井の頭歯科

「しにたい気持ちが消えるまで」を読みました

2023年2月17日 (金) 09:12
豆塚エリ著   三栄書房
手に取ったきっかけはラジオ番組でしたが、そもそも私がネガティブな思考が平常運転なので。それと、恐らくどんな人にでも当然のごとくある瞬間だとも思えます。ただ単に、タイミング的に合致しなかったから生きているのではないか?とさえ考えてしまいます。簡単には出来ないですから。
著者はその地点の先、一度は踏み越えた方です。リアルに、踏み越えた。
そんな方の気持ちの変化を追ったエッセイです。
まず、凄く、読ませます。非常にリーダビリティが高い。どんな人にでも、ある程度読ませる、続きが気になる、とさせるのはかあり凄いと思います。
そして、非常に扱いに注意が必要な事柄を扱っているのですが、言葉は誠実でおためごかしではなく、それでいて重みがあり、著者の感覚を共感させるに十分だと思います。特に、若い女性ならでは、より響くのではないか?と思います。
平易な言葉だけを使って、深度のある言葉として聞かせると言う意味で非常に難しい事をしていると思います。かなり推敲された文章なんだと思います。あるいは詩人、という所にこの文章の刺さる感じの素があるのかも知れません。
コミュニティの中で自立して生きていく事、なかなか難しい事なんですけれど、車いす生活で行えている部分に対しても、素晴らしさを感じます。
引用になってしまうけれど「迷惑をかける事で迷惑をかけられている人に出来る事を与えている」という趣旨の文章は、前にも何処かで見た事はありましたが、実感が伴って感じられる文章と言う意味で豆塚さんは凄い。
身体が厳しい時、心に余裕のない時に陥った人間の自然な心の動きに興味のある方にオススメ致します。
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