井の頭歯科

「高橋ヨシキのシネマストリップ 戦慄のディストピア編」を読みました

2019年7月3日 (水) 09:48

高橋 ヨシキ著         スモール出版

NHKラジオで放送されている高橋ヨシキさんの映画レビューに加筆修正されたモノで、さらに、ディストピア映画を集めたものです。ディストピア映画は、ある種の近未来SFとも相まって、個人的に大好物のジャンルです。特に好きな作品というか、観た後に嗜好が変わってしまったとも言えるテリー・ギリアム監督作品『未来世紀ブラジル』です。何度見ているか数えていないくらい見ています。とても後味が、余韻のキツイ作品ではありますが、美術も映像も音楽も大好きで、忘れられない1本の映画です。そして、ディストピア映画は、何かしらの現代の暗喩を含んでいて、さらにその先を魅せてくれる感覚があり、とてもわくわくします。と、同時に、映画が終わった後、びっくりするくらい、映画の中も酷かったけど、現実も同じくらいヒドイな、という気持ちにさせられるのが、2重の意味でショッキングでより深く考えさせられるところが印象に残り易いのだと思います。

冒頭、高橋ヨシキさんは、ディストピア映画は、全員にとってのディストピアではなく、特権階級の少数の人間にとってはユートピアになっている、という説明に、ハッとさせられます。確かにその通りです。大抵は権力者側のごく少数にとってユートピアであり、それ以外の大多数の人にとってディストピアになっている、という点を指摘されるまで気が付かなかったです。さらに、その行為は善意を基に出来ている、という点も見過ごせない点です。特に人間は善なる存在と確信した時に、最も残酷になる事が出来る生き物だと思うのです。

見ていない作品も多かったのですが、何と言っても『1984』の恐ろしさは、ずば抜けています。私は映画版を見ていませんが、書籍で読んでとてつもない小説だったな、と感じました。ここまでの恐怖を感じる事はあまりないと思います(小説「1984」ジョージ・オーウェル著の感想は こちら )。

そして、2019年の現代日本が、非常に1984的なディストピアに近づいていると感じます。

まず基本として、私は日本国籍を持つ日本人です。そして民主主義を掲げているこの日本での最高意思決定機関は国会の場だと思います。ですので、民主主義的な選挙というシステムを経た結果、議員となった人物にはそれ相応の責任も発生します。そして、敬意を払える人物であると仮定しています。その人が議員になるためにはそれ相応の数の人間の支持があったからです。そもそも相手への敬意が無い人物と議論は出来ません。もちろん立法府である国会の決めた事ですから従いますし、また、間違った決定であれば、異論を唱えます。しかし、それは政治家がある程度機能していればこその話しであって、官僚をコントロール出来ていない状況(いや、もっと言うと恣意的にコントロール出来ている状況が)は、かなりマズイと感じます。本当に1984に出てくる真理省じゃないですけれど、政府発表に恣意的なデータ改ざんがある、という事は、既にこれまでの発表の信憑性を、著しく損なっている訳です。今までは無かった、今回の事が唯一の誤りであった事を証明する事は出来ないし、信用が無くなった事を意味します。大変恐ろしい事態です。が、それでも内閣が責任を取らない組織である現在の状況は異常だと感じます。また、本当に、印象でしかありませんけれど、小学校の名前に首相の名前を冠しようとする学校への便宜を計っていた可能性があるなんて、ハッキリ言ってどうかしてます。そういった疑いをかけられる事でさえ、ヒドイと思いますが、その関係性を露わに出来ていない現状、そして学校の関係者との親密な関係を疑わせる写真や夫人との関係や顛末(その後は関係が無かったかのような振る舞い)を見ていると、ディストピアに感じます。と同時に、経済政策だけは支持できていたのに、消費税10%に上げる事態が引き起こす未来に暗澹たる気持ちになります。これも選挙の結果、そして私含む主権者が選んだ結果なんですよね。どんな人物でも(政治家も)完璧な人はいませんから、それぞれの立場の主張を、議論で、取りこぼしの少ない、マイノリティを排除ではなく包括する(同じ国籍を持つ人間)ために、玉虫色の決着があると思うんですけれど、ルサンチマンを溜め込むと無理なんでしょうかね。義憤に駆られた人間がどんなに残酷になれるか?を合わせて想像すると恐ろしくなります。程々を知らないと必ず遺恨を残し、憎悪の連鎖が始まるだけなのに。

閑話休題

取り上げられている作品の中で気になった、まだ観ていない作品は、いわゆる反体制側の人間を狩るマンハントを法治に取り込んだ世界の『懲罰大陸☆USA』ピーター・ワトキンス監督作品、核戦争後の世界で犬と暮らす『少年と犬』L・Q・ジョーンズ監督作品、ルワンダのジェノサイドを描いた『ホテル・ルワンダ』テリー・ジョージ監督作品、黒人と白人をただ単純に入れ替えた世界の異様さをあぶり出す『ジャンクション』デズモンド・ナカノ監督作品、です。

ネットですと顔の見えない関係が成り立つ事で、非常に過激な言葉を使う人が多いですけど、もう少し相手に敬意を持たないと、コミュニケーションが成り立たないと思います。人前で使わない言葉を平気でネットに上げる人も、多分、顔の見える状態ならまず言えないと思います。どれだけ負の感情を溜め込んでいるのだろう?と思うと恐ろしくなりますが、これも、『自分の側に正義がある』と思っているからこその、残虐性の表れだと思います。やはり生きてる人間が1番恐ろしいです。

近未来SF、ディストピア映画に興味のある方にオススメ致します。

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