアーナを見ているわけで、あくまで幻想ですし(幕間での演出もそういう方向ではあると思います)、タチアーナの1幕鏡の場面も、タチアーナにとっての幻想のオネーギンです。お互いが相手を見えてない、幻想でしか見てないんですが、ある意味現実だってそうかも知れませんし、解釈にも幅があって面白かったです。しかし、レンスキーは可愛そうだし、オリガも酷い人に見えます(本当に、余談の余談ですけれど、『ジゼル』に出てくるヒラリオンと言う役が私はどうしても救いが無さ過ぎて哀しくなります・・・アルブレヒトの悲しみなんかまだいいじゃないか・・・)。

3幕でこの短い時間はとても合理的な展開で、そこにも、ジョン・クランコの個性を感じました。なんとなく欧州でよりも米国で好まれそうな印象です。

バレエではとても珍しい男性目線の物語、女性なら『ジゼル』と対極をなす作品だと思います『オネーギン』。バレエに興味ある方に、ジョン・クランコ振付に興味ある方にオススメ致します。

会場であった東京文化会館は好きなホールです。開けた感じでイイです。が、バレエを生で観るといつも思うのが「ブラヴォーおじさん」です。バレエのカーテンコールは何度も行うので、私はもっと数を少なくして、1回に重みを置いた方が良いのではないか?といつも思うのですが、そのカーテンコールの最中に盛んに「ブラヴォー」を叫ぶオジサンが気になります。もう少し回数少なく、拍手だけでは収まらないものでしょうか・・・

カテゴリー: 舞台芸術 | 1 Comment »
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