ロバート・ハーメル監督 コズミックピクチャーズ Amazonprime
2025年公開映画/2025年に観た映画 目標52/120 17/53
あまり懐古厨にはなりたくないものですが、何と言っても甘美な美しさはありますね。
1952年の映画。SNSでどなたかがオススメしていたので観たのですが、素晴らしかったです。
駅の雑踏の中を歩く男を追跡する男。追跡していた男は電話で、ラウザーに報告をします。「デイビッドソンがケイトに向かいます」と。そして・・・というのが冒頭です。
いわゆるノワール映画と言って良いと思います。そして犯罪モノでもあるし、復讐モノでもあります。
非常に荒んだ状況に置かれている男の心情の移ろいが見事に描かれていて、ちょっとヒッチコックを思い出しました。でもヒッチコックの方が先に映画撮影しているので、影響されているのはこちらの作品かも。
観客は状況を神の視点で観ていくので、とてもスリリング。そしてシンプルながらも考え抜かれた脚本の良さがあります。時代が時代だけに、新聞記者、警察、浮浪者など、かなりの社会の形が今とは違うのですが、ホモサピエンスの利他性、これがはっきり善き事として描かれているのも特徴ですし、だからこその温かみを感じさせることに成功しています。
そして見事な円環構造。
タイトルのどろ沼、ですけれど、確かに遠い記憶みたいな直訳ではなく、暗喩として、現実とのどろ沼、舞台となる湿地、船を居住にしているどろ地の感覚は上手いと思います。
主演の4名も素晴らしかったですし、特に結構な立場に置かれる男の、うすうす感づいていた、という人、非常に上手いと思いました。この人を主人公にしても面白くなる気がします。葛藤という意味と仕事の使命感という意味で、凄く苦しい。
ぜんぜん知らなかった監督ですし、全然名前も聞いた事無かった作品、それでもここまで面白く完成度高く、役者もテンポも良くて、描写も演出もイイ。やはり古い映画の中にも、古典として生き残っている作品はありますし、そういう作品を知れるのは嬉しいですね。
モノクロムービーに抵抗が無く、90分でここまでの完成度、という作品を見て見たい方にオススメします。