井の頭歯科

「愛、アムール」を観ました

2013年3月29日 (金) 12:45

ミヒャエル・ハネケ監督       ロングライド

ミヒャエル・ハネケ監督作といえば私にとっては「ファニー・ゲーム」です。恐ろしいまでに観客の神経を逆撫でする監督なんですが、その悪意を映画という芸術で見せるところがこの映画監督の素晴らしいところです。

そんなハネケ監督作品、ということですが、アカデミー賞でノミネートされているという事で見ました。ジャン=ルイ・トランティニャンが出演している、というのと、狭いセットの中だけで撮られているというのも好みに感じられました。

音楽家である老夫婦は仲むつまじく暮らしているのですが、ある日妻であるアンヌ(エマニュエル・リヴァ)に病が襲い掛かってきて、入院して手術を受けなければいけなくなります。その手術の結果、身体に麻痺が残り、介護の生活が始まるのですが・・・というのが冒頭です。

いわゆる老々介護問題を扱っているんですが、今回はあのハネケ作品とは思えないように感じました、割合ストレートな表現だと思います。そして非常に丁寧で、しかも優しさ溢れる映像だと感じました。

何故、夫婦という家族を構成する最も小さな単位で孤立してしまったのか?を、淡々と示していきながらも、段々とエスカレートしてゆく様は、何かの拍子でこういうことが起こりえる、と思わせるに十分であり、だからこその恐怖感があります。そしてその2人だけの関係が見せる様々な喜怒哀楽を含んだ感情が沸き起こり、そして2人の間にほとばしり、消化したり積み重なってゆく様に、心を動かされます。

また、主役2人の演技がすさまじいです。名演というのはこういう事ではないか?と思います。とくにエマニュエル・リヴァさんの、病状の進行を表す何もかもに、演技ではないのではないか?とさえ感じさせました。全く素晴らしいです。

そして、あるクライマックスで訪れるまだ話せていなかった話しを紐解かれた後でのジャンの手が一瞬躊躇するという部分の、演出なのか演技なのか分かりませんが、そのリアルさに打ちのめされました。本当に凄い演技です。

ただ、テーマとして、私は超高齢化社会日本の現状はさらに進んでしまっているのではないか?と考えます。既に現実に起こっている問題ですから。より厳しいと言っても良いと思います。

夫婦である方々にオススメ致します。

“「愛、アムール」を観ました” への5件のフィードバック

  1. いがらし より:

    たまたま時間があったときになんだかもわからないけどフランス映画だから(だけど)ということでわたしもみました。客席は年配の女性グループがいっぱいでしたが、映画終了後のざわめきもないドンヨリ空気たら・・・。
    わたしがあれ?と思ったのは、映画のなかで音楽はあったけどBGMが全くなかったこと!だからか演劇みたいなドキュメンタリーみたいな。フランス映画らしい、というか。(フランス映画自体、どちらかというとわたしはやっぱり苦手で・・)
    あと、去年4月からのNHK(大好き!)のラジオ番組がきっかけでクラシック音楽にすごくハマっているので、「あのピアノ曲」が誰の何なのかずっと気になって仕方がありませんでした。(きいたことがあっても詳しくは知らない曲を1つずつ潰していってます、覚えられませんが。)

  2. inokashira より:

    またまたいがらしさん!コメントありがとうございます!!

    そう、この映画BGM無かったですね、言われて初めて気がつきました。とても、とても重いテーマを扱っていますし、何しろ主演の2人の演技というか生き様が凄いです。なので観賞後の場内の雰囲気、いがらしさんが味わったのと似たような雰囲気だったと思います。私が観た回も場内は私が最も若い観客で、ほとんどが年配の女性グループでした。

    あのピアノ曲はhttp://www.amazon.co.jp/%E6%98%A0%E7%94%BB-%E6%84%9B%E3%80%81%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%83%BC/dp/B00AJSYAC2ここで調べられると思います、よろしければご参照くださいませ。綺麗な曲ですよね。

  3. いがらし より:

    さっそく図書館でピアノ曲をさがしました。ウル覚えで「シューマンの幻想曲」を借りてしまい(でもこれもなかなかよくて、収穫でした 演奏エリック・ル・サージュ)、再度行って「シューベルトの即興曲」のCDを借りてきました。またひとつ広がりました。
    ところで2週間の貸し出し期間を超えて昨日、やっと一冊読み終わった小説があり、これがなかなか素敵な物語でした!物語の要所で、わかる限り8曲もクラシック音楽がでてきます。その中に、この、「シューベルトの即興曲」があり、同時に借りていたCDをかけてみると、物語の空気感とそれはそれはピッタリのBGMとなりました。他の曲も小説にあてて聴いてみたいとおもったくらいです。(小説家は音楽に詳しい人が多いみたいですね、センスいいです) 「火山のふもとで」 松家仁之 著 

  4. inokashira より:

    いがらしさん、コメントありがとうございます!

    「火山のふもとで」ちょっと気になる本ですね、早速私も図書館で借りてみようと思ってます。

    クラッシック音楽は奥の深い世界ですよね?私も音楽好きですけれど、なかなか耳も良くないですし理解力も感性も鈍いので好き、といえるほどではないかも知れませんが、それでも音楽を聴くことは心地よいことです。

    素敵な音楽とめぐり合えて良かったですね!偶然のなせる事ですが、こういう偶然のチカラはとても重要だと思います。

  5. […] 監督の前作「愛、アムール」(の感想は こちら )のある意味続編を描いています。 […]

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