井の頭歯科

「SHE SAID」を観ました

2024年2月14日 (水) 09:18

マリア・シュラーダー監督    UNIVERSAL    Amazonprime
2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は1/11
2023年公開映画で、劇場に足を運ぶべき作品であったのも理解していたのですが、原作があり、大変ヘヴィーな案件を扱っている作品です。それをどう考えるのか?とか何を感じるのか?という恐ろしさもあって、なかなか手が出せなかったのですが、するりと、この瞬間に、観ようという決意が起こりました。タイミングって重要。そういう時が訪れるのを待つ事も重要なのかも、と思えました。
まず、映画が好きな人なら、自分の好きな作品がいくつもあると思いますし、その中で、ミラマックス、そしてそれ以外でもハーヴィー・ワインスタインが関わった作品、めちゃくちゃにたくさんありますし、有名な作品も多いし、もちろん私も好きな作品があります。そして、ワインスタインが関わっていた、と今となって知る事はとても意味があるし、それも苦い方の意味があると思います。
性的搾取、ハラスメント、そしてパワハラ問題を孕んだ作品ですが、多くの人が観るべき作品。あなたが男性なら必見の作品だし、女性でも学びの多い作品です。
1992年アイルランド。古風な船舶が湾に停泊する中で映画撮影が行われている所に歩み寄る若い女性がいて・・・というのが冒頭です。
ネタバレは無く感想にまとめるのが難しいので、結論だけ。
調査報道の意義を知れる映画。そして映画としても素晴らしく上品で傑作。是非観た方が良い作品でした、生きてる人間全員にオススメします。
キャリー・マリガンとゾーイ・カザンの主演2名のバディムービー。凄く良い演技だった。特にキャリー・マリガンの凄みを感じられた今の所の彼女のベストな演技だと思います。キャリー・マリガンは本当に出演作事にキャリアハイを更新している感覚がありますけれど、今作の記者役は、今までで1番良かったし、実際の彼女に近いのではないか?これは素にかなり近いのではないか?と感じました。
そしてゾーイ・カザンの顔の造形、結構好きなタイプなんですけれど、それだけじゃなく、ポール・ダノとつきあいがあり、しかも脚本も書く才能があり、何と言っても映画監督のエリア・カザンの孫・・・もうスペックが高すぎる!この方の演技も自然で、本当に仲が良いのでは?と思わせるほど自然なバディ感が最高です。
あと、本当にどうでも良い事ですが、当たり前ですけれど、他人の顔について、どうこう言える顔の持ち主じゃないです。ですが、何を感じたのか?を言葉にしておきたいので。そして映画の中の役者さんの顔の表情の、演技、あると思いますし、役者の方はその人を演じているだけで、キャラクターをずっと続けているわけでもないと思います。鑑賞した人にとっての好みの問題で、どう受け取るのか?は観客の自由だとも思います。そして、当然私の感想なんて誰にとっても読む価値などないので、不快に思われる方は読まない自由があります。
そして、どちらも家族がいて、普通の、生活をなんとか維持する努力を続ける、その部分を丁寧に描き出す事で、記者たちの日常性を醸し出しているの、凄く良かった。
脚本も監督も演出も音楽も美術も、凄く高い到達点だと思います。
この後は蛇足だと思いますが、自分が何を感じて、どう考えたのかを文字にしておきたいので。忘れない為に、忘れてもまた思い出せるように。
アテンション・プリーズ!
ここからはネタバレありの感想です。未見の方はご遠慮くださいませ。
性的搾取もハラスメント、それもセクシャルで権力の上下関係が問題ではあるが、それを正せない事が大きな問題で、隠蔽に繋がる条項を含めるのであれば、後からでも不利な条件を外せる仕掛けが絶対に必要だと気付かされる作品です。
