井の頭歯科

「ルビー・スパークス」を観ました

2012年12月28日 (金) 09:05

ジョナサン・デイトン ヴァレリー・ファリス監督     20世紀フォックス

名作「リトル・ミス・サンシャイン」の監督最新作なので観ました。

19際でデビューした作家カルヴィン(ポール・ダノ)はセンセーショナルに受け入れられるも、その後スランプに陥り、全く新作が書けなくなり、元々人付き合いが薄い性格に拍車がかかり、セラピストにもかかっています。基本的に親しいのは兄ハリー、セラピストの先生、そして飼い犬のスコッティだけ・・・そんなカルヴィンが夢で見た女の子の話しをセラピストに話したところ、セラピストはその夢の女の子のことで良いから書け、と言ってくれます。そこでカルヴァンはその女の子に名前をルビー・スパークス(ゾーイ・カザン)という名前をつけ書き始めるのですが・・・というのが冒頭です。

男女間の恋愛の関係性を描いた作品ではありますが、非常に苦い現実を、しかし結構爽やかにすくい取っていると思います。脚本が主演のヒロインを演じいるゾーイ・カザンというのは驚きですが、恋愛における最初期の浮かれるような多幸感から、終末期の重く苦い現実までを上手く切り取っていて、胸に迫るものがありました。関係性を見ていくと結局本人の中の相手像、というなんだか込み入った世界に入り込んでいくことになる部分があると思うのですが、その苦い部分を非常に女性目線で表してくれます、男性への配慮もしつつ。

関係性がどんなものであれ、固定化されることはなく、多分理想としてはあるのでしょうけれど(無意識のものとしてもありますよね)も流れていくものであり、輝きは失われますが、その分蓄積もされ信頼関係に繋がるわけです。が、あまりに最初の関係性に拘ってしまうと、その変化が受け入れられず、齟齬を感じてしまうことも有ると思います、男女問わずだと思いますが、私ももちろん身に覚えがあります・・・進歩出来るか?更新していけるのか?自分を変えていけるのか?という切実な問題を扱っているように感じました。

どちらかというと、周りの状況に自分を合わせる、自己を変容させる、スイッチやら機会は女性の方が多いと思います。出典を忘れてしまったのですが『物事が上手く行かない場合に世界を変えたいと願う男子と、自分を変えたいと願う女子』という言葉に私は結構頷いてしまったのです。化粧をする、という事ひとつとってもですが、そういうスイッチが多いと思いますし、だからこそ変化への対応が男性と比べて早いような気がします、あくまで感覚の問題かもしれませんけれど。そもそも男子は下駄を履かせてもらっているように感じます。

特に内省的でナイーブと言えば聞こえは良いでしょうけれど、それは変化に頑固に抵抗し保守的で、関係性を閉じ自分の解釈を相手に強要することに繋がりやすい、ということでもあると思うのです。その無意識の無神経さを理解どころか考えの範囲にそもそも入っていないというのに問題があるのでしょう、もちろん身に覚えがあります・・・気付かされるといかにグロテスクな感情か、理解した時の恐ろしさはかなりのものがあります。そして、次の機会、次の相手には、経験が生かされ難いのですよね・・・

主役である、ポール・ダノとゾーイ・カザンの魅力がたまりません。特にポールのダメさ演技としぐさの男性目線心地よさ(ダメ男子ならば共感出来るポイントばかり・・・身に覚えあります・・・)、ゾーイのエキセントリックで変わり身の早さを自分にだけ見せたり、重いタイプに豹変いてみたりの演技はチャーミングで光りました。

最後の最後に、ある意味分かり易い『救い』があって個人的にはもう少しドライにしてみて欲しかったです、例えば「(500)日のサマー」くらいの配慮はあっても良かったのではないか?同じでなくとも良かったのではないか?とは感じます。しかし、それでも有り余るほど素晴らしい映画でした。

関係性に興味がある方に、女性目線を気がついてみたい若年男性の方にオススメ致します。

“「ルビー・スパークス」を観ました” への1件のコメント

  1. […] ろんジョセフ・ゴードン=レヴィットの演技も最高でしたし、ポール・ダノ(の主演作「ルビー・スパークス」の感想はこちら)も出演しているとは知らなかったので嬉しい驚きでした。 […]

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カテゴリー: 映画 感想 | 1 Comment »
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