これはかの有名なヤン提督のお言葉「政治の腐敗とは、政治家が賄賂を取る事ではない、それは政治家の腐敗でしかない。政治家が賄賂を取ってもそれを批判出来ない事を政治の腐敗というんだ」と同じで、ハラスメントや性的搾取を行っておいて、示談で後々告発を逃れる構造が問題だという事です。
後に告発される恐れがあるからこそ、秘密条項を入れている訳ですし、後ろ暗い所があるか、示談を示している。
しかも、この一連の問題を、かなり初期に終わらせる事が出来た可能性を、被害者の1人ゼルダが、改善や今後の解決策を、かなりクリアに提示しています。2年以内に同じことがあった場合は彼をクビにしろ、しかも、その後のセラピーを要求して自分も同席させろ、女性やスタッフを守るための システム (構造!)を入れろ。もしこの条件が締結していたら、その後の事件はおおよそ、防げたはずなんです。ゼルダの意見は全く正しく、そして公平でもあります。それなのに、司法も、法律も、そしてそれに関わる全ての人が、性的加害者を守るシステムに加担しているわけです。
ゼルダの立ち去った後の視線、その足取り、資料をゾーイ・カザンに託した事の意味を、そして今でも何もゼルダにとって終わっていない事を理解させる演出、役者の演技、本当に素晴らしかったし、ココが私のこの映画の中でのクライマックスでした。
権力を、金を持っている事で、性的搾取を、仕事の上下関係がある女性に対して行う、という極めて悪質で、しかも常習性のあるワインスタインが、示談をしつつ、証拠を譲渡させ、機密条項を入れて告発を防ぐ、その構造の問題にぞっとします・・・
そう、これは構造の問題ですし、この手の犯罪の常習性を考えると、個人的に映画の結末は良かったとは思うけれど、遅きに失しているとも思うのです。なにしろ被害者の、その後を、決定的に、自尊心まで殺す行為で、しかも告発も改善も望めなかったとすると、極度の人間不信になって当然だと思うのです。
この構造に加担している、という事実があるからこそ、ワインスタイン側、かつて関係があり、現在は関係を断ちたい人からの情報を得られたのは大きいと思います。
それに、この映画の中でも同時代性というだけではなく、あまりに馬鹿々々しい事だし、いくら何でも、と私だって思っていましたけれど、トランプが大統領になる、という事実ひとつとっても、全然、何も変わってないのでは?という気分になります。
当たり前ですけれど、政治家は、政治的能力が高い事が必須条件ですし、態度や人柄よりも重要視されるべきだと思いますけれど、いくらなんでもトランプを大統領にするところまで馬鹿で下品じゃないと思ってましたけれど、現実は本当に恐ろしいです。
もっとも、うちの国の拝金万歳議員、自浄作用が効かない、抵抗権があるのかないのかはっきりしない上に、人民が自由意思によって自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体を体現出来ている国も珍しいと思います、やはり美しい国最高ですね。しかも30年以上に渡って、経済的に斜陽を続ける能力の高さ、ちょっとマネできる国は無いと思います。それでいて、他に選択肢が無い、という言い訳が通じる国、美しさで言えば歴史上最高位なのはもはや明白。
ひるがえって、この映画を鑑賞する前も疑問に思っていましたけれど、そして今後もいろいろ考えさせられ続けるので、最初は視聴するのが恐ろしかったわけですけれど、例えばコンビニエンスストアで雑誌を見かけると、男性向け雑誌のおよそ体感で8割くらいの表紙は季節に関係なく水着の女性だったりするわけです。この映画と関係ない、そこまではどうかと思う、と頭の中の客観性小人がささやきはするけれど、気になるようになったりします。それでも、性的衝動やリビドーを感じたりする事の後ろ暗さのようなものを齢50を超えても感じるのかと思うと、ワインスタインを笑う事が出来ないのではないか?とかも考えてしまったり、本当に思考を止める事が出来なくなるので、恐ろしいという予感は当たったな。
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